自然にやさしく?

                        1h050091−7 岩見 元気

 

 

はじめに

環境問題と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろう?地球温暖化?ごみ問題?酸性雨?私は今までこのような世間一般、新聞、テレビで騒がれていることに大変興味を持ちゼミの発表でも取り上げ、調べることによって、人より少しは知識があると思っていた。

今回はそんなのぼせ上がった男が、自分の無知にショックを受けた環境問題を取り扱おうと思う。

 

日本人は、八百万の神を畏れ自然とともに生きていた。豊かな自然に囲まれうまく共生してきたのである。戦前までは。

戦後。高度経済成長を経験し、日本は経済大国となった。今も日本は緑の国だと言われている。日本の森林面積は約70%。中国、イギリスの10%台(朝日新聞から)と比べれば恵まれており、確かに緑の国である。

経済も成長し、緑も70%。まさに理想の国である。

 

 この理想の国で起きている環境問題について、私の住んでいる神奈川県の西部を中心に、今回は発表していきたいと思う。

 

今回の課題

@     クマなど、動物の被害が増えたのはなぜか?

 

A     緑とは何か?

 

B     落ち葉はごみか?

 

C     ダムは必要か?

 

D     なぜ水不足が起きるのか?

 

 

@近年各地でクマに襲われ怪我をする被害が報告されている。私も8月長野の山奥にいたのだが、クマが出るということで、恐れ、退治することを望んでいた。しかし、なぜ近年になってクマの被害が多発するようになったのだろうか?

 

A山には緑が多く、人間を癒してくれるという。この緑とは本当は何を指すのだろうか?

 

B人間は落ち葉を広い集め、燃やす。公園、道路などはきれいに掃除され、人間の好みの状態になっている。しかし、本当に落ち葉はごみなのであろうか?

 

C2001年、長野県で脱ダム宣言が行われた。ダムは公共工事として、経済を潤わすために数多く造られ、多くの村が消えてきた。人々の生活用水としての水を確保するために必要であるという。果たして本当なのであろうか?

 

D最近水不足が問題となることが多い。私の住んでいる神奈川県でも10年ほど前水不足になった。それまで神奈川県は水資源に恵まれた土地であると言われていた。しかし、ダムの水は消え危機を迎えていた。今まで雨が降らない日が続いても川には水があったそうだ。しかし近年水の量が目に見えてすくないという。なぜだろうか?

 

 

 

 

今回お世話になった方。

緑と水源を守る会 代表 柏木六郎さん

         副代表 諏訪部眞千子さん

 

 昭和59年 南足柄の狩川上流、水源近くに横浜市の休暇村施設が建設されることとなる。これに反対し、建設を中止させたのがこの会である。

 現在は林道造りに反対運動を展開するが、ほぼ完成に近く、彼らの意見は無視され続けている。

 柏木さんは85歳。お会いすると本当に元気で、データをすべて頭の中に正確に保管している。自分のことよりほかの人のために身銭を削り24年間活動してきた。

 

 

 

 

 

現状

日本では戦後復興のため、森林を切り倒し、スギ、ヒノキなどの針葉樹を植えた。これらは日本の林野庁の政策であり、林業家は利益の多く出るスギ、ヒノキを売ることによって財を得ていた。

日本の森林はそれまで自然林と呼ばれる広葉樹林が主であった。戦争のため資材が必要となり、広葉樹林は伐採され、戦後はそこに補助金のついた針葉樹を植えたのであった。また、日本の林業は、次々と広葉樹を伐採し、日本の森林を針葉樹の人工林へと替える政策を続けた。現在では日本の人工林は森林全体の40%を超える。

日本のダムの数は建設中のものも含めると約3200ヶ所。日本は外国に比べて川の勾配が大きい。国土が狭く山が多い中を流れているためである。このため容量が小さく雨の多く降る日本の洪水をすべて抑えることは不可能なサイズである。水は人間が生きていくため、産業を発展させるためにはなくてはならないものである。この水の確保のため、ダムは次々造られているのである。またダムには治水の効果も言われている。一度に多くの水が流れないように集め、渇水期には水を流す。ダムでは水力発電も行われている。

