地域密着型の就労支援で若手人材の活用を!

「ジョブカフェ」から考える〜

                             20081023

1H050408−3 社会科学部4年 高松美佳

 

はじめに・・・

皆さん、ジョブカフェって知っていますか?

 

自分にはどんな職業が適しているんだろう?
夢をかなえるために、どう行動すればいいかわからない……
自分の将来像を模索する若者たちがいます。
その一方で、若者の地域離れに悩んでいる町や村があります。
情報化社会とはいえ、就労情報も人材も依然として都会に集中しがちです。

 

 そんな中、一つの施策として、学生、フリーター、若年求職者等を対象とした就職相談やセミナー、求人情報の提供、職場体験など、職業に関する様々なサービスを一ヶ所でまとめて無料で国が提供する施設の設置が進められました。その通称が「ジョブカフェ」です。カフェのような明るくて綺麗な施設です。行政と地域の企業・学校などの幅広い連携・協力の下、地域による主体的な取組として、若者の自立と挑戦を身近で支え、さらには地元の活性化にもつなげていこうという地域発の就労支援施設です。

私は来春から民間の人材ビジネスで働くことになりましたが、民間だと地方まで行き届いた全国的なサービスには限界があります。この発表を通して、私は若者が地域で働く機会創出である「ジョブカフェ」が、地域に根付いたインフラとしての職業支援サービスとなるためには、今後どう在るべきか考えていきたいと思います。

 

1.      ジョブカフェとは?

⑴設立の背景

@若手(20〜34歳)人口の減少 約20年後には約31%も減少

 ;少子化社会の中で、経済成長を実現するためには、「ヒト(人材力)」が必要。若者一人一人の能力を高め、職場で活躍する機会を増大させていくことが重要。

 

A若年失業率の増加、フリーター、ニートの増加

→将来を担う若者が、十分な就業機会を得られないことは、将来の経済基盤を損なうものだと懸念

B若者の現状

若者が働いていないいちばんの理由は、「自身がない」と「行動力不足」。「どんな仕事がしたいのか分からない。」全体的に能力よりも意識の問題が大きい

→こうした若者の就職支援には、「話を聞き、励まし、行動を促すカウンセリング等のアドバイス機能が重要。

 

C     中小企業の若手人材確保の難しさ

2007年問題(団塊の世代の引退)や、最近の景気回復に伴う大企業の旺盛な採用などにより、人材ニーズを有する中小企業は人材確保がますます難しくなっている。

・新卒の大学生に対する求人倍率は、中小企業(従業員300人未満)において3倍以上と高い水準。

・さらに、大学生の「大手企業志向」は、過去10年間で上昇。

・一方、中小企業側は、限られた募集方法、不適切な面接など採用プロセスが不十分。地域の若者とのつながりが極めて弱い。

 

「若者自立・挑戦プラン」の策定 平成15年度当面3ヵ年

・経済産業省、厚生労働省、文部科学省、経済財政政策担当大臣が若者の能力を向上させ、その就業を促進させるプランとして策定。関係省全体で494億円を確保。(前年度274億)

     地域において、民間を活用して、若者にきめ細かく雇用関連サービスを一貫して提供する「ワンストップサービスセンター」事業や、トライアル雇用、企業実習と教育訓練を組み合わせた「日本版デュアルシステム」事業といった新たな取り組みを開始。

        ↓

このワンストップサービスセンターとして「ジョブカフェ」が誕生

都道府県の下、産業、雇用、教育の新たな視点を一体化させて、真に若者の就職支援が実現できる新たな社会システムの構築を目指し、ジョブカフェを設置。

          ↓

厚生労働省 ジョブカフェ事業 46地域

※このうち経済産業省はジョブカフェモデル事業として15地域を支援。

平成18年度までの3ヵ年計画とした。平成18年度に再度改訂され、平成19年度以降もジョブカフェにおける若者への就職支援を継続、自立化の側面的支援として、また中小企業の魅力発信や中小企業・若者とのネットワークを構築するといったジョブカフェの機能を強化する事業を実施、15地域をそのまま引き継ぎ6地域を追加し、現在では21地域を強化地域として支援している。その支援も今年度をもって終了。自立化予算については、多くの道府県において新規の独自予算を想定している一方、関係市町村との負担の分散を計画している。

