都市と農山漁村間の交流とは

2008/12/11発表

4年 石澤諒子

 

はじめに

 

私は、3年生のときオープン科目の授業「都市と農村関係論」という授業を受講しました。

そこで「農」に携わる方のお話を聞いたり、フィールドワークとして新潟の集落に足を運んで以来、そこによく行っており、お祭や収穫祭や田植え、稲刈りを手伝ったりしました。

そこで出会った人や生活によって、ずっと都市で暮らしてきた私は自分の価値観が広がったことを実感しています。

高度経済成長、第1次産業から第2、第3産業へ人が流出し、農村の人は多く都市へと移住し始めました。やがて経済が成熟し、オイルショックが起こり高度経済成長が終わって経済の安定期に入ると、人々は物質的満足よりも、精神的満足を、量より質を求めるようになり、都市住民となり、農村の暮らしとは縁遠くなってしまった人々が、再び農村の相互扶助の関係や、自然、豊かな食などを求めるようになりました。

このように都市・農村の交流は重視されてきてしばらく経った頃、農水省では、「都市と農山漁村の共生・対流」といった施策を打ち出し、子どもの教育、グリーンツーリズム、市民農園、直売所等の事業を積極的に推進しています。

 私は自分の実感として、このような交流は重要であると考えますが、調べていくうちに政府の施策に対して疑問点もいくつか出てきました。

 今回は政府の都市・農村の交流に関する施策のうちの一つを取り上げて、都市と農村の交流について考えたいと思います。

 

今日の発表は、

・都市と農村の交流事業が始まった背景にある都市と農村それぞれの現状

・農林水産省の打ち出す政策

(その一つとして)

・子ども農山漁村交流プロジェクト

   ・概要

   ・問題点

・解決策の提案!

・まとめ

 

という流れです。よろしくお願いします。

 

農村と都市の現状

(1)農村の現状は、過疎化&高齢化

 

農林水産省の調べによると、全国の耕地面積は、下の図のように、年々同じくらいの割合で減っています。

その背景にあるのが、一般的に農村の過疎化、高齢化です。

 

農村には、たくさんの資源や可能性があります。

しかし、高齢化して活気がなくなった地域では若い人は都会へ出て行き、その資源を活用する担い手が深刻に不足しているのです(>_<)

 

(2)都市の現状

高まる都市農村の交流へのニーズ
内閣府が2005年に「都市と農山漁村の共生・対流」といった新しいライフスタイル関心があるか世論調査で聞いたところ、「関心がある」と答えた人が50%以上に上りました。 

都市に暮らす人は食の不安、環境問題に対する不安、健康不安、精神的ストレスに対する不安、雇用に関する不安、過密人口な都市暮らしや競争の激しいオフィスワークに強いストレスを抱えています。

 

★農村は、都市の経済を必要としており都市は、農村の生命を必要としているのです。

 

3、農林水産省が推奨する都市と農村の交流事業

 

農林水産省の農村振興分野の施策として、平成14年「都市と農山漁村の共生・対流」が掲げられた。

 

政府は、この施策を推進するため、

平成14912日 「都市と農山漁村の共生・対流に関するプロジェクトチーム」発足                                

内閣官房副長官と関係7省(総務副大臣、文部科学副大臣、厚生労働副大臣、農林水産副大臣、経済産業副大臣、国土交通副大臣、環境副大臣)を設置。

 

平成15331日 民間主体が適当と決定                                

会議において、都市と農山漁村を双方向で行き交うライフスタイル、都市と農山漁村の共生・対流を国民全体に広く浸透していくために、

(1)各種活動主体の取組みの活発化
(2)都市と農山漁村を双方で行き交う新しいライフスタイルの国民への普及・啓発

に取り組むことを必要として、

 

これらを展開していくためには

・情報交換や連携の場

・多くの主体の参画

・民間主体であること

が重要な展開方策であるということから、この国民的運動の推進組織は民間主体が適当と決定された。

 

平成15年6月23日 「オーライ!ニッポン会議」発足                                 

企業、NPO、公共団体、その他民間企業等各種団体を会員として、農林漁業体験や田舎暮らしなどの都市と農山漁村を行き交う新たなライフスタイルを広め、都市と農山漁村がお互いの地域の魅力を分かち合い、「人・もの・情報」の行き来を活発にすることを目指す。

