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スポーツ振興とサッカーくじ

国際学部国際社会学科二年

櫛田 裕人

 

1. はじめに

 

みなさんはどういった余暇の過ごし方をしているだろうか。きっとスポーツをして過ごしているという方々も少なくないはずである。人によって、年齢の違い、運動神経の善し悪しはあるにしても、スポーツによって体を動かすことはわたしたちにとって大きな喜びであり、健康促進、ストレス発散など様々な効果をもたらしてくれる。これからいっそう深刻化するであろう少子高齢化にともなう老人の健康促進や、子供たちの体力低下などの問題に対応するためにも、スポーツをより身近に、より快適なものにしてゆくことは重要な課題だ。

 さて、今ではその名はすっかりおなじみとなったサッカーくじだが、このサッカーくじによって得られた収益は、サッカーに限らずすべてのスポーツの振興のために利用されている。ここでは、サッカーくじによるスポーツ振興助成活動のしくみと、その助成金がどのような事業に使われているのかを見ていきたいと思う。

 

2.       サッカーくじとは

 

日本におけるサッカーくじの全国販売は平成13年から始まった。日本のサッカーくじには、指定されたJリーグの試合13試合の、それぞれのホームチームの勝ち、負け、その他を予想するtotoや、指定された3試合(6チーム)のそれぞれの得点を予想するtotoGOAL3などがある。くじの対象年齢は19歳以上であり、ガソリンスタンド、コンビニエンスストアなどの身近な場所で全国的に販売されている。また、払い戻しに関しては当せん照合機を設置した全国の指定された信用金庫等で実施されている。

ところで、海外ではサッカーくじの歴史は意外と長い。ヨーロッパではイタリアのようにすでに50年以上も前から実施されているところもある。最近ではシンガポールや韓国といったアジアの国々でも実施されており、その売上を財源としてスポーツ振興事業をおこなっているところがほとんどである。海外においてもサッカーくじを買うことは、単なる賭け事としてだけではなく自国のスポーツ振興に貢献するという意味でも親しまれているのだ。

 

3.       くじによるスポーツ振興助成

 

 サッカーくじは正確にはスポーツ振興くじという。国は、スポーツ振興のために、平成12年9月に「スポーツ振興基本計画」(平成13年〜平成22年)を策定した。この計画を促進するための財源確保のひとつの手段として、スポーツ振興くじというしくみが導入されることになった。現在では文部科学省の指導、監督のもと、独立行政法人日本スポーツ振興センターがスポーツ振興のための助成活動の実施主体となっており、スポーツ振興くじの収益による助成活動の実施もおこなっている。

 くじによる助成は、地方公共団体、スポーツ団体が対象として行われる。くじによる売上から、50%は当選金として払い戻され、そこから経費を差し引いた収益のうち、3分の1は国庫納付金となり、残りの3分の2がスポーツ振興事業のために使われることになる。助成金の募集は毎年おこなわれ、地方公共団体、スポーツ団体による申請があったものから、厳正な審査、手続きを経て交付が決定される。実際に、平成14年度には約59億円、平成15年度には約27億円がスポーツ振興くじからの助成金として地方公共団体、スポーツ団体に交付されている。

 スポーツ振興くじによる助成事業には以下のようなものがある(スポーツ振興センターによるスポーツ振興助成事業にはこの他にも多くの種類があるが、ここではくじの収益を財源とした事業に限って見ていく)。

・地域スポーツ施設整備助成

総合型地域スポーツクラブの活動拠点となるクラブハウスの整備をはじめ、グラウンドの芝生化、屋外夜間照明施設整備等の事業に対して助成することにより、地域における身近なスポーツ施設の整備の促進を図る。

・総合型地域スポーツクラブ活動助成

総合型地域スポーツクラブの創設及び活動事業に対して助成することにより、地域におけるスポーツの活動拠点であり地域住民の交流の場となる総合型地域スポーツクラブの育成を図る。

・地方公共団体スポーツ活動助成

地方公共団体が地域住民を対象に、スポーツへの参加とその継続を促進するために行う事業に対して助成することにより、地域スポーツ活動の活性化を図る。

・将来性を有する選手の発掘育成強化助成

将来性を有する選手の発掘及び育成強化を行う事業に対して助成することにより、中央レベルから地域レベルまでが一体となった競技者の組織的・継続的な育成強化体制を整備する。

・スポーツ団体スポーツ活動助成

スポーツ団体がスポーツの振興のために行う事業に対して助成することにより、生涯にわたる豊なスポーツライフのための環境づくりと、国際競技力の向上を計る。

・国際競技大会開催助成

我が国において、国際的な規模のスポーツの競技会を開催する事業に対して助成することにより、国際競技大会の円滑な開催を図る。

 

4.       宇都宮市の総合型地域スポーツクラブ

 具体的な例として宇都宮市におけるスポーツ振興くじによる助成事業である、泉が丘地区における総合型地域スポーツクラブの設立支援事業をあげてみたいと思う。

 総合型地域スポーツクラブとは、地域住民が主体となり、日常的な活動拠点を中心にスポーツをおこなうクラブである。ここでは、競技種目、世代や年齢、技術レベルにおいて多様性があり、地域住民個々人のニーズに応えた活動が可能である。宇都宮市においては、泉が丘小学校を拠点に活動する「友遊いずみクラブ」が平成16年4月に設立され、地域住民が日々スポーツや文化活動を楽しみ、交流を図る場ともなっている。このクラブの設立にあたって、平成14年度、15年度にそれぞれ約70〜90万円がスポーツ振興くじの収益から交付されており、平成17年度もこのクラブの活動支援のために100万円の交付が内定している。この例ひとつをとってみても、わたしたちのごく身近なところでのスポーツ振興に、スポーツ振興くじの収益が生かされていることがわかる。

 

5.       これからの課題とまとめ

 

 スタート当事は画期的なスポーツ振興の財源として注目を集めたサッカーくじだったが、その売上は現在、大幅に落ち込んでいる。全国発売開始の平成13年の約642億円の売上が、平成16年には約157億円と、およそ4分の1にまで低下してしまったのだ。そのため、上記のくじ助成事業のうち、大幅に限定された事業のみが募集され、助成をうけることになっているというのが現状である。スポーツ振興センターのアンケートによれば、くじに対しての不満の上位としては、便利なはずのコンビニで買おうとしてもコンビニでの購入はtotoの会員に限られるといったことや、Jリーグ13試合の結果を予想しなければならず、的中が困難なことなどがあげられていた。くじの購入の際の手間をできるだけ減らすことや、くじ自体の魅力を引き上げていくといったことが今後は望まれるのだろう。

 

「健全なスポーツに賭け事は不適切だ」「青少年によい影響がない」などの否定的な声がしばしば聞かれるが、私はサッカーくじを肯定的にとらえている。今回のレポートの作成にあたって、実際に私たちの身近なところにくじの収益が利用されていることを知ることができた。先ほど述べたように、残念ながらくじの売上は下降線をたどる一途だが、くじを買うことでサッカーをより楽しむきっかけをつくり、それがさらに、すべてのスポーツを私たちにとっていっそう身近なものにするという仕組みは決して間違ってはいないと思う。サッカーくじとスポーツの振興との関係を、わたしたちの身近な事として多くの人が理解し、この仕組みがこの先大きな発展をみせることを期待する。

 

 

参照サイト(05年6月22日現在)

独立行政法人日本スポーツ振興センター    http://www.naash.go.jp/

 

toto official web site    http://www.toto-dream.com/

 

文部科学省    http://www.mext.go.jp/

 

友遊いずみクラブ    http://park19.wakwak.com/~izumigaoka/