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「情報化社会の発展と電子書籍の普及」

 

高橋俊貴(国際学部国際社会学科三年)

 

1.             はじめに

2.             電子書籍の登場

3.             電子書籍の短所、長所

4.             電子書籍実践編

5.             電子書籍の将来

 

 

1.はじめに

 

 情報化社会の発展、なかんずくパソコンとインターネットの普及によって、ネットで商品を買う、ということが当たり前になってきた。音楽やゲームなど、情報の内容が商品となるもの、とどのつまりソフトウェアに関しては、その場でダウンロードして購入することも可能である。書籍も情報そのものが商品となるものである。もちろん、CDのジャケットなどと同じように、装本の見栄えや質感も重要ではあるが、やはり商品の中核をなすのは内容そのものである。つまり、書籍もデジタル化して販売することが可能なのである。すでにそのような取り組みは始まっている。

 

 

2.電子書籍の登場

 

 電子書籍には大きく分けて、パッケージ型とネットワーク型の二つの型がある。CDなどの電子媒体に記録して販売するパッケージ型の電子書籍は、90年代半ばから試験的に販売され始めたらしいが、そのなかでもCD-ROM版の百科辞典や、いわゆる電子辞書は大ヒットした。

 その後、インターネットの普及によって、電子書籍のダウンロード販売が始まった。1996年に電子書店パピレス(http://www.papy.co.jp/)がネットに進出し、翌97年、著作権が切れた書籍をボランティアが電子化したものを集め無料公開するサイト、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)が開設された。

 現在では、携帯電話やPDA(個人用携帯端末)に転送して、外出先で読むこともできるようになった。

 

 

3.電子書籍の短所、長所

 

 どんなものにも短所と長所がある。ということで、電子書籍についてのそれを箇条書きでまとめてみた。

 

(1)短所

 

・実体が“ない”…電子書籍は、あくまでデジタル化された「情報」でしかないので、実際の書籍のような実体や質感というものがない。自分のパソコンに記録しておいても、何らかの事故によって消えてしまう可能性がある。また、実際の装本がもつ質感や“重み”の重要性も軽視できない。それらが読み手に対して、“本を大切にする”だとか“最後まできちんと読む”という気持ちを起こさせるのに一役買っているであろうことは否定できない。

・手軽に読めない…実際読もうとするときに、パソコンが立ち上がるのを待たなければならないことや、電子ペーパーやPDAなどの高価なものを常に持ち運ぶ必要があることなど、紙の本と比べて何かと不便である。

・まだまだ少ない…電子書籍は登場してまだ10年も経っていない代物である。紙の書籍の紀元をどこに定めるかにもよるが(古くは古代エジプトのパピルスか)、グーテンベルクによる活版印刷術の発明に端を発すると考えても、実に500年の開きがある。出版されている(あるいは自由に利用できる)書籍の数は、冊子版のそれと比べて、圧倒的に少ない。

・目がチカチカする…ここで科学的な根拠を示すことはできないが、紙の本と比べて、電子ディスプレイは見ていてなんとなく目が疲れやすい。

・フォーマット(記録形式)が様々…Adobe eBookやテキスト、htmlなど、電子書籍の記録形式はいくつもあり、それに対応したソフトウェアが必要になる。最も扱いやすいテキスト形式は、それほどコピーや改変が容易なので、有償の電子書籍には採用されにくい。

 

(2)長所

 

・早い…普通、本を買うとなれば、店に足を運ぶ必要があるし、取り寄せの場合でも何日か待たなければならない。ネットワーク型の電子書籍なら、いつでもネットにつないでサイトに行って選んでクリック、するだけで簡単に手にいれることができる。料金は、クレジットカード決済や振替の他に、プロバイダー料金に上乗せする方法もある。

・安い…電子書籍は、印刷や発送などの費用がかからない。そのため、パソコンなどの端末の費用を考慮しなければ、圧倒的に価格が安い。

・旨い、もとい、かさばらない…デジタル情報なので、どれほど情報量が多くても、それほどかさばらない。端末は持ち歩く必要があるにしても、その中に何十、何百冊分の書籍を詰め込むことができる。いずれは、本棚の本もすべて電子媒体に記録される日が来るかもしれない。そうなれば部屋もスペースを広く取ることができる。

・環境にやさしい…紙を使わないため、資源の節約につながる。環境保護がさけばれる現代、これはとても大事なことである。

・出版が容易…コストがかからないということは、出版が容易になるということである。普通、本を出版するとなれば、大量に印刷する必要があり、そのためには出版社に頼むしかない。それにはコストもかかるため、売れないと判断すれば、出版社も出版を渋る。だが電子書籍なら、出版社の承諾も得られやすいだろうし、もし断られても個人のHPで販売することができる。

