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「日帰り旅行」

−旅行に求めるものとは−

 

高橋有希子(宇都宮大学国際学部国際文化学科3年)

 

 

 

1. はじめに

GWなどの長期休暇になると、ニュースなどで遠出の旅行をする人々の姿が多く紹介されているが、その遠出旅行や海外旅行人気に対して、近年、「日帰り旅行」が人気を集めている。なぜ、「日帰り旅行」が今注目を集めているのか。この「日帰り旅行」人気を通し、日本人の旅行に対するニーズも考察していきたい。

 

2. 日帰り旅行とは

(1)      JR東日本の日帰り旅行企画「めぐり姫」

 ここでは、日帰り旅行の具体的な例として、JR東日本が企画している「めぐり姫」という日帰り旅行プランを取り上げてみようと思う。この「めぐり姫」の企画コンセプトは、「ちょっと主婦を休んで行く列車の旅」「家事や子育てに忙しい毎日から抜け出して気の合う女友達と列車の旅にでかけませんか」「本日、主婦休みます」などで、主に主婦をターゲットにした関東近郊の日帰り旅行企画である。この企画が代表的な例であるが、各旅行会社が紹介している日帰り旅行は、女性、主に主婦をターゲットにしているものが多い。「毎日家事におわれ、忙しい主婦たちでも気軽に行ける旅行=日帰り旅行」という事を全面的に出し、宣伝している。この「めぐり姫」はコース内容も豊富で、季節ごとにそのコース内容も変わってくる。しかし、全てのコースに温泉、ショッピング、グルメ、エステなどの女性の心をとらえるようなメイン企画が組み込まれている。

 ここで、「めぐり姫」から「ビューわかしおで行く千葉県勝浦 テルムマリン・パシフィーク」という夏用モデルコースを紹介したい。料金は、往復JR料金、昼食、サービス込みで12,000円。このサービス内容も豊富で、タラソテラピー、アフタヌーンティーセット、その他様々なプレゼントなどが含まれている。通常、このテルムマリン・パシフィークにおいてタラソテラピーを受けようとすると、一日コースで7,350円かかる。このことを考えると、この日帰り旅行プランは、値段はお手頃、と言えるだろう。申し込みは大人女性2人以上で、添乗員の同行はなし。出発時刻と到着時刻を厳守しさえすれば、現地で好きなように時間を過ごせるように配慮してあるのである。

 このように、時間・値段も手頃で、日常生活と一味違った一日を気軽に過ごせるということが日帰り旅行の大きな魅力であると言える。

(2)      日帰り旅行と宿泊旅行

ここで、日帰り旅行・宿泊旅行の互いの利点、欠点、違いについて考えていきたい。日帰り旅行の利点は、前に述べたように、時間・値段が手頃であること、気軽に日常生活と違ったことが体験できるということが挙げられる。しかし、日帰りであるために、現地での滞在時間が限られること、急ぎ足での観光になってしまうことが欠点として挙げられる。一方、宿泊旅行は、日帰り旅行とは対称に時間が限られることがなく、ゆっくり現地の観光名所、宿泊施設を満喫できる。しかし、宿泊旅行は宿泊施設、ツアー等の予約に手間がかかること、2日以上のまとまった休暇が必要になることなど、日帰り旅行と比べて手頃さ、気軽さがないということが言える。

 

3.これからの「旅行」に求めるもの

 ここで、内閣府の世論調査から、一般的に日本人が「旅行」に求めているものは何なのか見て行きたい。この世論調査は、内閣府が、「自由時間と観光に関する世論調査」と題して、自由時間と観光に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とするのを目的に平成158月に行ったものである。この調査の中で「ここ近年(1年前くらい)で、観光、レクリエーション、スポーツなどのための一泊旅行の国内旅行に行かなかった理由は何か」という質問があり、それに対して、「金銭的に余裕がないから」が34,3%、「連続して休みが取れないから」が29,2%、「なんとなく旅行をしないまま過ぎた」が22,2%などという回答が多くなっている。この中の「連続して休みが取れないから」という回答をした者は、大都市で割合が高くなっている。「もし、リゾート保養地などに一定期間滞在して余暇を過ごすとしたら、滞在施設やその周辺にどのような機能等があったらよいと思うか」という質問に対しては、「温泉を利用した施設(ケアハウス)」と答えたものが58,8%と一番多く、次いで「バラエティに富んだ食事が楽しめる」が28,5%となっている。そして、「旅行の主な目的は何か」に対しては、「美しい自然、風景(山、川、滝、自然公園等)を見る」が65,0%、「温泉での休養」が60,1%とこの二つが最も高く、以下「旅行先の土地の郷土色豊かな料理等を食べる」が45,2%、「史跡、文化財、博物館、美術かんを巡り、鑑賞する」が34,8%と続いている。また、「温泉での休養」と回答した者では、女性の割合が高くなっている。

 以上から、宿泊旅行に行けない理由として、金銭的理由、まとまった時間が取れないことが多数の意見であることがわかる。そして、旅先、旅行内容に求めるものとして、温泉、自然鑑賞という、主に心身の疲れをとったり、気分転換、リフレッシュができるようなものを求めていることがわかる。一方「日帰り旅行」は、今まで見てきたように値段、時間も手頃で、サービス内容も豊富である。このような日本人が一般的に「旅行」に求めるものと「日帰り旅行」の利点が一致することから、「日帰り旅行」は現在日本人が旅行に求めるものを上手く取り入れていると言える。

 

4.おわりに

 今まで見てきたように、「日帰り旅行」は、現代の日本人が旅行に求めるものを上手く取り入れた旅行体系であると言える。今現在は、女性、主婦をターゲットとした日帰り旅行プランが多く売り出されているが、その手頃さ・気軽さから、女性だけでなく、さらに多くの人々に受け入れられることになると思う。「日帰り旅行」は、日本人の新たな余暇の過ごし方の手段として更に一般的になっていくだろう。

 

インターネット検索資料

JR東日本 めぐり姫 http://www.jreast.co.jp/megurihime/index.html

内閣府政府 「自由時間と観光に関する世論調査」 http://www8.cao.go.jp/survey/h15/h15-jiyujikan/index.html