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「余暇施設として存在するスーパー銭湯とは」
瀧 純代(宇都宮大学国際学部国際社会学科4年)
1.はじめに
かぐや姫の名曲「神田川」で歌われているような、昔ながらの銭湯は近年、次第に姿を消していっているように思われる。その理由としては、我々がたいていお風呂つきの住まいに住むようになり、銭湯に行く必要がなくなったことが一番に挙げられるだろう。しかしその一方で、いわゆるスーパー銭湯は着実にその数を増やしているように思われる。銭湯とスーパー銭湯、「お金を払って入るお風呂」という点ではまったく同じであるはずなのに、どうしてこのような違いが出てきたのであろうか。以前からその点に興味を持っていたため、今回このレポートで取り上げることにした。
2.銭湯とスーパー銭湯との違い
ではここで、双方の違いを理解するために、対比して考えてみようと思う。
まず、銭湯とは、お風呂に入ることがメインであり、主に家にお風呂のない人たちが行くようなイメージがある。そのため、銭湯というと、湯船はたいてい1つ、あっても2つくらいであろう。それに比べてスーパー銭湯では、たった1つの湯船というのはまずありえないだろう。お風呂に入るという、銭湯と同じ目的を持っているのだが、電気風呂やジェット風呂、ワイン風呂などさまざまなお風呂が用意されている。また、露天風呂を備えているスーパー銭湯も多いように感じる。
また、銭湯というと家から歩いて行ける場所、つまり住宅街や街中にあるというイメージを持つだろう。しかしそれとは反対に、スーパー銭湯はどちらかというと街中から少し離れたところに位置し、駐車場も整備してあるため、運転するのが苦にならなければ、近所でなくても行くだろう。
そして、銭湯とスーパー銭湯との一番の違いは、何と言っても、利用者が抱く気持ちの違いではないだろうか。前述したように、最近ではほとんどのアパートや借家にお風呂が付いている。昔であれば、「アパートにお風呂が付いていないから、銭湯へ行く。」これが銭湯を利用する人たちの理由や目的であったに違いないが、家にお風呂があるにも関わらず、スーパー銭湯へ行く人たちは多い。それはつまり、わざわざ行って、わざわざお金を払うだけの魅力がスーパー銭湯にはあるということだろう。
そこで次節では、そのスーパー銭湯が持つ魅力について考えていきたい。
3.スーパー銭湯の魅力とは
わざわざ行って、わざわざお金を払ってまで利用する、スーパー銭湯が持つ魅力には、一体どのようなものがあるだろうか。
まず、2節で述べたように、スーパー銭湯にはさまざまなお風呂が用意されている。一般的なお風呂はもちろん、電気風呂、薬湯、サウナ、水風呂、露天風呂など多くのお風呂を入館の際に払った一定の料金で楽しめる。また、スーパー銭湯によっては、ワイン風呂やお茶風呂など、日ごとや週ごとに変化に富んだお風呂を提供するところもある。一つの場所でたくさんのお風呂を楽しめるというのは、スーパー銭湯の魅力であると言っても良いだろう。
また、たくさんのお風呂に加えて露天風呂も備えてあるのであれば、ちょっとした温泉気分も味わうことができる。仕事でなかなか休みが取れないなどの理由で温泉へなかなか行けない人にとっては、たとえ小さくてもスーパー銭湯の露天風呂によって癒されることは違いない。もしくは、家にあるいつものお風呂とは違った気分を味わうためにスーパー銭湯へ行くのかもしれない。
そして、スーパー銭湯が持つ一番の魅力とは、やはり、お風呂だけではないということであろう。筆者が行ったことのあるスーパー銭湯には、お風呂の他に、マッサージ、あかすり、散髪、飲食、大広間で仮眠、ゲームなどがあった。入浴料を一回払えば何回でもお風呂に入れるため、入浴―食事―仮眠―入浴―といったように、その気になれば一日中スーパー銭湯で過ごすことも可能である。スーパー銭湯という1つの空間で癒しとくつろぎの時間を過ごすことができるのである。ここで1つ、具体的な例を挙げてみたい。
その例とは、「昨年3月1日にお台場にオープンした大江戸温泉物語である。この日帰り温泉施設(スーパー銭湯)は、朝11時から翌朝9時まで営業しており、料金は大人が2827円と、スーパー銭湯に比べると少し高めの設定となっている。しかし、この施設ではナイター料金、深夜追加料金、朝風呂料金などのさまざまな料金設定があるため、自分たちの予定や予算に合わせて利用することができる。また、ここは江戸の街を再現した施設であり、その気分をさらに味わうために利用者は全員、19種類のオリジナル浴衣の中から自分の好きなものを選び、それを着て施設内の散策、温泉の入浴、食事、マッサージなどの癒しを体験できるのである。ここ大江戸温泉物語ではすべて、地下1400メートルから湧き出る天然温泉を使用し、大浴場、露天風呂、足湯、砂風呂、岩盤の湯などがある。
温泉以外の施設について見ていくと、例えば飲食のスペースには、通常のスーパー銭湯のようなフードコートだけでなく、料亭、居酒屋、甘味処、レストランなど、本格的な食事施設が用意されている。そして、癒しのスペースとしては、全身マッサージやエステ、足裏マッサージのほかに何と、占いまであるのである。もちろん他にも、遊ぶスペースとして、縁日の再現や駄菓子屋、手裏剣体験、おみやげを販売するスペースなどがあり、温泉以外の施設も充実しているのである。」1これらを見ていると、一日中いても利用者を飽きさせない、また一日中でもいたくなるような施設づくりがなされているように感じる。
4.余暇施設としてのスーパー銭湯
この大江戸温泉物語を参考にすると、やはり最近では銭湯は単にお風呂に入るためだけの施設ではなく、癒しの空間、もしくは家族で一日中過ごすことのできる余暇施設へと変化してきている。お風呂に入ることはもちろんのこと、他のことが楽しめる施設になっているように感じた。日本は全国にたくさんの温泉を持つ環境に恵まれ、その中で生活してきた日本人はやはり、温泉・お風呂が大好きである。このスーパー銭湯はおそらく、欧米で展開しても成功しないだろう。温泉・お風呂好きの日本人がいるここ、日本で展開するからこそ、全国的に広がる、大きな余暇施設になりえたのではないだろうか。
また、温泉とは違い、スーパー銭湯は近場で気軽に楽しめるというポイントがある。温泉のように車や電車で何時間かかけていくことはめったにないだろうから、小さい子どもを連れて行く場合でも、比較的安心して行けるのではないだろうか。家族が安心して楽しめ、癒される余暇施設がこのスーパー銭湯なのである。単にお風呂に入りに行っていた頃とは異なり、昔の銭湯は今、家族がみんなで楽しめる、温泉を中心とした余暇施設へと変化をとげたのである。
参考ホームページ
銭湯温泉サウナ王国 http://www.kt.rim.or.jp/~tsukasa/sento/