消費生活相談問題

1H050415-7 竹内 雄太郎

 

私達は毎日、様々な商品に囲まれて生きています。そうした商品を通じて私達は日々様々な利益を得ることができますが、近年では商品を購入することに大きなリスクが伴っていることいます。それは、事業者と消費者の間で商品に関する情報の質や量に大きな格差が見られることです。例えば、一般消費者にとって、専門的知識を要するIT機器の品質や機能、危険性を見極めるのは困難です。商品情報に関すること以外においても商品売買契約の取引の方法が複雑化し、訪問販売やキャッチセールス等、商品の勧誘方法も巧妙化するために購入者自身にとって商品の必要性を把握しづらい状況にあります。

 

そうした消費社会において重要になってきているのが、消費生活相談センターの存在です。私は以前、携帯電話が嫌がらせメールを受信しただけで不当な金額を請求されたことがあります。その際、どうしたらいいかと親友の親(消費生活相談員)に掛け合ったところ、それが架空請求だということを教えられ、解決させていただくと同時に、そもそも消費生活相談とはどういったものかと興味を持ち、調べてみたいと思いました。

 

@       消費生活相談とは

各地方公共団体が行っているサービスになります。2006年11月現在、全国の各地域に約543箇所に設置されており、約3700人の消費生活相談が各地域(の消費生活センター)で消費者被害の救済や未然防止、啓発事業に関わっています。

 

2004年6月に改正された消費者基本法の中で消費生活相談は「消費者の権利の尊重と自立のための支援」を担うとして、その役割がより一層重要なものになっています。

 

具体的に、消費生活相談は、事業者(非消費者)に比べて法律などに関する情報や専門知識、交渉力が不十分な消費者に対し、@消費者が商品やサービスを選択する際に必要とする情報を、最新の内容で正確に消費者に提供し、A消費者が受けた被害の問題点を、事業者に対して具体的に指摘することで適切かつ迅速に消費者の権利を救済します。

 

実際に消費生活相談員は消費者のマルチ商法やSF商法(催眠商法)等の被害に関する相談を受け、そこからクーリングオフの提案などを行っています。また、相談業務の他にも横浜市などでは「消費生活教室」や「出前講座」を通じて悪質商法等に関する注意を促し、暮らしに役立つ情報(ex. 薬の基礎知識、衣類の上手な手入れ方法等)を提供しています。

また、行政機関に対しては、B事業者の問題点に対する現状の消費者の環境(立場)や社会システム上の欠陥部分を的確に分析した上で、C行政機関に現状分析結果(とその解決策)を指摘して施策に反映するよう促し、D適切な施策(行政処分等)が講じられて消費者と事業者間で適切な自由市場が形成されることを監視することが消費生活相談の目的となっています。

 

実際に消費生活相談を通じて問題を分析し、対策を講じて解決した事例があります。10年ほど前、京都では特定の業者によるエステのキャッチセールスという悪質な勧誘行為が行われ、その相談件数は年間で3桁を超えていたということがありました。そこで京都の消費生活センターは被害記録を蓄積した情報カードと資料を調査し、勧誘時の問題点をきめ細かく分析した上で、行政機関(京都市)に条例に基づいて業者に対して調査・指導をするように求めました。そうした結果、行政機関は消費生活センターのまとめた資料を証拠資料として活用し、業者に指導・改善を要求し、業者に改善を約束させて苦情を年間一桁台にすることができたのでした。

 

A       消費生活相談における現状

前述していますが、近年の消費社会において、事業者と消費者間の情報格差が質的にも量的にも拡大しています。それは、商品のIT化や金融商品等、私達には到底理解しえない情報を事業者は隠しており、また、そうした商品の購入を目的とした勧誘方法も数え切れないものになっています。そうした社会の変化に対応するようにして、相談内容も増加傾向におり、案件事態も複雑化しているのが現状です。それらを以下のグラフで示します。

