高速道路が無料になる?

― 道路公団民営化とその後の高速道路 ―

             2008年 1030日 発表

           1050456-9 社会科学部4年 常見 哲朗

 

 

@  はじめに

 

まず皆さんに質問をしたいと思う。皆さんは日本の高速道路通行料が無料になることに賛成だろうか?反対だろうか? 

 

私は休日などに自動車やバイクで高速道路を比較的多く使う。その中でたまに見かける、無料化し、奇妙な無人の料金所だけが残っている一般有料道路とは一体どのような道路なのだろうか?なぜ無料で開放しているのか?という疑問がわいてきた。

 

また、私は普段首都高速道路株式会社の2次下請けの工事会社で、主に元請け会社の管轄である首都高と一般道路の工事、点検、保守のアルバイトをしている。そこでの経験や話を聞いていて、いまだに起きている元国交省官僚の民間大手ゼネコン・建設企業への天下り、談合の存在をにおわせる工事価格の取り決めなど不可解な疑惑がわいていた。

 

小泉元総理大臣が「痛みを伴う構造改革」の中の一環として2005年に道路公団民営化を遂行したことは皆さんの記憶にも新しいことではないであろうか。誰もが聞いたことのある「道路公団民営化」という言葉だが、公団の民営化がどうして必要だったのか、民営化により私たち国民にどのようなメリットがあるのか、民営化して株式会社化した道路公団はどのように変化したのか、これからどうなっていくのか、これらは非常に興味深い問題であると思う。

 

今回の発表では、このような日常生活において疑問・問題を感じたことから、現在の日本の高速道路のあり方、今後日本の高速道路がどのように変化していくのかを考えていこうと思う。

 

A()道路公団とはどのような機関であったのか?

 

(1)  日本の「道路」の定義とは

 

   まず最初に、日本に存在する公道について簡単に説明する。

 

     国道…主に国(国土交通省)が建設・管理する全国の主要幹線道路

     都道府県道…主に都道府県が建設・管理する道路

     市道…政令指定都市において、その市が建設・管理する道路

     林道・農道…農林通産省が管理する特殊道路

     高速自動車国道…各高速道路株式会社が建設・管理する有料道路

          (以前は各道路公団が建設・管理)

 

以上が日本に存在する公道と呼ばれるものである。見ればわかるとおり、違いはその管轄・用途・有料か無料かである。高速道路以外の道路は基本的に国が建設・管理し、高速道路は道路公団が建設・管理していた(現在は各高速道路会社が建設・管理)

 

(2)       道路公団

 

次に道路公団とはどのような機関であったのか、役割は一体何であったのかを説明する。

 

公団設立の背景…戦後、日本が復旧して行く過程で、交通インフラの整備が遅れていたころ、国は鉄道・航空に代わる交通政策の一部として全国に高速道路の建設を計画する。しかし、このころ政府には高速道路建設に当てる予算がなかった。そこで政府は、首都圏を管轄する首都高速道路公団、阪神圏を管轄する阪神高速道路公団、本州と四国に架かる連絡橋を管轄する本州四国連絡橋公団、その他の日本全域を管轄する日本道路公団(JH)、以上四つの特殊法人を設立した。つまり、国に高速道路を作る予算がないので四つの特殊法人にその業務を委託したということになる。

 

道路公団の事業…道路公団の役割は、主に管轄する地域の高速道路の建設・管理である。公団の設立資本金は100%国の出費であるが、道路の建設費・管理費・人件費に関しての財源は原則として国から出ないこととなっていた。そこで、公団はまず財政投融資、すなわち国民の郵便貯金・簡易保険から借金をして資金を集め高速道路を作ることとなった。その後、完成した高速道路の一般利用者から通行料を取ることでその借金を返済していこうという考え方である。これが基本的な道路公団の法人経営の方法で、この方法により、国は国債の発行することなしに(借金をすることなしに)間接的に高速道路を建設できるようになった。

 

(3)「償還主義」と「無料開放」

 

  上記の道路公団の事業において、公団設立当初からあった取り決めが「償還主義」と「無料開放」である。これは、高速道路の料金収入合計が道路建設費・管理費・負債の利子、これら全ての借金を公団が返済し終えたときに道路の管轄は国に返還し、高速道路を無料開放するという取り決めである。つまり国に現在ある一般国道と同様の道路になるということである。

