医療訴訟
〜患者中心の医療へ〜
発表日 2008年12月11日
発表者 塚原健二
はじめに
今回テーマを選ぶにあたって私は昨年のジョイントで『医師不足問題』を調べたことから医療問題に対する関心が強まり、もう一度医療問題を違うテーマで扱ってみたいと思いました。みなさんもテレビなどで薬品の投与ミスや手術ミスで謝罪会見を何度も見たことがあると思います。医師不足問題では私たちへの影響はやや間接的な悪影響でしたが、今回は医療を通して直接的に悪影響が出た場合に医師と患者側でどのようなことが行われているのかはどんな権利がありどうすればいいのかについて調べてみました。
医療事故・医療訴訟とは
1) 定義
一般的に認識されているのは、
医療事故とは、医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故を意味し、医療従事者の過失の有無は問わないものを言う。これには医療過誤も含む。
医療過誤とは、医療従事者が、医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為を言う。医療従事者に過失が認められる場合。
2) 法的性質
医療訴訟とは民事訴訟のひとつである。「医療訴訟」という特別な訴訟類型が存在するわけではなく、「貸金返還訴訟」や「土地明渡請求訴訟」などと同じ、「民事訴訟」のひとつでしかない。そのため、「医療訴訟の流れ」といっても、何か特別な手続きや流れがあるわけではなく、基本的には一般の民事訴訟の手続きと同じ流れで進行する。ただ、専門的な知見を要する訴訟類型であるため、鑑定を行う場合が他事件よりも多いこと、患者側が訴訟を提起するに先立ち、カルテ等の改ざんを防止するとともに、カルテ等を自身も入手する目的で証拠保全を行う場合が多いこと、の2点が手続上の主な特徴として挙げられる。
損害賠償請求権の法的根拠として医療事故の際に挙げられるのが債務不履行と不法行為である。
債務不履行の場合
一般的に患者が診療行為を受けるにあたっては、患者と病院の間で診療契約が結ばれる。そうすると病院には、患者に対して適切な診療行為をする債務が発生する。医療事故が発生した場合には、適切な診療行為(債務)がなされなかったこと(債務不履行)を理由に損害賠償請求をすることが認められている。契約上の債務不履行を根拠とすることから、債務不履行に基づく損害賠償請求です。債務不履行においては、債務者に過失が認められる必要があるが、医療事故において過失が認められるのは医師や看護師であり、病院自体ではないが、病院の指揮命令の下にある意思や看護師の過失は、病院の過失と同視される(履行補助者の過失)。
不法行為の場合
医師が過失によって患者に損害を与えたこと自体を根拠とするもので診療契約の不履行を根拠としなくても医師に対して損害賠償請求をすることができる。一般的な不法行為に基づく損害賠償請求は、不法行為を行ったものにたいしてしか請求できないが、医療事故に置き換えれば、医療事故について過失のあるもの(手術ミスをした医師、患者を取り違えた看護師など)に対して損害賠償請求をできるだけで、病院に対しては損害賠償請求を請求できないのが原則である。しかし、医療事故によって患者が死亡した場合などは、損害賠償額が多額となるので、医師などに対して損害賠償請求が認められたとしても支払えない可能性がある。
そこで、病院に対して損害賠償を求める根拠として、使用者責任に基づく損害賠償請求がある。使用者責任とは、医師や看護師などを使用(雇用)している病院などに認められる特殊な不法行為で病院が医師や看護師をしようすることによって利益を得ていることから認められている。
使用者責任を請求する際には、患者側が病院の被用者(医師や看護師など)に過失があることを立証することになる
債務不履行と不法行為の違い
過失の主張立証責任と消滅時効期間に違いがある。
@債務務不履行A一般的不法行為B使用者責任のどれを追及するにしても医師に過失がないと認められません。ただし、医師の過失の有無を、病院側と患者側でどちらが証明するかについては違いがある。債務不履行を根拠とする場合、過失の内容を特定するのは原告だが、過去の主張・立証責任は被告にある。つまり、医師は過失がなかったことを証明できないと、損害賠償責任を負うことになる。一方、不法行為に基づく損害賠償請求と使用者責任に基づく損害賠償請求を根拠する場合、患者側に証明する責任があり、医師に過失があることを証明しない限り損害賠償請求は認められない。