 

☆厚生労働省のアプローチ

→個人向け、ハローワークをもっている。全国を支援。

☆経済産業省のアプローチ

→企業向け、事業主支援、中小企業向け展開、キャリアカウンセラーの人材教育

※ジョブカフェサポートセンターというものがあり、全国のジョブカフェ強化地域の支援をしている。具体的な活動内容としては、情報や知識・ノウハウを蓄積して共有 、ミーティング・情報交換会などを開催、各地のレポートを定期的に発信

参考:ジョブカフェ事業の予算の推移

 

平成16年度

平成17年度

平成18年度

平成19年度

厚労省予算

27.3億円

25.6億円

25.8億円

27.6億円

経産省予算

52.5億円

67.5億円

 

52.5億円

14.0億円

0億円

14.0億円

両省合計

79.8億円

93.1億円

78.3億円

92.3億円

27.6億円

41.6億円

     平成18年度予算のうち、ジョブカフェモデル地域事業予算が52.5億円、関連予算として「ジョブカフェ機能強化型若者・中小企業ネットワーク構築事業」が14億円。

※厚生労働省の支援金は機能強化地域自立後もほとんど変わらないそうである。

 

     ジョブカフェ評価委員会

生労働省と経済産業省が合同で依頼して組織し、全国のジョブカフェを視察し報告書を作成している。来年度以降は経産省の強化事業も終了するため、存続するかはまだ不明。

 

運営主体は地方自治体や民間団体、NPO、財団法人など地域によって異なり、方向性や成果は様々。地域密着型の運営方法で地域事情や若者ニーズに合わせて、サービスを提供

 

⑵ジョブカフェ事業の3つの視点

1、地域の創意工夫

 地域によって、産業の構造や雇用環境が大きく異なる中で、地域が自主的に、地域実情に応じた事業を展開。

2.民間の活用

地域の産業・雇用施策と連携しながら、民間企業のノウハウや発想を積極的に活用し、ニーズに即したきめ細やかな若者就職支援の展開を図る。

3産業・雇用・教育の連携

 企業誘致や中小企業対策などの地域の産業施策と密接に連携することで、産業と雇用の一体的な施策展開を図る。また学校・大学などの教育機関と連携したサービスにより、広範な若者層に対するサービス提供を可能にし、教育施策と一体化させて、若者就職問題に対応。

 

ジョブカフェ概念図

 

ジョブカフェってどんなところ?

情報提供から職業紹介までの雇用関連サービスを無料で一箇所で提供〰

対象;1534歳の若年者。

設置;46の各都道府県が国からの援助を受けて設置。

特徴:情報収集から職業訓練・研修、そして就職あっせんまでの雇用関連サービスを利用者がワンストップで受けられる。

カフェのように明るく開放的な施設(ドリンクサービスがあるところも)

カウンセリングを受けられる、職業に関する相談ならなんでものってくれる!

仲間同士で情報交換できる場の提供。

駅から近い、街の中心部にあるなど好立地。

 

★主なジョブカフェのメリットをまとめると、

利用者側;ワンストップのサービスが無料で受けられる。とくにカウンセリングが充実。

     一緒に就職活動する仲間ができる。

企業側;@採用コストの低減→中小企業にとってとくに有効。A採用支援や定着支援などのセミナーを受けられ、採用活動のノウハウを得ることができる。B若者と身近に交流ができ、情報収集できる。Cニーズにあった人材を採用できる。

その他;若いうちからキャリア教育ができる。求職者の親も相談できるコーナーも。

 

2.ジョブカフェ具体例

⑴就職決定率の高い地域によるモデル的な取組み

ジョブカフェあおもり

就職決定率1位、若者向けサービスの満足度1位

教育機関との連携、カウンセリングの満足度が高いことが特徴

 

青森ってどんなところ?〜青森県の若年者雇用に関わる背景〜

■青森県の雇用情勢(平成17年度国勢調査より)

完全失業率8.4%→全国でワースト3位 全国平均6.0% 特に若年層で深刻

有効求人倍率0.44倍→全国最下位。

■青森の若者の就職に対する意識・現状 (2007年アンケート)

