Kumagair040630
「公共プール施設に必要な要素とは」
熊谷利恵(宇都宮大学国際学部国際文化学科3年)
1.公共プール施設が消える
岩手県雫石町に存在する公共施設、つなぎスイミングセンターが、平成16年の営業は休止することを決定した。その理由は
@ 近年入場者の減少が続いており、今後も増加が見込めないこと。
A 施設が老朽化しており、今後多額の施設修繕費が必要となること。
B 近隣に同種の施設が整備され、設置当初の役割は果たしたものと考えられること。
という、岩手県の有識者6名をメンバーとする、つなぎスイミングセンター検討委員会の提言によるものであった。
http://www.pref.iwate.jp/~hp1008/gosyo_park/park_05.htm
このプール施設は屋外プールで、規模も大きかった。
また、同県盛岡市の市屋内プールは2001年の時点で廃止される見通しとなった。岩手日報にはこう書かれている。市側は廃止の理由として「築25年が経過し、老朽化が進み安全性が保証できない。全面改修には6億―7億円が見込まれ、杜陵小改築で市が支出した額の3校分に相当する。教育費の効率的活用の面から総合的に判断した」と説明。さらに市内に公営、民間の屋内プールが増えたことなどから、同プールの果たしてきた先導的役割は終えたとの見解だ。
http://www.iwate-ne.co.jp/kikaku/knews02.html
この二つの事例のように、岩手県では公共プールが消えていっている。
2.けんじワールド
けんじワールドとは、岩手県出身の詩人、童話作家、農芸化学者である宮沢賢治の童話の世界をテーマに造られた東日本最大級の娯楽施設である。プールエリアには、ウォータースライダー、ウォータースライダーを二人乗りの浮輪のような小さなボートで降りるリバーライド、5000人収容の大波が押し寄せる、ボディーボードもできる巨大造波プール、全長300メートルの流れるプールがある。流れるプールには噴水があり、暗くなって雨が降り、雷も鳴る仕掛けがある。
リラックスエリアには、水着のまま入られるジェットバス、寝湯、二つのリラックスバス、水風呂があり、さらに普通のサウナとスチームサウナがある。
また、別料金になるが、温泉もあり、和風・洋風の露天風呂が9種類、室内風呂は12種類となっている。
http://www.kenjiworld.jp/pool/index.html
http://home8.highway.ne.jp/n_j/morioff/kenji.html
3.比較
公共プール施設、ここではつなぎスイミングセンターと、民間企業のけんじワールドを比較してみる。
つなぎスイミングセンター(TSC)は、検討委員会の行なったアンケートによると、TSCで気に入っている、または興味のある施設は?という質問(複数回答あり)で、波の出るプールとスライダープールがそれぞれ32.0%と24.7%という結果であった。けんじワールドにはなくて、TSCにはある施設。それは競泳プールだけであるが、同質問では5.0%という結果に終わった。TSCにはこれらのほかに幼児プールと噴水プールがあるが、それぞれ8.1%、7.7%であり、競泳プールは最も人気がなかった。
次に、TSCがどのような施設になればより利用したいと思うか(複数回答あり)という質問では構成比の高い答えが、屋内プールへの改造(17.3%)、温水プールへの改造(17.7%)であった。
最後の質問では、TSCの今後のあり方について問われていた。その結果、構成比を51.4%占める最も多い回答が、役割は終えたので、廃止というものだった。
これらから推測して、公共施設に限らず、プールはまず屋内、及び温水が好ましいと思われる。屋内は、冷夏の影響を受けず、紫外線を気にする女性客も泳ぐことができ、温水は冬場の集客につながる。また、波の出るプール、ウォータースライダーは人気の持続や話題性を高める効果がある。
しかし、公共のプールで、けんじワールド並みの施設が必要だろうか。公共プールのよい点。それは、安さである。TSCの一般個人の使用料は810円、同一世帯に属する中学校生徒、小学校児童及び幼児を同伴する場合にあっては、730円、学生及び高等学校生徒は580円、中学校生徒及び小学校生徒は350円、4歳未満の者を除く幼児は100円である。対して、けんじワールドはプールの基本料金が中学生以上の大人は2000円、4歳から小学生の小人は1200円であり、土・日・祝日は基本料金プラス400円となる。TSCには、規模は負けるが波の出るプール、ウォータースライダーがあるし、水を温めないから料金を安くすることができる。また、けんじワールドのように、大規模のプール施設は利用者を飽きさせてしまうのではないか。すべての施設を体験したし、人は大勢だし、食べ物は高いし、なにより基本料金が高いからそんなに頻繁には来られない、となってしまう。一過性の話題にあがるが、その後経営難に陥る可能性もある。公共施設の場合、飽きてしまっても、安いからまた行こうという気になる。しかし、TSCは休止してしまった。では、どうすれば公共施設は生き残られるのか。
4.生き残り
公共施設が休止、廃止される理由に挙げられるのは、老朽化である。老朽化は避けられない問題であり、この老朽化を乗り切るには、修復または全面改修が考えられる。もし、全面改修するとなったら、料金は変えないで、屋外施設なら屋内施設に、水は温水にすればいいと思う。屋内及び温水にすることで、たとえ規模が小さくなっても、一年中天気に左右されずに利用できるし、競泳用プールも、屋外では人気がなくても屋内なら年中水泳教室やアクアビクスを開講できる。ウォータースライダーはあった方がいいが、大規模にしなくてもよいと思う。派手で大規模なプール施設を追求するのは、民間に任せ、公共プールは安さと使用頻度を重視していくのが生き残る道ではないだろうか。
参考サイト
http://www.pref.iwate.jp/~hp1008/gosyo_park_05.htm
http://www.iwate-np.co.jp/kikaku/knews02.html
http://www.kenjiworld.jp/pool/index.html
http://home8.highway.ne.jp/n_j/morioff/kenji.html