若者自立塾からみるニート支援

 

1h050208

川上貴弘

 

はじめに

 

皆さんの中には「ニート」と聞くと、「高校や大学卒業後も何もせずに、ただ親に依存している甘えたダメな若者」というイメージが根強くあるのではないかと思います。私もこのテーマを調べる前はニートの人々に対してそういったイメージを持っていました。

しかし、実際にはそのような人達がもちろん存在する一方で、半分以上のニートの人たちは、何かしらの「壁」や「障害」があるために、ニートの状態を抜け出し社会に出て働きたいのだが、働けずにいる「普通の若者」です。そして彼らがニートになったのは個人の問題ということもありますが、それ以上に社会の問題であるという事もわかりました。

また、更に言える事は、その「壁」というのは社会人になってからも現れるものであり、皆さんもニートになってしまう可能性を十分に秘めています。

この問題を、単にどこか遠い知らない誰かの問題として捉えるのではなく、自分にも起こりうる問題として、皆さんもこの問題に対して考えてほしかったのでこのテーマを選びました。

 

今回の発表では、ニートの現状、その原因やニートに対する国の政策を述べ、更にその政府の支援策の一つである「若者自立塾」を訪れて分かった事や参考文献等を基にして、ニート支援の問題点を述べ、理想の姿を探っていこうと思います。

 

ニートとは何か

 

ニートの定義

 

まずニートNEET)とは「Not currently engaged in Employment, Education or Training」の略語であり、日本語訳は「教育を受けておらず、労働をしておらず、職業訓練もしていない」となります。

そして、具体的な日本政府の定義は、「15歳から34歳までで、学校卒業後に職探しも通学もしない未婚の若者」ということ。つまり「勉強もしないし働きもしない若者」が日本ではニートと呼ばれています。なお、この定義に当てはまる人は、現在85万人(64万人という考えもある。これは統計方法の違いらしい)であり、この多さから一気に社会問題化しました。

 

ニートという言葉が生まれたのは1997年のイギリスで、ブレア政権が当時深刻だった若年層の失業問題に取り組む中で、「ニート」という言葉が生まれ、その後、世界に広がった。また、ヨーロッパの「ニート」と日本の「ニート」は定義が違い、ヨーロッパの「ニート」は日本では「ニート」に含まれない「フリーター」や「失業者」、「無業の若者」も含む。

 

3.ニートの現状

 

()ニートと呼ばれる人とは

 

ここでは、どういった人たちがニートであるのかをみていきます。

 

「ふだん収入を伴う仕事をしていない者」を「無業者」と呼びますが、15歳から34歳までの若年無業者(通学、有配偶者を除く)は、2002年時点で213万人に達し、1992年からの10年間で80万人増えました。213万人の若年無業者のうち、約129万人は仕事を探している「求職型」(求職型は上記の定義に当てはめるとニートには当たらない)なのに対して、残りの約85万人(要するにニート)は、就業を希望しながら仕事を探していない43万人の「非求職型」と就業希望を示していない42万人の「非希望型」に分類できます。また「非求職型」と「非希望型」の合計は、1997年からの5年間で13万人増えています。(P3の表@参照) 

 

分かりやすくすると、

求職型

129万人

無業者(通学、有配偶を除く)のうち、就業希望を表明し、※求職活動をし

ている個人。 求職活動をしているからニートではない。

非求職型

43万人

無業者のうち、就業希望を表明しながら(働きたいのだが)、求職活動はしていない個人。求職活動をしていないからニート。

非希望型

42万人

無業者のうち、就業希望を表明していない(働く意思のない)個人。

求職活動をしていないからニート。

であり、「求職型」はニートではなく、今回のテーマではメインではありません。

今回の発表でのメインは、「非求職型」と「非希望型」でニートと呼ばれる方です。

 

※「求職活動」とは、具体的に職を求めてハローワークに紹介を求めたり、求人の雑誌や広告を見て応募したりと、具体的な就職活動をしていることを意味します。つまり「非求職型」は就業希望はあるが、実際の行動を起こせない人たちのことであり、「非希望型」は就業希望を持てない人たち、ということになります。

 

(2)ニートの推移

 

ここではニートならびに無業者の1992年から2002年までの推移について、政府が2002年に発表した就業構造基本調査を使ってみていきます。

 

 

 

 

表@を入れる

 

 

 

 

 

 

 

 

<グラフの考察>

 

@ニート(一番右の非求職型+非希望型のグラフ)は92年の67万人から2002年には85万人と10年で約20万人の増加がみられます。更に、この85万人は15歳〜34歳人口全体の2.5%に達し100人に3人はニートといった非常に高い割合を示しています。