 

a)      消費生活相談件数の増加

b)      相談案件の専門化・複雑化

 以上の二つのグラフを通じて、実際に相談件数の増加、複雑化の傾向が分かります。

 

B       相談員に対する意識調査

 この章では、前述した相談案件の増加・複雑化という中で、消費生活相談員が何を望んでいるのかを示します。後述する問題点(相談員の問題解決力)とその原因に絡んでいきます。

 


C       消費生活相談における問題点

a)        相談員による問題解決の難化⇒相談員の健康被害

 Aの消費生活相談の現状で述べたように、昨今では相談件数の増加と、それに伴う相談内容の複雑化が懸念されています。そうした現状の中で消費生活相談員の相談業務にも問題が起きています。

 

 それは、問題の増加・複雑化に対応して、相談員も本来は専門分野ではないような法律知識の習得を求められ、問題解決への道が難易度の高いものになっていることです。それは、例えば多重債務の相談を受けたと思えば、保険の相談、次は中古車トラブル等極めて細かい(専門的な)知識が求められるような案件を次々と受け付けねばならない状態になっています。数々の複雑化した問題を解決すべく、相談員の方は独自に時間をかけてそれぞれの知識を深めつつ、解決策を探っているものの、結局時間や体制(例えばクーリングオフの期限等)の問題によって、相談員も満足できる調査を行えず、結果的に相談者が歯がゆい思いをする場合も多いようです。

 

 こうして問題解決能力の低下によって相談者は勿論のこと、相談員自身も副次的に被害を受けてしまっています。私の母(元消費生活相談員)は、以前小田原の消費生活センターに勤めていました。当時、母の他に6人の相談員がおり、そのうちの数名は数々の難解な相談を聞いたり、状況の改善を求める声明等を直接訴えてもなかなか応じてくれない事業者を相手にしたりするうちに精神的余裕がなくなってしまい、相談者にも怒りをぶつけてしまいそうになったことがあるという話を聞いたことがあるとのことでした。また、同じ職場にはいないけれど、精神的負担に耐えられなくなって体調を壊し、最終的に消費生活相談員を辞めてしまったケースも聞くとのことでした。

 

特にこうした状況は、地方に見受けられます。消費者問題に関する相談に関して地域格差はあまり見受けられないにも関わらず、相談員数の地域的格差は顕著なので、一人一人の相談員の負担が特に多くなるようです。実際に沖縄の宮古島では、インターネットの普及による悪徳商法などが波及しているにも関わらず、相談員が二人制で週3日から4日の交代勤務をしているだけで負担の増大に苦しんでいるとのことです。

 

b)        相談員による啓発講座への一般参加者の固定化

 消費生活相談員の業務の一つに啓発講座(=消費生活における悪質商法紹介等の情報提供)を通じて消費者が被害を受けることを事前に防止し、事業者と消費者間で対等な消費社会を作るという役割があります。

 

しかし、そうした啓発講座に関して問題点があります。それは、啓発講座に参加する人が一定の人に限られてしまっていることです。私の母も消費生活相談員として働いていた際、消費生活センターが主催する講座の講師としてしばしば招かれていました。その中で「相談員と消費者との質問会」で意見交換をした際、いずれの参加者も講座を受ける以前からある程度消費社会における販売手口等の巧妙化・悪質化に対して問題意識を持っていた場合がほとんどで、一番来て欲しい理想の参加者(=被害を受けるような消費者)というのは、そもそも問題意識を持っていないのか、全く講座には参加していなかったとのことでした。その結果、後々消費生活センターに相談に来た際に「講座としてこんなものがあったのに」ということをほのめかすと、「もっと早く知っておけば良かった…」と後悔する相談者もいるようでした。 

 

D       それぞれの問題点に関する原因考察

この章では、相談員に対する意識調査を交えながら、上記Bで挙げたそれぞれの問題点の原因を分析したいと思います。

 

a)      相談員の問題解決能力の低下

 この問題点に関して、私は大きな原因として「相談案件の増加・複雑化に対して、消費生活センターと他の諸機関(例えば法律事務所など)・部署等の連携がない」ことを考えました。

