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松田拓悟「未成年者飲酒禁止法の執行と実態」

 

 

未成年者飲酒禁止法は大正11年3月30日に公布され、その二日後の41日に施行されたことに始まる。当時定められていたことは主に、@満二十歳になっていない者(未成年者)が飲酒することを禁止する A親権者は未成年者が飲酒しないように監督し、飲酒しているときには制止しなければならない B酒類を扱う営業者は未成年者に酒類を販売、供与してはいけない C未成年者が飲酒する目的で酒類を所持している場合は、行政の処分により之を没収、廃棄しその他必要な処置をとる という内容のものだった。その後現在まで未成年者飲酒禁止法は続いてきたが、途中四回の改正がされた。その内容は主に、D酒類を扱う営業者は未成年者飲酒防止のため、年齢確認その他必要な措置を講じるものとする(H13) E Bの規定に違反するものは五十万円以下の罰金に処す(H12) F Aの規定に違反するものは科料に処す(H12) というものだ。

Houko.com

(http://www.houko.com/00/01/T11/020.HTM)

 

そもそも何故未成年者は飲酒してはいけないのかという疑問があるが、古くは酒を巡って兵のケンカが多発したから酒の供給を抑える意味で規制を始めたという説もある。しかし一般的には、 ・脳の神経細胞を破壊し集中力や記憶力が低下する ・生殖機能の低下 ・アルコール依存症になりやすい ・アルコールを分解する仕組みが未熟である などが主に理由にあげられる。

社団法人アルコール健康医学協会

http://www.arukenkyo.or.jp/

 

世界的に見ても飲酒を年齢により制限する法律がある。例えば、日本から近い韓国では19歳未満の飲酒を禁止している。またアメリカでは州により差はあるがだいたい21歳、アフリカは多くの国が16歳から18歳までの範囲で飲酒を制限している。サウジアラビア、クウェートなどの中東では法的に飲酒自体が禁止されている。さらにヨーロッパではアルコール度数により飲酒の年齢制限に差をつけている国もあるという。イギリスではビールは16歳、スピリッツとワインは18歳から認められる。オランダの場合はアルコール15%未満は16歳から、15%超の酒類は18歳から飲むことができる。このオランダの方法は「○歳以下飲酒禁止」とばっさり切り捨てるよりも具体的で説得性があるように思える。他各国の飲酒禁止年齢を見てみても日本と同じ20歳の国はあまりないようだ。また、ヨーロッパなどでは規制年齢対象への酒類の購入自体を禁止している国が多い。日本でも法律で飲酒禁止とするのではなくて、購入禁止とすることを求める動きも出てきているようだ。そのような背景には、おつかいと言われると明らかな未成年に対しても店側が酒類を販売してしまう現状があるようだ。

財団法人 日本禁酒同盟

(http://nippon_kinshu_doumei.at.infoseek.co.jp/topic-alcohol-minimum-age.html)

主婦連合会

http://shufuren.net/modules/tinyd9/index.php?id=53

 

テーマ確定とレジュメ報告の際に、「高田馬場駅前の交番の人は、未成年がいるであろう早稲田の学生の飲み会をどう思っているのだろうか」という質問があったので実際に高田馬場駅前の交番まで話を聞きに行った。しかし、自分は早稲田の学生でゼミの活動で未成年者飲酒禁止法について調べていることを伝えいくつか質問をさせてもらいたいとお願いしたところ、“そういうことは警察署の方に聞いてください。自分たちは勝手に答えてはいけないことになっている。警察署に行けば窓口があるからそちらに問い合わせてください。”と無愛想に、こちらには何も言わせないように追い払わされてしまった。

 

実際に警察署に行ってまた交番のときのように頭ごなしに扱われても無駄足になると思い、戸塚警察署のほうには電話で問い合わせることにした。電話すると二回ほど回されて少年課のアラタニさんに電話をつながれた。アラタニさんは、“早稲田の学生が高田馬場周辺で飲み会などをしているのは知っているが、そこに未成年がいるかどうかまではこちらは把握していない。法律で未成年の飲酒は禁止されているので、そういうところは学生同士で気をつけて。お酒を提供している店がいけないけど、18,19歳がお店に行ってお酒を飲んでお店の人がわかるかっていったら分からないと思う。かといって、ロータリーなどで顔だけ見てもお酒を飲んでいるか分からない。”と答えた。さらに、“未成年でも中高生が飲酒していたら補導するが、大学生だったらしない。年相応だからね。ただ飲んではいけないですよ。”とまで言った。また、警察署の人ではなく現場の交番で働いている人に意見を聞きたいというと、はじめは交番の人に話を聞いても一向に構いませんよといっていたが、最後には“交番にはいつ事件が来るか分からず、常にピリピリした状態だからそういったインタビューはできない。”と断られてしまった。

 

交番の人にまったく話を聞いてもらえないとは思っていなかったので予定とは違ってしまったが、おまわりさんの顔色や声色から察すると未成年者飲酒禁止法のことは答えにくいようだった。私のアルバイト先の居酒屋の店長とは日程が合わなくて話を聞くことができなかった。今回の発表では時間的に準備にあまり余裕がなかったが、また次の発表も同じテーマでやるとしたら警察署に直接話を聞きに言って、交番の人にも何とか話を聞きたいと思っている。

 

このテーマについて調べるに当たって、本物の情報をなるべく深いところまで知りたいと考えていたが実情はそうはいかなかった。ただ、この法律の存在意義とはなんだろうという気持ちはより強まった。この法律の根本的な部分は大正時代に定められたものなのだから現代においてフィットしないことは仕方ないことかもしれないが、それを野放しにするのではなく抜本的に法改正を進める動きがあってもいいと思う。しかしながら、最近になって年齢確認を強化してきているコンビニエンスストアやスーパーが出てきたことは評価できると思う。