また、総務省の「国政調査」によると、ニート人口は2050年には164万人に達すると予測されており、同世代の人口全体に対するニートの割合は少子化の影響も重なり、非常に高くなると考えられます。

 

 

表Aを入れる

 

 

 

 

 

 

 

A「非希望型」は過去10年でもさほど差異は見られない。よってニート全体の増加を促したのは「非求職型」であると考えられます。非求職型は過去10年で約20万人も増加していて、今後もニートが増加すると仮定したときに、大幅に増加するのはこの「非求職型」であるという見解が多かったです。

 

ここでなぜ、非求職型が増えたのかという参考資料を載せると、以下のようになっています。

 

 

 

 

表3を載せる

 

 

 

 

見て分かるように、「探したが見つからなかった」、「希望する仕事がありそうにない」といった理由で求職活動をしていない人々が増え続けています。これは不況による就職状況の悪化が影響を与えています(詳しくは4.で説明します)。90年代後半から2000年代初めにかけて、不況のため求人数が大きく減少し、その結果、就職活動を繰り返しても採用や内定が得られず、就職活動を続ける努力ができなくなり、その結果として非求職型が増えたと予想されます。不況の中、労働需要の不足の他、求人と求職の不具合が深刻化したことが、失業だけでなく非求職型の増加をもたらしています。

 

B無業者(一番左のグラフ)に関しても92年に131万人だった無業者は、97年に171万人に増加し、2002年には213万人まで達しています。つまり10年で約80万人の無業者が増えたことを表しています。

無業者の若者は、5年ごとに約40万人、平均すると年間8万人のペースで増加しています。その無業者の15歳から34歳人口全体に占める割合は、1992年には3.7%に過ぎなかったが、97年には4.9%で2002年になると6.3%まで達します。

 

()その他

@ニートの割合

中卒男子の9.8%、女子の8.6%、高卒男子の3.6%、女子の2.3%、大学・大学院卒男子の1.3%、女子の1.3%がニートです。

A男女比

内閣府の調査(2002年)によると、ニートの男女比率は男性が48.4%41万人)、女性が51.6%43.7万人)とほぼ半々となっており、男女比は過去10年間の調査と比較しても大きな変化は見られないそうです。

○男女比で見ると、女性の方のほうが多いのですがこれは統計方法に問題があるようで、この女性の中には、将来、結婚するために花嫁修業などを行っている人が含まれるからだそうです。だから実際、国やメディアが危惧しているのは男性の方だと言えます。

 

4.ニートの増加原因

 

ここでは、ニートが増加している原因は何かを考えていこうと思います。ニートになる理由として、社会的要因、そしてニートの方々の心理的要因が考えられます。以下では具体的にその要因とは何か、また、それを踏まえてどういった人たちがニートになったのか、その過程を見ていこうと思います。

 

(1)社会的要因

 

<雇用環境の悪化>

若者がニート化してしまう原因は様々あるが、大きな要因の一つとして雇用環境の悪化が挙げられます。厳しい雇用情勢が続いており、高校や大学を卒業後、就職活動をしたのだが就職できなかった若者が就業意識を失い、そのままニートになってしまうケースが多いらしいです。具体的にどういうことかと言うと、まず@「就職氷河期の影響」があります。バブル崩壊の影響によって1993年頃からおよそ10年、求人倍率が1.0を切る状況が続きました。その影響で就職できずフリーターなどになった者が30歳を過ぎる年齢になり、アルバイトとして採用されることも難しくなってきています。こういった状況がニートを増加させる大きな原因となっているといいます。次にA「新卒者限定採用」。団塊世代の大量退職を見越して、2006年頃から求人数を増加させる企業が現れていますが、そのほとんどは新卒者のみを対象としたものであり、ニート減少にはつながりませんでした。そしてB「実務経験者優先採用」。会社が中途採用を行なう場合、即戦力となる実務経験者を求める場合が多く、就業経験のないニートは採用されにくいという現実があります。

そしてC「非正規社員の増加」。企業は年収が高い正規社員を雇うよりも、年収が安く同じ労働をしてくれる非正規社員を増やす傾向にあります。企業の競争力を保つために人件費を安く済ませたいという考えは仕方のない事かもしれませんが、この現実が、正規社員になりたいというニートの希望を叶えさせずに、社会になかなか復帰できないという状況を生み出しています。

 

尚、昨年までの数年間は比較的に好景気で、団塊の世代の退職も重なり、企業も正規社員を増員させる事もしてきましたが、今年は、サブプライムローンを含めた様々な問題から倒産が相次ぎ、改めて雇用環境は厳しい状況になっているそうです。