また、上記3つの請求は、医療事故が発生してから一定期間が経過すると損害賠償請求をすることができなくなるが、その期間に違いがある。債務不履行に基づく損害賠償請求は医療事故がおきてから10年が経過すると請求できなくなる。一方、一般不法行為と使用者責任の消滅時効期間は2つのパターンがあり最初に患者が医療事故によって発生した損害と医療事故の加害者を知っていた場合には、その知った時から3年が経過すると請求できなくなる。次に損害を加害者が知らなかった場合でも、医療事故がおきてから20年が経過すると損害賠償を請求することができなくなる。
損害賠償請求の要件
債務不履行であれ不法行為であれ共通で必要な要件は@医師の故意・過失A損害B因果関係の三つである。
@ 過失は、その者に課せられている注意義務に違反することによって認められる。医師が、自分に課せられている注意義務を尽くしたにも関わらず医療事故が起きた場合には損害賠償は認められない。ただし、医師の注意義務は患者の生命に直結しているので医師には高度の注意義務が要求されている。
A 医療事故であっても、患者が損害の額を証明しないと損害賠償は認められない。損害賠償が金銭による賠償を求めるものだから、損害も患者の死亡とか片足の麻痺とかという事実そのものではなく、その事実を金銭的に評価したものであるとされている。
B 医師の過失と結果との間に因果関係が認められなければ損害賠償は認められない。因果関係はガンの発見が遅れたなど医師が適切な行為を行っても、患者が助かっていたか微妙なケースに問題となりやすく、患者の死亡との因果関係を認定するのは困難な場合が多い。
(医療)訴訟の流れ
事故発生
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証拠保全
医療訴訟では、患者側が、訴訟を提起するに先立ち、カルテ等の改ざんを防止するとともに、カルテ等を自身も入手する目的で証拠保全を行う場合が多い。証拠保全手続きは、本来あくまで証拠の改ざん等の懸念がある場合に、文字通り「証拠を保全」することを目的とした手続きであり、一方当事者による「証拠収集」を目的とした手続きではない。しかし、医療訴訟に関する限り、証拠保全手続きが、患者側にとって証拠(カルテ等)入手の手段としても機能しているのが現状である。このような証拠保全の活用により、患者側はカルテ等の内容を訴訟提起前十分に検討することができるし、勝訴の見込みが薄い訴え提起を予防したり、訴訟提起前の示談(話し合いによる解決)成立に資するという利点がある。
裁判所は、証拠保全の申立てを理由があると認めるときは、証拠保全命令を発した上、相手方の医療機関に赴き、カルテ等の検証を行うのが通常である。刑事事件における捜査機関の差押えとは異なり、裁判所が行うのはあくまでもカルテ等の内容を調べる(検証する)だけであり、カルテ等の原本を強制的に持ち帰ったりするわけではない。ただ、裁判所は、カルテ等の検証の結果を訴訟記録に残す必要があるため、カルテ等のコピーを行うことになる。
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訴えの提起
患者側が、「訴状」と呼ばれる書面を裁判所に提出することによって、医療訴訟は開始される。訴状には、当事者の氏名及び住所などに加え、裁判所にどのような判決を求めるかという「請求の趣旨」(例:「被告は、原告に対し、300万円を支払え。」)と、請求の趣旨に書かれた請求の根拠となる事実及び法律上の主張である「請求の原因」が記載される。訴状の内容等に不備がなければ、訴状副本が被告である医療機関(医師個人が被告になっている場合は医師)に送達される。
訴状の送達を受けた医療機関は、裁判所に「答弁書」と呼ばれる書面を提出する。答弁書には、訴状に記載された「請求の趣旨」に対する応答である「請求の趣旨に対する答弁」(争うのであれば、「原告の請求を棄却する。」となる。)、「請求の原因に対する認否」、「被告の主張」などが記載される