 

このような活動基盤を整え、農林水産省では

 

・子ども農山漁村プロジェクト

・グリーンツーリズム都市と農山漁村の共生と対流

・都市農業の振興

・市民農園をはじめよう

 

などの取組みを行なっている。

 

★今回の発表では、これらの4つの施策のうち、「子ども農山漁村プロジェクト」に絞って発表します★

 

★子ども農山漁村交流プロジェクト★
 

 

 

 

 


*前提として、「子ども」は都市の側の子どものことを指しています。

 

概要

●平成20年度開始。

●「都市と農山漁村の共生対流に関する副大臣プロジェクトチーム」のうち農林水産省、文部科学省、総務省が連携して、小学校において農山漁村での1週間程度の長期宿泊体験活動を推進するもの。

全国23000の小学生全員が、在校中に最低1回は宿泊体験する体制を整備すること目指し、今後5年間

 ・農山漁村における宿泊体験の受け入れ体制の整備

・地域の活力をサポートするための全国推進協議会の整備

等を進めていきます。

 

特徴

児童が約1週間の期間中に、農林漁家での生活・宿泊体験を行うこと。

児童は少人数で農林漁家のご家庭に宿泊し、“ふるさと”のような雰囲気の中で、農林漁家の方々と話したり、教えていただいたりしながら、農山漁村の生活を体験し、体験を通して食の大切さや人間性を学び、教育的成長を目指す。

 

メリット

★生徒へ

・我が家を離れ、農山漁村の生活や文化、産業などへの興味・関心、学習意欲が向上する

・体験を通じて問題発見能力や問題解決能力が育まれる

・豊かな人間性や社会性、コミュニケーション能力が高まる

・食の大切さを学べる・思いやりの心や豊かな人間性、社会性などが育まれる

・社会規範や生活技術が身に付く

 

★学校へ

・農山漁村の多様な教育資源を学校での教育活動に活用でき

・農山漁村体験を核とした特色ある学校づくりに役立つ

・多様な人々との連携・協力により、開かれた学校が実現する

 

★農村へ

・体験活動を楽しむ子どもに刺激を受け、農林水産業の担い手としての自信と元気が与えられる。

・受け入れ家族の中で、コミュニケーションが増え、日常生活に活気を与えてくれる。

・地域の人材発掘にも繋がる。

・子どもが来て地域に賑わいが出る

・地域資源を見直せる

・経済的効果あり(子どもとその家族と顔の見れる関係になり、農産物の販売に好影響。また、民宿には宿泊客が増え、体験活動で指導料も得られる)

・農山漁村のPRができ、知名度が上がる

・子どもに農林水産業について教えられる

・都市の子どもとの交流を通じて、地元の子どもにも主体性が出る。

 

このプロジェクトに関わる機関

 

★総務省

このプロジェクトの推進のために、受入地域の体制整備、小学校活動、都道府県協議会活動を支援する特別交付税の交付を行う。

 

★文部科学省

全国約2万3千校(1学年の約120万人)の学校(児童)の参加を目指して、小学校を対象にした農山漁村・長期宿泊体験活動の普及を図る。「農山漁村におけるふるさと生活体験推進校」を採択。

 

★農林水産省

児童には地域ぐるみによる受入体制の元で体験活動が行われるように、このプロジェクトの趣旨に適った受入地域の育成を図っていきます。

 

★「都市と農山漁村の共生・対流推進会議(=オーライ!ニッポン会議)」平成15623

この3ヶ月前の会議で、民間の主体の介入が重要であると決まり、都市と農山漁村の共生・対流の趣旨に賛同する企業、NPO、市町村、各種民間団体及び個人により発足。

 

代表は東京大学名誉教授 養老孟司氏。その他日本商工会議所会頭、全国知事会会長、全国市長会会長、NPO事業サポートセンター代表理事、医師、登山家、シナリオ作家、福井県立大学学長、伊藤忠商事(株)取締役会長、法政大学経済学部教授、(社)日本旅行業協会会長、(株)JTB代表取締役社長、近畿日本ツーリスト(株)代表取締役社長、トップツアー(株)取締役会長