 

(2)心理的要因

 

若者の中に「親から独立しようとする意欲が乏しくなってきている」という事。これは「自分が働かなくても親が養ってくれる」という心理が背景にあるといわれています。また、「テレビゲームなど一人遊びの機会が増えたこと、あるいは親の過保護などの影響で、友人とのコミュニケーション能力が育たなかった」、この他に、「知識・能力に自信が持てない」「職業に対する知識が乏しい」「仕事に対する忍耐力がない」、更に、将来に対する期待や希望を持つことができずにあえて働く気力を持つことができない人や、学校や家庭において子供の頃から指図されるばかりで自分で考える力を養えないような教育をずっと受け続けていたために、大人になっても自主性や主体性を持つことができず、親から自立できなくなっているというパターンもあります。以上のような人たちの多くは「非希望型ニート」だそうです。

そして一方では、小さい時に負った精神的な傷から立ち直る事ができずに、仕事ができないといったニートの方も大勢いるそうです。また、もう一度P4の表3に戻ってみると、最も目を引くのが、「病気・けがのため」という人々が急増していることです。1992年には6万人だったのが2002年には10万人と4万人も増加しています。この「病気」とは何かということですが、具体的な病名までは分からないが、就業構造基本調査では、これは90年代以降、多くの職場で心の病気や疲弊を原因として働けなくなっている若手社員が増加したことが原因ではないかと考えているそうです。

要するに、実際に社会に出て働き出してから、仕事場での人間関係や仕事の厳しさから、精神的に病んでしまい、仕事を辞め、「非求職型」と呼ばれる「働きたいのだが、働けない」という様になってしまう傾向が多く見られるそうです。

 

このように自らニートを選択する人もいるが、ニートを抜け出したいのだが、様々な要因からやむを得ずにニートの状態にとどまっている人が多くいます。

 

                                                                                                                              

<どのような過程を通してニートになっていったのか。その具体例>

若者自立塾の方に伺った例と参考文献の例を簡単にいくつか挙げてみようと思います。

 

a・四年制大学に在籍していた男性が、就職活動の際に20社程度を受けたが、全て断られそのまま就業意識を失い、どうせ自分は駄目だと思い、その後10年程、働くことなく生活を続けた。

b・ハローワークや相談所に何回も訪れたが、自分が希望するような就職先が無かったから諦めてしまい、それ以後働く意欲をなくしてしまった。

c・両親が会社の経営者であり、わざわざ自分が働かなくても生活する事が十分できるから無理をして働こうとしない。(こういった人たちをパラサイトシングルと言うらしい)

d・クラスのリーダー的存在と対立したことで、小中学校の期間を存在しない人間として扱われ続け、極度の対人不安を抱えるようになった。

e・幼少期より父親から虐待を受け続け、男性と対峙すると体が硬直してしまう女性は、採用面接にすら行けずにいるという。

f・OB訪問で、「君みたいな人間を採用する企業はないからフリーターでもやったら」と言われた男性は、自尊心を失い、外出できなくなった。

g・営業職で入社した男性は、過剰なノルマに加えて先輩から日常的に暴力をふるわれ、スーツを着ると全身から汗が止まらないようになり、退社した。

 

abは社会的要因から、d・e・f・gは心理的要因からニートになってしまった人たちです。dやeの人のように、幼少期の経験から、「対人不安」や「人前での極度の緊張」という状態になってしまい、大人になってもその状態から抜け出せずにいる人は少なくないようです。このような人たちは、当然働くことができずニートの状態になってしまいます。また、fやgの人のように、大人になってからの精神的なショックで、「対人不安」や「自尊心の欠落」などで、就労意欲が減少してしまったり、たとえ職場経験がある人でも、再び職場に復帰することができなくなってしまったりする事もあります。

ということは、将来の私たちも心理的な要因から「ニート」になる可能性が十分あるということです。

 

5.ニートの問題点

 

ここでは、なぜニートがいけないのか、またニートの状態が続くとどうなってしまうかを見ていこうと思います。

 

()個人間の所得格差拡大

何かのきっかけでその人がニートになると、その期間の収入が一切途絶えてしまい、ニートでない人と比べて生涯所得に大きな差異が生じてしまいます。

()正社員としての雇用が厳しくなる。

ニートの期間が長いと、再び仕事に復帰しようとしても、それを理由に企業側から断られてしまう事が多いそうです。また待遇面で不利な扱いを受けやすい事もあるそうです。

()社会に復帰するまでに長期間かかる。

更に、ニートになると「ひきこもりがち」になり、社会体験が少なく、職業に耐えうるような技術・技能を身に付ける機会がなくなります。また、その生活に慣れてしまうとなかなか、その生活のリズムを改善する事が難しくなってしまいます。よって一度「ニート」になってしまうと長期に及んでしまい、ある時期に本人が解決に向けて動き出したとしても、解決に長期間を要するようになります。

