moriguchi020703 「余暇政策論」レポート
「アフリカサッカーの現状とこれから」 k000152 森口治奈
はじめに
私は2002年ワールドカップにアフリカから出場した国々のチーム紹介を読んで、初めてアフリカ国のサッカー選手はサッカー協会の待遇や環境の悪い中でプレーしなければいけないということを知った。アフリカチームの中でも経済的に貧しい国が、多くの問題を抱えながらサッカーをしている。日本やヨーロッパでは考えられないようなひどい待遇の中、試合をしなければいけない選手はとても大変である。「アフリカ病」といわれる金銭トラブルなど組織の国内にある問題の現状を、2002年ワールドカップに参加したアフリカの国々(セネガル、カメルーン、ナイジェリア、南アフリカ、チュニジア)の中で、経済的に貧しいセネガル、カメルーン、ナイジェリアで見ていきたいと思う。
「アフリカ病」の現状
ナイジェリアは、GDPが約432億ドルである。アフリカ最大の産油国だが、長年の悪政のため金銭トラブルが絶えない。サッカー協会は、2002年のワールドカップ大会予選において選手への出場給や勝利給を払わず、アウェー戦での移動に必要な選手用のバスも用意しなかった。オランド人の監督のボンフレーレ監督には、数か月分の給料を払っていなかった。これでは選手のモチベーションが下がるし、代表選手がほとんど海外のチームに所属しているため、このような待遇下においてワールドカップというとても大切な大会の予選であっても、ボイコットを表明した主力選手が5人もいた。今回のワールドカップ代表選手は、17人がヨーロッパ、3人がアジア、3人がナイジェリアの各チームへ所属している。サッカー協会の幹部はエリート揃いで彼らからしてみれば、自分たちをはるかに上回る収入をサッカーの実力で勝ち取っている成り上がりの選手たちが気に入らないようだ。そして協会の内情を知った政府がやっと選手に待遇の改善を約束した。しかし、航空運賃の負担額をめぐって政府と選手団は対立したこともある。
カメルーンは、GDPが88億ドルである。カメルーンも、サッカー協会の選手への勝利給や旅費の未払いといった金銭トラブルを抱えている。前回のワールドカップフランス大会においては、カメルーンの選手は試合開始直前まで協会との金銭交渉を行っていた。事態を見かねたFIFAは、その後、カメルーンサッカー協会に介入し財政管理を引き受けた。そのことで少しずつではあるが選手が、試合に集中できる環境が整いつつある。しかし、全員が海外のトップクラスで活躍している代表選手たちにとってはまだまだ問題が多い。今回のワールドカップ代表選手は、22人がヨーロッパ、1人がアジアの各チームへ所属している。昨年のアフリカ・ネーションズカップにおいて、待遇を良くしてくれるよう選手がサッカー協会へお願いに行った。具体的な環境の改善策のひとつとして、アウェー戦の移動のために乗り換えのないチャーター機を用意してほしいということをお願いした。すると軍の戦闘機を用意されたため、機内は狭く、座席はないため床に座って移動の何時間かをじっと窮屈な状態でいなければならなかった。しかも機内食はパンがひとつでただけであった。移動先についてもホテルが住民たちにばれてしまい大歓迎を受けたのだけれど、ホテルの敷地内でそれが一日中続いて選手たちはゆっくり休むことができなかった。さらに食事の配達遅れ、パンだけであるということで選手たちは、試合どころではなかったと思う。そのような環境に選手がおかれていることを知った大統領が食事の改善を命じ、選手たちはなんとか試合へのモチベーションをあげることができ、優勝することができた。まだまだ環境が改善されなければいけない点は、たくさん残っている。