(4) 料金プール制度

  

  これは、高速道路ネットワークを構成する多数の路線について、各路線ごとの採算計画によって別々に料金を設定するのではなく、全路線をプールして(=一体化して)ネットワーク全体で採算を考え料金を設定するという料金設定方式である。さらにそこには、全国一律に⒈km.あたりの走行料金(普通乗用車の場合24.6)を適用するという画一料金制も含められている。

(5) 高速道路と一般有料道路の違い

  

  高速道路と一般有料道路の違いとは、高速道路が上記のように料金プール制を制度としているが、一般有料道路はその道路個別に採算を取っている点である。前者は東名道・関越道・東北道などで、後者は第三京浜道路・西湘バイパス・東京湾アクアラインなどがあげられる。普通、一般有料道路はその制度上、料金が安く、距離も短いことが多い(アクアラインのような例外もある)。私がツーリングで利用した無人料金所がある奥多摩周遊道路は、元は奥多摩有料道路という名称で、公団により借金の返済が終わった道路であったので、1990年に無料化された道路であった。この道路は今現在都道として東京都の管轄にある。

       檜原側旧料金所

 

※東名、名神はすでに無料開放できていた?!

 

 実は、「日本の大動脈」と呼ばれる東名高速と名神高速は、1980年には利用通行料の総額が、建設費・維持管理費を超えて利益が借金総額を超えていた。つまり、このときすでに国の管轄になっていれば、一般国道として通行料は無料になっていたのだ。しかしそれができなかった理由として、上記の料金プール制があげられる。交通量が少なく、採算を取ることのできない東北道・北陸自動車道などの借金を、債務返済後も東名・名神などが肩代わりしていたのである。

 

 

B 民営化への背景 

  以上で非常に簡潔にではあるが、道路公団の仕組みと存在理由を書いてきた。次に、なぜ公団が民営化することとなったのかを見ていこうと思う。

 

 ☆民営化とは☆

 

  日本で民営化と言うと、まず政府の省庁などの一部分を公社化・特殊法人化し、それを全額政府出資の株式会社に改組し、一定期間後に政府保有株を市場に放出していくという方式である。民営化の動機・目的としては、@経済の効率化と発展、A企業の効率化と発展、B財政再建、C所得の分配・再分配、D政治的配慮、などがあげられる。過去に日本で行われた民営化として有名なものをあげると、日本国有鉄道→JRグループ各社・日本専売公社→JT・日本電信電話公社→NTTなどである。

  

 

 (1)巨額の借金

 

  公団方式の料金プール制の下で全国に高速道路ネットワークができたわけだが、その負債総額は2005年に公団民営化が行われるまでに40兆円にも達していた。この数値は2008年度国家歳入80兆円の半分にもなる数字で、莫大な金額である。これは公団が借金で全国に高速を作り、利用者からの通行料でその借金を返済するという計画であったのだが、利用者の割合に比べ採算が取れない高速を作りすぎたため、建設費・管理費・借金の利子などが年々かさみ、借金が莫大に増加していったためである。そして、政府にも国民にもこの借金を返済する能力が道路公団にはないものと見られていた。

 

(2)天下り・談合の横行

 

 一般に官僚として国土交通省(旧建設省)で働いていた人間は、そこでポストの役職につかない場合に大手ゼネコン企業・建設会社などの要職として天下りが頻繁に行われていた。民間企業の取締役・専務などの要職に就いた元官僚は、その会社に有益な仕事(高速道路の建設等)を国・公団から安く入札する。一般に企業がその他企業に仕事を発注する場合、入札制度をとっており、できるだけ安く仕事をする企業にその仕事を発注する。しかし、元官僚と国は癒着が強いためその入札価格を裏で吊り上げていたと言われている。これが談合と呼ばれているものである。これにより民間企業は天下りを歓迎し(高く仕事を入札できるので)、官僚も民間のポストに就いた見返りとしてその企業にとってのブレーンとなっていたのである。俗に言う「官と民の癒着」である。私がアルバイトをしている会社の親受け会社である且都高機械メンテナンスの専務の方も、元国交相の官僚の人であった。且都高機械メンテナンス課長の石田さんに伺ったところ、「その専務が会社に入ってきたときは、実際に工賃の高く会社にとって有益な仕事をいくつか持ってきてくれた」と仰っていた。このことからも分かるように「官と民との癒着」は実際に横行していたわけである。このような工事価格の吊り上げも公団の借金を膨らませた一因であった。

 

(3) 隠れ高速??