()将来が不安

ニートの方々は当然収入が無いために、家族や親戚に養ってもらっているケースが多いそうです。今はそれで良いかもしれませんが、そういった人たちが亡くなってしまったら収入源が無く生活する事ができなくなってしまいます。また、収入が無いため家族を持つ事が難しく子孫を残す事ができない事も問題です。これが少子化という問題も生み出します。

()社会保障制度の担い手不足

ニートの方が増えて、年金やら諸々の税を払えない人が増えると例えば、将来私たちが年金をもらえる世代になった時に、もらえる額が減ったり、もしかしたら無くなったりと様々な弊害が生まれる事もあるらしいです。

 

こういった事が参考文献に書かれていたニートの主な問題点です。

更に、私見を述べると、これからの日本を背負う若者が働かず(働けず)にいる状態は好ましいものではないと思うし、人の在るべき姿は仕事をして、その仕事の対価としてお金を得て、そのお金で衣食住をやりくりするという事だと思います。

こういった事からニートは問題だと思いました。

 

6.ニートに対しての政府の対策

 

今まで見てきたように近年、若者の就労状況が悪化し就職できない、労働条件の厳しさから職場に定着できない、また精神的な問題から立ち直れず働けない、などの要因でニートが増加している事が大きな問題になっています。そして、この結果が「非求職型ニート」を助長させてしまっています。また人数は過去と比較しても変わらないが、以前多く存在する「非希望型ニート」も解決しなければならない問題としてあります。

これらの問題に対して、政府は、20036月に「若者自立・挑戦プラン」を策定し、200412月に「若者の自律・挑戦のアクションプラン」を決定し実行に移しました。このアクションプランには、※「ジョブカフェ」、「ヤングジョブスポット」、「若者自立塾」での就労支援サービスや「YESプログラム」などの就職基礎能力習得を目指すプログラムなど多くのプログラムがあります。(この他にも政府や都道府県単位でニートの支援を行っていることがある。その一例は<資料>に載せました。)

その中で今回私は、ニートの支援策の目玉であるとされている厚生労働省が出した対策の「若者自立塾」を調べることにしました。

そしてニート支援の現状はどうなっているのか、またその問題点は何か等を現場に行って専門家のお話を伺う事で理解しやすくなると思い、実際に横浜の自立塾を訪れました。(尚、全国に自立塾は29箇所あります)

 

※ジョブカフェ、ヤングジョブスポット、YESプログラムについては<資料>で簡単に書きました。

 

7.若者自立塾

 

<まずは全国にある若者自立塾の仕組みについて説明します。>

 

1)自立塾概要

様々な要因により、働く自信をなくした若者に対して、合宿形式による集団生活の中での労働体験等を通じて、働くことについての自信と意欲を付与することにより、就労等へと導くことを目的としています。
適正な審査を経て、財団法人社会経済生産性本部が「若者自立塾」実施者を認定しており、現在29団体が実施しております。

2)自立塾の活動内容

参加者の方は、原則3ヶ月間以内の合宿形式で20名程度の集団活動を行います。
期間中は、資格取得のための学習や労働体験、ボランティア活動等を実施します。
※なお、具体的なプログラム内容や実施期間は、実施団体によって異なります。

3)入塾者の条件(対象)

原則として以下のとおり。

@義務教育課程修了後1年以上経過し、1年以上前から現在に至るまで、仕事をしていない、求職活動を行っていない、学校に行っていない、職業訓練を受けていない者

A過去に求職活動を行ったことがある者

B35歳程度までの未婚の若年者

 

<次に実際に訪れた横浜の若者自立塾について説明します。>

 

<団体名>

株式会社K2インターナショナルジャパン

<特色>

1)横浜の施設での合宿生活をもとに、生活力を身につけ、実地研修を行います。

(2)研修受入れ先には、直営の丼カフェなどの飲食店や、人材派遣会社、連携NPO団体があります。

<団体概要>

1989年に設立。若者自立塾を始めたのは2004年から。

教育でもない、医療でもない、生活というアプローチからニートの若者の自立支援を行っています。

<プログラム内容>

【生活訓練、労働体験】
[
第1クール] 「生活力と目標設定」・・・2週間
生活力:規則正しい生活(起床、睡眠の時間)、炊事、選択、掃除を自分で行う。
状態の把握:状態の把握、人間関係の形成を作る事を目指す。
目標設定:それぞれの目標設定