 

等が参加。

各関係省庁(総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)の基で、都市・農山漁村間の交流を新しいライフスタイルとして普及させる運動を盛り上げていくために、シンボル的な位置づけで活動する。

 

★都市と農山漁村の共生・対流関連団体連絡会

「都市と農山漁村の共生・対流に関する副大臣プロジェクトチーム」での決定を踏まえ、関係省の公益法人等で構成し、このホームページの運営・管理を行う。

 

★まちむら交流きこう(財団法人 都市農山漁村交流活性化機構)

都市と農山漁村の共生・対流関連団体連絡会の参加財団法人の一つ。

全国規模で受入地域と小学校の情報を集約し、マッチングを行なう。

このような全国規模で情報集約を行える機関を公募したところ、まちむら交流きこうが手を挙げたため、ここが担っている。

具体的には、受入関係者の相談窓口、研修会、セミナー、問い合わせ、企業と協働で賠償責任を補償する損害保険制度の開発、手引きの作成などを筆頭に行なう事務局。

農山漁村での1週間程度の宿泊体験活動をモデル的に実施し、その活動を通じて課題への対策、ノウハウの蓄積、セミナーなどによる情報提供を行い、体験活動の実施に向けた気運の醸成を図る。

 

取組み

 

このような関係機関が「子ども農山漁村交流プロジェクト」のために具体的に行なう取組み

 

受入地域に向けて

◎受け入れモデル地域を決定!

 

受入モデル地域とは

先導型モデル地域、体制整備型モデル地域の2タイプに分けられる。

*先導型モデル地域・・・既に受入体制にあり、他の地域への指導を行う地域。

*体制整備型モデル地域・・・地域の育成支援や体制整備を推進するためのモデル地域。

 

◆先導型モデル地域は、このような交流を以前から行なっている地域が、まちむら交流きこうに登録し、その中からまちむら交流きこうが選定

 

◆体制整備型モデル地域は公募

条件は、

●小学校1学年単位での受入が可能な体制や受入計画等が整備されているか、もしくは整備が進むと考えられる農山漁村。

●農林漁家の生活を体験できる農山漁村宿泊体験活動を含む長期の宿泊体験活動が提供できる。

●都道府県における受入体制整備の核となる地域体制づくりや受入計画の作成などにおいて他地域の模範となる地域。

→ 相談窓口を開設

プロジェクトの事業の概要や、地域の受入要件、体験指導者の育成、小学生に教育効果のあるプログラムの開発、学校誘致のための渉外・交渉・情報発信業務、持続可能な地域協議会の運営方策等について無料で相談を受け付ける。

 

この地域の活動の展開が、地域ぐるみで自立的継続的なビジネスモデルとなる取組みをする。

事業実施期間は原則2年以内。

 

→ 平成20年度は全国53地域が決定。

 

 

◎手引き作成

受入地域の体制づくりや準備等に関し、参考資料として

『農林漁家民宿における子ども長期宿泊体験活動受入対応の手引き』をパート14まで配布

<パート1>「子ども農山漁村交流プロジェクトの受入要件等の確認編」

子どもとの接し方、受け入れからお別れまでの対応のチェック項目、ポイント、心構えをまとめたマニュアル)

<パート2>「農林漁家民宿における安全管理対応編」

<パート3>「責任と損害保険編」

<パート4>「農林漁家民宿等における安全対策の実践事例編」

(教育に対する役割に理解があり、積極的に学校教育旅行などの受け入れを行ない、安全対策なども具体的に意識高く行なっている民宿3軒の対応を紹介・解説。)

 

受入側研修会開催

研修会を開催してほしい地域を募集し、

・農業民宿開業研修会

・農家民宿レベルアップ研修会

を実施

 

◎交付金支給

◆交付金がもらえる条件

 

@ 子ども達の受入を行う農林漁家が地域の農林漁家及び市町村の他、農林漁業関係団体、NPO法人等によって構成されていること。

A 代表者の定めがあること。

B意志決定の方法、事務処理や会計処理、財産の管理、公印の管理と使用、内部監査等がきちんと規程されていること。

C事務手続きに不正のないよう、複数でチェックするしくみがあること。

 