地元で就職を希望している若者が多いが、職が少ないため、県外へ出て行くケース多い。

就職活動のツール:一番多いのが学校の紹介、次に親や親戚など縁故によるもの

 

@ジョブカフェあおもりのサービス

■施設案内

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.青森県サポートステーション

2.しごとライブラリー:資格取得や、仕事探しに役立つ図書等、将来就きたい仕事の解説書、新しい職業選択の参考となる書籍が自由に閲覧できる

3.カウンセリングコーナー:就職活動に関する相談や、応募書類(履歴書等)の書き方など、様々な相談にのる

4.職業診断コーナー;新しい自分、今まで知らなかった仕事を知るきっかけに診断結果に基づいて適切なアドバイスを受けられる。

5.パソコンレッスンコーナー:WordExcelを学べる。「入門編」を用意。問題集・テキストも多数取り揃えている。

6.求人閲覧コーナー:青森県の求人情報・全国の求人情報を誰でも自由に閲覧・検索ができる。

7.職業模擬体験コーナー:約700種類の就業情報が見れて、DVD「はたらく心」により、青森県で実際に働いている人のインタビューを視聴できる。

8.青森県企業情報;県内企業の事業内容、経営理念など企業の情報が掲載されている。

9.DVD・ビデオコーナー:就活サポートしてくれるDVD・ビデオを豊富に取り揃えている。

 

A特徴的サービス

■地域密着型サービス

・あおもりアントレプレナー育成セミナー

起業家育成事業。受講者の約2割が実際に県内で起業している。

・青森県内企業の魅力発見バスツアー

 県内の大学生の将来本県産業を担う人材を対象に、企業を訪問するバスツアー。弘前と八戸間で実施。

あおもりツーリズムスタッフ育成セミナー

青森県ならではの観光リーダーを育成するセミナーを開催。観光政策論やイベント論、ホスピタリティ、エコツーリズムなど多岐にわたるカリキュラムを用意し、自然豊かな青森県の地域特性に合わせた企画立案やサービス提供方法をレクチャー。

 

■ニート向けサービス→青森県若者サポートステーション
一定期間無業の状態にある若年者の職業的自立を支援することを目的に厚生労働省からの委託を受けて、ジョブカフェあおもり内に設置された総合相談窓口。キャリアコンサルタントや臨床心理士など、より専門的な人から相談にのってもらえる。青森県では、求職者本人だけでなく、その親なども相談にのることも多いそうである。

 

■教育機関向けサービス

・中高生のジョブカフェ体験

学校向けデリバリーサービス;カウンセラーが直接各学校の状況、要望のもとに、対象学年、学部、実施時期に応じたオーダーメイドなカリキュラムを作成し、全学年数百人の講演から学級単位の少人数のセミナーまで柔軟に対応

 

■県内・県外のネットワーク

・県内→ジョブカフェあおもりサテライト

弘前、八戸、むつの三ヶ所に設けており、テレビ電話を使ってジョブカフェあおもりのカウンセラーにいつでも相談できる。また週一回ジョブカフェあおもりからキャリアカウンセラーが直接出向く。施設には、求人閲覧や職業適性診断や就職や職業、求人関係の雑誌やパンフレット、チラシなどがおいてあり、パソコンレッスンもできる。

・県外→北海道・北東北地域のジョブカフェとの連携

年に2回定例会議。また共同でUIターンなどの合同説明会もしている。

 

インタビューの中で、ジョブカフェあおもりの所長は「待っているだけでは来ないからこっちから出かけていこう、という姿勢が実績にも繋がったのかもしれない。」と言っていた。

ただし利用者が少ない(一日平均25〜40人くらいらしい)分手厚いカウンセリングができる、とも言っていた。

営業時間も19時まででやや遅めで、土日や祝日も開いている。

 

ジョブカフェちば

就職意志向上率1位、

グループ単位でのセミナー、カウンセリングや企業へのアプローチが特徴的

 

特徴的サービス

・インテーク面談;インテーク(初回面談)として、経験豊富なカウンセラーが最初のコンタクトと担当の振り分けを行い、この後の対応を効果的・効率的に。

・必勝クラブ;2週間で内定をとることを目指し、グループで互いに励ましあいながら活動する。カウンセラーがグループのファシリテーター役を務める。

・ジョブカフェちばスタッフによる求人開拓→オリジナルの求人約1000件。

・仕事探しカフェ

・トークライブラリー

・採用活動に対する相談、助言、また採用活動支援セミナーの開催

 