 

  高速道路を建設するときには、国交省(旧建設省)が必要と判断した区域を定めて道路公団各社に建設を依頼するという構造になっていた。つまり国が必要と判断しない場所には高速道路は建設できないということである。高速道路ができた地域には、物流の増加・利便性・観光の促進・過疎の抑制など様々なメリットがあるといわれている。そのため地方の小都市などでは高速道路は重要なインフラであった。しかし、とりわけ地方で、国に不必要と判断された場所では高速道路は建設できなかった。国はそのような人口が少ない町に高速を建設しても採算が取れないことを予想していたからだ。そこで、「道路族」と呼ばれる議員たちはそのように高速道路を欲しがる地元民のためにある方法を考えた。それが一般有料道路である。先ほど高速道路と一般有料道路の料金制度的な違いを書いたが、施工方法にも違いがある。高速道路は前述の通り、国からの命令で公団が作るが、一般有料道路は公団から国(国交省)に申請をして作ることができる。つまり、国に建設命令をされなくても公団が独自に好きな場所に道路を計画できることになっていた。もちろん国からの認可は必要だが、議院・公団・国は非常に癒着が強かった。そのため国は一般有料道路建設の認可を非常に甘く出した。そのため、日本のいたるところに採算の取れる見込みのない一般有料道路が建設されてきたのである。また、これらの一般有料道路を建設するにあたり、公団の借金だけでなく、道路特定財源などの税金の一部も使われていた。採算が取れないと予想されたために行われた「合併施工方式」と呼ばれるものである。山陰地方を通る米子道路(一般有料道路)は90%が税金で作られていた。これは公団の借金増大をカモフラージュする要素の一つである。

 

(4)海外の高速道路との比較

 

 日本以外の海外の高速道路は料金制度において大分異なっている。日本の高速道路では普通車1km.当たり24.6円であるが、フランスでは6.4円・イタリア5.1円・韓国3.7円・中国39円である(いずれも2003年度3月の為替レートにおいて)。また、アメリカの州遊高速道路インターステート・ドイツのアウトバーン・イギリス高速道路は原則として無料である。もちろん海外と日本では管轄や経済事情、国土基盤の違いなど複数の相違があるのは間違いないが、ずば抜けて高速道路料金が高いのは日本だけであることは明確だ。

 これらの背景を受け、道路公団における無謀な高速道路建設の枠組みを撤廃するため、莫大な額に上る借金返済を実行するとの名目の元に小泉内閣は公団民営化を実行したのである。

 

C 道路公団民営化

  道路公団民営化の目的

  ‐40兆円に上る有利子債務を確実に返済‐

  ‐真に必要な道路を、会社の自主性を尊重しつつ、早期に、できるだけ少ない国民負担で建設‐

  ‐民間ノウハウ発揮により、多様で弾力的な料金設定や多様なサービスを提供‐

 

  200462日、道路公団民営化法が成立。その主の内容は

 

  ・日本道路公団(JH)→東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)

            中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)

                        西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)

   首都高速道路公団→首都高速道路株式会社

   阪神高速道路公団→阪神高速道路株式会社

   本州四国連絡橋公団→本州四国連絡橋株式会社    への変遷。

 

  ・元高速道路4公団の資産と債務を引き継ぐ独立行政法人、日本高速道路保有・債務返済機構の設立。機構と新会社との上下分離・新会社の6社分離は、競争原理を働かせることを想定して行うものとする

 

  ・新会社は100%政府保有の株式会社とする、新会社が軌道に乗った後(会社発足から10年後を想定)は株式を市場に上場するが、政府は株主総会議決権の3分の1以上の株式を持つ

 

  ・新会社の業務は、高速道路の建設・管理・料金徴収とする。また新会社の独自収入としてはSAPAの開発・経営、インターチェンジ周辺の事業開発を行うことができる

 