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争点整理
裁判の争点を明確にする争点整理手続き。具体的には個室内でラウンドテーブルという丸い机をはさんで、原告、被告、裁判所が争点を議論していく手続きをいう。医療訴訟においてはこのような争点整理が行われるようになったのは平成12年だが、当初はお互いの主張を述べた準備書面の交換が期日ごとに繰り返されるのに無駄な長い時間がかかっていた。
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証拠調べ
鑑定:鑑定とは、特別の学識経験を有する第三者に、専門の学識経験に基づいて、法規、慣習、経験則等及びそれらを適用して得た判断の結果を裁判所に報告させ、裁判官の知識の不足を補充して判断を可能にする手続きである。
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判決
裁判とは原告の主張したことに事実かあるかなかったかを判断するところであり真相究明するところではない。
医療事故の現状
新受の件数増加はアクセスの増加によるものである。現在はインターネットなどの普及から法律事務所などへの相談なども容易になったという。平均審理時間の短縮は医療関係訴訟委員会や医療集中部の設置が大きく作用している。(P9に後述)
医療事故の被害者は何を望んでいるのか
長年にわたる多くの医療事故の被害者との面談を通じて確認できることは、医療事故の被害者が『5つの願い』(原状回復、真相究明、反省・謝罪、再発防止、損害賠償)を持っているということである。もちろん、医療事故の被害者が何より一番に願うことは、その身体が元通り回復すること以外の何ものでもない。しかしほとんどの場合、それは不可能を求めることになる。それゆえ、せめて被害を被った原因を究明してもらいたい、医療者の過失に原因があるなら、反省・謝罪をしてもらいたい、そして、同じような被害を繰り返さないよう再発防止に取り組んでもらいたいと願っているのである。
医療事故の被害者に対する、迅速で公正かつ適切な金銭的救済が必要であることは言うまでもないが、被害者の『5つの願い』にある原因究明や再発防止が実現されることによってはじめて、医療事故の被害者の真の救済につながるといえるのだ。
●患者が法的行動をとった理由(複数回答%)
・怒りを感じたから(97.4%)
・過誤を認めさせたかった(97.3%)
・納得できる説明がほしかった(96.6%)
・同じことが他の人に起きないように(93.9%)
・責任追及の方法がほかに無かった(93.8%)
・医師にしたことを悟らせたかった(92.0%)
・病院側の対応が許せなかった(89.1%)
・医師の罪を隠蔽したくなかった(88.4%)
・医療システムを良くしたかった(87.3%)
・経済的補償がほしかった(37.9%)
「医療事故市民オンブズマン・メディオ」(東京。新宿)の調査より引用。
被害者の望みはかなえられているのか?
前提として
医療によって思いがけない被害を受けるにいたったとき、被害者や家族には、その原因が、医療者の過失にあるのか、不可避的な結果であるのかは、容易にはわからない。医療は専門性が高く、かつ、密室で実施されることは多いため、いかなる医療が実施されたのかという事実すら、被害者には容易に認識できないのである。
原状回復
原状回復ができないから訴訟を起こしていると思われる。
真相究明・再発防止
ひとつの医療事故についてその原因を調査して究明するときには、そこには同種事故を防止するための多くの教訓が残されている。しかし、民事訴訟を中心とした現存の医療被害救済制度では事故から再発防止のための教訓を引き出したり、その教訓を広く速やかに医療現場に還元して再発防止に有効に役立てることは困難である。というのも民事訴訟では、損害賠償請求権の存否は争われ、請求原因となるここの医療行為についての過失や因果関係の有無が審理されるにとどまるから、その背景にある医療体制や医療環境の問題は審理の対象とはなりえない。また、判決はすべてが公判されるわけではない上、事故後に判決が明らかにされるまでには数年を要するため判決は明らかにされるまでには数年を要するため、判決が明らかになったころにはすでに、医療水準が大きく変化していることもすくなくない。そのため、これまで全国の医療機関でおなじような事故が繰り返され、同じような被害を生み続けてきたのである。また、被告側の再発防止の約束など、判決結果に望むことはできない。