〜訪問しての感想〜

ジョブカフェちば内も多くの若者がいて、順番待ちをしている人もいた。活気があって閉まる時間過ぎても求職者が多くいた。中高年のスタッフが多かった。

 

その他の好事例、特徴的なサービス

石川県:団塊の世代の退職により若い人材の確保・技術継承が急務

→若手経営者とタイアップし、ものづくりの魅力PR(企業PRをサポート)

沖縄県:県の若年者雇用対策のコールセンター誘致で、IT人材を育成し若年者雇用創出!

京都府:求人開拓員がカウンセラーと相談して求職者の要望に応じた求人開拓を行いながら独自で求人情報を収集。地元の伝統産業など京都の多種多様な職種をカバー。

 

3.ジョブカフェ事業の成果

@利用者の拡大

ジョブカフェ事業全体利用者 約240万人 平成18年度1月時点 前年163万人

ジョブカフェモデル事業利用者 約148万人 平成18年度2月時点

 

A就職決定者数の拡大

ジョブカフェ事業全体 約12万人 平成18年度1月時点 前年8.9万人

ジョブカフェモデル事業約8万人 平成18年度2月時点 前年6.1万人

※就職決定者数は、ジョブカフェを利用した者とそれ以外での就職(自己就職)で確認された者も含む。

 

▽ジョブカフェモデル地域における成果

B    就職決定率の向上

ジョブカフェモデル事業平均 平成16年度27%、平成17年度45%、平成18年度54% 

 

C就職意欲の向上

ジョブカフェの利用者へ調査を実施したところ、ジョブカフェのサービスを通じて、就職に迷っていた若者や、就職する意思のなかった若者の約半数以上が就職意志を持つに至っている。平成17年、18年度で比較すると、就職意欲が向上した割合が伸びており、これまでに得られたノウハウ等が活用され、効率的な就職支援に向けて前進している。

 

D満足度の高いサービス

1位カウンセリング(79.9点) 2位セミナー(74.8点) 3位情報提供(71.5点)

 

E雇用創出効果、経済波及効果の試算

雇用・経済情勢、若者の就職事情が同様に推移すると仮定した場合、20モデル地域のジョブカフェが存在することにより、試算にすると、雇用創出効果は、現時点および5年後の時点において以下のとおり推計。(所得・消費の誘発効果は直接効果・波及効果を含む。

 

雇用創出効果 平成18年度 約5.7万人/年、平成23年度 約11万人/

生産の誘発効果       約970億円         約2,200億円

所得の誘発効果       約1,400億円      約3,200億円

消費の誘発効果       約850億円         約1,900億円

 

4.今後の課題・考察

⑴組織・運用面

@機能強化地域とその他の地域、厚労省と経産省の連携は?

今までジョブカフェの成果・成功例をみてきたが・・・

46都道府県全てのジョブカフェがこんなに充実したサービス展開が可能か

             

そもそも、機能強化地域、そうでない地域が存在

機能強化地域以外のジョブカフェ事業地域アンケート

モデル化・機能強化した地域は、その地域自ら手を挙げた上で経済産業省から採択された。経済産業省は、若年雇用情勢が厳しいこと、若年者就業問題が地域の産業活力に影響を与えていることなどの選定基準のもとに採択した。

経済産業省からの予算は多く(表参照)、もらうのともらわないのではだいぶ差が出てくる。

ジョブカフェ事業に対してモデル地域・強化地域にならなかった地域にまず応募したかしてないか、またその理由について私が独自にジョブカフェ機能地域以外の県に問い合わせてみた結果・・・対象25都道府県のうち回答してくれた県 21都道府県

 

■この回答してくれた県のうち、モデル地域に応募したかどうか聞いてみたところ・・

@     応募したが採択されなかった;秋田、福島、埼玉、長野県、富山、岡山、滋賀、熊本

(推測される)理由

・富山県;@県内産業が活発で雇用情勢がよく、1564歳の有業率全国1位、B雪はふるが東北ほどではないので産業に影響しないから

・秋田;経済産業省の民間のノウハウを生かすというものにマッチしなかった。秋田県はふるさと定住機構という財団法人といった公的機関に近いような既存の施設を生かすというプレゼンをしたので、同じく東北の青森・岩手に負けたのでは?