  ・機構は6社に高速道路を貸し付け、6社の料金収入から適正な管理費を除いた額を貸付料(高速道路のリース料)として徴収する。貸付料は5年ごとに協定で見直す。機構は45年間で借金を返済した後に解散する。6社は高速道路自体を資産としない

 

  ・2005年から45年後の2050年までに機構は借金を全額返済・解散し、高速道路は国の管轄となり無料開放となる。高速道路各社はSAPA・インターチェンジ周辺の経営をする民間企業となる

 

 ☆新直轄方式の採用

 

  新直轄方式は、新会社による高速道路の建設において、国と地方自治体の負担による新たな直轄事業のこと。完成後は無料となる。

新会社による整備の補完措置として国と都道府県が建設・管理費用を分担して行なう方式である。基本的に、料金収入により整備・管理費が補えない採算性に乏しい路線・区間など、新会社による整備・管理が難しい路線・区間が多いが、北海道横断自動車道釧路線のように需要が見込め国の方針でも従来通りの建設整備であった路線が、整備促進を促すという目的で住民運動によって新直轄を選択した路線もあるため、一概に需要が低いとはいいきれない。これはつまり、国によって正式に公言された「隠れ高速」と言っても過言ではない。

 

 

 

 

 と、これらの内容を骨子として2005101日に4道路公団は6つの高速道路会と債務返済機構との上下分離式会社として民営化した。しかし、この法案を見て疑問に思うことはないだろうか?次にそこを考えていきたいと思う。

 

 

D民営化における疑問・矛盾点

  民営化に関していくつかの疑問が出てきたので、私はその疑問を国土交通省道路局「道の相談室」に尋ねてみた。担当者の佐々木さんはこちらの質問に丁寧に対応してくれた。

 Q1…民営化に関して、なぜ借金返済のための機構と6つの高速道路会社に分離したのか?

 A1…会社が資産を持つと固定資産税という税金がかかる。新会社が課税されるとその分債務返済能力がそがれるために上下分離にした。また6つの会社に分けたのは競争原理を働かせ、よりよいサービスの提供をお客様にすることを目的としている。

 

 Q2…民営化したJRにはその他の私鉄各社、NTTにはその他電話会社が存在するために市場の競争原理が働くと思われるが、道路会社にはそのような同業他社は存在しないのではないか?

 A2…例えばNEXCO東日本の第三京浜道路、NEXCO中日本の東名高速、首都高の湾岸線などが平行している道路なので競争原理は十分に働いていると思われる。

 

 Q3…新会社は道路資産を持たないとあるが、資産を持たない会社を上場できるのか?

 A3…東日本・西日本・中日本の各社の政府持ち株比率は100%、首都高・阪神は50%、本州四国は66.6%、残りの比率は関連する地方自治体が保有する。上場については、道路資産がなくとも、SAPA・周辺地域での事業収入で各社が利益を上げることによって可能になると想定している。

 

 Q42050年までに機構は公団時代からある今までの借金、これから建設計画に入っている借金を全額返済するとあるが、今までできていなかったことを民営化した新会社によってこれからどのように実行していくのか?また返済しきれないときはやはり国民の負担である税金でまかなわれるのか?

 A4…新会社では、徹底したコストの削減により借金を返済させていく。例えば監視委員による天下りの防止、談合による新会社とファミリー企業との癒着の防止、採算の取れる見込みである高速の工事・管理費の削減、採算の取れない見込みの高速の新直轄方式での施工などである。実際、今現在施工中である第2東名は公団時代には45千万円の建設費をかけるとされていが、現在は35千万円で建設できるようコストカットされている。また借金が返済しきれないことは想定していないので、そこは返答しかねる。

 

 Q52050年に借金返済が完了して機構は解散し、高速道路は国の一般国道として無料開放されるとある。その後完全に民営化された高速道路各社はどのような存在になるのか?