[第2クール] 「一般常識とマナー」・・・1週間
一般常識とマナーを身につける:挨拶の仕方、手帳のつけ方、電話の取り方、服装、身だしなみ等。
PC
スキル:最終クールまで研修。 パソコン検定(P検)取得。

[第3クール] 「実地研修先の予備知識」・・・1週間
社会や会社の構造:生涯で必要なお金について、社会保障制度と国民の義務について、
一般企業の組織構造について
実地研修のための予備知識:それぞれの実地研修先の業界の知識、
実地研修に必要な知識(研修先のサービス内容、方針など)

[第4クール] 「実地研修」・・・4〜8週間  (ちなみに私が行った時はこの期間)
研修生として実地研修を行う。
・生活のリズムを寮で維持しながら、外部にて実地研修
・毎日、活動のレポートを作成
・研修先との定期的なやりとり
現時点で受入れが可能な業種・職種
・派遣会社:新規営業
・レストラン:接客、調理、販促
・整体医院:接客、事務作業、処置補佐
・通信企業:販売
・ボランティア団体:事務、学習補助、雑用

[最終クール] 「就職活動」・・・0〜4週間
*就職活動を行える段階にある者のみ。 それ以外は実地研修を継続。

【特別プログラム】
・各塾対抗運動会
・留学生との交流会 など

【資格プログラム】
・パソコン検定(P検)・・・全員参加(塾内にてP検の授業、テスト)

<実施期間>

(第1期)7月〜9
(第2期)10月〜12
(第3期)1月〜3

<費用>

10〜40万円。(人によって異なる。例えばその人が低所得者で生活保護などを受けている場合、安くなるという話)

<スケジュール>

<実績>

現在塾に通っている人は8人で、塾の卒業生は2004年からの4年間で約80人ということです。卒塾後の就労率は約7割で全国トップクラスだそうです。

そして全国の4年間の卒塾生は1720人だそうです。

 

ここからは実際に伺った事を踏まえて書いていきます

 

()塾に通うことのメリットは何か。

ニートの人たちは普段外に出て、人と会話をするという機会が少ない。よって友人を作る事も出来ず、悩みがあっても一人で塞ぎこんでしまうことが多い。ここの施設では大勢の同じ悩みを持った仲間と3ヶ月共に生活をする。同じ悩みを持っている人だと話に説得力があるし、親近感もあるし、友人関係を築く事だってできる。そこでお互いに励ましあって就労の意識を高める事にも繋がっていると思う。スタッフの方もニートの経験がある人も少なくないそうなので気軽に相談できるそうです。また3ヶ月の間で生活のリズムを規則正しいものに変えることができるから、就労してもそのリズムで働けるから良い。

そして就労体験として、実際のお店で実地研修を2ヶ月程度行うから、いきなり働くよりも働く事に対しての抵抗が低減することもある。

パソコン検定の取得も目指しているから、パソコンの能力が上がり、即戦力として働ける事もある。(ちなみにニートの人はパソコンが使いこなせる人が多いらしい)

 

()どうなれば成功したと言えるのか。また、3ヶ月後はどういった進路を進むのか。

どうなれば成功かは人によって違うけれども、基本的には塾の目標は就労につくことだから、ニートの人が3ヵ月後に正社員でも契約社員でもアルバイトでも、仕事に就いてくれたら成功と言える。また、就労に向けて進学・資格取得などに進む人もいてそういう人たちが、その後就労してくれたら成功と言える。
また塾では継続・安定した進路を目指しているため、できるだけ直接企業とのつながりを持ち、雇用へとつながるようにサポートしているとのこと。
現在まで雇用につながった企業
(株)マイスターエンジニアリング、(株)アネスト、社会福祉法人たすけあいゆい、(株)クロサワ、(株)マグナ、(有)エイブル、スズキ屋、東急ストア、(株)近沢レース店他多数。

また実地研修で働いた場所で働く人もいるという事でした。

 

(3)どういった思いで、若者自立塾にやってくる人が多いのか。

最も多いと感じるのは、今の自分を変えたい、今の状態から抜け出したいと考えている人だそうです。次に友人を作りたいといった人や就労体験を通して仕事に慣れたいという人もいるみたいです。