◆交付金の額

1地域当たり、250万円(平成20年度分)を定額で交付。

 

◆交付金の対象となる経費

賃金・報償費謝金・旅費普通旅費、特別旅費(委員等旅費、研修旅費、日額旅費)・需用費消耗品費、車輌燃料費、食糧費(茶菓子賄料等)、印刷製本費・役務費通信運搬費、耕筆翻訳費、広告料等・委託料コンサルタント等の委託料・使用料及び賃会場、貨客兼用自動車、事業用機械器具等の借料及び損料借料・備品購入費、事業用機械器具等の購入費、職員への報酬技術員手当・退職手当を除くその他の手当・共済費等共済組合組合負担金、社会保険料、損害保険料、調査試験費調査試験用資材費、調査試験記帳手当

 

ランニングコストに充てられる。

 

 

小学校関係者に向けて

 

受入地域を簡単に検索できる検索機能を、オーライ!ニッポンホームページ内に掲載

→ お問い合わせボタンをクリックするだけで、地域の事務局コーディネート担当者にメールが繋がり、要望を伝えられる。

→ お互いに条件が合えば、その後は当事者間で詳細を調整・契約できる。

 

●子ども農山漁村交流プロジェクト平成20年度モデル地域の紹介

●プロジェクトの定着に向けて、学校教育関係者および保護者向けのPRパンフレットを作成

 

 

体験学習の事例

 

1、先導型受入モデル地域の例

渋谷区立笹塚小学校自然体験教室@長野県飯山市>

 

平成14年に両者の交流がスタート。平成20年度からは、長野県飯山市を中心とした協議会が、「子ども農山漁村交流プロジェクトの先導型受入地域モデル」として選ばれた。

 

場所:長野県飯山市寿地区

受入地域:北信州みゆき野子ども交流推進協議会

実践校:東京都渋谷区立笹塚小学校

実施日:平成20726日〜28日(23日)

プログラム概要:自然体験学習

内容:もちつき体験、箸つくり、村内散策、笹ずし作り、ナイトハイク星空観察、ブナ林散策カヌー体験、おやきづくり、草木染め体験、民宿での語らい、野草つみ体験など

生徒数:40

宿泊形態:民宿に約10名ずつ宿泊

 

*宿泊施設に泊まる場合でも、宿泊所として規模が大きくなく、個人経営のような宿は「民泊」と捉えるそうです。

 

飯山市寿地区はもともと農業を行なっていたが、バブルの時代の頃からスキー場を中心に民宿が多くできはじめた。それらの民宿が、この「子ども農山漁村交流プロジェクト」開始をきっかけに、まちむら交流機構の受入地域に登録し、このたび先導型受入地域となり今年の体験学習が行なわれた。

 

受入地域の北信州みゆき野子ども交流推進協議会は、岳北地方の1市3村の自治体、教育委員会・観光協会・北信地方事務所・JA北信州みゆきで組織される。

今年6月26日「子ども農山漁村交流プロジェクト」の先導型受入モデル地域として、選定された。この地区では、平成6年度から小学校との交流に取り組み始め、毎年その数は少しずつ増えていった。そして平成19年度には、交流する小学校の数は全国から60校に増えた。

中には、15年間長期的に交流する小学校もあり、毎年来る生徒は違うが、中には個人的に親と来たり、大学生になってからやってきた子供もいるそう。

 

 

問題点

@このプロジェクトに関わる機関の役割分担があいまい

 

先にも述べたように、この「子ども農山漁村交流プロジェクト」には、情報交換や連携の場、多くの主体の参画、民間主体であることが重要な展開方策であるとされ、運動の推進組織は民間主体が適当と決定された。そして、さまざまな形態の組織の委員からなる「オーライ!ニッポン会議」が発足されたわけだが、実際それらの組織の特徴を活かした役割分担がされていない。

現在大きくわけると、まちむら交流きこう・NPO・民間企業・市町村(自治体)という組織が関わっており、その中で、<全国>のネットワークや情報集約の役割をまちむら交流きこうが、<受入地域>の窓口の役割を自治体が担っている。

しかし、全国のネットワークと、受入地域の自治体の窓口だけでは、最適なマッチング、活動づくりは出来ず、この交流活動のメリットである子どもの教育的成長や農山漁村地域の資源の再発掘もできないだろう。