南足柄市について見ると、現在森林管理のための林道が建設されている。人工林は人間の手入れがなければならない林であるため、県は林道工事を推し進めている。この林道は水源涵養保安林に造られ、水源税という神奈川県で最近作られた財源を元に行われている。この林道を造ることによって、林業を活発化させ、水源を保全しようという考え方である。この税金は近年の水不足から、水の利用者に水源のための費用を負担してもらい、水への関心を高めてもらおうと、1世帯あたり約1000円を徴収しているものである。南足柄市を流れ、市民の生活用水となっている狩川は酒匂川に続いており、この酒匂川の水は、横浜市、川崎市など、県内の多くの市町村の水道水となっている。ほんの40年ほど前の日量6万トンの水が流れていた狩川は現在では1万5千トンしか流れない川になってしまった。このため南足柄では巨大なタンクを作り、夜間に水をためそれを流したり、墓の真隣に井戸を掘り、その水を活用したりしている。

 南足柄の豊富な水は企業を呼び込んだ。富士フイルム、アサヒビールの工場など、みずが必要とされる産業には魅力的な町だったのである。しかし現在は水不足のため富士フイルムでは新鮮水を3度4度と再利用しており、アサヒビールはいくつも井戸を増やしてやっと生産しているという。

 一般の家庭でも昔から使っていた井戸が枯れてしまい、またさらに深くまで掘り今は使用しているということである。

 

 

 

 

問題点

 現在日本の森林の40%を占める人工林はほとんどが放置されたままになっている。なぜなら、近年外国からの木材がとても安く入ってきており、国内の木材は売れない状況に追い込まれているからである。木を切って運び出すだけマイナスになり、林業で生計を立てることができず、林業家が大変不足しているのである。前述したように人工林は人の手が加わらなければ森林としての機能を果たさず、荒廃していく。割り箸でよく聞く間伐材とはこの人が手入れするとき出る木材のことである。

 

 

木の種類

保水力

陽射し

落葉

根の張り

地下水

木の実

下草

動物

人工林

針葉樹

ほぼなし

ほぼなし

なし

浅い

なし

なし

なし

なし

自然林

広葉樹

抜群

抜群

あり

深い

あり

あり

あり

あり

 

表のように、人工林に植林される針葉樹はクロキと呼ばれ、根は浅く、常に葉をつけ、地に陽の光を通さない。根が浅く、下草もないため土壌が流され、根がむき出しになり、大雨が降ると3、40年代の木でも倒壊し、さらに土砂崩れを巻き起こす。

それに比べ、自然林と呼ばれる広葉樹林は地に深く根を張り、実をつけ、紅葉し葉を落とす。落ち葉は虫などの生物によって分解され、スポンジのような腐葉土を造る。このスポンジのような土によって年に2センチという気の遠くなるような時間をかけて、地下に水がしみこみ、川の水、地下水が生まれていく。これが森林が緑のダムといわれる所以である。また、動物や鳥たちは実を食べ、種を運びまた新たな命を増やしていく。地に深く張られた根は土壌の侵食、土砂崩れなどを抑える。陽の光も差し込み、下草もたくさん生える。

 人工林は間伐、枝打ちを行うことによって陽の光が差し込み、下草、広葉樹が生まれてくるが、針葉樹の成長が早すぎるため何度も手を入れなくてはならない。が、前述したように現在林業は衰退が激しいためほとんど手の行き届かない状況が続いている。

 現在南足柄で行われている林道工事は林業のためという名目であるが、間伐の跡などは見られない。林業家よりも堰堤を造る土木作業員が主であり、生コン車が何度も行き来している。そして掘った土は積み上げられ、大雨が来ると流される。水源涵養保安林といわれているが、そこには急な斜面にまで針葉樹が植林され、あちこちで土砂崩れが起きている。

 ダムはこのように全国の森林が保水力の少ない人工林に変わったことにより、降った雨がそのまま川に流れるため必要になり、また公共事業として経済的な目的から作られている。林道も主に県の補助金を地元の事業を潤すために使うことが目的となっている。ダムは底に砂をためてしまい、それを取り除く工事費、さらに維持費がかかる。アメリカの元ダム開発責任者であるビアード氏は過去に来日し「ダム建設の時代は終わった」と語った。神奈川県の県西にある丹沢湖も一度水がほとんどなくなったことがある。

 ダムの建設は川の生態系を著しく変化させた。人口の川は魚の住める環境ではないのだ。人口の森もまた、森の生態系を著しく変えた。自然林が消され、人工林になり、動物のえさやねぐらは失われてしまった。特にクマなどの大型の動物は冬眠前に大量のえさを食べ、太ってからねぐらへ入る。クマは両方なくされてしまったのだ。それどころか人に危害を加えるということで殺されてしまうクマも出てきた。本来クマはベジタリアンであり、あとは昆虫や、サワガ二を食べる程度、さらに大変臆病であり、人間とあまりかかわりたくないと思っているのに。森は動物と植物の密接な関係によって造られる。(下図)