また、塾に通ってくる人は、「非求職型」が多く、つまり働きたいけれどもその初めの一歩がなかなか踏み出せない人がほとんどであり「ごく普通の若者」ということです。だから元々変わりたいという意識はあるから、何かきっかけがあればすぐ変われる

 

()支援していく上での問題点は何か。

 

横浜に限らず、全国の自立塾に言えることですが、自立塾の利用者が大幅に少ない事が問題。05年度、全国で1200人の利用を見込んだが、実際の入塾者は約500人にとどまった。06年度は約1700人に対し、実績は約700人、07年度は約1600人に対して実績は約600人。過去3年間、国が予想した入塾者数に対する実績は、4割程度にとどまります。利用者の伸び悩みが原因で、これまでに二つの団体が事業から撤退したそうです。この大きな原因として利用料金が高い事が挙げられます。上記しましたが3ヶ月で約30万円という費用は決して安くはありません。厚生労働省は今年5月以降、生活保護を受給する世帯の若者が入塾する際、費用の大半を負担する事としましたが、生活保護を受けていない低所得者の家庭は、こうした恩恵にあずかれないままです。スタッフの方も「金額が高い事を知って諦めてしまう」と言っていましたし、その金額を聞いてニートの方も「そんなに自分に投資するほどの価値はない」といった事を思ってしまうそうです。実際に私が、行った説明会では10名程度の方がいらっしゃる等、自立塾に対しての、当事者の関心は高いと思うのでここは非常に残念だと思います。

そして、卒塾した生徒を受け入れてくれる就職先がなかなか増えない事も言っていました。ニートの問題を解決するためには企業側の協力が必要不可欠であるので、スタッフの方はここも困難だと言っていました。

 

<訪れての考察>

塾生は20代前半から30代前半ぐらいと見られる人がいました。また、塾内の雰囲気は非常に明るく、ニートの人たちも皆さん賑やかに談笑していて、どこにでもいる若者といった感じでした。みなさん早く社会に復帰しようろ頑張っているようにも見えました。

ただ私が疑問に感じた事は、このように塾に通うことが出来る人は、比較的問題が少なく、経済的に恵まれている家庭の人であると思います。だから生活が深刻で低所得の家庭にいるニートの方にはお金の問題があり、手が出せないのではないかという事。更に、例え生活が豊かであっても、塾に通うという一歩を踏み出す事ができないニートの方は多く存在すると思います。こういった人は自立塾を含めて、何の支援も受けられずにいるのではないか。実際に参考文献には、「長年引きこもっている若者は外出もままならない。電話で話をすることもできない人がいる。」ということが書かれていました。

このように若者自立塾にも限界があり、自立塾に通うことができないニートの方々の支援が未だに解決できていない事が分かりました。

 

そしてニートの方々は、3ヵ月後の進路としてアルバイトでも契約社員でもなく、正規社員としての採用を強く求めていると分かりました。安定している職を探したい、というのがニートの方々の考えであるそうです。しかし、上記しましたがニートの方々を雇ってくれる会社は少ないようで、この問題は大きな問題と言えます。

 

ニートの方々のより良い支援を考えるならば、()であげた若者自立塾の支援での問題点、更に今述べたような問題点に対しての対策が必要であると感じました。

ただ誤解を与えないように書くと、実際に効果を出している事からも分かるように、働く意欲がある人、きっかけが欲しい人にとって、若者自立塾は非常に有効であると思います。

 

8.理想的なニート支援は何か

 

ここでは、今まで書いてきたこと、参考文献を踏まえて、どのようにしたらニートを減らせるのか、ニートの方にとって良い支援方法は何かを考えてみました。

ただし、これから指摘する問題は、非常に複雑で難しい問題であり限界はあるけれども理想を語るのならば、私はこうするのが良いのではないか、といったニュアンスで書かせて頂きました。

 

<雇用環境の改善>

まず原因や、先ほどの自立塾の考察で挙げたように、正社員になれずに挫折してしまいニートになった方や、正社員として雇ってくれないからニートをなかなか脱出できない人がいるならば、まずこの雇用環境の改善、つまり正社員の増加を進めなくてはならないと思います。

では正社員を増やすためにはどうしたら良いのか。

初めにデータを見て頂きたいのですが、労働政策研究・研修機構の調査によると、

ニートの採用について企業は、

「正規社員として、採用するつもりはないが、非正規社員として採用する」が23.3%。

「正規社員としても非正規社員としても採用するつもりはない」が41・8%。

となっており、正規社員として採用するつもりはない企業が65%を超えています。

更に、最近の不景気も後押して、お金のかかる正規社員よりも、非正規社員を多く雇うという傾向は中々とめる事はできないでしょう。要するにニートにとっては非常に厳しい雇用環境となっています。

