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「地域の国際化〜青森県八戸市〜」

                大橋 裕子(国際学部 国際文化学科3年)

 

 

1.             はじめに

 

近年、「国際化」が急速に進んでいる。“いなか”というイメージの強い青森県もその進展には著しい。八戸市の例を挙げると、市民のパスポート申請件数は平成3年度に4,947件だったものが平成11年度には5,447件と10.1%も増加している。外国人登録者数についても、平成3年末の731人から平成12年末には784人と7.3%増加している。このような中、姉妹・友好提携による交流の拡大や、国際感覚豊かな人材の育成など市民の国際交流活動、そして国際化への意識改革への期待がますます高まっている。

 

 

2.             国際化推進の理念と基本的考え方(青森県)

 

 理念:急速に発展する「国際化」流れを積極的に捉え、確固たる視点として有することが、県勢の発展にとって重要かつ意義深いことと考える。自然・独自の文化・風土など優れた素材を有する青森県においては、世界に誇りうる文化観光立県の可能性を展望することができる。

 この理念の下、県は基本的考え方として@世界平和への貢献、A国際感覚豊かな人材の育成、B地域経済の新たな可能性の追求、C“青森文化”の一層の深化、D分散型社会システムにおけるチャレンジを挙げている。

http://www.net.pref.aomori.jp/~seisaku2/link/database/1026/chap/15.html 青森県国際化推進プラン)

 

 

3.             八戸市−フェデラルウェイ市との提携

 

 八戸市は平成5年8月1日、米国ワシントン州に位置するフェデラルウェイ市と姉妹都市提携を結んだ。(http://www.pref.aomori.jp/kokusai/data/gaiyou/140kennai2a.htm 姉妹・友好提携の概要2)

 

 経緯:平成2年9月に組織した「八戸市国際交流のまち推進協議会」において、姉妹都市候補地の討議を重ねる中、平成4年4月に八戸商工会議所と以前から交流のあったタコマ・ピアース郡商業会議所を通じて、タコマ市長より隣接のフェデラルウェイ市を紹介され、両市の相互訪問により姉妹都市提携の意志を確認した。

 

 提携以来、両市は教育・文化・経済面で交流を重ねてきた。毎年八戸市の中学生がフェ市を訪問、ホームステイをしているほか、フェ市の二つの高校の生徒たちが毎年八戸市を訪れ、ホームステイし、三社大祭に参加している。フェ市の高校では、選択科目に日本語があり、市内の3校合わせて300人以上が学んでいる。授業では必ず八戸の歴史や文化、産業などを調べる。フェデラルウェイ校の日本語教師コーブルさんは「八戸は東京、京都の次に有名な都市」という。また、フェ市の教育関係者が研究のために八戸の小・中学校の授業を参観しているほか、八戸からはPTAの一行がフェ市を訪問し、教育関係者と意見を交換している。

 

 「国際化意識調査」において、今後進めるべき国際交流分野として“文化”を挙げた人が最も多いという。八戸市には、“えんぶり”とよばれる、米の豊作を願って毎年小正月の時季に行われる郷土芸能(http://machi.hi-net.ne.jp/enburi/ 八戸えんぶり)と、毎年8月に20台以上もの豪壮な山車が子供たちの手によって引かれ、市内を練り歩く“三社大祭”とよばれる祭り(http://www005.upp.so-net.ne.jp/progweb/ はちのへ三社大祭)がある。フェ市で開催されるファミリーフェスタに、毎年八戸市民が参加している。そこで八戸ブースを設け、写真パネル展、民芸品などを展示し、八戸文化の紹介を行っている。また、近年では市内の国際交流団体がえんぶりの公演を行っている。(ファミリーフェスタ訪問記   http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Forest/2856/FWay/fw5.html )姉妹都市提携10周年の平成15年度には、高校野球親善試合が八戸市で行われ、フェ市選抜の高校生選手一行と八戸光星学院野球部が熱戦を繰り広げた。このような交流に加え、八戸市の福祉施設経営者が長期にわたってフェ市に滞在し、現地の施設を視察研究し、自らの施設経営に役立てるなど、交流の分野は福祉にも及んでいる。

 

 両市は経済面でもしっかり結びついている。八戸市とフェ市には“港”という大きな共通点があるのだ。八戸港は平成8年3月に輸入促進地域(FAZ)として国の指定を受け、「本州において北米に一番近い港」として船の大型化やコンテナ化に対応した港湾施設の整備が進められている。また、平成7年には北米貨物航路の重要港湾であるタコマ市と経済貿易協定を結んでいる。一方、フェ市は南は重要港湾タコマ市、北は周辺最大の都市であるシアトル市と隣接している。フェデラルウェイ(Federal Way 連邦の道)の名が意味するとおり、タコマ−シアトルをつなぐ主要な道路が通っており、八戸−タコマ間の経済貿易協定の仲介となった。近年は、国際輸入業務に市を挙げて取り組むなど州の中でも成長著しい都市として注目されている。

 

 

4.             おわりに

 

 このように、姉妹都市提携を結ぶことは地域の国際化の主要方法だと考えられる。さらに、八戸市−フェデラルウェイ市の提携から見られるように、その地域に見合った地域と提携を結ぶことは国際化のためのよき人材を育成し、互いの文化を理解し合えるだけでなく、その地域自体の大きな発展にもつながることだと言える。しかし、地域の国際化を考えていく上で何より忘れてはならないことは、市民に“きっかけ”をつくってあげることだ。遠い知らない国、自分とは別の世界の人などというイメージを破り、少しでも親近感を与え、知ろうという興味を起こさせる。そのためには、たった一度のふれあいでもいい。市同士が友達となることで、中に暮らす市民同士も友達となる“きっかけ”をもつことができるのだ。そのような視点からも、八戸市の姉妹都市交流は地域の国際化への成功の道を辿っているといえよう。