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兵庫ひろみ「なぜソマリアで携帯電話が普及するのか」

 

1.はじめに

ソマリアを調べるにあたって気になったのが、通信手段や交通手段が紛争によって壊滅状態にあるということだった。では、どうやって生活しているのか、そしてまた、どうして壊滅してしまうとになったのか。

 

2.携帯電話が普及する理由

誰もが携帯電話といえば先進国が活用するもので、発展途上国であるアフリカで急速に普及しているとは、予想もつかないだろう。しかし、実際アフリカは世界有数の携帯電話急成長市場である。アフリカの新しい企業や多国籍企業は、より安く効率的な通信技術を求める潜在的需要を解き放とうと争っている。アフリカでは、1997年から1998年にかけて

20近い携帯電話ネットワークが新たにサービスを開始し、アフリカ全体での携帯電話の利用者は1997年には200万人になり、2000年には550万人を超えると予想されている。アフリカは有線電話の普及がもっとも見込めない地域だからである。

アフリカの多くの国では、すべての電話回線のうち2030%が携帯電話回線である。内戦によって既存の電話回線が破壊的打撃を受けたルワンダのような国では、その割合が58%にも達している。ソマリアでも同じ状況である。ソマリア通信会社のバラカート社は、1997年に固定電話事業と携帯電話事業を開始して以来、地元の投資家から支援を受けつつ、これまでに携帯電話部門において6000人の顧客と契約した。同社のサービスにより、ソマリアのビジネスマンたちは外国の取引先との仕事がしやすくなり、内戦で祖国を離れた人々との連絡手段が欲しいという国民の強い要望にも応えられるようになった。ソマリアは決して投資に適した国ではないが、電気通信に関しては政情不安のアフリカ諸国のモデルといえる。同国からの携帯電話の通話は、地域のどの国からのものより鮮明である。その秘密は規制のないことだ。同国は91年以来、実質的には政府がない。このため賄賂を要求する腐敗した当局や国営の通信会社もない。最適の機器を選択できるし、関税も実質的にゼロ。ライセンス料もなし。税金も、一時的な地域政府や地元のボスへ5%程度で済む。民間企業にとっては夢のような状態である。

 

3.無政府状態が放置される背景

このように、ソマリアで携帯電話が普及する背景として挙げられる、無政府状態とはどうして起きてしまうのだろうか??これは紛争がどのようにして起きるのかを確認しなければならない。彼らが紛争を繰り返すのは、部族の違いからではなく政治に対する反発を武力という手段で表現するために、紛争に発展しているのである。植民地化される以前のアフリカでは社会制度は多様な形態をとっていた。ただ一般的に言えるのは「部族」という形態を取っていたということだ。しかし、このような部族を構成していたアフリカ大陸は、1920世紀ヨーロッパ諸国によりそれぞれの部族制度を無視して無秩序に分断されてしまった。そのため、一つの植民地に複数の部族が押し込まれたり、分断されてしまうことになった。このようにして複数の部族が混在した国が70年後独立した。このような新興国家において主導権を握ったのは、植民地解放運動を推進した特定の社会層などであった。そして、彼らが目標としたのが西欧的近代国家の建設であった。そのために、交通・通信の発達を通して諸民族同士の接触・交流を増大させ、地域間の格差を締めようとした。しかし、実際ネットワークの拡大は自他の差異の確認とその強調を生みやすく、かえって同じ部族の帰属意識ばかりが強まってしまった。しかし、部族の差異が強調されるだけでは紛争は起きない。では紛争の発生原因とはなんだろうか。それは、差異が紛争をもたらすことを前提に人々の同化を追及する中央集権化であった。この政策は優位な部族が他の部族を自分の部族に同化させようとし、仮に応じない場合は敵として抑圧・排除した。その結果、自部族の権利を認められない人々は中央政府に反感を持ち、それが時として対抗運動へと発展したのである。そのような紛争が各地で発生し、新しい政府ができるとその政府が自部族を優先しまた、反発が起きる。この繰り返しでいつになっても人々のコミュニティーをつなぐ有線電話は普及しないのである。

 

4.どうすれば紛争がなくなるのか

このように他の部族から迫害を受けずに各自の部族が共存するために、私は交流が不可欠だと思う。確かに、先に述べたように他の部族との交流は自己に対立意識や独自性意識を絶えず持続させる脅威・敵である。しかし、次の段階で我々はその他者に親近感を持つ場合がある。それは、他者を異質で相いれない者と認めたうえで、隣人として共に生きているという親しみなのである。つまり、各集団のリーダーが人々を同質化して共存させようとするのではなく、異質なもの同士の共存が平和をもたらすことを認識できるかどうかが、今後のソマリアにおおきな影響を与えるだろう。

 

参考サイト

(ア)  アフリカで携帯電話が急上昇

http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20000112205.html

(イ)  ソマリア内戦に見るエスニックな対抗運動の展開

http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thj0483/miyata_thesis.htm