 

 例えば、消費生活相談員は法律の専門家と言うわけではないので、弁護士会や司法書士会に対して法律の解釈を求め、どの法律を適用したら良いかと言った情報交換を通じて相談案件における法律上の問題の明確化、解決をスムーズにしなければなりません。特に近年の表面化している問題の一つに「多重債務(一人で複数の消費者金融や銀行から金銭を借り入れたものの、返すことが出来ずに破産寸前の状況に陥ること)」があり、この件に関しては司法書士会や警察、被害者団体などとの密な連携がなければ、相談員自身にとっては法律解釈も難しく、事業者に対する指導等も難しいので解決が困難であるとされています。ただ、現状としてそうした機関同士とのコミュニケーションが足りないために相談員の負担が増大してしまうというケースが存在するようです。実際に、相談員に対する意識調査の結果を見れば分かるように、「関連部署との連携」(「必要な情報がスムーズに得られる環境」、「専門的アドバイスを受けられる環境」、「職場内での支援体制の充実」、も似たカテゴリーに入ると考える)を求める相談員が約80〜90%おり、統計的に関連部署等との連携が整っていないので、そうした連携を通じてもっとスムーズに問題解決を行っていきたいことを示しています。

 

 問題点同様、こうした二つの原因の存在も特に地方の消費生活センターに顕著なようです。宮古島では、地方公共団体の財政難を起因として消費者行政にかかわる部署も減って相談員への負担がさらに増大しているとのことです。また、相談員への研修機会は極端に減り、業務連絡会議の参加費も自己負担となって参加が不可能となり、情報収集の方法も以前は他の都道府県から情報誌が送られていたのだが、近年は業界情報雑誌に留まり、ネットもすぐ使える状況になく、巧妙化する犯罪手口に対応しきれない状況があるようです。

 

b)      相談員による啓発講座への一般参加者の固定化

問題点の部分で少々述べましたが、啓発講座の参加者が固定化されてしまう原因は「消費者の意識の低さ」であると考えます。つまり、複雑化・巧妙化する悪質商法の中で、「自分は絶対に騙されるはずがない」といった過信から、悪質であるということを全く気づかずに商品売買を行ってしまうことにあると思います。

 

では、なぜ消費者の意識が低いのでしょうか。それは、後述しますが「(消費生活相談というミクロな単位から・マスコミという極めてマクロな単位も含め)消費者に問題意識を持たせる」広告や宣伝等の情報の提示がしっかり消費者に行き届いていないことに起因しているのではないでしょうか。

 

E       原因に対して行政機関側のアプローチ

a)      連携不足⇒相談員の問題解決能力の低下

a)の問題の原因である「消費生活相談員や弁護士会、警察間等での連携不足」に対して行政機関がどのような対応を行っているかを述べると同時にその問題点を自分なりに分析したいと思います。

 

宮城県栗原市の多重債務者対策の事例を見ていきます。2007年6月、栗原市における自殺率は48.6%で全国の約2倍の数値でしたが、その一因として多重債務問題がありました。この現状に対して栗原市は市に存在する消費生活相談センターや弁護士会などの連携がないことに着目し、「栗原市いのちを守る緊急総合対策」を実施しました。内容としては、市内の関係者間の対策委員会や対策会議、消費生活センターを利用した相談窓口等を設置し、また、仙台弁護士会との連携を得て無料法律相談も開始して多重債務問題の現状分析を行いました。そうした上で、同年9月、新しい融資制度設置に向けたプロジェクトチームを発足させ、12月にはその制度を遂行させました。また、2008年1月には更なる連携を目指すべく、多重債務者の会(多重債務に苦しむ人達が所属する会)等も連絡会議に巻き込み、多角的な視野で問題解決を目指しています。

 