そこでこの状況を改善するために私が考えた方法は、政府が企業に資金面等での援助を与える事です。具体的に言うと、

こういったニートの経験を持った人を企業が正社員として雇った場合に政府が、その企業に対して金銭面で補助を出してあげたり、企業に対して※ISOの認定のような表彰をして取引先との取引をしやすいようにしてあげたらどうかと考えました。企業がこういった就労の経験のない人を雇う事は、少なからずリスクがあり、何の保障もなければ当然、積極的に雇うという事はないでしょう。ですから、企業にこのようなインセンティブを与える必要があるのではないかと考えました。

「ニートの方々を雇う=社会保障の担い手を増やす事、少子化を防ぐ事」にも繋がるわけだから、国がこのような援助をすることは決して損な事とは言えず、むしろ積極的に行わなければいけません。更に、正規社員を増やすために最近増えている非正規社員の人数を政府が規制する事も必要があるのではないかと思います。なぜならば非正規社員が増えればその分、正規社員が減っていく可能性があるからです。具体的に、パーセンテージを決めてそれ以上は雇えないようにする事が必要だと思います。

これは理想で実現するのは非常に難しいと思いますが、将来の日本を考えた時には正社員を増やす事が必要不可欠であると思うから、政府はその為の努力を惜しんではいけないと思います。

 

※ここでいうISOとは、ISO14000と呼ばれるやつで環境経営をある一定のレベルで行っている会社に対して、国際標準化機構という機関がそれを認定する。認定された会社は環境に配慮している会社として、取引先で優遇されたりしてメリットがある。

 

<若者自立塾を含めた支援施設に通うことが出来ない人に対しての支援>

上記しましたが、自立塾に金銭面の問題で来られないニートの方、また勇気を出せずに来られない方がいます。そういった方々はこのような支援を受けられずにいます。ではこういった方々に対しての支援はどのようなものが良いでしょうか。

まずは、金銭面の問題で来られないニートの方々にはどのような支援が可能か。

私が最も期待しているのは、やはり国からの援助を低所得の人たち、また自立塾に対して今以上にしてもらうという方法です。理由は先ほども書いた通りです。

もう一つは、自立塾にボランティアのスタッフを増やし、コストを抑えるという事。それによってニートの方が負担する費用を安く済ませられるという事です。これは九州(?)の自立塾で行われているらしいです。地域の住民がニートに問題意識を持ち、積極的に食事の面であったり、生活の面であったりをサポートしています。こういった地元住民のボランティアとしてのサポートが必要だと思います。ニートは「ただ甘やかされて育ってきた人たち」という偏見をまだ多くの人が持っているのか、まだ全国的にはボランティアとしてのスタッフは多くはいないようですが、ニートの人たちは今まで見てきたように、そういう人たちだけとは限りません。こういった偏見がなくなり、国民全体にニートをなくそうとする動きが出始めたらいいと思いました。

次に勇気を出せずに若者自立塾を含めて支援施設に通うことが出来ない人に対してはどのような支援が可能か。この解決方法として、「訪問サービス」が挙げられると思います。このサービスはNPOが行っていて小規模の為、まだ全国的には認知度は低いらしいですが、すごく面白そうなので取り上げてみました。どういうサービスかというと、自立塾のようにニートの方が支援所に来るのではなく、逆にスタッフの方がニートの家を訪れ、話をしたり、ドライブにいったり、食事に行ったりするらしいです。普段引きこもりがちのニートの人を外に連れて行ったりすることで、徐々に社会との繋がりを持たせていくという目的があるらしいです。また、若者自立塾を含めた政府の政策は、働く気がある「非求職型ニート」に対しての支援のように私は感じていますが、このサービスは何もする気が起きないという「非希望型ニート」に対しても非常に有効だと思いました。このサービスも成功例が多く出ているらしく今後、注目されているらしいので、全国的に広まることを期待します。

 

<将来ニートを増やさないために>

最後にこれからニートを増やさないためには、どうしたら良いのかを考えてみました。

先ほども少し触れましたが、「非希望型ニート」と呼ばれる、仕事に対しての興味が無く、仕事をしようと考えないニートが日本には未だに多くいます。彼らがなぜ仕事をしたがらないのか。それは面倒くさい、自分にはできない、自信がない、など様々な理由があるかと思いますが、私が思うにそれは単に仕事がどういうものかを良く知らないだけであると考えています。知らないものに対して「自信がないからやりたくない」と感じるのは多くの人が例えば裁判員制度に対して感じる様に、当然の事ではないでしょうか。実際に、皆さんはアルバイトなどを行っていると思いますが、それは面倒くさい一面もある一方で、お金を得て、自分で好きなものを買えたり、遊べたりと嬉しい一面もあると思います。私は、彼らがそのような経験を体験せずに今まで生活してしまったから「非希望型ニート」と呼ばれる状態になってしまったのだと思います。

