DVと行政の関わり

 

                       1H070467−1 竹重 慎太郎

 

〜動機〜

某ドラマで、DV(domestic violence)のシーンを見て、プライベートな分野に国はどの程度介入できるのかまたは、しているのかという疑問を持ちました。

他人が「DV」では?と思っても、本人は単なる「ケンカ」とかたづけてしまうこともあるかもしれません。このように他人が介入しづらい問題に対してどのような対策を国は持っているのか調べてみようと思います。将来、知り合いに「DV」に悩まされているというような相談を受けた時に、どのような公的な行動をとればいいのか参考になればいいと考えています。

 

〜定義〜

まず、DVとは何を意味するかについて、明確な定義はありませんが、一般的には「配偶者や恋人など親密な関係にある又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いようです。ただ、人によっては、親子間の暴力などまで含めた意味(文字通り家庭内暴力として)で使っている場合もあります。そこで、内閣府では、人によって異なった意味に受け取られるおそれがある「DV」という言葉は正式には使わず、「配偶者からの暴力」という言葉を使っています。

 

〜法律による処罰〜

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(配偶者暴力防止法)というものが平成13年に配偶者からの暴力にかかわる通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的に制定されました。この法律の重要な点は大きく分けて2点あり、その1つ目が配偶者暴力総合支援センターを中心とした被害者の保護や、自立支援態勢の確立。そして2点目が裁判所における保護命令手続きです。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜配偶者暴力総合支援センター〜

都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設において、配偶者からの暴力を受けた被害者または、受けるおそれのある人の相談を受け、必要に応じて被害者の心身の健康を回復させるため、医学的または心理学的な指導(カウンセリングなど)を行ったり、被害者が自立(暴力を振るう配偶者から自立)して生活することを促進するための支援を行ったりすることが主な役割。また、一時保護を婦人相談所、又は厚労省公認の施設(母子生活支援施設、民間シェルターなど)で行っています。

 

※婦人相談所・・・各都道府県にそれぞれ女性のための相談窓口として設置されている。

         Ex. 東京女性相談センター、千葉県女性サポートセンターなど。

 

〜保護命令手続き〜

 

・ 保護の対象・・・身体的暴力が保護の対象。被害者が更なる配偶者からの身体に対する暴力によりその生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めたときは、保護命令を発する。

 

・ 保護命令の種類

@     接近禁止命令・・・6ヶ月間、被害者の身辺につきまとうこと、被害者の住居(同居する住居は除く。)や勤務先等の付近を徘徊することを禁止する命令。

A     退去命令・・・夫婦等が同居している場合で、被害者が同居する住居から引っ越しの準備等のために、加害者に対して、2ヶ月間、家から出て行くことを命じ、住居付近を徘徊することを禁止する命令。

 

・ 保護命令違反の場合

 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金処せられる

 

・ 保護命令手続き上の問題点

証拠の認定が困難・・・DVが行われたという客観的な証拠が乏しく、事実認定に困難をきたすことが多い。そのため、配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対しDVにつき相談をした事実等を申立書に記載し、裁判所が相談等の状況や執られた措置の内容等を記載した書面の提出を求める制度が設けられている。つまり、事実関係につき相談機関が調査をした内容が証拠として認められるそうです。しかし、現実問題としては、相談機関としては裁判所に保護命令の申し立てをするように促す程度のことしかしておらず、事実関係についてきちんとした調査がされていないのが実情です。

 

DVの種類〜

@     身体的虐待・・・殴る・蹴る・突き飛ばす・髪を引っ張る・押さえつける・首を絞める・物をぶつける・物を使って殴る・物を壊す・熱湯や水をかける・煙草の火を押しつける・唾を吐きかける・部屋に閉じ込める・怪我をしているのに病院へ行かせない、などといった一方的な暴力行為。

A     精神的虐待・・・怒鳴る・日常的に罵る・無視する・無能役立たずと蔑む・他人の前で欠点をあげつらう・友人と会わせない・終始行動を監視する・出て行けと脅す・別れるなら死ぬと脅す・子供や身内を殺すなどと脅す・ペットを虐待してみせる、など。ストレスとなる行為を繰り返し行う。

B     性的虐待・・・性交の強要・避妊をしない・特別な行為を強要する・異常な嫉妬をする、など一方的な行為で、近親間強姦とも呼べる行為。

C     経済的暴行・・・仕事を制限する・生活費を入れない・支出した内容を細かくチェックする・家の金を持ち出す・買い物の指図をする、など。

D     社会的隔離・・・近親者を実家や友人から隔離したがる・電話や手紙をチェックする・外出を妨害する、など。

 

こうした暴力虐待行為の現場に子供が居合わせることが多々あります。子供に暴力を見せつけることも、被害者と子供双方に対する虐待です。子供のいる家庭暴力事件が発生した場合、約七割の家庭で虐待を受ける母親と子供が目撃し、さらに、その三割の子供たちが、実際に父親などからの暴力を受けていることが報告されています。また、男女の取り扱いについては、欧米では古くから女性側からの暴力に関しても関心が寄せられています。日本では女性が被害者になることが多いことから女性への配慮が重点的に行われていました。しかし、相談件数等の増加などから、次第に男性への暴力も注目されるようになっています。これら「近親者からの暴力」においては、警察は「民事の問題」として介入に消極的でありました。しかし、配偶者暴力防止法の施行がきっかけで対応を変え、介入する動きも出てきました。

 

DVの実態〜

平成19年の相談件数は配偶者暴力相談支援センターと警察をあわせて、83070件(女性98%)。そのうち保護命令を発令した件数は2186件。

 

 

 

 

 

 

DV解決に向けて〜

さて、ここまで配偶者暴力防止法によるDV解決の取り組みを取り上げてきました。この法律が施行された平成13年以降、内閣府や警視庁のHPなどでも比較的説明が分かりやすく載っているので、警察や各都道府県の相談所などに相談できる状況は整えられていると思います。しかし、公的機関が私的な分野に介入することには限界があります。まず、相談がなければ公的機関は動くことはありませんし、被害者本人がDVではないと言い張れば保護することはできません。しかし、なかには相談したくてもできない状況に追い詰められている人もいるはずです。そのような人を救い出すため、またDVという問題を起こさないために一番重要だと思っていることは、近所、職場など身近なコミュニティの間でコミュニケーションです。特に近所でのコミュニケーションです。近所付き合いをしている家庭が昔に比べて減少していることもDVを生み出す状況を作りやすくしていると思います。逆に、昔の長屋のように近所が和気あいあいという環境になればその家庭である日、怒鳴り声などがあっただけで「昨日何かあった?」と聞く人もいるでしょう。このような感じで近所が密接につながればDVを防ぐだけでなく、犯罪の防止にもつながるだろうし、急病になった人の救助などにもつながると思います。その他にも、近所付き合いを心がけることで気持ち的にも豊かになるではないでしょうか。まずは、近所の人に会ったらあいさつから初めてみましょう。そこからDVを防ぐ環境が作られていくと思います。

 

〜参考文献〜

・配偶者からの暴力被害者支援情報: http://www.gender.go.jp/e-vaw/index.html

 

・千葉県女性サポートセンター:http://www.pref.chiba.jp/syozoku/b_dankyou/main/dv/support/supportcenter.html#2

 

・配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律:http://www.gender.go.jp/dv/dvhou.html#2