 この栗原市の件は、各機関の連携を通じて複雑化する問題をトータルに解決しようとする良い例であると考えます。ただ、こうした連携を実際行った行政機関が少ないのが現状です。それでは、なぜこのようにして動き出す機関が少ないのでしょうか。私は一因として「経験不足によるネガティブシンキング」があると考えました。つまり、実際に連携を行うにもどことどことを連携したら良いのか、本当にその連携でうまくいくのかという不安な気持ちが先行してしまい、決断の遅れ(=相談員に対する負担増大)に結びついているのではないかと考えました。

 

b)      意識の低さ⇒啓発講座に対する参加者の固定化

啓発講座の促進を目指し、内閣府は「2001年〜2002年の半年間で全都道府県での出前講座の開講数を合計で2000件達成すること」を目標としました。この目標を達成すべく、内閣府はテレビや新聞などの報道機関に対して出前講座に関する報道依頼を行い、それぞれの都道府県の消費者行政担当に対しては書類などを直々に発送してPRを行い、その目標を必ず達成させるという意識の徹底化を促しました。その結果、各支部では啓発方法の研修会等を開いて、講座の実施体制を整えました。そして、マスコミの報道効果もあり、結果を見れば、最終的に講座回数は全国で2084件を数え、受講者総数は64008人という実績を残しました。

 

しかし、上記のように実績は輝かしいように見えますが、大きな穴が数点存在します。まず一つとして挙げられるのが「マスコミの報道の有無で出前講座に参加する数が乱高下する」ということです。現在でも上記に似たキャンペーン(目標の数字は変われど)は行われています。2005年度は埼玉県富士見市で高齢者をターゲットにした住宅リフォームの悪質商法が新聞やテレビで取り上げられて社会問題化したことから、出前講座への参加申し込み者が殺到しました。ところが2006年度は、悪質商法に対する過熱な報道が冷めたために消費者全体の意識の高さが下がったのか、2005年度より前と同様に、足を棒にして参加者を待ちわびる担当者が目立ち始めました。

 

もう一つ問題点を挙げます。それは「出前講座の対象者を限定している」ことです。2001年から2004年は、こうした出前講座の参加者は主に高齢者でした。それは、高齢者に対する架空請求等の被害が後を絶たなかったからです。また、2005年からは、そうした高齢者に加えて、その高齢者の周りの方々(ヘルパーの方など)や若者(幼稚園から高校生)に対象を拡大し、翌年には若者の代わりに市民講師養成講座を設け、消費者問題に関心のある方々に基礎的な知識を身につけさせ、身近な高齢者にボランティアとして啓発してもらうことを目標としています。2007年には再び若者(幼稚園〜高校生)を加え、同時にその保護者を対象としています。ただ次ページのグラフを見てください。

グラフ

東京都における契約当事者年代別割合(平成19年度)

 

 上記のグラフは東京都における消費生活相談件数の中の被害者の年代の割合を示しています。それによれば、約60%の被害者は20歳代から50歳代の所謂主人・主婦層が示しています。果たして、出前講座の対象者にこうした人たちが本当に含まれているのでしょうか。2007年からは「若者の親」が新たに対象になりましたが、実際にはなかなか参加できない状況にあるようです。それは、家事等はもちろんのこと、仕事に出ている方も大勢いるためです。また、一方で近年は英会話教室やエステを利用した若者を対象にした犯罪も増加傾向にあるにも関わらず、20歳代の結婚していないような若者というのは当然対象から外れてしまうのが現状です。

 

 b)の問題に関しては以上のように政府に対する意識的なアプローチは行われて各支部自身にも出前講座を行いたいという機運はあるものの、「参加者の意思が報道の有無に左右されがち」という原因と、「対象者を自ら狭めてしまってそもそも来て欲しい消費者に対するアプローチがなされていない」という二つの原因によって、潜在的な犯罪被害者予備軍の意識の低さという問題を招いているのではないかと考えます。

 

