ファミリーサポートについて
1H050651-1 4年 水田はるな
@ はじめに
近年、働く女性は増加を続けています。総務省統計局の労働力調査によると、平成14年度の女性雇用者数は2,165万人で、雇用者総数の4割を占めています。
しかし、働く女性を取り巻く就業環境は、長引く景気低迷に加えて、都市化と規制緩和にともなう勤務形態の多様化の中で、非常に厳しいものになっています。就学前の子どもを持つ女性が土・日・祝日に出勤することや、交替勤務、早出・残業に従事することも多くなっています。東京都の調査(平成14年度「東京都男女雇用平等参画状況調査」)によると、3歳未満の子を持つ女性の約6割が「育児のために仕事を辞めようと思ったことがある」と回答し、仕事と育児の両立の難しさがうかがわれます。
また、東京における少子化は深刻で、合計特殊出生率は1.00(平成13年)と全国最低です。少子化の要因としては、女性の未婚率の増加、晩婚化があげられていますが、子育てに対する負担感が大きいことも一因としてあげられています。子育てに関する悩みは、女性の就業、非就業にかかわらず多くの子育て中の女性があげています。
育児中の女性をサポートする制度は多々ありますが、いずれも使いにくいことが否めません。このような状況を踏まえて、東京都では、平成8年度からファミリー・サポート・センターの設置促進をはかってきました。平成9年度から設置された八王子市、羽村市をはじめ、各区市町の積極的取組みを得て、平成14年度末現在都内では36箇所のセンターが設置され、仕事と子育ての両立や地域での子育て機能の強化に大きな役割を果たしています。
しかし、設置が進むにつれて、「アドバイザー業務の困難性」「提供会員の不足」等の様々な問題点もあげられています。今日はファミリーサポートをもっと知ってもらうため、そして広げていくためにはどうすればいいのかを話し合うことができればと思います。
A ファミリーサポートとは
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1994年、厚生労働省(当時労働省)所管補助事業である「仕事と育児両立支援特別援助事業」として始まる。
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平成17年度から次世代育成支援対策交付金が創設され、ファミリー・サポート・センター事業は、同交付金の対象事業
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育児の支援を必要とする利用会員と支援する協力会員が、地域の中で子育ての相互援助を行う会員制の組織(437市区町村『平成17年度末現在:全国市町村は1,786市町村「市783 町810 村 193」』で実施)
・ 基本的には市区町村が設立運営(公益法人に委託されることもある)
・ 設置できる基準…人口5万人以上の市町村であること、会員数が300人以上であること
・ ファミリーサポートの趣旨…変動的、変則的な保育ニーズに対応、あくまでも「地域住民同士のお手伝い」
・ 会員資格…杉並区の場合
利用会員…区内に在住・在勤で、おおむね10歳までの子供を育児中の人
協力会員…20歳以上で、心身ともに健康かつ子育てに意欲のある方
・ 援助内容…保育施設までの送迎/保育施設の保育開始前や終了後の子どもの預かり/学校の放課後または学童保育終了後の子どもの預かり/保護者等の病気や緊急時の子どもの預かり/冠婚葬祭や他の子どもの学校行事の際の預かり/買物等外出の際の子どもの預かり など(資料2)
・ 利用の流れ(資料1)
面接(入会手続) |
サポート内容を個別に聞く |
事前打ち合わせ |
コーディネーターが紹介した協力会員と利用会員(子供も一緒に)が顔合せをします。→ここから有料 |
サポート依頼 |
援助が必要になった利用会員の依頼を受け、コーディネーターが事前打合せの済んだ協力会員の都合を聞く。 |
・ 利用料金…早朝(6:00〜9:00) 1000円
通常(9:00〜20:00) 800円
夜間(20:00〜22:00) 1000円
➂協力会員としての感想
(1)みほちゃん 4歳 女の子 送りのみ
(2)あずさちゃん 3歳 女の子 預かり(3日の短期)
Cよい点
(1) 安い
