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『京都議定書』〜理想と現実の狭間で〜

農学部生物生産科学科一年 生方依子

 

1 はじめに

環境問題、特に、地球温暖化現象への関心が世界規模で高まってきている。実際に各地で気候の変化が観測されており、そのことは人間が作り出した温室効果ガスが原因であると考えられている。温室効果ガスは来世紀中にはより大きな気候の変化を引き起こすであろうとも言われ、注目されている。これらを受けて199712月、京都で開催された「気候変動枠組条約」第三回締結国会議(COP3)において『京都議定書』が採択された。先進国から排出される温室効果ガスに対し数量的制約(数値目標)を設けたという点で、『京都議定書』は20世紀末における国際外交の偉業である。しかし20013月、二酸化炭素の世界最大の排出国であるアメリカがこの『京都議定書』からの離脱を宣言した。温暖化を食い止めようとする精神は世界共通のものであると私は信じているが、なぜアメリカは離脱に踏み切ったのであろうか。特に日本・EU諸国・アメリカの三国に焦点を当てて『京都議定書』をめぐる国際問題について調べ、地球温暖化防止における国と国とのあり方について考えてみたいと思う。

 

2 『京都議定書』の概要

『京都議定書』は地球温暖化の原因物質となる温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素・HFCs・PECs・六フッ化硫黄)について、先進国における法的拘束力のある削減数値を1990年の排出量を基にして定めたものである。2008年〜2012年までの間にコミットメント(数値目標)を達成しなければならない。国際的に協力して達成するための仕組み(京都メカニズム)が盛り込まれている。京都メカニズムの内容は、排出権取引や先進国間による共同プロジェクトで生じた削減量をやり取りする共同実施、先進国と途上国の間の共同プロジェクトで生じた削減量を当該先進国が獲得するグリーン開発プロジェクトなどである。『京都議定書』発効には締結国全体の1990年時点での合計二酸化炭素排出量の少なくとも55%を占める国が加盟し、かつ55カ国以上の加入が必要である。また、自国における発効から三年が経過した後は自由に脱退ができる。2004年にロシアが批准し、20052月に発効された。20062月時点で署名国84カ国、締結国162カ国、総排出量61.6%。

 

3        日本・EU諸国・アメリカの動向

日本が第三回締結国会議の開催国に立候補したねらいは、外交の最重要課題である地球環境問題における日本の貢献の宣伝であり、国内への省エネ努力の宣伝や環境問題への関心の引き寄せであった。日本が提出した議定書案は目標削減率5%、途上国については長期的に排出抑制を強化していくというものであった。途上国の信頼を得るためには先進国が達成可能な目標値にしなければならなかった。アメリカはこの案に賛成したが、途上国の削減義務化を主張した。アメリカがそのように主張した理由は途上国に高性能の発電所などを建設し利益を得るためであった。

世界で二番目の二酸化炭素排出量をもつEUは、環境保護に積極的(特にオランダ・デンマーク・ドイツ)である。EUにおける最大の問題はEU全体に課せられた目標数値を各国にどのように分配するかであった。EU内で差をつけて分配し、EU全体で目標数値を達成するいわゆるEUバブルは「公平性に欠ける」として日本やアメリカなどが反対した。また、EUは排出権取引の実施には反対した。アメリカが排出権取引に依存して自国の産業を気兼ねなく発展させると、EU内の企業に危機が訪れかねないためである。EU1997年に提出した議定書案は数量化した削減目標が掲げられており、削減率15%というその数値に他の国々は驚愕した。これは、途上国には達成できるはずもなかった。

全世界の温室効果ガスのおよそ25%を占めるアメリカは、気候変動問題の科学的分析においては中心的存在を担っている。しかし、コミットメント期間に温室効果ガスを7%削減の目標どころか、2000年の時点で13%も増加させている。このままいくと2010年には30%を越すのではないかと懸念する声も上がっている。アメリカが主張した『京都議定書』の代替案は、アメリカが温室効果ガスを削減するかのような錯覚を与えるだけの内容であったため、EUから強く批判された。また、排出権取引に賛成したことは発展途上国などの怒りをかった。排出権取引を利用して削減を怠ることが明白だったためである。

 

4 考察

「温室効果ガスを削減し、地球温暖化を阻止する」。全世界共通の願いであり、目標であるはずだ。各国とも一見正論に見える主張をし、議定書案を提出してきたが、結局は自国の損得に縛られているという印象を強く持った。そして、途上国は先進国の力比べにつき合わされ、振り回されているといった現状である。だからといって排出削減目標を平等に、どの国も同じ値に設定するわけにもいかない。各国で省エネに対する事情は異なり、負担になる基準が違っているからだ。世界的妥協によって発効された『京都議定書』は、いまだに多くの問題を抱えている。理想と現実の狭間で、我々は本来の目的を見失いつつある。ただ、確実なことは「化石燃料はいつか必ず尽きる」ということだ。現代の化石燃料に依存した大量生産、大量消費というしくみが今後も変化しないならば、人類終焉のシナリオはすでに始まっているのかもしれない。産業構造、社会のしくみを少しずつ変えていく必要がある。その上で各国が協力していかなければならないことは言うに及ばない。これから先、地球環境が少しでも改善されていくことを切に願う。

 

 

 

【参考文献】

環境省ホームページ http://www.env.go.jp/

 

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『京都議定書の評価と意味〜歴史的国際合意への道〜』

マイケル・グラフ、クリスティアン・フローレイク、ダンカン・ブラック 共著

松尾直樹 監訳