A     応募しなかった;山形、栃木、山梨、三重、奈良、兵庫、鳥取、(香川)、宮崎

理由・厚生労働省の事業のもとでするから(山形県、三重県、栃木県、奈良県、兵庫県、岡山県)

     そもそもジョブカフェ設置が遅く、間に合わなかったから(山梨県)

※香川県はもともと、ジョブカフェと同じような機能を持った県の施設が以前からあったため

B     不明;東京、神奈川、愛知、鹿児島、「昔のことだから担当者がいない」、調べてくれなかった。

 

厚生労働省と経済産業省はあまり連携とれてないのでは?

 県によって若手人材の雇用を重要視していないなどジョブカフェ事業に温度差があるのでは?

 

厚労省と経産省が共同してこのジョブカフェが全国にできたということだったが、今回各ジョブカフェに問い合わせて実際に話を伺ったところ、各省が別々に各道府県支援しているという印象を受けた。「厚生労働省から全国につくるように話があったからうちの県も」「他に重点課題がある」というところもあり、もともと県によって若年者の雇用対策に温度差や設置の時期に差(遅い地域では平成17年度半ば設置も)があると思われる。またジョブカフェ熊本の方も、(有効求人倍率0.6という若年者雇用の深刻な地域でありながら採択されず)「経産省から予算をいただくとサテライトもつくれたが・・・なかなか県の隅々まで事業をするのは大変だ。」という声もあった。

平成18年度のジョブカフェ評価委員の議事にも「モデル地域とそれ以外の地域では、カウンセラーの配置数、利用者の視点に立った各機関の窓口の一体化など、大きな差が生じているケースもある(具体的な地域や実数は不明)」という報告があった。

 

A来年度以降の機能強化地域事業終了後、自立して運営は?

ジョブカフェあおもりの方の話でいうと、経産省のモデル地域としての支援終了後、だいぶ予算が減り、さらに来年からは強化事業も終了するので経済産業省からの予算はほとんどないと見込まれる。(所長によると3〜4億→数千万へ)たしかにジョブカフェあおもりは実績をだしていたが、所長は、「厚労省と県からだけでは予算が足りない。あおもりは冬は積雪が凄いので県も雪の除去や、積雪による道路の強化などにお金をとられるため、なかなかこれだけに予算を割くわけにはいかない。」と言っていた。またジョブカフェちばで「仕事さがしカフェ」を見学させてもらったが、これも経産省の委託事業で運営していたもので、来年も継続できるかわからないらしい。キャリアカウンセラーの宮野さんも「来年度から経済産業省の支援がなくなるが、来年以降の具体的な計画を何も聞いてないので私も心配です。」と言っていた。ジョブカフェの実績だけでみて楽観的にとらえるのではなく、その地域の経済状況などの実情を考えると、従来のサービスを維持・向上できるのか疑問である

Bジョブカフェネットワークの偏り

■全国46都道府県のジョブカフェネットワークがない。

機能強化地域は経済産業省管轄のサポートセンターが、全国のモデル地域(強化地域)を集めて、これまで年に2回(設立当初は月1度くらい)の頻度で集会をしていたそうである。だがこのサポートセンターも来年以降存続するかどうかも、現段階では何ともわからないそうだ。このサポートセンターがなくなってしまうと、これまでせっかく蓄積されたノウハウの共有をする機会も減り、サービスの質が落ちてしまう可能性もあるのではないかと懸念する。

さらに、機能強化地域以外での全国的なジョブカフェの集会はやっていないようで、機能強化地域以外のジョブカフェにとって、ジョブカフェ評価委員会の全国のジョブカフェを視察した報告書(年に1度くらい)が唯一全国のジョブカフェの好事例を知る手段であるところも多かった。今後、厚生労働省が中心となって全国的集会や、全国46箇所すべてのジョブカフェを管理・統括する機関があることが望ましいのではないか、と思う。来年度から経済産業省のもとの機能強化地域のジョブカフェも自立しなければならないので、全国的な集会を増やして、実際に他県のスタッフと交流しながら、好事例の共有、カウンセラーの意見交換、勉強会などを行い、地域の実情に合わせながら取り入れられるところはどんどん吸収して多様なサービスを求職者に与えられるようにあってほしい