 A5…主に道路建設とは関係ない企業となり、SAPAおよび周辺地区のホテルやショッピングモールを展開・経営する企業となる。それに伴い社名も変わることがあるかもしれない。

 

【管理費の削減】進捗状況棒グラフ

 

  話をうかがうことでいくつかの疑問は解決したが、本当に民営化は成功し、借金の返済は2050年までに完了するのだろうか。債務返済機構は2020年までに1300kmの高速道路を作ることを計画している。これらの費用はおよそ20兆円かかる。また200711月に国交省が発表した「道路の中期計画」にはさらに2200kmの高速道路を建設するとある。これもおよそ20兆円かかるといわれている。つまり、機構はこれまでの公団時代の借金40兆円とこれから建設される高速道路の建設費40兆円、合わせて80兆円もの借金を機構は2050年までに返済していくことになる。もちろん借金には利子のつくものもあるので、ここからさらに金利が上がればそれだけ借金総額は増えていく。もし債務の返済ができないことになれば、高速道路の無料開放は永遠にできないこととなり、最終的には国鉄→JRの時の民営化同様、国民が税金として全ての借金をまかなうこととなる。数年前に起こった銀行の不良債権問題と同じことがまた起こりえないということになる。民営化後の2005年から2008年までの債務返済状況を見ると、今のところ返済計画は滞りなく進んでいるようである。しかし、ガソリン高騰・環境への配慮などで自動車の利用率が低下している日本の現状でこのまま現状の交通量が確保できるのか。また、超低金利である現在の金利が少しでも上がると、負債の利子はさらに上がるといわれている。国交省・機構・新会社は経営努力によるコストの大幅削減によって借金の全額返済を目標としているが、本当にそれは可能なのだろうか… 

      

 

(補足) 換気設備の一部業務停止 

 

     私がアルバイトしている会社の保守・点検業務で、今年の7月から行わなくなった点検業務がある。仕事内容は首都高内のトンネル換気設備の定期点検というものである。これは簡単に説明すると、首都高のトンネル内に溜まる排気ガスを集める施設(換気所という)で排気ガスを粒子状にして集め、廃棄するという業務である。つまり、首都高で発生した排気ガスをフィルターに通して集め、環境に無害なものとして捨てるという環境に配慮した業務であった。今年の6月までは月に1回ずつ各換気所で行われていた。この業務がなぜ無くなったのか会社の社長に尋ねてみたところ、首都高の経費削減業務の1つであるとおっしゃっていた。この業務が無くなることによって、集められた排気ガスはフィルターを通さずに大気中にばら撒かれることとなった。コストの削減は確かに実行できているかもしれないが、環境に配慮した業務まで削ってしまうのは本末転倒ではないのだろうか。

 

E高速料金無料派論 VS 高速料金有料派論

 民営化後の新会社による体制が開始されたが、今後の高速道路のあり方をめぐる意見は多数に上る。高速道路料金は今回の発表で一番のテーマとしているので、ここではその興味深い意見の一例を取り上げてみたい。

 

 −料金無料派−

 

  首都圏・関西圏などの都心部を除く日本の交通の8割は自動車である。しかしそのような車を日常的に使う地方の道路インフラは決して快適なものでない。日本の大動脈である国道は慢性的な渋滞があり、その他の県道・市道などではまだ整備が整っていない場所も多い。そのため高速道路の需要は地域の活性化につながると思われるが、事実日本の高速は諸外国などにも比べ料金が非常に高い。そのため高速道路は利用されず、不採算な高速も多数作られてきた。東京〜千葉へのアクセスの点において、地域間の活性化がうたわれていた東京湾アクアラインも、片道3000円という高額料金のために利用者は少なく、当初公団が予想していた収益の半分も料金を徴収できていない。本来高速道路は国が税金で建設し、普通の国道同様に無料で作られるはずだ。その高速を、国の財源がないから公団に委託して建設し料金を取るのであれば、負債が完済されれば利用者に料金が返済されるべきだ。また国民は自動車を所有すると自動車税・自動車取得税・自動車重量税・ガソリン税など何種類もの税金がかかる。そのような道路特定財源で一般道を作り、かつ高速道路料金も徴収するのは料金の二重取りとは言えないであろうか。結論から言えば、現在の借金返済機構・高速道路各社をなくし、国が借金も管轄権も受け入れることだ。負債の返却は国が道路特定財源や「霞ヶ関の埋蔵金」と呼ばれる政府の残預金でまとめて返却する。こうすることにより、機構が返却するときにかかる45年間の利子もかからず、金利コストは大幅に改善する。また首都圏や交通量の多い高速など混雑する道路は特例として無料開放せず、高速・一般道ともに渋滞の緩和を目指す。このように全国の高速道路を無料開放すると、地域的な格差が減少し、物流の促進・観光の促進・地域経済の発展・過疎化の食い止めなど様々なメリットが生まれるのではないか。