そこで、私が考えたのは義務教育である小学校、中学校の期間に就労体験をして、仕事の喜びを味わい、早くから職業意識を高める事です。しかもそれは私たちが経験した(?)ような一日や二日の職場体験ではなく、一週間とかの長期間に渡って行うことが望ましいかもしれません。そしてその分の報酬ももらい、仕事とは何かといった働く事の意義や面白さを理解できるようにすれば良いと思います。働く場所は、例えばコンビニでも農家でも公務員でも、その人が将来なりたい職業をやれば良いと思います。

要するに若い時から義務として、就労体験をさせて職業意識を高める事ができれば、少しはニートを減らす対策になるのではないかと考えました。

 

以上が、私が考えたニート支援、対策の理想の姿です。

 

9.考察

 

ニートと呼ばれる方の半数以上の人が「働きたい」という思いを抱えながら悩んでいます。

彼らが「働けない理由」は、今見てきたように自分で蒔いた種でもなければ、自己責任ということで簡単に片付けられるものではありません。乗り越えられない個人が問題なのではなく、雇用環境の問題を筆頭に、乗り越えさせない社会の問題だと私は考えています。よってニートの問題を解決するために政府の役割は非常に大きいと思います。

2006年度のニート支援に使われた金額は総額で約700億円だそうです。多いか少ないかは個人の判断ですが、私はそれでも救われていないニートの方が現在も多くいるという事から判断すると、それでも少ないと考えます。最近では、政府の公益法人むけ支出の3500億円が無駄であったというような、無駄なお金の使い道が多く報道されています。こういったお金を是非、ニート支援の方に向けてほしいと考えています。低所得者に対しての援助や支援している民間企業、NPOに対しての援助など使い道について考えられることは多いです。麻生首相は就任後の所信表明演説で、「困っている若者に自立を促し、手を差し伸べるための新法も検討する」と述べていました。この言葉に期待して少しでも早く、良い方向に進むように見守っていきたいと思います。またもしニートに対して間違った

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

ひきこもり・ニート・不登校の支援 竹中哲夫

希望のニート 二神能基

厚生労働省HP

読売新聞

他多数のニート支援に関するHP

 

 

 

 

 

 

資料

<東京都の政策>

相談窓口の対象年齢の拡大

各都道府県はニートの人々に対して相談窓口の設置を行っている。そしてその対象年齢は18歳未満という規定を設けていた。しかし東京都では11月21日、これまでの規定を見直し、20代以上にも心の悩みや就労の相談に応じる窓口を来年度から設置する方針を固めた。これは他の都道府県に先駆けての政策らしい。

 

<文部科学省>

文部科学省では学校関係も管轄していますが、若者の就業観や就労観の低下がニート増加への原因と考え、キャリア教育に重点をおくようになりました。生徒が学校を離れて、地元の保育施設やスーパーマーケットなどで、15日に渡り職場体験をして就労することや、予防授業を総合的な学習時間で行うなどの対策を推し進めています。

 

<経済産業省>

ジョブカフェ

若年者就業支援センターとも言われ、15歳から34歳までを若年者とし、能力向上、就職促進を目的として、職業紹介、職場体験、カウンセリング、雇用に関したサービスを提供しているサービス。各都道府県に配置されていて、地域の実情に合ったサービスを受けられるようになっています。

 

<厚生労働省>

YESプログラム

「コミュニケーション能力」「職業人意識」「基礎学力」「ビジネスマナー」「資格取得」といった仕事に必要なスキルを身につけることを支援するプログラム。

 

<その他>

独立行政法人雇用・能力開発機構が運営する、

ヤングジョブスポット

主に就職に関する様々な情報や相談を受け付け、インターネット、新聞・雑誌、初歩的なパソコン講習などを無料で利用できる他、職場見学、企業家などの講演が行われていた。

以前は国内の各地で運営されていたが、税金の無駄である・非効率であるとして2008331日をもってすべて廃止された。経済産業省の事業であるジョブカフェが代替的な役割を果たしている。なお、閉鎖されたヤングジョブスポットの一部の業務については、独立行政法人雇用・能力開発機構各道府県センターのキャリア形成支援コーナーなどで業務を引き継ぐ形となった。