080619kawakami

川上かおり「後期高齢者医療制度の問題点」

 

平成204月からスタートした後期高齢者医療制度について、制度の内容については、もう周知のことと思うので、後期高齢者医療制度の問題点について調べることにした。

まず何故この制度が作られたかというと、もともと、この制度は、膨張する医療費を抑制するための管理をやり易くする狙いから、大きな割合を占めている75歳以上を後期高齢者とひとくくりにして分類し、ターゲットを絞ったうえで医療給付の抑制をやりやすくしようとする国の考え方が、設計の根本にある。そもそも、後期高齢者への医療給付は後期高齢者自身の負担で1割、その他の医療保険者から後期高齢者支援金として4割、そして残りを国や県・市町村からの公費として、まかなう仕組みになっている。したがって、今後この後期高齢者の数が増えていったとき対応して医療給付費も増えていくわけだが、その増加分をこの中のどこで増やしていくのか、という問題になってくる。国の財政が厳しい中で、公費の部分で大きく増やしていくことは難しい。現役世代が中核となっている後期高齢者支援金の部分も、高齢化が進んでいるわけだから、将来的には自然と減少するだろう。そうなってくると、増える一方の後期高齢者において、保険料の負担割合が全体の1割のままではとても済まなくなるから、保険料の値上げに踏み切るこの制度が作られたのである。私は後期高齢者について調べる前までは、高齢化が進んでいるわけだし、このままだと私たちの保険料もどんどん上がっていくのだから、後期高齢者にも負担する額を少し増やしてもらうだけのことではないのかと思っていた。しかし反対意見が多いということは後期高齢者医療制度の内容に問題があるのだから、それをもうちょっと見ていきたいと思う。

反対意見で多く言われているのは75歳以上の人が「後期高齢者」と呼ばれることである。何故75歳なのかは調べてもわからなかった。ちなみに65歳〜75歳未満の高齢者は「前期高齢者」と呼ばれるらしい。私は後期高齢者という言葉については何も思わないが、お年寄りの人にとってはやっぱり不快なのだろうか?報道等によれば制度の名称は「長寿医療制度」に変更となる模様である。

まず問題点の1つは後期高齢者が増え、医療給付費が増えれば、保険料値上げか医療水準が下がる(診療報酬の引き下げ)のいずれか、または両方が実施されることになるということだ。保険料の見直しは2年毎に義務付けられているが、さらに後期高齢者の人数が増えるのに応じて負担割合も2年ごとに引き上がることになる。

2つ目の問題点は受けられる医療が制限されるということ。これは保険者から医療機関へ支払われる診療報酬が ※1「包括定額制」になるためである。

1 医療機関が行ったそれぞれの医療行為に対して診療報酬が支払われるのではなくなるため、いくら医療行為を行っても、一定額以上の診療報酬は支払われない。医療機関では、赤字になるような医療行為を続けることが出来ないため、患者にとっては、受けられる医療行為が制限されてしまうということ。

3つ目の問題点は保険料を滞納すると保険証を取り上げられることである。保険料は年金から天引きされる。ただし年金年額18万円以下のため現金で納める人が保険料を滞納すると※2「資格証明書」が発行され、保険証は返却させられる。 さらに、特別の事情なしに1年6カ月保険料を滞納すれば、保険給付の一時差し止めの制裁措置がとられる。保険証がないと病院に行くことも難しい。そうなると病状も悪化して死に至るかもしれない。

※2 医療機関窓口で、一旦医療費を全額支払い、後日、申請して払い戻し(保険で給付される医療費)を受ける制度

4つ目の問題点は保険料を後期高齢者医療広域連合が決めていくため、各市町村は独自の保険料減免などの措置が困難になるということ。

5つ目の問題点は医療格差である。この新制度のためにつくられた「高齢社の医療確保に関する法律」では、「厚生労働大臣は医療費適正化目標の達成が著しく遅れている都道府県に対して他の都道府県と異なる診療報酬を導入できる」こととなっている。そうなると将来的には、医療費の抑制が下手な県において診療報酬の大幅な引き下げによる医療サービスの劣化が起きる可能性もあり、どの県に暮らしているかによって、その医療格差が深刻になってくる恐れもある。(保険料は同一県内においては一律となっている)

調べていると問題点ばかりがでてきた。この問題点を見ると、後期高齢者医療制度はひどい制度だなと思ってしまう。始めはこういう制度ができるのも仕方ないと思っていたが、やっぱり後期高齢者医療制度に賛成はできない。しかし私たちが払っていける保険料にも限度はある。若者にも高齢者にも納得がいく医療制度はできないものなのだろうか。

反対意見

が多い中、民主、共産、社民、国民新の野党4党が提出した「後期高齢者医療制度廃止法案」は65日、与党側が欠席する中、野党の賛成で可決された。この制度が今後どうなっていくのか、もっと調べてみようと思う。

 

参考文献 http://mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02d.html

http://rekoukikourei.suffas.com/