 

■近隣の県とネットワークがあるジョブカフェ、ないジョブカフェが存在。

また、青森の例のように北東北3県、南東北3県、首都圏3県や、九州山口広域連合と題して定期的な集会を開き情報交換、協同で広報をするなどといった地域も見られた。ただし、四国などのように、ジョブカフェ同士での集まりは全くないとする地域、また「他県から呼びかけがあれば」という県、また「呼びかけはあるものの来所者の対応だけで精一杯なのでそれどころではない」という県もあった。

企業活動など経済圏については、実際には1つの都道府県域内に限られたものではないことから、このような経済圏を念頭においたジョブカフェ相互の連携なども積極的に行っていくべきであると思う。

 

⑵サービス面のさらなる充実

@企業へのアプローチの強化

■求人開拓の必要

ジョブカフェちばのように、企業に積極的に出向いてオリジナルの求人をもつことが求職者へのインセンティブとなって、利用者も増加するだろう。

 

■人材定着への支援

ジョブカフェは就職支援において実績を上げてきているが、今後さらにその定着支援も重要である。中小企業においては就労者向けの就職後カウンセリングや若手社員研修といった若者定着支援事業に対するニーズが大きい。就職前に行うインターンシップや職場体験などの定着支援効果がある施策のほか、就職後の企業定着を目的とした若年層、中小企業の人事担当者それぞれを対象とする支援事業の強化も積極的に進めていくべきである。

利用者の属性

高校生

1.8

専修・各種職業訓練校

4.1

高専・短大生

3.1

大学生

17.5

正社員

9.4

派遣社員

3.5

契約・臨時・パート・アルバイト

20.0

主婦

3.7

家事手伝い・無職

34.8

その他

2.1

100.0

 

 
また、就職後の悩みは人間関係がほとんどである。地域の中小企業においては同年齢層の社員が少なく、職場集団等の安定した人間関係が築きにくいことから、これに代わる機能をジョブカフェの相談員やジョブカフェで出会った仲間、他企業の若手社員が果たすことにより、若年人材の定着につながることも考えられる。   

A属性による対応

就職支援利用者ではサービス利用者の内訳

フリーター・ニートを合わせると半数以上と多く、その他では親や

学校関係者などの利用もある。

 ニート向けのサポートステーションのジョブカフェ内の設置も、

さらに拡充していくことも重要である。ジョブカフェあおもりにあ

るようなサポートステーションは全国に39ヶ所(都道府県によって

は2箇所以上あるところも)あり、より増えることが望ましい。

さらにジョブカフェがフリーターだけでなく、もっと幅広い層で

利用されることが望ましいだろう。あおもりのようなジョブカフ

ェ体験事業のようなものがあると若いうちからキャリアについて

興味関心を持てると思う。

 

⑶ジョブカフェの認知度の向上

@宣伝・広告戦略の工夫

ジョブカフェについてどれほどの認知度があるだろうか?私の友達に聞いてみても、ほとんど知っている人はいなかった。以前より知名度は上がっているものの、ジョブカフェのスタッフの方も「まだまだ」と言っていた。大々的な広告はなく、大学内にポスターを貼っているそうだが、私の記憶の中には残っていない。

ジョブカフェの施設の利用の契機を見てみると・・・ 1.新聞・雑誌・ミニコミ誌7.1%2.県の広報誌2.0%3.ポスター・チラシ8.5%4.インターネット9.1%5.学校の紹介9.0%6.求人情報誌・紙 2.6%7.ハローワークの紹介12.2%8.親・友人・知人の紹介33.0%9.近くを通りがかって8.7% 10.その他 7.9% であった。

若者同士の口コミによる認知度拡大のほか、広告も民間の広告代理店のノウハウを取り入れて若者の目にとまりやすいデザインであるべきである。また中小企業における採用好事例をホームページなどに掲載したり、行政広報や各種の団体が開催する地域の会合などを通じて、ジョブカフェの成果を紹介するなど、積極的な広報活動が必要である。

 

Aサテライトを利用して地域からジョブカフェを発信!