反省・謝罪
判決で判断されるのは賠償金の問題だけである。なぜなら、原告に勝訴判決が出たからといっても、被告側の責任が判決内容に明瞭に表現されるとは限らず、判決の内容によっては、そのあたりはぼやかされてしまうものもあるからです。しかし、患者側が医師や医療機関に望むものは必ずともお金の問題だけではないだろう。和解であれば、原告側の被告側に対する要望を和解内容に盛り込んでその願いを実現させられる。(和解については後述)
損害賠償
被害者が、医療者の過失によって被害を負った場合であっても、これまで、医療者から進んで賠償がなされることはほとんどなかったといってよく、被害者は重度の障害を抱えながら長い年月と費用をかけ損害賠償請求をしなければならないこともあった。そしてその、民事訴訟においては事故の事実の確定や過失と因果関係の有無を、医学的活法律的な側面から検討することが不可欠であるから、判断までには一定の時間を要する。近年、民事訴訟法が改正され、裁判所や弁護士会が協力して、民事関係訴訟の審理のありかたの見直しが続けられるなどして審理時間が短縮化されつつあるものの、司法統計によれば、維持関係訴訟の平成17年度の第一審の平均審理時間は26.8ヶ月(同年度の通常訴訟の平均審理時間は8.4ヶ月)である。このように重い障害を抱えながら被害者と家族が長い年月と多くの苦難を重ねても損害賠償金を得られないこともあるというのは現存の医療被害救済制度による被害救済の現状である。
訴訟判決以外の解決方法
1)和解
和解とは、訴訟係属中に、当事者が訴訟上の請求に関して双方の主張を譲歩して、口頭弁論期日等において、権利関係に関する合意と訴訟終了についての合意をすることをいう。メリットとしては@経済的負担からの開放A金銭支払い問題以外の原告の要望などを和解に盛り込めるB敗訴のリスクを避けられる、の三点。
@:医療訴訟は第一審判決が出るまでに平均2〜3年、長引けば5〜6年かかる。原告である患者側が弁護士に依頼した訴訟委任した場合、その間の報酬や費用のすべて自腹で負担することになる。たとえ勝訴しても弁護士費用を被告側から取れるわけではなく、敗訴した場合は逆に被告側の訴訟費用(弁護士費用は除く)を負担することになる。長期にわたる訴訟から精神的に開放されるだけでなく、経済的負担を結果的に軽くするということができる
A:上記の『反省・謝罪』にあるように原告側の被告側に対する切なる要望を和解内容に盛り込める。もっとも、このような反省や謝罪の一筆を盛り込んだところで約束を守らない場合に患者側が裁判所に不服を申し立てたところで、裁判所に何か手を施す策があるわけではない。しかし、裁判を起こすすべての遺族がお金をとることを目的にしているわけではなく、病院側に責任を自覚させ、謝罪の言葉がほしいという気持ちの問題のほうが大きいこともある。
デメリットとしては@いったん決まった和解内容は基本的には後から変更できない点A判決と比べると社会的影響が少ないことが多い。
下記のデータからもいかに訴訟を起こすというものが大変であるかがわかる。
●法的行動後の感想
・言いたいことがいえた(半数)
・精神的に疲れた(73.6%)
・生活が経済的に苦しくなった(49.1%)
2)ADR(裁判外紛争解決手続)
紛争解決の手続きとしては、「当事者間による交渉」と、「裁判所による法律に基づいた裁断」との中間に位置する。ADRは相手が合意しなければ行うことはできず、仲裁合意をしている場合以外は解決案を拒否することも出来る。