セネガルは、GDPが約48億ドルである。サッカー協会は、国家予算でまかなわれている。しかし財政難であるために86年にエジプトでアフリカ・ネーションズカップが行われたときには、遠征費がやりくりできず国民の募金で出場を果たしたこともあった。今回のワールドカップ予選でも、移動日は自費で勝利給も約束していた額を大幅に下回った。そのため2001年1月には代表選手が試合のボイコットをちらつかせるトラブルも生じた。今回のワールドカップ代表選手は、21人がフランス、1人がモロッコ、1人がセネガルの各チームに所属している。代表監督を務めるフランス人のメツ監督は、フランス組みを積極的に起用するというチームの強化以外にも協会の組織改革に着手していて、問題の改善に努めている。協会は、試合の放映権や代表選手のCM出演料などをめぐり、スポーツ代理店と初めて契約を結び多額の金額をえられるようになった。7月に初めてワールドカップへの出場を決めたときには、大統領は各選手へ約180万円という国民の年収の10倍にあたる額の褒賞金を贈った。国民栄誉賞も与え、「自宅の新築費用も喜んで出す」と伝えた。そしてワールドカップ出場関連費用として、政府は補正予算案を組んだ。初めてのワールドカップに出場が決まったときでさえ、すごい盛り上がりであったのだから、しかも旧宗主国であり、世界王者であったフランスに勝ったことでの国を挙げてのお祭さわぎはけして大げさではないとおもう。
解決するためには
以上の3カ国を見てきたの中で、一番「アフリカ病」が深刻なのはナイジェリアである。しかし、カメルーンはFIFAが介入によって解決の糸口を見つけたけれど、今回のワールドカップにおいても褒賞金をめぐって選手とサッカー協会がもめたため、日本に来るのが遅れた。
貧しい国にとって生きていくだけで精一杯である国民が大勢いる中、スポーツにお金をかけるというのは、なかなかできないことなのかもしれない。そして、サッカー環境のよい海外で活躍している選手と、アフリカにいて環境の大切さの分からない協会とのギャップが大きすぎるというのもあると思う。協会は選手から何度も訴えられているのに、なかなか改善せず、ただ勝利だけを強要するだけではいつまで経っても「アフリカ病」はなくならない。
ナイジェリアは、他の二国に比べて豊かな国である。協会の幹部が選手たちを気に入っていないということで、トラブルを生じさせていることは、レベルの低い幹部が多いということである。その中で、国民からの期待に応えなければいけない選手は大変である。選手の意見が反映するようになるまでには、まだまだたくさんの障害があるとおもう。アフリカの国々にとって国民的なスポーツであるサッカーを運営していくのにあたって、国の政治的権力とも絡んでくると思うし、運営するにはお金が必要であるから経済状況が反映されてくる。日本においても、経済面での状況が悪いときにスポーツを運営していくということは、とても大変であるしさまざまな困難がある。ナイジェリアが、今後サッカーを取り巻く環境が改善できるかどうかは、まずサッカー協会の幹部自身が変わるかどうかにかかっていると思う。
この他のアフリカチームにおいても「アフリカ病」を持っているチームは多くある。ガーナもそうである。しかしリベリアはそのようなアフリカ諸国とは少し違って、アメリカ人の監督兼選手のウェアが、資材を投入して遠征費、用具なども負担している。このように個人がスポンサーになって、代表サッカーチームを支えている国もある。
おわりに
世界中のほとんどの国にとってサッカーは、国民的なスポーツであって自分の国の活躍を期待している。貧しい国の人々にとっては、さらにサッカーにかける思いも強いと思う。サッカー選手になれば豊かな暮らしができると子供たちは、がんばって練習する。代表選手たちも国民からの大きな期待に応えようとがんばっている。カメルーン代表のエムボマ選手が「―国民の多くは非常にハードな生活をしている。国民の代表である我々選手が活躍することで国民が少しでも幸せな時間を過ごせるといい―」(http://plaza.rakuten.co.jp/keri1/diaryold/20020305/) と言っているように、国民のために戦いたいと思っている選手がほとんどであると思う。そんな中、やるべきことをちゃんとしてくれない協会のおかげで、試合にのぞむための準備がしっかりできずに実力を発揮できなくなってしまうということは、選手にとってはやりきれない思いになると思う。選手も国民も試合に集中できる環境をアフリカの国々で創っていくことが、選手も国民もサッカー協会も全員の課題である。
<参考サイト>
朝日新聞社のワールドカップについてのホームページ。各国の情報やニュースが詳しく載っていてよい。