F       個人的考察

私は、「複雑化・巧妙化する中でも消費者がしっかり問題を把握し、被害に合わない社会を作る」ことを究極的な理想として描いています。ただ、現実的に言えば、被害に合う人がゼロになることは不可能だと思います。そうした中で、少なくとも「消費者が被害に合ったとしても、消費生活相談員の問題解決力の向上を通じて最小限の被害に食いとどめることが出来る社会を作る」ことが現実的な理想社会であると考えます。そうした社会を作るために私は前述した問題点を、以下の政策を通じて少しでも「理想の社会」に近づけることが出来ればと考えます。

まず、a)の「行政団体の機関同士連携に対するネガティブシンキング」を解決すべく、私は「経験者の経験者の派遣を通じた連携指導」を提案します。つまり、例えば機関同士の連携を検討している行政に対して、前述の栗原市の件で連携事業を行った経験のある弁護士や市の担当者、消費生活相談員等を派遣します。そうすることで経験者は現場で行政機関がどのような連携案か、修正すべき点があるのか、案を遂行した際にどの部分に問題があるのかといった点を確認・指導することが出来るので、行政機関もそうした意味で自信を持って連携案を遂行できると考えます。そうすることで、相談員も(多重債務のように)複雑な案件に対して、法律の調査や事業者への注意などすべてを自分自身で行うのではなく、弁護士や警察と情報交換等を行いながら、それぞれの案件に対して的確なアプローチをすることが出来るのではと考えます。

 

また、この提案を通して行政機関の潜在的な問題も解決できます。それは行政機関が「施策遂行に消極的」ということです。消費生活相談の仕事の一環として「相談業務を通じて消費社会における問題点を分析し、政策を提言する」ことがありますが、消費生活相談を参考にして施策を講じたという例は2006年までで20都道府県に留まり、そうした処分を行ったことがない県が約半数に上っているとのことでした。この問題点の原因が「本当に消費生活センターの分析・提言が正しいのか」、「もし正しいとして、本当に施策に効果があるのか」等の不安を感じる「経験不足によるネガティブシンキング」なのです。

 

では、どのようにして経験者の派遣がこの問題を解決するのでしょうか。経験者の中には、政策を遂行した市の担当者も含まれます。つまり、そうした担当者などを中心にして、例えば多重債務問題に対して、消費生活相談による現状分析(政策提言)は確かなものか、悪質事業者にどういった対策が必要なのか、対策が実際に効果的かどうかのアフターフォローを行うことで、行政機関の事業者への行政指導に対する消極的考えをなくすことができ、積極的な政策遂行につながると考えます。

 

 また、こうした長期的な派遣業務以外にも私は、「消費生活相談員による消費生活相談員のための出前講座」の実行を提案します。問題点とその原因の部分で「地方の相談員の情報格差」を取り上げました。地方においては、他機関との連携は愚か、都会ではどういった悪質商法があるのか、ネットの普及に総じてどういった問題があるのかという情報自体が行き届いていないためにそもそも案件がどういうものかを理解することにも一苦労しているのが現状です。そうした地方に対して、少なくても情報交換の機会として都会の相談員を地方に出向かせて講座を行うことで、都会における悪質商法に関する情報を提供し、それだけでなく逆に地方の相談員からも地方の現状に関する情報を提供して、それぞれの問題意識やノウハウを共有することが重要ではないかと考えます。

 次にb)の「マスコミによる報道の有無による参加者の危機意識の乱高下」と「出前講座参加対象者の限定」という問題点に触れていきます。この問題を解決すべく、私は「出前講座を土日のショッピングセンター等(地域的に人が集まるところ)で行うこと」を提案します。まず前提として「マスコミに報道させる」というのは提案として難しいものがあると個人的に考えました。同時にマスコミによる報道がなかったとしても、より消費者に身近なところで出前講座を行って悪質商法等に関する情報提供を行うことが出来れば、報道に対して消費者が大きく反応することと同様に、講座を聞くことで自らの消費生活に危機意識を持ってくれるのではないかと考えました。