 

 

自然林の広葉樹が生長し、実をつける

     ↓

クマ、鳥などが食べる

     ↓

糞をする・種を落とす

     ↓

落ち葉などとともに土を造りそこから芽が出る

     ↓

土が水を造る

   ↓

川が潤い、魚が繁殖する

 

 

 


解決策

問題点でも指摘したように日本の林業は衰退の一途をたどっている。なぜなら外国の木材が安いからである。誰でも記憶の片隅にあるように、東南アジアなどの熱帯雨林はものすごい早さでなくなっている。この1番の消費国は日本であり、ここから安い木材を買って、地球上の自然を壊しているのである。これに加えて国内の自然も壊しているのである。政府は米のように林業にも補助金を出し、保護するべきである。国内の材木を使うことによって林業も潤う。これは将来的には人間が生きる上で絶対に必要な水を守ることにつながり、地球の資源を守ることになるからである。さらに、森林の保水機能も高まり、この緑のダムによって、莫大な費用のかかるコンクリートのダムは必要なくなり、財源はできる。ただ、この案については時間的な問題がある。(下図)

 

人工林

 

国産材

 

 

 

外材

 

熱帯林

放置

×←

高い

×←

建築業者

→○

安い

→○

減少

手入れ

○←

安い

○←

建築業者

→×

割高

→×

保全

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

補助金

 

 

 

 

 

 

 

 

現代は地方分権の時代である。各地域には意外と多くの環境保護団体、NPOなどが存在する。地方行政は地元に根ざしたこのような団体の意見を積極的に取り入れるべきである。やはり地元のことは地元の人が1番よく知っているし、大きくなりすぎ、経済が先行する国家では最適な判断は難しくなってしまっているのだと思う。今回の資料の中で良い例があるのだが、日本の政治形態では知事の権限が強い。これを活かすのも大変有効な策である。

 

 現在日本では経済格差が広がっている。これと同じように、自然格差も広がっていると思う。都会ではあまり緑と触れ合わず成長してゆく子供が増えている。反対に緑に囲まれ自然とともに成長している子供もいる。これからの自然保護は、水も酸素も食料も、もはや自分の町からは何一つ生み出せなくなっている都市の市民が立ち上がり、お金も力も出し、都市の生命線である自然を残してくれている郡部の人たちに、理解と協力を求め、保全のプロである自然保護団体にも入ってもらい、公共事業を導入して、税金を使って進めていかなければ不可能である。このためには、今税金を使って行われている無駄を見直していくことが重要である。

 

 動物は一度絶滅してしまうと絶対によみがえらない。これは本当に大変なことである。また、野生ではなくしてしまうことも生態系に大変な危機を与えてしまう。このことから、奥山は本当の自然林として残し、植林は森の2〜3割までの持続可能な林業に戻すことが重要である。また、森から出てきてしまった動物は殺すのではなく、自然林に復元した奥山へ返すべきである。では、現在の40%を越える人工林を元の自然林に戻すためにはどうするべきか?答えは人工林を伐採し、放って置くのである。自然の力は人間の考えているよりはるかに強い。南足柄市の例を持ってくると、現在山のほとんどは人工林になってしまっている。そして多くの林道が造られている。その林道を走るととても力強い光景を見ることができる。それは、林道の脇、根の浅い針葉樹のため土砂崩れを起こした部分、植林されず伐採後放置されていた土地から、ヤシャブシなどの広葉樹が陽の光に誘われて伸びてきている光景である。まだ間に合う。山は一つの県だけではなくいくつかの県にまたがって存在している。1つの県からでも行動を起こし、動物の生活領域を戻すことを始めれば、次第に自然は回復していき本来の姿を取り戻すことが可能になるであろう。

