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「河童のまち~銚子・牛久・色麻・遠野~」

円田真紀子(国際学部国際文化学科3年)

 

 はじめに

 

 河童は日本人なら誰でも知っている妖怪である。頭に皿、背に甲羅、くちばし、きゅうりが好物など、その風貌にはどこか愛敬があり、熱烈な愛好家も多い。架空上の生き物である河童は、しかし全国各地に民話や言い伝えが残っている。そんな町々では「河童のふるさと」を自称し、河童を資源として様々な観光活動や、地域作りを行っている。そこで本稿では、河童を観光の、あるいは地域作りのテーマとして掲げるまちの中から、千葉県銚子市、茨城県牛久市、宮城県色麻市、岩手県遠野市を取り上げて紹介する。そして、現代社会に現われる河童の可能性について考える。

 

河童のまち

 

千葉県銚子市

「かっぱも住める水環境のまちづくり」

 大内かっぱハウス

元銚子市長の大内恭平氏の河童コレクション4千点以上が収納される博物館。

母子かっぱの銅像

銚子には昔、大新河岸(だいしんかし)という船着場に母子かっぱが住んでいて、人びとを水難から守ったといわれる。かっぱはきれいな水にしか住まないということから、人とかっぱとが共生できる水環境のまちづくりと、銚子のまちおこしを祈念して、平成七年、銚子駅前に母子かっぱの銅像が建てられた。

川びたりの風習

 昔この地域で行われていた風習で、平成11年に復活した。子供のおしりを川につけ水難のないことを願い、あんのついた餅を利根川にまく。現代では水環境の保護のため、餅をまくのをやめ、参加者に配ることになった。その後、提灯行列とかっぱ供養が行われ、水資源の大切さを参加者に訴えている。

 

茨城県牛久市

「水と緑と潤いの街」

 河童松

 その昔いたずらをしたかっぱを縛りつけたといわれる松の木。牛久沼に住んでいた河童が、畑のきゅうりを盗んだり、子供を溺れさせたりして住民に迷惑をかけた。そこで村一番の水泳名人、彦衛門が河童退治に乗り出した。まもなく河童は捕らえられ、陸の松の木に縛り上げられた。三日三晩さらしものにされた河童は頭の皿も乾き、すっかりまいってしまった。河童は村人に許しを請い、二度と悪さはしないと誓って沼に帰っていった。それ以来、河童はいたずらをやめ、さらに沼の周辺の葦を刈るようになり、村人を喜ばせた。村人はお礼として餅をつき小さくまるめて沼や川になげこみ、水の安全を祈った。

 小川芋銭記念館

 河童をこよなく愛し、数多くの河童絵を残した画家小川芋銭の記念館。もとは芋銭が晩年新築した画室兼居室。松や竹林に囲まれ、河童が住むといわれる牛久沼を見下ろすことができる。

 うしくかっぱ祭

 毎年7月の最終土日曜日に開催される盛大な祭り。市民総出の河童ばやし、「ヤッペヤッペ」のはやし言葉に合わせて踊る様は壮観である。市外からの見物客もたくさん押し寄せ、大変な賑わいを見せる。飛び入り参加も自由で、祭りの気分を満喫できる。

 

宮城県色麻町

「かっぱのふるさと色麻町」

 磯良神社(おかっぱさま)

神官は、代々「川童」の姓を名乗っている。また、全国で唯一木彫りの河童をご神体として祀っていて、安産、縁結び、水難よけの神様として信仰を集めている。

 約1200年前に東右衛門という男が、坂上田村麻呂東征の際、水先案内を努め、河童(かっぱ)のような泳ぎで、激流の川(河童川)を泳ぎ、数々の功績を立てたといわれている。この功績により、東右衛門は将軍田村麻呂から、「川童(かっぱ)」の姓と土地を与えられ、さらに彼の没後、かっぱ(河童)明神の祠を建てて、その功績を祭ったと云われている。

 かっぱのふるさと祭

 毎年8月に行われる、力持ち、元気、いたずら好きなどのユニークなキャラクターがある、河童にあやかり明るく、元気に、夏の一日を町民あげて楽しもうという夏の一大イベント。かっぱの皿投げ大会や、かっぱブギ色麻大踊りなどが行われる。

 河童のカッペイ君 

 色麻町の「かっぱ伝説」をもとに生まれたキャラクター。ユニ-クで夢とロマンにあふれた足腰の強い町づくりのシンボルとして期待される。名前は全国から募集した結果、「活力と平和=活平(カッペイ)君」に決定した。
 昭和 61年に「色麻町の長男」として生まれ、イメ-ジキャラクタ-として町おこしの先頭で大活躍している。

 色麻の河童特産品

 河童酒

 ユニークな河童の器に入った地酒。味わいも良く、置物にも最適。

 かっぱの夢味

 繊維たっぷり洋野菜のヘルシーなルバーブジャム。おだやかな甘味とすっきりした酸味のブラックベリージャム。共においしさ新発見です

 

岩手県遠野市

「自然と伝統が生きづく民話の里」

 遠野物語

 民俗学の祖、柳田国男氏がその著『遠野物語』の中で河童の伝承を収集している。河童の子を身ごもった娘の話。川岸の砂の上に残る河童の足跡の話。河童の駒曳きの話など。そのことから、遠野には河童のふるさとというイメージが定着している。また、他の地方では河童の顔は青いけれど、遠野の河童の顔は赤いという。

 遠野のまちは河童だらけ

 民話の中だけでなく、現在の遠野のまち中も河童であふれている。JR遠野駅舎の屋根に始まり、商店街のアーチ、公衆トイレ、神社のこま犬、交番まで。これらを見て回るのも面白い。

 猿ヶ石川

 遠野物語に、「川には河童多く住めり。猿ヶ石川殊に多し」と書かれている川。

 カッパ淵

 馬を川に引き込むいたずらに失敗した河童は、お詫びをして許され、母と子の守り神となった。あるお寺の火事のさいは、頭の皿から水を吹き出して消し止め、今でも一対のカッパ狛犬として境内にその姿を留めている。

 

 おわりに

 河童のまちはここで紹介しただけにとどまらず、「河童連邦共和国」や「全国かっぱ村」なる組織もあり、全国各地に存在する。これらのまちには、河童の伝承が残っていて、今でも河童が住んでいるとされる川や沼がある。そんな河童を資源とした観光活動は、全国の河童ファンを呼び寄せ、河童ファンでなくてもたのしめるお祭りなどを開催して、まちを景気づけている。また、河童をまちのシンボルとして大切にすることは、かつての水神信仰につながっている。もはや日本には湯水のように使える水はない。河童のふるさとを名乗ることで、各自治体が水辺環境の保全に力を入れることを期待したい。

 

 参考資料

『河童@わ~るど』2004,6,29

http://www.albsasa.com/sub03.html

『銚子河童伝説』2004,6,29

http://www.choshikanko.com/tokusyu/kappa/

『色麻町 かっぱのふるさと色麻町』 色麻町役場企画商工課 2004,6,29

http://www.870miyagi.com/kankou/444/

『河童の系譜』安藤操・清野文男 1993,9 五月書房