どちらもカバーしている仕事の役割分担が広範囲で漠然としており、外から見ても、内にいる人にとってもわかりにくいのではないだろうか。

もっと役割分担をはっきりさせるべきだと考える。

 

農林水産省では、多くの組織を巻き込むことによって、まちむら交流きこうは全国の情報集約という広く荒い役割に専念し、自治体が受入地域を代表して外部への窓口に専念し、地域の協議会やNPOや、都市側のNPO(民間)が都市・農山漁村双方の住民への対応に専念し、互いの役割を担うことを理想として目指しているとのことだった。

 

 

A民泊の負担。

→ 仕事がある農家一軒に1週間小学生のグループが宿泊するのは大きな負担になる。

子ども農山漁村交流プロジェクトで今年度子どもを受け入れた方にお話を伺うことは出来なかったが、今年実際に江戸川区の葛飾第二中学校の体験学習で生徒を受け入れた経験のある、新潟県若栃という限界集落の協議会にあたる「わかとち未来会議」の代表の方にお話を伺った。

プログラムの内容、期間も似ているのでここで紹介したい。

体験費として一人あたり16千円が渡された。23日だったので、一人12千円。さらに、民泊させるにあたって検便が義務づけられており、その費用1000円は自分持ちだったという。そしてそれは民泊の負担とは釣り合わなかったとおっしゃっていた。

この若栃集落では、農家の仕事を手伝うプログラムではなく、期間中の活動は地域の色を出したものを自分たちで練った。芋掘りや、盆踊りや、山道の整備、道路沿いの花の世話など。また、村の女性は食事作りやお茶出しで大忙しだったという。

 

しかし、「補助金は確かに見合っていなかったが、それでも慣れればもっとお金も時間もかけずに準備することは出来る。それよりも生徒たちが自分の集落に来て体験したという経験は、集落の人にとってもかけがえのない経験だったようで、是非また機会があれば受け入れたい。」とおっしゃっていました。

 

このように、交付金の安さや各家庭にかかる負担は、地域の人の理解があればあまり問題にすることではない。受入地域の窓口の協議会が話を進めるのではなく、受入地域自身が、住民一丸となって、この子ども農山漁村プロジェクトに関わっていく姿勢が大切である。

 

 

Bそもそもこのような体制を整備することで、本当に「メリット」が達成できるのか疑問

 

→政府はこの子ども農山漁村プロジェクトで、5年以内に23千校の小学校の1学年を受け入れる体制を作ることを目標にしていますが、1週間1学年の小学生が農山漁村で受け入れられることによって、本当に、政府のあげるような子どもの教育的成長(農山漁村への興味・関心、学習意欲の向上、問題発見能力や問題解決能力、豊かな人間性や社会性、コミュニケーション能力、思いやりの心や豊かな人間性、社会性など)を高めることができるのでしょうか?

 

また、一方的に農山漁村の負担になり、ますます第一次産業に関わる人が苦労するのではないでしょうか?

 

私はそのような外枠を整えることだけに注力することには疑問を感じます。

政府の机上の空論になって現場と格差ができないよう、体制を整えるのと同時に連絡網を整えるべきだと思う。まだ始まったばかりで具体的な声が上がってきていないが、全国の情報を集約する機関の下に、もう少し細かくあげられた情報を集約出来る段階が多く作られればいいと思います。

また、受入体制を整えるだけでなく、農山漁村の人が都市に来る機会を設けてこそ、本当の農山漁村交流になるのではないでしょうか。

 

 


以上のような問題点を踏まえて、オリジナルの代替案を考えてみました☆

 

 

子ども農山漁村交換留学プロジェクト石澤諒子オリジナル解決案!!