ファミリーサポートの利用料金は大体1時間800円〜1000円です(最低賃金)
民間のシッターサービスの料金表
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(2)預ける先は近所である
支援は、自転車や自動車は使用せず、徒歩でできる範囲でもの。
→子供が普段生活したり、遊んだりしている場所
親にとってもよく知っている近所
(3)時間が遅い
自治体が行っている他の育児サービスは、預かりの時間が短い→共働きには利用しにくい
…ファミリーサポートは、朝7時半〜夜10時まで(杉並区の場合)
(4)子供がさびしくない
(5)交流会
依頼会員と協力会員が横のつながり(=地域のつながり)を持てるように、交流会を開催
→子育てに対する世代による違いの克服、お互いにに望むことを直接話しあう
講習の内容…「会員としての心構え」、「子どもの事故と安全対策」、「子どもの心と身体の発達」、「子どもの発育と病気」、「子どもの遊び」、「子どもの世話」、「子どもの食事」、「保育の際のこころがけ」、「救急法」など、提供会員を対象にしたものが多い
B 悪い点
(1)需要と供給がマッチしていない(条件が合わない)資料3・4
・需要と供給の差…依頼会員数932人、協力会員数331人と人数の差(杉並区の場合)
→センターによっては5倍・6倍の差
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条件が合わない…利用会員が協力会員に対して望むことが多い(育児経験者である、保育士
などの資格もちである、など)単に協力会員の数が増えただけでは収まら
ない問題もある。
協力会員においては、100 時間超の活動実績がある人もいる一方、活動実績が全くない人も
(2)認知度低い
東京都産業労働局が平成14年度に行ったファミリーサポートセンター事業の需要に対する調査(対象:12 歳未満の子どもを持つ女性 4,000 人、45 歳以上60 歳未満の女性 4,000 人、回答数5,687 有効回答数71%)では、
●センターに既に登録している割合は、「依頼会員」(2.3%)、「提供会員(両方会員含む)」(0.4%)を合わせて、2.7%。「就学前児あり」の層に限ると依頼会員率は5.9%
●「事業内容を知っている」は11.1%で、「名前くらいは知っている」(17.4%)を合わせた認知者は28.5%となる。
●「知らない」とする非認知者は全体では 68.6%。全ての属性で5割以下の認知率
●認知媒体をみると、「自治体の広報紙を見て」が64.2%、「友人・知人からの口コミ」が21.6%で続く。
特に不足している協力会員の中心を形成している50代の認知度が低く(「知らない」と答えた人が80%)、この層にもっと知らせていくことが必要
(3)紹介までに時間がかかる(資料5)
・紹介におおよそ1週間から、長いときは1月近くかかることもある
→短期で利用したいとき、緊急で利用したいときにはかなり不便
・サポートセンターは(杉並区の場合)月曜から土曜の8時30分〜17時までの受付
→その時間に依頼ができない人、週明けに急に預かりをしてほしい場合などに対応できない
・必ずセンターを経由しなければならない状況を改善する必要がある
(4)他機関との連携(資料6)
本当にサポートが必要な母親(障害児を抱えている、心身に何らかの異常をもつ人)がサービスを利用できているのか?
→健康福祉事務所や社協、家庭児童相談所等との連絡との連帯・連絡を密に
(5)料金について
・民間のサービスに比べると安いが、長時間預ける場合にはかなりの負担
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料金は直接受け渡し→子供の目の前で受け渡し→貰いづらい!
…振込みやポイント制などにしてはどうか
(6)会員になる条件
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一部の市区町村では保育士や幼稚園教諭・また育児経験者などの資格が必要(墨田区・荒川区・渋谷区など)
→乳児はともかく、小学生でも資格者でないといけないのか?
→行政側も有資格者に預けることでトラブルをできるだけ回避
*協力会員の条件が有資格者のみ→ファミリーサポートの定義から外れるのではないか?