民事訴訟と比較した場合のADRの長所としては、利用者にとっては費用が少なくすむ点や、非公開のためプライバシーや社内技術などが外部に漏れるリスクを回避することができ、訴訟と比べて時間がかからない、手続きが裁判の様に難しくない(電話で申し込める機関もある)、当事者の都合に合わせて日時を決める事が出来るなど当事者の意向に応じて柔軟に対応することが可能という点が挙げられる。また実施機関が裁判所に限定されず他の機関で紛争解決を行うことにより、裁判所にとっても持ち込まれる紛争が減り、紛争処理に関する負担の軽減につながる。
一方、短所としては、ADRに応じた場合、訴訟を起こす権利が失われる、解決手段に当事者が応じない場合がある、民間のADR機関に解決を委ねた場合、第三者が一方の当事者と密接な関係にあるケースではもう一方の当事者にとって不利な裁定が下される恐れがあるなどの点がある。
医療事故をめぐる近年の動向
・
医事関係訴訟委員会の設置
医事紛争事件の運営に関する共通的な事項を調査審議し,最高裁判所に意見を述べる 。
医事紛争事件の係属する裁判所の依頼に基づく最高裁判所の求めに応じて,鑑定人候補者を選定する 。
・医療集中部の設置
医療事件を扱う裁判官が限定されるシステムにより裁判官が医療裁判に熟練していることもあって、多くの場合、2年もかからずに終えられる。最高裁判所の発表によると、医療関係訴訟(第1審)の平成16年度の平均審理期間は、27.3ヶ月、東京地方裁判所の医療集中部では、医療関係訴訟全体の平均審理期間は約17ヶ月、証拠調べを実施した事件では約20ヶ月である。
2001年4月、東京、大阪の両地方裁判所において、医療訴訟(民事事件)を集中的に取り扱う医療集中部が新たに設けられ、その後、千葉、名古屋、福岡、さいたま、横浜にも順次設置されている。
考察
医療事故というものはどんなに気をつけても人間が治療行為をするのであるから事故が起こってしまうものであるのは仕方ないものだと思う。今まで助けることができなかった人を助けるために、また、事故を少なくするために医療技術は進歩し続けていると同時に、事故が起こってしまって患者が訴訟を起こした際には今までの長い訴訟期間が短縮され患者側の負担が減って泣き寝入りをするケースは少しずつ減っているように思える。
私が思うのは、現在、患者の権利意識が高まっている(高まりすぎている)なか医療機関に求められているのは医療器具・医療技術の進歩や訴訟制度の改善(ハード面)だけでなく医療従事者と患者との信頼関係(ソフト面)の構築だと思う。すべての医師がそうではないが一部の医師には出世のためであったり医師の間での自分の立場が悪くならないようにと患者と距離を置いて非協力的な態度を示す医師もいると聞いた。患者側は医療事故が発生すると不安や不信、怒りが生じ医療従事者との信頼関係は揺らいで医療不信が起こり医療訴訟につながり得る。医療訴訟では先ほど示したとおり大きな労力とお金を使うことになるしお互いに心の傷が深まるかもしれない。
このような事態を回避し、現在の医師中心の医療から患者中心の医療へ移すことを提案したい。
事故発生後紛争処理の場を訴訟に求めるのではなく、より柔軟に被害者である患者側と当事者である医療従事者との対話の場を設け、そこから生まれる合意とケアにより解決していくのである。患者・家族と医療側当事者同士の対話の機会を設定し、対立関係でないことを確認する必要がある。その際にはADRなどの活用も助けになると思う。医療訴訟に詳しい第三者の仲介は医療従事者と患者の対話の促進につながるだろう。もちろん、それでも訴訟になることはあるだろうし、すべきときもあると思う。しかし、現在はやるべきじゃない訴訟まで起きているというのが現状なのである。
マスコミの報道などでたびたび医療ミスが報道され、国民は完全に治るのがあたりまえのように思い、後遺症や何か問題があればすぐに医療過誤を疑う世の中になっている。そんなご時世ではあるが、患者も医療従事者もお互いが歩み寄って解決の道を探していけたらと思う。今まで以上に患者よりの医療で信頼関係を築いて謝罪や再発防止など、当たり前のことを当たり前にできる文化が医療世界の中に広がればいいと思う。
取材協力
ホームロイヤーズ 医療担当 藤田さん
参考文献
『医療事故の責任』
『患者・家族のための医療訴訟 実践手続きマニュアル』
『医療事故 なぜ起こるのか、どうすれば防げるのか』
裁判所HP
医療訴訟に関するHP多数