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「動物園改革にみる旭山動物園の挑戦」

長田智子(宇都宮大学国際学部国際文化学科3年)

 

1.はじめに

 

昨年、動物園に久しぶりに出掛けた。振り返って見ると小学校の遠足以来だったが、

あまりの人の少なさに驚いた。動物園はこんなに人気がなかったのだろうか。

大小合わせて100を超える動物園があると言われる動物園大国日本。

その動物園がいま深刻な問題を抱えている。

それは最近の集客数の激減で、収入は低下し全国各地で、動物園が相次いで閉園するなか、北海道旭川市の旭山動物園はここ数年来、集客数を伸ばし国内や海外の動物園関係者から注目されている。

なぜこれほどまでに、日本最北の動物園が注目されているのか。

 

 

2.旭山動物園の過去と現在

 

1967年、旭川市郊外に開園した旭川市営旭山動物園は、2003年度過去最高の823896人の集客数を記録し、全国で上野動物園に次いで、2位となった。

ちなみに、旭川市の人口は36万人で、動物園としては日本最北端に位置する。

このことが話題となり、国内はもとより海外からも注目されるようになった。

しかし、過去には、経営危機が幾度となく訪れた。

少子化が進んだことで、1983年度の597千人をピークに減り始め、1997年には過去最低の28万人割れ寸前まで落ち込み、経営困難が深刻化、閉園の話が市議会で話し合われるほどだった。

特に1994年度は、飼育中のゴリラが寄生虫による病気で死亡。

途中閉園となり入園者は激減、修学旅行客も次第に、足を遠のけて行った。

 

 

3.新しい試み

 

「動物のショーに頼るのでなく、動物本来の魅力を引き出す。」と言う方針のもと、

動物園の、そして動物の人気を復活させる為に旭山動物園が考えたのは、

「まず動物が楽しく、のびのび過ごせる施設を作る。次は観客がどこから見たら一番楽しいか考える」獣医でもある小菅正夫園長はこうしたユニークな施設の狙いを原点としている。動物本位の考えで施設を造ると、動物側にも余裕ができ来場者に自然の姿を見せることができる。

例えば、オリの奥行きを浅くすると観客と動物の距離は縮まるが、動物は物陰に隠れてしまう。逆に奥行きが深いと、いつでも後ろに逃げられる安心感から観客近くまで出てくるという。

このような、本来の動物が持つ性質をうまく生かし、動物たちの生活を豊かにしようという試みだった。動物の生態や特徴を見せる展示方法を思案、ただ動物を眺める今までの古い動物園のあり方から、方向性を変えて動物と人間の距離感を狭め、より身近に感じてもらえるような設定を試みた。

 

 

4.斬新な展示方法

 

代表的な例をいくつか紹介

 

オランウータン舎の場合

樹上生活に適していて地面を歩いて移動するよりも、木の枝を伝って移動をする習性を生かし、隣接する二つの施設(普段の生活スペースと遊び場スペース)に、

それぞれ高さ十数メートルの鉄柱を立て、長さ十三メートルの鉄棒でつないでいる。

公園にあるうんていを巨大化したもの。この鉄棒伝って一日数回、二つの施設を行き来する。入場者は真下からさえぎる物なしにオランウータンを見上げることができる。

 

ペンギン館の場合

飛べない鳥でも、水の中では飛ぶように泳いでいる。

ペンギンプール内には巨大なアクリルトンネル通路が作られ、ちょうどペンギンが泳ぐその真っ只中を自分も散歩しているような気分にさせてもらえる展示方法。

ペンギンの水中での様子を観察できるように、ガラス張りにした水槽展示は珍しくないが、全周アクリル通路というのは全国でもここだけ。

またペンギンは、冬季限定の園門よりペンギン館まで20分かけての散歩も名物のひとつにしている。

 

猛獣館の場合

(アムールトラ、ライオン、クロヒョウ、ユキヒョウなど)高い木などの上でくつろぐ習性を生かし、檻の一部がえぐれた形になっていて、そこから頭上に寝そべるユキヒョウの腹を近くで見ることもできる。

 

北極グマ館の場合

地面には、透明の円状のアクリル板が埋め込まれており、くまの足元にまで近寄れる。また、水中を泳ぐクマと向かい合い観察できる水族館のようにして見るという類のない方法。

 

アザラシ館の場合

強化ガラスの円柱状のパイプが見学通路を貫き、その中を通り抜けるアザラシの行き来を360度から見ることができる。

 

 

5.これからの動物園の展望

 

国内外の動物園関係者の感心度は高い。上野動物園などは、これまでに数カ所の旭山動物園の設計図を取り寄せており、石川県の石川動物園は、オラウータンの舎建設に向け

視察、台湾の動物園関係者は技術協力を求めてきた。米国では猛獣館の類似施設建設を検討する動きがあり、今年は海外の動物園関係者の来日予定もあるということだ。

旭山動物園のユニークで、斬新な改革は動物園の新しいかたちを作り上げることに成功したと言って良いだろう。

そしてもうひとつ、教育的機関としての新たな活動も本格的に始まった。目的のひとつとして、子供同様大人にも、身近な自然についての興味を持たせ、人間と自然との関りに目を向けさせること、そして情報提供。

この狙いとは、遠くのアフリカ各地の絶滅に瀕した動物の保護も大切だが、まず自分たちの足元から何か出来る事はないかということであり、今後、動物園の果たす役割は大きく、期待されていると思われる。

日本最北の動物園から始まった改革は、これから国内、そして海外にもますます影響を与えるであろう。

日本から発信する動物園改革からしばらくは目が離せない。

 

《参考サイト》

旭山動物園ホームページ    動物園の情報満載

http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/asahiyamazoo/index.html

東京動物園ネット  

http://www.tokyo-zoo.net/

宇都宮動物園

http://www.utsunmiya-zoo.com/