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「りんごによる21世紀青森県促進政策」

田上真千子 (宇都宮大学国際学部国際文化学科3年)

 

1.「21世紀青森りんご行動計画」

 

 「青森県といえば」と聞かれれば、およそ9割の人が「りんご」と答えるのではないだろうか。私も実際そのうちの一人である。つまり、これほどまでにそうしたイメージが私たちの頭の中にあるということは、それほど青森県におけるりんごの生産は、他県に群を抜いて勝っているということであり、また実際に青森県のりんご生産量は、日本のりんご生産量の半分以上を占め、日本一である。そのため青森県は自県を「りんご王国」とも呼んで、りんご産業の活性化に努めている。

 

 りんごは、青森県の産業経済や文化にとって極めて重要なものであり、青森県を代表するシンボルとまで言われている。またりんごは健康にもよい。青森県知事である、木村守男氏は、青森県のシンボルであるりんごを、国内レベルだけではなく、国際レベルにまでさらに広く浸透させるために、「21世紀の幕開けとなる2001年を『りんご元年』と位置づけ、国際時代に対応した夢と希望あふれるりんご産業の実現に向け、新たな一歩を踏み出」そうと考えた。「『21世紀青森りんご行動計画』は、県民が心を一つにして、『健康づくり』『文化・芸術・観光』など、幅広い観点からりんごの新しい価値を見出し、新たな産業の発展や個性豊かな魅力ある青森県づくりに結び付けていくための指針となるもの」なのだ。こうして、「21世紀青森りんご行動計画」は2001年3月に採択された。

 

 次に、この政策の基本理念について見ていこうと思う。りんご王国という地位をゆるぎないものにしていくために、青森県はどのような基本理念でもってこの政策を推し進めていこうとしているのだろうか。

     「りんごを食べて健康になる」

     「りんごの文化で心を豊かにする」

     「夢と誇りがもてるりんご産業を目指す」

以上が、青森県の掲げる基本理念である。1つ目は、容易にその内容も理解できるものの、2つ目、3つ目は、少し抽象的で理解しにくい。この段階で私が感じたのは、健康、文化、産業といった幅広い面における青森県の活性化を「りんご」という産物で改善、あるいは促進していこうとするものなのだろうということだ。しかし、青森県民でもなく、りんごを単なる甘くておいしいフルーツとしか思っていなかった私にとっては、りんご生産量が日本一の青森県とはいえ、りんご産業を利用してどのように、そしてどこまで青森県を活性化させることができるのか、疑問に思わざるを得なかった。一方青森県はりんご産業を生産者が生活の糧を得るだけの場としては捕らえておらず、りんご産業によって、青森県は大きく発展できるだろうと考え、またそのためには、県幹部だけでなく、県民一人一人の積極的な参加が必要だとしている。そして、県民各々の多彩な活動を引き出すために、

(1)   りんごで健康・福祉を増進する

(2)   りんごで文化・芸術を創造する

(3)   りんごで観光を振興する

(4)   りんごで産業を創出する

という、以上を柱として掲げ、計画的にりんご王国を推進していこうという考えである。以上を見てみても、今ひとつその活動内容がつかみにくい。ただ青森県全体が一丸となってりんごを全面的にバックアップし、世界へと広げていこうとする姿勢は大いに伝わってくる。日本では、多くの食物を輸入に頼り、国内のそうした産業が次第に姿を消してゆく傾向を見せ始めた昨今、青森県はいかにしてその産業の腐敗を防ぎ、国内生産の活性化に努めているのか。以下これから述べることは、国内の農業従事者、またそうした産業に関わる多くの人々に、第3次産業のありかた、行政と県民一人一人の結びつきの重要性など、改めてその認識の必要性を感じさせる面を多々含んでいると思う。それでは、詳しい活動内容に入っていこうと思う。

 

 

2.県民一人一人の活動あっての県の促進

 

1.で示した、基本理念に基づく、県民の積極的な参加によって成り立つ4つの項目についてだが、それらを一つ一つ見ていき、いくつかその活動

の具体例も提示する。

 

 (1)りんごで健康・福祉を増進する という項目についてだ。今日、少子高齢化が発展し、栄養価の高い食物が求められている。青森県りんごを食生活に欠かせないものだとして位置づけ、私たちの健康にりんごが大変よい効果をもたらすとしている。さらに、りんご園地での体験農業、体験学習などを福祉・教育に役立てようという考えである。具体的には、「生きがいづくりや心の充足感、現代社会におけるストレスの癒しのために、りんご園での農業体験をする場を提供していくとともに、りんごの切枝や鉢物の開発・普及を促進してい」ったり、「子供たちの体験学習の場としてりんご園を活用するなど、りんごをテーマとした体験活動を促進してい」くなど、多岐に渡っている。この政策は、家庭内にりんごを置くことで、家族の中のすべての世代がりんごに触れ合い、と同時にそれを食すことで健康増進にもつながる。また、そうした中でりんごを身近なものに感じることができ、りんご園での体験学習でも自主的にりんごに接しようとする傾向が出てくるのではないかと思う。それは、りんごに対する認識を高め、青森県のりんごの幅を広げる第一歩となるのではないかと思う。

