<資料1>

「欧州連合(EU)と米カリフォルニア、ニューヨーク両州など米カナダ11州は29日、温室効果ガスの排出量取引市場の共通化を目指すことで合意し」「排出量取引で先行するEUに米国などの有力州が合流する形で国際的に共通な市場作りを主導する。欧米の連携で国際取引市場の整備が一気に進めば、排出量取引に消極的な日本が影響を受けるほか、国別削減計画を議論する『ポスト京都』交渉にも一石を投じることになる」

「今回合意したのは『国際炭素行動パートナーシップ』(ICAP)。他にノルウェーやニュージーランドと、米ニュージャージー州、カナダのブリティッシュコロンビア州なども署名に加わった」

「参加者らは政治宣言で、取引市場設置の取り組みが温暖化防止政策にとって決定的な要素になると主張。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出枠を各企業に割り当てて余剰と不足を売買する排出量取引「キャップ・アンド・トレード」方式を協力して進める方針を明言した。EUは05年から、同方式を使って取引を始めている。・・・・▽今回参加した米各州には、米国の主要企業の多くが立地する。・・・今回の合意は、欧州と北米を実質的に網羅する排出量市場の創設につながる可能性が高い」

日本では産業界がキャップ・アンド・トレードに反発し、各企業が排出の削減目標を自主的に定める『自主行動計画』に基づいて削減を進めている。だが・・・・」

「市場の共通化をめざす合意は、『米国を巻き込んだ二酸化炭素の世界市場』づくりへの大きな一歩」

071030朝日「温室ガス排出量 EU・米加11州 取引共通化 国際市場作り主導 日本、「乗り遅れ」の恐れ」)

 

 

<資料2>

「今年のノーベル平和賞に決まった国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のパチャウリ議長が『京都議定書』以降の地球温暖化対策の枠組みについて語った。『温暖化ガスの排出削減義務がある先進国とない途上国という今の区分けを、先進国、途上国、最貧国の三つに増やし、最貧国を除き義務を負わせるのがいい』」

「(*京都)議定書は中国やインドを途上国と定義し、削減義務を課さなかったが、採択された1997年以降、新興国の経済力は劇的に向上した。日本エネルギー経済研究所によると中国の二酸化炭素(CO2)排出量は2030年に265000万トンと世界全体の23に達する。インドの排出量も同年に05年比で26倍の84000万トンに膨らむ」

インドでは約11億人の国民のうち3億人前後がいまも11ドル以下で暮らす『貧困層』。温暖化対策で先進国並みの負担を強いられることには中国も抵抗感を隠さない」

(071028日経「環境力 包括枠組み 成否を握る 新興国、発展との両立模索」)

 

 

<資料3>

「『与えられた排出枠の過不足分を市場で売買するのが排出量取引。・・・・日本の鉄鋼メーカーは世界一の省エネルギー技術を持ち、生産量あたりのCO2排出量は最少だ。しかし、これまでの省エネ努力を考慮せずに厳しい排出枠が割り当てられれば、日本での鉄鋼生産が抑えられてしまう。逆に、省エネ技術は遅れているのに大きな排出枠をもらう国のメーカーは、非効率な生産を拡大して、地球全体の排出量をむしろ増やしてしまう』」

「『現実として、0812年を約束期間とする京都議定書を米国は批准せず、中国やインドは削減義務を免れている』」「『世界で一番省エネが進んでいる日本の企業が、技術を提供した上に、相手先の企業に(排出枠の購入という形で)お金を渡すことへの疑問』」

「『先進技術が移転されれば、米、中、インドなど6カ国だけで、年間13000万トン弱のCO2排出量を削減できるとの試算もある。これは日本の産業界全体の排出量の3割弱に相当する数字だ』」

(071105朝日「opinion 排出量取引は成長を損なう 環境と経済 融合に向けて 新日本製鉄社長 三村明夫さん」)

 


 

<資料4>

「『EUは東アジアとの関係強化に強い関心がある。欧州企業が東アジアに投資するのは重要で、投資によって貿易が効果的にアジアと欧州の間を環流する。投資が推進力となる自由貿易協定の動きは続く』

『中国の国家規模はアジア経済の成長の中心で、それはEUの中にロシアを抱えるようなものだ。地政学的な重さゆえに、中国を含んだアジア連合を想像することは難しい。逆にアジアの大きな成長基盤である中国が切り離された経済連合では、EUが構築したものと大きく異なる。一つの大陸に大半の国があって移動の自由な欧州と異なり、単一通貨の導入も難しい』」

(071029読売「英王立国際問題研究所 ニブレット所長に聞く 東アジア共同体作り 日本の指導力 期待」)

 

 

<資料5>

アフリカでは06年、20カ国以上で国内総生産(GDP)の伸び率が年5%を超えた。・・・・アフリカからは社会基盤整備のための円借款や、日本企業の直接投資を求める声が高まっている」

071031朝日「キーワード アフリカの経済成長と日本の支援」)

 

 

<資料6>

「『今もスーダンやコンゴで紛争が起き、ジンバブエは国が崩壊しつつあるのを見ると胸が痛む。だが、全体として紛争は減り、アフリカの経済成長率は平均6%近い。高等教育やインフラ造りを支援してほしいという声がアフリカの首脳から出始めた』