まとめと考察

 今回私は市民の側からのアプローチとしてこの発表をまとめた。なぜなら市民と行政との話し合いの議事録、新聞記事を主に読み参考にしたのだが、第三者としてみて明らかに正しいほうを伝えたかったからだ。神奈川県の水不足のとき、新聞には当時の県知事が空を見上げ、雨を望む写真が載った。40年ほど前まではいくら雨の降らない日が続いたからといって水が枯れるなどということは1度もなかったという。それは自然林が山に残り、年2センチというゆっくりとしたペースで森が水を蓄えていたからである。土砂崩れなどもほとんど起きることなく、川には魚、森にはウサギやいのしし、鹿などの多種多様な生物が生き生きと暮らしていた。現在は雨が降れば、降っただけの水が川へと流れ込み、ダムの容量も超えるため放流し、鉄砲水が起き、何ヶ所にも及ぶ土砂崩れが起き、沢は消え、魚はいなくなり、ウサギ、キジ、山鳥はほとんど姿を消した。クマなど大きな動物はえさが足りなくなり、人里へ出ては殺される。

 日本は経済的に豊かになった。人の心は豊かになったであろうか。

 日本人には決まった宗教がない。これについて「日本人の宗教は金」とアグネスチャンはいった。戦後の日本を見ていったそうだが、これだけ鋭い指摘はないと思う。ダム建設について言えば、それによって起こる自然破壊、震災などの危険は素人ですら容易に想像がつく。南足柄の例で言えば、目的地まで到達したにもかかわらず、現在も続く林道工事。そして一番顕著なのが「親水公園」の事例である。県は財政難、多額の借金をしながら狩川に親水公園なるものを造った。柏木さんなどは過去の経験からすぐに反対をした。しかしすべて計算してあるからと無視され、この計画は1億円をかけて実行された。そして1ヵ月後の大雨によって流れてきた石ころにより、水の路として作ったところには全部、大小さまざまな石がビッチリと詰まって、水の路をふさいだ。このため水はコンクリートで固めた広場の上を勢いよく流れ下っていた。その後何度も県民の血税を使い石ころの撤去作業が行われてきたが、あまりにも何度も流されるため現在はひどいことになっている。これは事実である。

 

 人間は“自然にやさしく”という。これはあまりにも上からものをいった言い方ではないだろうか?人間は自然にいかされている。生きるために必要不可欠な水、酸素はすべて自然からもらっている。ただ自然を壊し、それを元に戻すために四苦八苦している。南足柄市の例で見たように、自然は自然のままにしておけば大部分は元に戻る。ただそれには長い時間がかかる。人間にとって長いと感じる時間でも自然にとっては短い時間なのかもしれない。昔習ったが、地球の歴史を1年とすると人類はたった1秒の中で地球をめちゃくちゃにしたのだから。

 科学が発達し、世論も環境志向になりつつある今、自然を破壊しない産業、企業はたくさんある。反対に、たとえばレジ袋会社など、環境対策によって衰退したほうがいい企業の従業員の雇用問題などは、無駄遣いをなくすことによってどうにかなるのではないだろうか。地方の裏金問題が次々と発覚し、不正を正せる時代になってきた。環境対策は地方から広がる形でなければ成功しないと思う。比較的権力の強い知事、NPO、環境保護団体などの活動、そして何より私たち一人ひとりが意識を変えることにこれからの未来がかかっているのではないだろうか。

 

『自然は人の手では造れない。なぜなら自然とは、人の手が入らないのが自然だからだ。』

 

 

 

[参考資料]

・ 緑と水源を守る会会報

     クマともりとひと 日本くま森協会

     柏木さん、諏訪部さんのお話

 

 

 

おまけ

夏に西日本を旅してきたが、日本にはまだまだたくさんのいいところがあると思った。緑の豊富なところの人たちはみんなあったかかった。時間がゆっくり流れ、笑顔が多い。都会と違った。

何が言いたいのかというと、今回の発表に関してもそうだが、やはり行ってみないとわからないということ。今回お世話になった柏木さんはかなり頭のいい人であった。85歳の古老。頭がいい。なぜか?それは実際の現象の中に身をおき、そこで起きたことに対して考えるということをしてきたからではないだろうか。つまり本当に多くの経験。今の若い人たちは情報、勉強(授業)の中から知識を得る。これは簡単であり、多くの知識を知ることができるが、現実の世の中で起きることは様々に変化し、それに対応できる知識のほうが大切なのではないだろうか。

このゼミにおいても現地主義が大切だといわれている。やってみてはじめてわかることはかなり多い。そしてそこから疑問が生まれ、それを自分なりに解決することが一番楽しい勉強になり、一番身につく勉強なのではないだろうか。

3年間通して僕はそう思った。

 

2,3年生ジョイントがんばってください!