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余暇政策論レポート 

「市町村合併によって観光地はどのような影響があるか」

兵庫県城崎温泉〜

                    

  水粉孝慎 (国際学部国際社会学科)

 

1.城崎温泉の紹介

 城崎温泉は、兵庫県北部にある温泉地である。城崎温泉はかつて明治の文豪が多く訪れたことで知られている。たとえば、志賀直哉を始め、有島武郎、島崎藤村、斎藤茂吉、与謝野晶子・鉄幹夫妻、近年では司馬遼太郎や、余談ではあるが、「だから、あなたも生きぬいて」の大ヒットで知られる弁護士の大平光代氏が、城崎温泉で女将修行をしていたことで有名である。その中でも、志賀直哉の作品「城の崎にて」はあまりにも有名であり、高校の教科書にも採用されるほどの名作となっている。

 城崎温泉の名物は、町内にある7つの「外湯」を回る「外湯めぐり」で、朝から町内には旅館で貸し出してくれる下駄の音が鳴り響く。温泉めぐりのほかにも、夏は海水浴、冬はカニ料理を目当てに観光客が老若男女問わず一年を通して多く来訪する。

 

2.城崎町の紹介

 城崎町兵庫県北東部、人口4400人(年々減少傾向)、面積31.19平方キロメートルほどの小さな町で、主な産業は旅館業などの観光と水産業である。町の半分が山陰海岸国立公園に指定されており、自然豊かでのどかな風景のある町である。

 

3.北但合併協議会の紹介

北但合併協議会は、平成11年に改正された市町村合併特例法により、城崎町を取り巻く1市5町(豊岡市城崎町日高町但東町出石町竹野町)の間に成立した協議会である。これらの市町は平成17年3月22日に合併することが決まっている。

合併となる中心市の「豊岡市」は、人口〜〜人の県北中心の市である。有名なものはかばん生産で、国内生産のシェアの8割を同市が占めている。また、こどもを運んでくることで有名なコウノトリも、現在、国内では豊岡市でしか見ることができない。

 

4.合併による城崎町への影響

 上でも説明したとおり、城崎町豊岡市に吸収合併され、新市名は「豊岡市」になることが決定している。町名消失ということは、城崎町にとって少なからず影響するであろう。

 まず、一点目に、町名と観光地名の統一化がなされずに、イメージが揺らいでしまうということだ。吸収合併されてしまうことで、豊岡市の中の城崎温泉という位置づけになってしまう。いままで町を挙げて、城崎温泉を宣伝していたものが、今度からは豊岡市の数ある観光地の中の「城崎温泉」ということになってしまう。たとえば身近な例で考えると、栃木県の北西部では、日光市今市市など、2市2町1村の市町村合併が行われるが、もし、その新市名が「日光市」でなく「今市市」となったらどうなるであろうか。「今市市の中の日光」となってしまったのでは、やはり印象が違うのではないか。新市ではどのような広報活動がなされるかは不明ではあるが、少なくとも行政からみた城崎の広報という面ではマイナスになるといわざるを得ない。

 

 第二点に、温泉観光に割り振られる予算が減少する可能性があるということだ。今回合併特例法によって、普通交付税の交付が全額保証されているのはあくまで合併後10年間に過ぎない。つまり、新市に対して支払われる交付税の額は10年後を境に、実質減少することとなる。肥大化する行政のもとで、どのように財源を確保し、いかに温泉観光業に予算を配分していくかが問題となる。城崎温泉が、新豊岡市にとってかなりの財源となることはいうまでもない。そこで得た収入をいかにまた城崎温泉に還元していくか。そこが重要となる。

 また、特例法のアメの部分である合併特例債をどのように使うかも大きな問題となってくる。合併特例債というのは、新市建設計画に基づく事業に対して、10年間にわたり地方債を発行できるというものだ。新市まちづくりのための建設事業に対する債権の70%を国からの普通交付税が負担してくれるというものである。

 ということは、つまり、債権のうち単純計算で30%は新市の新たな借金ということになってしまうのである。新豊岡市でもし、満額の合併特例債を発行した場合に、493億円も債権を発行することができる。そのうち、国が70%を負担するとしても、新市には約192億円もの借金が残ってしまう。この額は豊岡市一年分の歳入に匹敵するほどの大きいものである。これを返済するあてはあるのであろうか。

 また、そのような財政負担のなか、観光行政にいったいどのくらい予算が割り振られるのか不明である。

 

5.まとめ

 肥大化する行政の中で、観光産業は生き残ることができるのであろうか。合併によって叫ばれているデメリット面として、各地域の歴史、文化、伝統が失われてしまうのではないか、というものがある。没歴史、文化、伝統というのは、観光産業にとって致命的である。そのような環境のなか、行政がどのような観光政策を取るのか非常に興味のある問題である。

 今回は否定的な面のみから例を二つ挙げて説明した。しかし、肯定的な立場から考察することも必要であることはいうまでもない。次回もし機会があるならば、こう定期な面からの考察も加えていきたいと思う。

 

参考サイト

城崎町HP http://www.town.kinosaki.hyogo.jp/

豊岡市HP http://www.city.toyooka.hyogo.jp/ 

竹野町HP http://www.town.takeno.hyogo.jp/

但東町HP http://www.town.tanto.hyogo.jp/

日高町HP http://www.town-hidaka.com/

出石町HP http://www8.ocn.ne.jp/~izushi/

北但合併協議会HP http://www.hokutan.net/new_index.html

総務省市町村合併相談コーナー http://www.soumu.go.jp/gapei/index.html