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現代社会とストレス‐なぜヨガブームなのか‐

磯谷萌(宇都宮大学国際学部国際社会学科3)

 

最近日本ではヨガがブームしている。体型の維持やダイエット、ストレス解消にもよいので、若い女性を中心に人気だ。米国やEU諸国では、90年代以降、ヨガが多くの人に支持されるようになり、有名ハリウッドスターやセレブがヨガを始めるなどブームを巻き起こしている。ニューヨークには100軒以上もヨガスタジオがある。そのブームが日本にもやってきた。都心を中心にヨガ教室に通ってエクササイズに励んでいる人が増えつつあり、新規オープンのヨガ教室も各地で相次いでいる。あらゆるストレス解消法がある中で、ヨガはなぜブームしているのだろうか。私は、余暇にヨガをすることが、現代社会のストレスと何か関係があるのではないかと思い調べることにした。

 

現代の私たちの社会は、科学の発達により高度情報化、高度医療、あらゆる仕事時間の短縮化などの恩恵を受けている。その反面、機械化やコンピューターの普及に伴うめまぐるしい技術の変化、都市化による人口過密、核家族化、情報の洪水、価値観の多様化、受験戦争、競争社会、高齢化社会など、あらゆるジャンルのさまざまな変化への対応を強いられた。また、最近の子どもは過保護に育てられてきたために競争に弱いし、集団生活になれていないため、社会の仕組みにうまく対応できない。さらに、ストレスには身体的なものと精神的なものがあり、身体的ストレスは暑さや寒さ、騒音、排気ガスなどの物理的・化学的なものや、飢え、感染、過労などの生理的なストレスだ。最近は冷暖房が行き届いているために、夏は冷房病、冬は寒さに対する抵抗力が落ちるなどの現象が生じている。

 

例えば、職場では、高度な情報機器が普及したことによって引き起こされるテクノストレス、仕事の量は多い、内容は複雑で完璧にこなすのは難しいし、休みもなかなかとりにくい、会社での人間関係にも悩まされる。また、転勤や単身赴任・リストラもストレス要因である。学校に行けば、人間関係や受験戦争に打ち勝つためのレベルの高い勉強、課題、転校・クラス替えなどのストレスが取り巻く。家にいる場合も、高齢者の介護ストレス、育児のストレス、夫婦間の問題、親子の問題、嫁姑問題、老化自体のストレスも考えられる。これらに身体的なストレスもかかわってくる。このように現代社会で私たちは、何らかのストレスと切っても切れない関係にあるのだ。

 

次にストレスに関する統計結果を見てみよう。H12年保健福祉動向調査 厚生労働省ホームページ参照http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hftyosa/hftyosa00/

 

 

@     最近1ヶ月間の日常生活におけるストレスの程度をみると、「大いにある」11.8%、「多少ある」42.4%、「あまりない」25.3%、「まったくない」16.9%である。つまり、多少なりともストレスを感じている人は54.2%で半数以上の人が日常でストレスを感じている。

A     ストレスの内容をみると最も多いのは「仕事上のこと」で30.5%、次いで「自分の健康・病気・介護」26.7%、「収入・家計」23.6%、「職場や学校での人付き合い」23.0%となっている。男性は「仕事上のこと」が41.3%と極めて多い。女性は「自分の健康・病気・介護」が最も多く28.6%、2位の「収入・家計」が25.0%だ。

B     ストレス対処法について見てみると、「人に話して発散する」39.2%が最も多く、「のんびりする」32.5%、「テレビを見たりラジオを聞いたりする」31.0%と続いている。男性全体では「趣味・スポーツに打ち込む」34.6%が一番多いが、35歳〜64歳までは「アルコールを飲む」がそれを追い越している。女性の場合は「人に話して発散する」が53.4%と半分以上を占めている。

 

ストレスが溜まってしまうとどうなるのだろうか。ストレスが増えて発散するのが困難になると、肉体・精神ともに弱ってしまって病気になってしまう。また精神症状として、うつや対人恐怖、引きこもり、身体症状としてパニック障害、摂食障害、自律神経失調も起こりうる。

 

一方、ヨガは今から3000年前にインドで宗教的な修行の一環として行われていたもので、今では最新のフィットネスだ。1960年代後半、ビートルズがインド音楽や文化に夢中になり、その影響でヨガも一躍広く知られるようになった。1990年代後半、「激しい運動はひざや腰をいためる」「高齢者には負担が大きい」などの問題や、必要以上に激しい有酸素運動は活性酸素を生み出すものとの説が有力となった。活性酸素は体のサビで、細胞を破壊し、内蔵のトラブル、シミ・シワなどの老化を引き起こすものだ。そんな中、体に一切負担をかけずに、持久力、しなやかな筋肉をつけることができる「ヨガ」が注目されるようになった。アメリカでは生活習慣病の蔓延で肥満が増加していたため、体を内面から鍛えるヨガがブームとなった。

 

ヨガに欠かせないのは「呼吸」で鼻から息を深く吸って腹・胸・肩と息を広く行き渡らせて鼻から出す。そこでいろいろなポーズをとり、体の不調を取り除きリラックス状態へ導くのだ。ゆっくりと呼吸し瞑想することで、集中力も高まる。さらにヨガは「遅筋」とよばれる、長時間姿勢を維持するなど、長い時間、力を発揮するための筋肉をバランスよく鍛えることができる。遅筋は効率よく栄養を燃やすことができるので、疲れにくく、持久力のある体を作り上げることができる。さらにそれを続けることによって基礎代謝があがり食べても太らない体を作り上げることができる。

最後にヨガとストレスの統計結果がどのように関連するのか、自分なりの見解を示そうと思う。まず統計の結果から自分の健康や病気を気にしている人が多いことがわかるので、ヨガはエクササイズとして体を引き締め、ダイエットや美容目的として行う人が多いのだろう。のんびりすることでストレスに対処する人も多いが、ヨガは体にあまり負担がかからないので無理なくできる。また、収入や家計を気にしている人も多いが、ヨガは家にいてもポーズや呼吸法をマスターすればできるので本格的な道具を集めない限りは、お金もあまりかからない。また、女性は人に話して発散するストレスを対処するのが特に多かったが、これもヨガ教室に通い、ともにエクササイズに励む仲間とともにおしゃべりを楽しむのだろう。

 

ストレスが多い現代社会では、心身ともに鍛えて、ストレスに打ち勝つ自己を作らなければならない。これからも技術は進歩していくし、それに伴い高齢社会もどんどん進む。競争社会も激しくなるだろうし、人間関係も複雑だ。ゆっくりと休暇を取ることもますます困難になるだろう。慌ただしい現代社会で自己を見失わないためにも、集中力を高め、深い呼吸をすることによって心の安らぎを得るヨガは、精神面も鍛えられるし、手軽にできるので、肉体面・精神面の両方の修行として今の社会に適したエクササイズなのだ。

 

 

参考:インターネット リコークラブコラムページ「ストレスマネージメントを考える」         http://www.geocities.co.jp/Athlete-Rodos/1842/column/column_sports013.html

   インターネット SmaSTATION-4 トクベツキカク「ヨガ入門編」

    http://www.tv-asahi.co.jp/ss/159/special/top.html

   門倉貴史「急拡大が見込まれる日本のヨガ市場」

    http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kado/pdf/d_0505f.pdf