『来年5月には5年ぶりのアフリカ開発会議(TICAD)が日本で開かれる貧困撲滅を進めながら経済成長をどう加速させるか

『欧米諸国は、紛争や汚職などで統治能力が弱い<脆弱国家>には支援を打ち切ることがあった。ただ支援を続けるかどうか判断する際には(「人間の安全保障」という理念にもある)国よりも人々のあり方を中心に考えるべきではないだろうか。人々の能力強化を通じて良い国を造っていく。草の根の人材の能力開発を経済成長につなげるといったやり方を大切にしたい』

『4年前にJICA理事長に就任以来、JICAの支援のうちアフリカ向けは全体の22%まで増やし、農業でネリカ米が普及するなど成果も見えてきた。工業や資源開発はこれからの分野だ。JICAが長く支援してきたアジアが発展しており、今後はアジアと一緒になってアフリカ支援をやっていきたい』

(緒方貞子氏の発言)

 

 

<資料7>

新たな制裁は、イラン国防の中核をなす『革命防衛隊』や、その支隊で国外での特殊任務を負う『アルクッズ部隊』、イラン最大の銀行であるメリ銀行をはじめとする国営銀行、国防軍需省など20を超えるイランの組織や個人に対し、大量破壊兵器拡散やテロ支援にかかわったとして、米国内の資産凍結、米国の個人企業との取引禁止などの措置を科すもの。▽1980年に米国がイランと断交して以来、もっとも厳しい制裁措置だ。▽中でも初めて外国軍隊に対して懲罰的措置をとったことは、きわめて挑戦的であり、戦闘行為をともなわない宣戦布告に近い。▽米国がここまで大胆な制裁に踏み切ったのは、イランを国際的圧力により締め上げ、核開発を断念させる戦略に手詰まり感が出てきたからだ。イラクやアフガニスタンでの『テロとの戦い』で軍事力を他国に振り向ける余裕がなかった米政府は、イランの核問題を外交によって解決するという目標をたて、@国連安全保障理事会A有志連合B米国単独―の三つの場を通じてイランに国際的圧力をかける戦術をとってきた。

▽しかし、安保理では3本目の制裁決議採択を目指したものの中国、ロシアに阻まれ、欧州連合を中心とする有志連合ではフランスとドイツの足並みがそろわず、効果的制裁を打ち出せなかった。その間、イランはウラン濃縮を継続したばかりか、イラクで米軍攻撃にかかわったとされ、米国は単独でイランに圧力をかける以外の方法を失った」

「今回の制裁でも効果が出ない場合、ワシントン・ポスト紙の社説が『大統領はイランの核保有を認めるか、軍事攻撃で核施設を破壊するかの選択を迫られるだろう』と指摘するように、政権の選択肢はさらに狭まろう」

「今回の制裁は、アフマディネジャド政権の強硬姿勢を後押しするとみられ、核問題で焦点のウラン濃縮停止を迫る上では、『逆効果』になる可能性が高い」

「革命防衛隊は、関連企業が国内の道路、ダム建設で『大事業の半数を占める』(地元記者)とも言われる一大勢力で、西側企業とも共同事業を進めている。今回の制裁に欧州や日本の企業、金融機関が追随すれば、経済への悪影響は必至だ」

「一方、イランが核問題で翻意する可能性はほとんどない。アフマディネジャド大統領は制裁発表前日の24日、濃縮停止を求める国連安全保障理事会の制裁決議を『無価値な紙の束』と切り捨てた。政治経済専門家のサイド・レイラズ氏は『大統領は、政府の失政の責任を転嫁できる上、強硬路線も国民の支持を得やすくなる』と述べ、今回の制裁がかえってイランの態度を硬化させるとの見通しを示した」

071027読売「米、対イラン強硬 制裁発動 断交以来の厳しさ 核問題 国際圧力 手詰まり」)

 

 

<資料8>

「(*ブッシュ外交の成果と失敗について)評価すべきは、対インド関係の進展HIV問題への取り組み、(アフリカなどの発展途上国への)改革と経済援助を組み合わせた対外支援の拡大などがある。一方、批判すべき点はイラク政策だ」

「9・11テロ直後の国際環境は、テロ対策核不拡散中東アフガニスタン気候変動など各問題で国際合意を築く好機だった。だが、現政権はその好機を利用せず、イラク問題ばかりに傾注した」

政権2期目の後期になって、対北朝鮮交渉や気候変動問題で姿勢を変え、イラン問題では国連安全保障理事会で関係国会合を開くなど変化が出てきた」

アジアは世界で最も経済的にダイナミックな地域だ。問題は、その発展の力をどう前向きな方向に保つかだ。複数の国が同時に興隆するなかで摩擦や紛争を防ぎ、どう経済的に統合するか。アジアは台湾など局地的な問題より、地域全体の構造をめぐる調整の重要性が高まるだろう」

「中国については、米中間の貿易不均衡と、中国国内の政治事情が課題だ」

米国の最も緊密なパートナー国は、欧州では英国、フランス、ドイツ、そして恐らくポーランドだが、アジアでは日本、オーストラリア、次いで恐らく韓国、将来的にはインドだ」

米日関係は、地域の個別問題に共同で対峙する同盟から、地球規模で共に前向きな目標をめざす同盟へと近代化されていくだろう」

日本は近隣国との和解を進める公式を見いだすことも必要だろう」

071103朝日「次期米政権の外交 多国間主義の伝統へ回帰 米外交問題評議会 リチャード・ハース会長に聞く」)