 

 ではなぜ「土日のショッピングセンター」なのかを述べたいと思います。現在出前講座は主に平日の夜に市民会館や消費生活センター内部を利用して行われている場合が多いようです。そうした中で土日のショッピングセンターは潜在的な消費者が現れやすい時間、場所であると考えます。例えば、日曜昼下がりの午後3時に出前講座を行うとします。そうすることで以前から興味を持っていた人が行き続けることはもちろん、新たにたまたまショッピングセンターで買い物をしているような方も「おや、いつもと違うようなイベントが行われているけれどなんだろう?悪質商法ってどういったものだろう?」と興味を引くことができ、ちょっと話を聞いてみようかなというきっかけ作りとなると思います。また、ショッピングセンターには、子供を連れた親もたくさんいると考え、そうした意味ではこれまで参加することを億劫に感じていた子供も、たまたま来たしいい機会だから参加してもいいかなーと考える場合もあるのではないかと考えます。つまり、より消費者に身近な場所で出前講座を行うことで消費者に一定の興味を誘うことができ、参加対象者の拡大も可能になると考えます。

 

 ただ、こうした講座を通じた活動だけでは説得力がないように思う人もいると思います。そこで私は、消費生活相談に関するパンフレットをそうしたショッピングセンターやその周辺地域に無料で配布するといったサービスを提案します。現状においても「消費者契約法活用術」という内閣府発行の消費者の意識改革を目的とした啓発雑誌はカラーで書かれており、非常に見やすいと評判なようです。しかし、難点としてその雑誌が近くに消費生活センターや市町村にまで行かなければ入手できないということです。それでは、興味のある消費者にしか魅力的ではないことになります。そうした状況を解決すべく、ショッピングセンターの近くで出前講座をやるということに加えて、その啓発雑誌も講座の中でではなく、そのショッピングセンターやその周辺に「出前」として配布することで、やはり受動的ではあれども、消費者の危機意識が高まるものではないかと考えます。


G       まとめ

a)に関して「連携強化」をテーマにしてここまで述べてきました。私自身、目の前にある問題を解決することに全力を尽くすことは重要だとは考えます。ただ、それ以上に大事なこととして、そうした自分自身が得てきたものを自身の中で溜め込むのみではなく、そうしたノウハウを他の人に伝えていき、人と人同士のコミュニケーションを通じて情報の共有化を行うことで、自らの経験(ノウハウ)がよりすばらしいものになるのではないかと考えます。そうした意識を持って連携強化に取り組むことができればと考えます。

 

 b)に関して「参加者の興味」をテーマにしました。一見上記のa)とは全く異なる問題のように思いますが、根本的には私は似ている部分があると思います。それは、「人と人とのコミュニケーション」です。つまり、相談員のみが知識として悪質商法を持っているだけでは、全体的な視点で見たら宝の持ち腐れになりかねないということです。そうした情報をより多くの消費者と共有することで初めて、相談員の存在意義が強固たるものになり、理想的な消費社会の実現に繋がるのではないかと考えます。「自らが理想的な消費社会の実現に向けて重要な役割を担っている」ということをもう一度再確認した上で、出前講座を開催することができればなと考えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考文献・資料・ホームページ】

東京都HP報道発表資料[http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2008/07/60i7v101.htm]

全国消費者団体連絡会HP[http://www.shodanren.gr.jp/database/178.htm]

これだけは知っておきたい消費者問題基礎知識(20062月) / 全国消費生活相談員協会

創立30周年記念誌(200711月) / 全国消費生活相談員協会

月刊国民生活(200812月号) / 独立行政法人国民生活センター

月刊国民生活(20082月号) / 独立行政法人国民生活センター

消費者法ニュース(200810月号) / 消費者法ニュース発行会議

はい!こちら消費生活センターです パート2(20072月) / 全国消費生活相談員協会