サテライトは利用者が少ない。(あおもりのサテライトは3つ合計で一日平均5〜6人の来室、テレビ相談は月に2〜4人、0人のときもある、職業適正診断、求人閲覧の利用がほとんど)サテライト八戸に行ってきたが、施設は中心街にあるものの、狭いスペースであった。ジョブカフェあおもりの本部から教えてもらわなかったら、ここだけ知ってざわざわ来室しないだろう。以前千葉の松戸にもサテライトがあったそうだが、利用者0人の日が続くなどあまりにも利用者が少なかったためなくなったそうだ。実際に平成19年度には、前年まで49箇所あったが、41箇所に減っている。私はサテライトがあること自体には賛成だが、広域な地域でサテライトを設ける場合、ただ待つだけの姿勢ではなくもっと活気があってほしいと思う。地元市の協力による広報や、新聞・ラジオ・タウン誌による周知を積極的に行うなどして、身近な地域からジョブカフェを知ってもらいたい。宮城県では、深夜テレビ番組とタイアップした生のカウンセリング電話を実施。視聴率はどう時間帯の1位を獲得したほか、電話カウンセリングのコールは平均200件以上を記録した。フリーター層にターゲットを絞り広報展開したことが成功要因だったそうだ。また岐阜県では、地元FM番組をサテライトから放送し、若者の認知度を向上させたそうだ。

 

⑷地域の産業人材育成への支援

自立化後は県だけでなく市町村との予算の負担を分配していくことが望まれる。それにあたって、地域で必要な事業を地域拠点で企画・実施するなど、地域ニーズに迅速な対応をする人材支援機関として自立する必要がある。

企業誘致にあたっては、新規立地した企業のニーズに応じたオーダーメイド型の人材育成をジョブカフェで実施、企業に若年人材を提供できる仕組みを構築する。起業・創業などの支援施設やと連携し、大学、専門学校、職業訓練校などを巻き込んで、総合的な中小企業支援体制を構築する。沖縄県でみられるコールセンタースタッフは好事例であり、現在青森県でもコールセンタースタッフ育成セミナーを開いている。

さらに、隣接県や同一経済圏を構成するジョブカフェとも連携した地域ぐるみの人材育成へ向けた取り組みが推進されることに期待する。特に、Uターン人材・アルバイトしか経験が無い若者であっても、地元で受け入れられるような、地元ニーズに応じた人材支援・能力開発が行われることが望まれる。このように、ジョブカフェが中心となって、地域ぐるみで地域の産業人育成の必要がある。

 

5.まとめ

データだけでないそれぞれの地域の実情を知って対応すること

やはり若者の実情や雇用情勢は地方によって様々である。千葉県を例にとってみると、東京へも電車ですぐの場所にあるし、若者も求人も多く、「地元就職」という概念があまりないだろう。東京も圏内として就職活動をする人も多い。それに対して青森は、「地元か都市へ出るか」という選択肢が存在し、求人が少ないため都会に出て行くケースによって、若年層の人口流出が起こっている。今回実績が出ているということで、青森と千葉に取材したものの、様子は全く違っていた。

前項でデータやアンケートに基づく「ジョブカフェの成果」を述べたが、実際本当の成果って何であろうか。民間のサービスの場合は、求職者の就職が決まればそれを成果とする。だが、ジョブカフェはそれだけが成果というわけではないだろう。仕事が決まったとしても、個人がそこでどのように働いていくか、長い年月をかけての問題である。

民間ではできない全国に行き届いたサービスを地域に合ったかたちで提供するのがジョブカフェの存在意義だと私は思う。各地域の実情に対してきめ細かな分析と対策をしていくことがこれからのジョブカフェにとって必要となってくるであろう。

 だがそのようにきめ細かな対応はジョブカフェだけでは賄いきれない。やはりジョブカフェが中心となって多くの機関と連携をとって、まずは窓口としてニーズに合ったサービスを紹介、提供する必要がある。