 

 −料金有料派−

 

  本来、「道路は無料であるべき」である根拠はどこにもない。国営の教育機関・公園・公営の区民館・体育館など利用者に料金を負担するべきインフラは各種存在する。とりわけ高速道路は一般道路に比べ、利用者にとって時間的メリット・地域的メリット・整備の安定による安全面など様々な有益性が確保されている。つまり鉄道で言うところの特急料金に払うオプションのようなものである。高速料金の支払いは利用者にとっての受益者負担であるといえるだろう。ここで問題なのは通行料金が法外に高額であることと、償還主義における料金プール制によって全国一律料金になっていることである。高速道路と一般道路の所要時間差がほとんど変わらないような地域では、高い料金を払ってまで誰が高速を使うだろうか。地域による交通量の違いは明確であり、民営化した新会社はその地域・受益性を考慮したうえで料金設定を見直すべきである。

 

 

 

 

F今後の高速道路

  最後に、現在またこれから先高速道路各社はどのような事業を行っていくのかを見ていきたい。

 

 (1)ETCの利用による料金割引制度

 

  各高速道路会社は、民営化に伴う通行料金見直し案において、ETCの利用による料金割引制度を導入した。ETCとはElectronic Toll Collection Systemの略称で、クルマに取り付けた車載器と料金所のアンテナが無線で交信することで、クルマは料金所をスムーズ(通過時の速度は約20km/h以下)で通過することができる。通行料金はクレジットカードの機能を利用した後払いでの支払いとなる。ETCの導入において、自動車は渋滞の緩和をすることができ、料金所における人件費などのコストをカットできる。また、各高速道路会社はETCの普及を促進するために、セットアップ工賃無料キャンペーンなどを行っている。実際私もETCを利用したことがあるが、料金所の通過は格段とスムーズであったし、特に深夜の50%割引には驚いた。

 

通勤割引 早朝夜間割引

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(2)SAPA事業、その他の新しい事業

 

  NEXCO中日本では利用者のニーズに応えるため、各SAPAにコンビニエンスストアの展開を行っている。ローソン・サンクス・ミニストップなどの各コンビニと契約を結び、独自の事業展開のひとつとしている。2010年には管轄の50箇所に及ぶこととなっている。また民営化に伴い各SAPAには、地元業者との提携による地域の特産品、お土産なども新たに展開している。

またNEXCO東日本では、新しいSAPAのホテル事業として東北道佐野SAに高速道路から直接利用でき、手軽で経済的に泊まることのできる宿泊施設「E-NEXCO LODGE」を2008年から展開しており、高架下事業として東関東道など9路線の高架下の敷地を、駐車場や店舗、事務所などに活用している。さらに、会社が持つインターチェンジ付近の土地の有効利用として駐車場事業・トラックターミナル事業も行っている。

ロビー 客室

           駐車場(横浜新道 保土ヶ谷高架橋) 店舗(京葉道 谷津高架橋)

          駐車場入口 駐車場内部

 

(3)更なる高速道路建設

 

  首都高速道路で去年、中央環状線新宿線山手トンネルが開通したことは記憶に新しいことであると思う。首都高ではさらに中央環状品川線の開通を進めている。NEXCO東日本では外環道・圏央道の建設を進めている。これら関東の「3環状」と呼ばれる環状線の整備目的は、都心を通過するためだけに通行するトラックや輸送車両の削減による慢性的渋滞の解消・排気ガス削減による環境への配慮であるとされている。

