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「フライトアテンダントのこれからのあり方」

小林令子(宇都宮大学国際学部国際社会学科3年)

 

 私の夢はフライトアテンダントである。幼い頃からの夢で、現在は東京にある専門学校に通っている。一瞬、余暇とフライトアテンダントは全く結びつかないように思えるが、実際は大きく関係している。フライトアテンダントは人々が余暇として旅行をする際のお手伝いをしているからだ。つまり、余暇を与えるという側なのである。ここで簡単にフライトアテンダントの仕事内容を紹介したい。ミールサービスや保安要員以外に、機内の掃除やお客様のお迎えからお見送りまで常に立ち仕事である。国内線の場合、1日に5・6回のフライトがあり、食事もその間の10分で済ませるなど、華やかで素敵なイメージとはかけ離れているようだ。

 

 飛行機に乗るということは、旅行の導入口であり、集大成でもあるという意味で、実は飛行機内のひと時も余暇のひとつであると私は考える。どのような食事が出てくるのか、どのような映画が流れるのか、また、どのようなフライトアテンダントに会えるのかなど、新幹線や電車では味わえない楽しみを感じることができる。また、ポケモンジェットやディズニージェットのようなキャラクタージェットに乗ることも余暇である。機内のシートヘッドカバーや、フライトアテンダントのエプロン、おやつのパッケージまでがキャラクター一色であり、それらに触れるためにキャラクタージェットに乗る人もいる。私自身、偶然ポケモンジェットに乗ったことがあるのだが、まるで自分がアニメの中に飛び込んでしまったかのように、機内生活はとても楽しいものであった。それは、旅先のホテルでも自分の家でもない、飛行機内だけの余暇である。私は楽しかった過去の旅行のことを思い出す時、旅先のことだけでなく、必ずその行き帰りに乗った飛行機のことも一緒に思い出す。ロンドンからスイスに向かう飛行機が離陸直後、墜落しそうになるというハプニングがあったのだが、優しく声をかけ、落ち着かせてくれたフライトアテンダントの姿に惹かれた。また、ロンドンに向かうとき、流星群を見せてくれると言って、特別にコックピットに入れてくれたこともあった。まさに機内生活こそが、楽しい旅行をよりいっそう思い出深く、そしてより楽しいものにしてくれるのだと思う。

 

 そのためのフライトアテンダントの役割はとても大きく、その必要性はこれからの社会において、ますます高くなるだろう。それは必ずしも目に見えるサービスや接客に限ったことではない。何よりも安らぎや暖かさや快適さなどメンタル面のサービスが求められる。平成15年7月の警察統計資料によると「日本全国における自殺者数は32,143人に上っている」という。このことからだけでも、現代社会はメンタルヘルスケアを必要としていることが分かる。一般的にメンタルヘルスケアは心の健康管理を意味しており、生活上の不安や悩みや恐怖、またストレスなどの消失対策として位置づけられている。そこで私は、フライトアテンダントとしてのメンタルヘルスケアを次のように捉え、具体的なケアのあり方を乗客体験から提案してみたい。お客様に快適な機内生活を送っていただくためには、搭乗への不安や恐怖、トラブル等の対策やマニュアル通りのサービスに終わるのではなく、いかにお客様に快適に過ごしていただくかということに、視点を置いた心のサービスが必要であると考える。今まで何度も乱気流に巻き込まれ、怖い思いをしたことがあったが、ほとんど「大変危険ですので、シートベルトをお閉め下さい」とのアナウンスが流されるのみであった。また、あまりの忙しさからなのか、乗客一人ひとりへの対応が雑に感じたこともあった。私たち乗客はこのようなケアやサービスよりも、心のこもったサービスを求めている。調子が悪いときは薬をお渡しすることはもちろん大切だが、それはマニュアル通りの対応・サービスであり、優しい笑顔とそれ以後、特に気にかけてあげる姿勢が大切であるし、その時と状況に応じたケアやサービスが必要なのではないだろうか。また、子供が機内で騒いでいてもただ注意をするのではなく、子供の視線に合わせてお話をしたり、機内を少し案内したりするなどの気配りと心のサービスをするべきであると思う。

 

これからの国際社会において、今以上に国内外問わずますます多くの人が飛行機を利用するようになるだろう。そしてそのお客様は人種、年齢、性別はもちろんのこと、人それぞれであり、一人ひとりが違った考えやフライトアテンダントに求めるものをお持ちである。そのお客様それぞれにいかに快適に機内生活を送っていただくことができるかを、お客様の立場に立って考え、そしてマニュアル通りのサービスだけではなく、もっと大事な心のサービスをすることこそがこれからのフライトアテンダントのあるべき姿である。そしてお客様に余暇として楽しく機内生活を送っていただくために、まずは何よりも自分が楽しみ、そして輝いていなければならない。作り笑顔ではなく心の奥底からあふれ出る笑顔で。