 

 次に(2)りんごで文化・芸術を創造する という項目についてだ。私はこの項目が理解できず、りんごと文化・芸術がどのように結びつくのか分からなかった。しかし調べていくうえで以下のようなことが分かった。まず、青森県はりんご園の景観を対象にした写真コンクールを開催している。これは、美しいりんご園を県民や子どもたちが身近に感じ、ふるさと思う心を大切にする、という目的をもっている。また、りんごの花を題材としたファッションの振興を図ったり、りんごの発展に大きく貢献し業績をあげた方には、感謝の気持ちとして「青森りんご勲章」を授与したり、また世界のりんご文化を調査し、広く県民や日本国民に紹介するなど、りんごをフルに利用し、県民、さらには国民のりんごに対する認識幅も広げていこうとする青森県の非常に積極的で前向きな姿勢が見てとれる。

 

 3番目に(3)りんごで観光を興す だが、これは、私が余暇政策論を通して今回のレポートを書くにあたり、一番取り上げたい分野だ。今日ディズニーランド、USJを筆頭に多くのテーマパークが国民にとって休日どこに行くか、とした際に選ばれる代表的な場所になっている。続々と新たなアトラクションが作られ、それらはさらに入場者数を増やす役割を果たしている。一つのアトラクションを作るのに、莫大な費用がかかるものの、その分入場者数もそれまでよりは確実に増加するという見込みがあるため、こうした大きな計画に踏み込むことができるのだろう。一方、果物を栽培し、○○狩りといったように観光客自らがそれら果物を自分で採って楽しむ、といった計画を実施している果物産業はどうだろうか。私自身祖父母がいちごを栽培し、商品として売り出しているため、いちごの実がなる時期に祖父母の家を訪れたときは、ハウスに行き、自分でいちご採ってその場で食べたり、といった経験はしたことがある。しかし実際○○狩りと名のつくものに参加したことは、あって子どもの頃に2,3回ほどではないかと思う。実際のところ、そうした産業は観光客を引くための努力をしているのだろうか、ということも気になっていたのだ。直接にはりんご狩りの観光客増員を狙いとしているわけではないが、県は、りんごによって青森県を訪れる観光客の増員を目指しているようだ。その具体策として、「桜」「春もみじ」と並んで「りんごの花」を観光の資源としたり、津軽地域に広がる、りんごに関する展示施設や農作業体験ができる園地などをまるごと「りんご博物館」として様々な施設をその中に導入するなどしている。こうして、県外や国外から青森県を訪れる人々が、短期間の滞在でも「りんごのふるさと青森」を感じられるように、「りんごを感じる街づくり」も推進しており、市町村を超えたネットワーク作りを目指している。

 

 最後に(4)りんごで産業を創出する だが、今日多くの食物が輸入に頼る中で、経営不振に陥っている国内産業も少なくないが、その中でりんご王国青森県はその病害に強く、食味、外観、貯蔵性すべてに優れており、全国的にも有名な“ふじりんご”を超える新たなりんごの品種改良を促進している。後継者の不足や現在経営を担っている方自身の高齢化は否めないものであり、その中でりんごが県民の意識から消えることがないように、最善の策を練って実行に移している。

 

 

3.青森県に寄せる期待

 

 以上述べてきたように、青森県での県と市民のむすびつきは他県に群を抜いているといってもよいだろうし、その結びつきは、確実に青森県における観光客の誘致を実現していると思う。県の代表産物を利用して県の活性化に努めることで、テーマパークでは感じられないその県の素晴らしさ深く感じ取ることができると思う。第一に、県民がりんごを青森県のシンボルと捕らえ、誇りに感じていることが、ここまで行政と市民を結び付ける大きなきっかけになったのだろうと思うし、「青森県といえばりんご」という認識は「りんごといえば青森県」という認識にまで膨らんでいくのではないかと思う。外国の食糧の輸入、日本における高齢化、後継者の不足など、第三次産業と呼ばれる産業は、今後、経営に困難を極める時代であると思う。しかし、こうした青森県におけるりんごを利用した産業の促進は、国内だけでなく外国にもその実態を広め、りんご産業さらには青森県全体の活性化に大きく貢献している。私個人としては、これからの青森県に期待ができると強く実感した。

 

 

引用・参考文献

     21世紀青森りんご行動計画 http://www.pref.aomori.jp/ringoact/

     青森りんごinformation http://www.pref.aomori.jp/nourin/ringo/ringo-01.html

     板柳町ホームページ http://www.town.itayanagi.aomori.jp/