  また、日本の大動脈と呼ばれる東名・名神高速に連なる新しい道路として、第2東名・新名神の建設・開通が進んでいる。私は今年の春にアルバイトの出張工事で新名神の建設に少し関わらせてもらったのだが、実際にこの新しい高速はものすごい規模であり、工事関係者の方からは建設費「道路1mあたり1000万円」と揶揄されていた。また、先日東名の御殿場で第2東名の工事現場を見る機会があったので見てきたが、ここもやはりすごく規模が大きかった。第2東名が通過することになる静岡県・県内自治体はこの高速開通に向けて全面的に協力的であり、建設費の自主的な補助などが行われている。これらの背景を見ていると、やはり地方にとって高速は経済的に非常に有益性のある交通インフラであるという思いが根付いていると感じた。

G考察とまとめ

 今回の発表で、最初は「現在とこれからの高速道路の展開」について発表のテーマを絞ろうとしていた。しかし、調べていくうちに公団時代に起こった不採算な高速の建設ラッシュを知り、またそれによる借金が将来私たち国民に降りかかってくる可能性があるとの懸念から「民営化」について皆さんに討論の場を設けて意見を交換したいと思いこのテーマにした。高速道路建設には人・モノ・カネのつながりが非常に複雑に絡んでおり、今回の発表で書いたことはその一部であり全てではない。最初、私は高速料金有料化とは利用者にとって非常に有益で、反対する根拠などまったくなかった。だがしかし、調べていくうちに本当に将来高速が無料開放できるのかという疑問がわいてきた。高速建設にかかった今までの借金(40兆円)とこれからかかる借金(40兆円)は莫大な金額であり、新会社と機構が2050年までに全額返済可能としているのはあくまでも計画であり予定でしかない。仮にこの借金が返済できない場合、高速道路は永久に有料であるか、その負担が将来の国民にかかってくるのは明確である。現在日本では少子高齢化が進み、2050年には現在よりさらなる高齢化社会になっているだろう。その中で将来の子供たちに公団時代からの借金をまかなわせるというのはあまりに酷ではないだろうか。もちろん高速道路は日本の交通インフラに必要不可欠であり、地域経済・流通・観光・防災などあらゆる面において有益であり便利であることはいうまでもない。地方の人々が高速道路を地元にほしがる気持ちも充分に理解できるし、高速道路の建設自体が悪いことであるとは思わない。だが、無駄に借金を増大させるような道路建設は今後決してあってはならない。公団時代の反省を生かして「民営化」が行われたことには一定の評価をすることができるが、果たして「民営化」が現段階で成功であったとはまだいうことはできないのではなかろうか。「民営化」が成功であったかどうかは、2050年になるまではっきりとは分からない。そして、それが失敗であったなどということが将来あってはならない。高速道路の料金収入は自動車の通行料に依存するために、それだけの収入で2050年までに借金返済の資金が集まるとは思えない。そこで、各会社は徹底した建設・管理コストの削減、新事業による安定した収入の確保、利用者が増加するようなサービスの展開などが必要になってくる。「民営化」に伴ってそれらを確実に行い、将来確実に高速が無料開放できるように今後の各高速道路会社の手腕に期待したいと思う。

 

 

 

 

 

〜資料・協力・参考文献〜

 

 ・且都高機械メンテナンス 石田さん・その他社員の方

 ・国土交通省道路局 「道の相談局」」佐々木さん

 ・静岡県庁建設部 道路局道路企画室 藤原さん

NEXCO東・中・西日本 HP (http://www.e-nexco.co.jp/) (http://www.c-nexco.co.jp/) (http://www.w-nexco.co.jp/)

 ・首都高速道路株式会社 HP (http://www.shutoko.jp/)

 ・阪神高速道路株式会社 HP (http://www.hanshin-exp.co.jp/drivers/index.html)

 ・本州四国連絡橋株式会社 HP (http://www.jb-honshi.co.jp/)

 ・国土交通省 HP (http://www.mlit.go.jp/)

 ・「民営化で誰が得をするのか」石井陽一 平凡社新書

 ・「高速道路 何が問題か」宮川公男 岩波ブックレット

 ・「道路問題を解く」山崎養世 ダイヤモンド社

 ・「日本道路公団 借金30兆円の真相」NHK報道局 道路公団取材班 NHK出版

 ・「三つの民営化」角本良平 流通経済大学出版会

 ・「国土と高速道路の未来」国土政策と高速道路の研究会 著 日経BP

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出展:国土交通省 「道路の中期計画」