C もっとファミリーサポートを広めるためには
(1)他の機関との連携強化
・サポートセンターの支部を保育所の地域子育て支援センター等に併設し、育児相談等と一体的にサービスを提供
・ファミリー・サポート・センターの本部及び支部に保育所等との連絡・調整を行うアドバイザーを配置し、保育所を利用している会員から保育所終了後の育児の援助の依頼があった場合、アドバイザーが協力会員との調整を行うとともに、その旨を保育所にも連絡する保育所との連絡システムを整備し、依頼会員の利便性を図る
・健康福祉事務所や社協、家庭児童相談所等)にも積極的に働きかけ、誰でも利用することが できることを周知する
(2)紹介スピードをあげる
一つのサポートを開始するのに1週間から長くて1月という時間がかかり、短期の預かりや送迎目的で利用するには不便
→・インターネットやFAXなどを利用して、簡単に条件に合う人を探せるようにする
・協力会員があらかじめシフト提出
(3)活動場所を多様にする
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グループ保育時に使用する保育室や児童館・地域センターや学童保育の施設などを使って、交代で協力会員を登録制にして常時待機
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複数人の協力会員が協力して子供を預かる→お互いに安心
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遊び場所やおもちゃの確保
・ 子供を預かることのできる会員が独身のみの場合の預けにくさの緩和
(4)もっと人目に触れるところでの会員募集
会員募集が限られた場所・わかりにくい→協力会員を集めるには足りない
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利用会員に対して…妊婦の定期健診時に病院からサービスを紹介する、乳幼児雑誌などに掲
載依頼、民生児童委員が0 歳から未就園児の家庭を訪問して子育て支援の情報を告知する(こんにちは赤ちゃん事業)
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協力会員に対して…回覧板や地域の商店やスーパー、婦人雑誌、また小・中・高・大問わず
学校施設で募集するのもいいのではないかと思います。
(5)市区町村単位での運営であること
・市区町村単位で運営→超えて支援できない
→センター同士が連携で活動範囲が広がる
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センター開設に地域実情の反映を
…ファミリー・サポート・センターの位置づけは、保育所の状況や母親の就業状況等地域の実態により異なるケースが多い
→一定の件数を超えることがセンターへの補助の条件となっているために、センターとしては「ノルマ」という受け止め方
(6)企業の理解
例)NEC
・各自治体単位の子育て支援組織「ファミリーサポートセンター」の支援ボランティア会員拡大のため社員家族、退職者家族への協力要請 |
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・社内報、年金受給者向季刊誌、専用ホームページ等による紹介 |
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・入会を支援する専用ホットラインの設置 ・ファミリーサポートセンター利用社員に対する利用料補助 →共働き等の理由でファミリーサポートセンターの子育て支援サービスを利用した場合、300円/時間の補助(月額18,000円を限度) |
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➆まとめ
ファミリーサポートはあくまでも「地域住民同士のお手伝い」です。
調べていくうちに一番不安に感じたのは、利用会員が「お金を払っているのだから何もしてもいい」と思っているケースが多かったことです。
深夜までの預かりや当日になっての急なキャンセル、育児だけではなく家事の援助をさせられる、などさまざまなトラブル事例を直接提供会員さんから伺いました。
提供会員は有償ボランティアであるという要素のほかに、「地域のつながりを作る人」だということを依頼会員が理解することが重要だと思います。「お金を払っているから何をしてもいい」のではなく、対等の立場として、依頼会員の依存性を育てるのではなく、育ちあうということを大切にするべきです。そうでないと、地域活動と称した安価な主婦雇用になってしまうのではないかという懸念を持っています。
また、こうした制度は保護者の物理面での負担を軽減するとともに、精神面でのサポートに大きく貢献すると考えられます。特に、育児負担によるノイローゼや乳幼児虐待が頻繁にニュースになる昨今、ファミリーサポート制度に期待される部分は大きいのではないでしょうか。
現状では、主に共働き世帯の子ども等、「保育に欠ける」子どものみが保育所に 入所し、それ以外の子どもは3〜4歳で幼稚園に通うようになります。しかし、幼稚園に通うようになるまで子どもを育てるにあたっては、たとえ母親が専業主婦でも、大きな負担がかかります。とはいえ、少しの息抜きをするために民間のベビーシッターを雇うのは、敷居が高いと思われます。施設に預けるほどではなく、シッターに依頼するまでもなく、ファミリーサポート制度はちょっと子育てを介助する、「助育」という形で気軽に依頼できるというのは、一昔前、同居する祖父母が担っていたような役割といってもよいかもしれません。
そして治安の悪化を懸念する声が高い中、地域による「見守り」への期待が高まっている現状を鑑みると、こうしたネットワークが、以前はそうであったような「地域で子育て」という動きへの布石となり、ファミリーサポート制度はこうした「地域力」を高めていく1つのヒントにもなるのではないでしょうか。
育児のスタイルは多様です。子どもの個性や親の主義、タイプ、ライフスタイル等によっても異なります。これに対し、包括的な対策はなくても、選択肢が増えることで育児環境は大きく前進します。
育児サービスには民間型/行政型、施設型/非施設型、国家主導型/地域主導型と、それぞれに特性があります。必要なのは、複数のサービスの特性を見極め、自らのライフスタイルに合うように、それらを複合的に組み合わせて使い分ける目です。様々なタイプの育児サポートを確保することで、育児の負担を物理的にも精神的にも軽減していく道が開けるように思えます。今後、地域で子育てを支えるシステムとしての「選択肢」を増やすことを期待します。