・変換が容易…書式や文字の大きさを自由に変えることができるので、視力の低下したお年寄りなどにも読みやすくなる。

 

 このように、電子書籍の長所・短所は、電子ディスプレイやデジタル情報のそれと重なる部分が多い。また、長所とも短所ともつかない点が目立つ。例えば、「絶版がない」という特徴も、一見の長所のようだが、次のように考えることもできる。実際の本は絶版になっても出版社がつぶれても、古本屋や図書館などで探せばなんとか手にいれることができる可能性がある。本という「実体」は消えないからだ。しかし電子書籍の場合、扱うサイトがすべて閉鎖されれば、手にいれるのは非常に難しくなる。「本屋」や「図書館」の数だけを見れば、インターネットの特性上、“いろいろなところ”にある必要はないので、それほど多くの電子書籍サイトができるとは考えられない。

 また、「複製がしやすい」、「様々な媒体で読める」など特徴も、“扱いやすさ”と“著作権”の間で常に揺れているように思える。この点は非常に難しく、どちらに比重を置くかは様々な意見があるが、反比例するものであることに疑いはない。

 

 

4.電子書籍実践編

 

 百聞は一見に如かず、ということで、実際に電子書籍を利用してみることにする。ここでは、最も一般的であろう、インターネットからダウンロードしてパソコンで読む方法を試す。

 電子書籍を扱っているサイトは、電子文庫パブリ(http://www.paburi.com/paburi/)、電子書店パピレス(http://www.papy.co.jp/)などいくつかあるが、今回は無料で利用できる青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)を覗いてみる。見たい本(ここで、「本」という表現を使うことに若干の違和感を覚えた。が、それが一番適切な言い方だろう)が見つかったら、クリックし、ダウンロードする(圧縮してあるので解凍する必要がある)。フォーマット(記録形式)はhtml形式(ホームページの形式)とテキスト形式(最も基本的な文書形式)があるので、ワードやwebブラウザ、メモ帳等を使って読むのもいいが、電子書籍用の独自のテキスト・ビューアーがいくつもある。これらを使えば、ページ設定や検索など、より快適な読書環境が得られる。ものによっては、実際の本のようなアニメーションが表示され、「次のページ」をクリックするごとに、そのページがめくれ、“ペラッ、ペラッ”と音が鳴るものもある。これで、先ほど挙げた「質感がない」という欠点をある程度克服することができる。次に、窓の杜( http://www.forest.impress.co.jp/ )というオンラインソフトを扱うサイトで、青空文庫用のテキストビューアを入手する。トップから、オフィス→文書ビューアと進み、「smoopy」というソフトを選び、ダウンロードする。このソフトは文書を縦書きで表示してくれる。

( http://www.forest.impress.co.jp/lib/offc/print/docviewer/smoopy.html )

 圧縮ファイルなので、同じく窓の杜で解凍ソフトを取得し、解凍する。ソフトを起動し、先ほどの文書ファイルを開く。

 思ったよりも見やすくて、扱いやすい。これなら利用する価値はありそうだ。さすがに“おお、これは画期的!”とは感じなかったが、考えてもみれば私はすでに日々、電子辞書の恩恵にあずかっている。

 

 

5.電子書籍の将来

 

 電子書籍は、まだまだその市場規模は小さく、欠点もあるが、それらはいずれも、電子書籍がまだ登場して間もないということに起因するものである。扱いづらいという欠点は、技術が進歩すれば克服されるだろうし、利用者が増えれば作品も増える。“紙の本のほうがいい”という主観的な感覚も、デジタル化が進み、電子文書に触れる機会が増えれば徐々に変化していくものだ。情報化社会の発展とともに、電子書籍が今後ますます普及していくことは確実だ。紙の書籍に対する愛着は大切にしていきたいが、同時に、情報化の流れに乗るという意味で、電子書籍に積極的に触れていくのもいいかもしれない。

 

参考HP

 

全体を通して、

 

電子書籍という潮流( http://www.renya.com/textware/textware.htm )

e-book Japan( http://www.ebj.gr.jp/index3.html )

 

長所・短所に関して、

 

行政学(中村祐司)研究室・中村祐司「大学の講義・レポート作成におけるインターネット情報利用の功罪」

( http://gyosei.mine.utsunomiya-u.ac.jp/since2001koki/shoki03/shokikanseireport/030709nakamuray.htm )

 

実践編において、

 

青空文庫( http://www.aozora.gr.jp/

電子文庫パブリ(http://www.paburi.com/paburi/

電子書店パピレス(http://www.papy.co.jp/

窓の杜( http://www.forest.impress.co.jp/

 

デジタル用語はここで、

 

IT用語辞典e-words http://e-words.jp/