 

 

 

 

 

政府の「子ども農山漁村交流プロジェクト」は、地元の人との関わり方が密接にはなるが、修学旅行と変わらない。その期間中に来る子どもの人数が多ければ多いほど、それに備えての準備が大変になり、問題点のBでも挙げたように、農村の人に大きな負担になってしまう。

さらに、子どもにとっても、学校行事の一環として、毎日学校で会うクラスの友達と数日間農村に行って組まれたアクティビティに参加しても、政府が期待するような、問題解決能力、コミュニケーション能力、社会性、人間性は身につくものではないだろう。

 

そこで

私の提案する「子ども農山漁村交換留学プロジェクト」では、1ヶ月に1回、期間は1週間くらいで、数人(1学年60人の学校なら5人ずつ)が農村に派遣され、農村の、組まれたアクティビティではなくて、ホームステイして毎日のありのままの暮らしを体験しようと思います。

さらに、交換留学というからには、農村からも年に数回小学生に都市の暮らしを味わってもらおう、というもの。もちろん、過疎化で農村の小学生の方が少ないと思うので、農村の小学生は年に12回でも良いです。

 

完全に子どもが農村のある一軒のお宅にホームステイするということは、デメリットもたくさん考えられる

・受け入れた子どもが怪我や病気になった場合の責任

・その家庭と合わなかった場合の子どもに与える影響

・交換留学期間の災害

など。

 

しかし、そのすべてのデメリットは、親・学校・地域の間で共通の理解があって、連携・協力の体制が整っていれば解決出来ることなのではないだろうか?

そして、これこそ本当に学校・国の手腕が問われるプロジェクトになり、真の都市と農山漁村の交流になるはずである。

 

1、子ども&保護者の信頼関係

子どもを一人1週間知らない地域に預けるには、親が子どもの可能性を信頼することが大切である。

 

2、保護者&学校の信頼関係

この交換留学プロジェクトは、保護者が学校の担任の先生や、学校が築いてきた受入先の農村地域との関係を信頼できるかが重要である。

同時に学校側は、その信頼に応えられるよう保護者への報告義務や、保護者の些細な悩みにも親身になって応えられるような関係が求められる。

担任の先生を窓口として学校自体を信頼できてこそ、子どもも安心して農山漁村に交換留学出来ます。

 

3、学校&農山漁村地域の信頼関係

学校の担任の先生(もしくは担任の先生レベルで子どものことを理解している担当教員)と、地域のコーディネーター的役割を担う人との間で報告や連絡がスムーズに行なえることが重要である。ここの関係がうまくいくことによって、生徒の性格に配慮したきめ細かいプロジェクトが実現し、子どもの教育的成長に直接的に影響すると考えられる。

 

4、農山漁村地域の受け入れ先&保護者の信頼関係

最後に最も重要なのは、1週間子どもを預かり(預ける)人同士の個人レベルの信頼関係である。極端に言えば、多少1〜3の関係がしっかりしていなくても、これが確立されていれば問題ない。学校、地域のコーディネーターの役割の人が子どもの性格を配慮して子どもの成長にとっても、受け入れる農村の家庭にとっても、最も両者にとって負担がない最適な組み合わせを選んだら、あとは細やかに対応し、保護者と受け入れ先の家庭で直接話し会える場をできるだけたくさん設けるべきである。

そして、この関係がうまくいってこそ、「子ども農山漁村交換留学プロジェクト」は、「子ども」だけでなく、大人にとっても「農山漁村交流」の機会になり、日本全体での「都市」「農村」という二つの概念の融和の機会になるだろう。

 

 

まとめ

以上結局は人と人の信頼関係が大切だというありきたりな提案になってしまいましたが、「子ども農山漁村交流プロジェクト」にしても、農水省の「都市と農山漁村の共生・対流」のいろいろな施策において、もっとも大切なのはこのプロジェクトに関わる個人と個人の信頼関係ではないでしょうか。

しかし、農林水産省も加わってこのようなプロジェクトが興ったことは高度経済成長期後の大きな一歩です。私たちひとりひとりが「都市」「農山漁村」という二つで何となく分けてしまっている固定観念をなくし、関心と理解を持っていければいいと思います。

 

参考

◆農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/j/study/index.html

・子ども農山漁村交流プロジェクト

http://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kodomo/index.html

・オーライ!ニッポンホームページ(http://www.ohrai.jp/

◆『都市と農村の交流』都市農村交流研究会編 1985.7 p8-9

◆農林水産省農村振興農村政策部都市農村交流化グリーンツーリズム班の方のお話

◆飯山市役所の方のお話

◆新潟県小千谷市若栃わかとちみらい会議代表 細金剛さんお話