さらに各ジョブカフェが全国的な集会を開くなど、県単独ではなく広域にもネットワークを広げ、好事例の共有、ノウハウを蓄積していくべきである。各都道府県若年層の雇用問題が県の緊急課題や重点課題としているかは、その程度は違うにしても、日本の未来を担う若者一人ひとりにとって働くことは重点課題なのである。「とりあえず設置」するのではなく、地域に根付きながらも、地域によってサービスの質に差がないように、各都道府県のジョブカフェがそれぞれ切磋琢磨しあってほしい。

 

「個を応援するジョブカフェ」のスタンスを忘れずに

 学生、フリーター、無職、派遣社員、正社員などジョブカフェに来る人は様々である。ジョブカフェちばのキャリアカウンセラーの方が、「年齢、所属だけで人はカテゴリー化できない。」と言っていた。同じ学生であっても、アルバイト経験のある人ない人、それだけでも職業観がだいぶ違ってくる。様々な人がいる中でそれぞれ違ったバックグラウンドを持っている。所属による対応はもちろんだが、やはり親身になって話を聞きくキャリアカウンセリングが重要である。

 

 今回調査するにあたって、各地方のジョブカフェで実際に求職者と接しているキャリアカウンセラーの方にお話を聞くことができた。キャリアカウンセラーの方たちほとんどが言っていたのが「就職できるか、できないか、それは結局最後は自分次第である」ということである。皆がみな社会に出て正社員として働かなければならないと言っているわけではないが、自分が踏み出さなければ何も始まらない。そのきっかけとなれるような場所としてジョブカフェがあってほしい。ジョブカフェは職業斡旋機能を持っていない。それは一つの問題点だという人もいるかもしれない。だがもともと「若者自立・挑戦プラン」の名の通り、個の自立を促進するためにあるものだ。現在のジョブカフェが46都道府県、さらには県内の隅々までインフラとしての職業支援をできているかというと、現段階ではばらつきがあるのが実情であると思う。だが、民間のサービスがあまり発達してない地方こそ、若者一人ひとりが生き生きと働けるような社会になるように、ジョブカフェの今後に期待している。

 

 

〜参考・ご協力してくださった方々〜

ジョブカフェあおもりHP、ジョブカフェあおもり所長の一戸さん、その他スタッフの方

ジョブカフェサポートセンターHP、サポートセンターの方

ジョブカフェちばHP、ジョブカフェちばのカウンセラー宮野さん、スタッフの方々

厚生労働省HP

ジョブカフェ評価委員会議事要旨(第2回、3回、7回、13回)

経済産業省HP

『青森県で生きる若者たち』李 永俊、石黒 格 弘前大学出版会

陸奥新報記事

2007年弘前大学人文学部付属雇用政策研究センター「仕事・生活とこころの健康に関する調査報告書」

山形、秋田、福島、栃木、東京、埼玉、東京、神奈川、和歌山、富山、山梨、長野、愛知、和歌山、鳥取、岡山、香川、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島のジョブカフェの方、三重、滋賀、兵庫、奈良、香川、徳島、熊本、佐賀の各県庁職業安定部の方

東京しごとセンター、東京しごとセンターキャリアカウンセラーの方

など

 

 

 

 

 

 

 

資料・データ集

▽ジョブカフェ強化地域

 

▼経済産業省による強化地域判断基準

(1)若年雇用情勢が厳しいこと

(2)若年者就業問題が地域の産業活力に影響を与えていること

(3)雇用対策と産業振興策、更には教育が十分連携していること

(4)特色ある事業であること

(5)予算の適正な執行が可能なこと

なお、公益法人を受け皿団体に指定する場合には、特に以下の項目を満たすこととする。

a)早期のセンター開設が可能なこと

b)民間ノウハウを活用して一貫サービスを提供できること

c)以下の要件を満たす団体であって、事業を遂行するのに最もふさわしいと考えられるものをセンターとして指定していること

地域の経済情勢・雇用情勢に関する専門的知見を有すること

雇用、人材育成等の施策に関する専門的知見を有すること

委託金の適正な執行、管理を行うことが可能であること

また、(1)及び(5)については、選定にあたっての基礎的な条件となる項目とし、(2)、(3)及び(4)については、ジョブカフェ事業の目的から、委員会の検討において特に重視する項目とした。