ogawaf040630

「高齢者の余暇を考える」

小川房子(宇都宮大学国際学部国際文化学科3年)

 

はじめに

 

私は団塊の世代。高齢者とは65歳以上とされているから、まだ少し間はあるものの新聞その他のメディアで昨今高齢者の話題がストレートに視野に入るようになった。我々ベビーブーマーの世代がそろって高齢者になる約10年後、日本はどのような社会になっているのだろうか。国際連合の分類では65歳以上人口の比率が7%を超えた社会を「高齢化(aging)社会」といい、14%を越えた社会を「高齢(aged)社会」という。我が国は平成6年に既に14%に達し、平成37年には28.7%になると予想されている。また昭和22年に男子50.06歳、女子53.96歳であった平均寿命は平成14年には男子78.32歳、女子85.23歳と大幅に伸び、人生50年時代から人生80年時代になった。100歳以上の長寿者も年々増加してきており、平成15年には全国で2561人(男子3159人、女子17402人)となっており、昭和38年の153人に比べるとこの40年の間に実に130倍以上の伸びとなっている。このような状況からますます高齢者の割合が高くなる社会で、高齢者が生きがいをもって人間らしく生きていくには、余暇が重要な鍵を握るのではないか。仕事を持たない高齢者にとっての余暇とは何か、またこれからの高齢者にとっての余暇の価値や意義、それらを自分の問題として探っていきたい。

 

 

1.世代別余暇についての意識調査

 

60代以上に限って読売新聞社世論調査図1を見ると、余暇生活への満足度は70%を超えており、現在の高齢者もまずまずの余暇を送っているようにみえる。しかし図5からは高齢者の余暇活動は、「テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などを見て過ごした」が多い。ライフ生きがいプラン調査では男性、女性共に「園芸、庭いじり」が多く、その他ドライブ、演劇鑑賞等、積極的に楽しんでいる様子が浮かんでくる。しかし生きがいにつながるような余暇活動や社会参加、ライフワークなどは見えてこない。それらは従来型の余暇といえる。図3から余暇生活に足りないものはやはり若い世代に比べて圧倒的に「お金」という結果がうかがえる。それは予想通りだが、将来の年金額の引き下げや支給時期の先延ばしを考えるとこれからの高齢者にとって、益々深刻な問題になることが考えられる。しかし現状では他の世代同様ふところ具合に見合った余暇を楽しみ、それなりの満足感を得ているようだ。

余暇に対する意識の変化 http://www.ojo.ne.jp/ojo/02number/200109/09data.html

毎月平均の余暇支出額  http://www.ojo.ne.jp/ojo/02number/200109/exel/0902.xls

ライフプラン生きがい余暇  http://www.biwa.ne.jp/~and/yoka.htm

 

 

2. 高齢者向け余暇の提案

 

これは岩手県在住の佐藤氏(団塊の世代)が自ら考え出した、自分たち世代の余暇のありかたの提案であり、具体的には「余暇センター」なるものの設立である。将来は青年が激減するという観点から、現在各地にある「青年の家」を改良し、安い料金で寝泊りができる宿泊施設にしようというものである。そこは安い年金を使っての全国旅行に高齢者が利用でき、療養型の病院も付属させるという。自然や季節感を味わいながら余暇を楽しむ病院というコンセプトらしい。さらに面白い試みとしては、センターに地域色を生かした工房を設けるという点で、それは研修組織ではなく利益をあげる事業であり余暇で仕事をする場を作ろうとすることらしい。今まで余暇といえば旅行やスポーツ、パチンコやギャンブル等の消費行動との認識があったが、これからの高齢者の余暇はライフワーク的な仕事をすることも考えられるという。確かに今までの経験や趣味を発展させた仕事は楽しい「遊び」になり得ると思う。そしていくらかでも収益が上がれば生きがいにもなり、一石二鳥になるのではないか。(要約)

余暇センターのすすめ http://qol.soc.or.jp/mem/s004.html

 

 

おわりに

 

年金改正法案が国会を通過し、高齢者にとって余暇・レジャーに費やすお金はますます厳しくなってくる見通しだ。今後の余暇への取り組み方として従来型のレジャーの延長的消費型余暇活動ではなく、生きがいに通じる生産型余暇活動のあり方が求められる。

 生産型余暇活動とは、これまでのキャリアや趣味を生かし、専門分野を事業に結びつけた活動のことであり、利益をあげることを目的にするが、現役時代の仕事との違いは、あくせく働くのではなく「遊び」の延長としてゆとりを持って取り組む事が大切である。

また、それらの余暇活動を通して人間関係づくりができ、共助・共生の場となり、自己充実・自己啓発・自己実現の場となることも大切である。これからの余暇への取り組み方は、個人単位の余暇活動から、グループ単位の余暇活動を通して、高齢者になっても現役リタイア・隠居という発想を無くし、社会参加をすることにより、生活自体を前向きに捉える原動力にすることが重要であると考える。

 

 

《参考サイト》

長寿高齢社会における公園管理のあり方(高齢者参加と自己実現の場)http://www.prfj.or.jp/pub/pub03.html

日経スペシャル「ガイアの夜明け」シニア大航海時代〜生きがい作りに活路あり〜

http://bb1.tv-tokyo.co.jp/gaia/preview/bk20040309.php?PHPSESSID=adcae59012dc0e0e39cf3c747bf15ce2

財団法人大和市余暇活動推進公社 http://www.yoka.or.jp/logo/index.html