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          「日中関係と靖国神社」

              

          (宇都宮大学国際学部国際文化学科1年) 須田麻衣子

 

1、靖国神社をめぐる日中関係

 

最近の日中関係は良好な関係にあるとは言えない。むしろ悪化の一途をたどっているように思われる。そして、その最大の原因は、小泉首相の靖国神社の参拝問題である。小泉首相は、中国や韓国が参拝を強く反対している事について「戦没者の追悼でどのような仕方がいいかは、他の国が干渉すべきでない。靖国神社に参拝してはいけないという理由が分からない。」と述べ強い不快感を示している。小泉首相と会談が予定されていた、中国の呉儀副首相の突然のキャンセルも、このようなことが原因の一つであると言われている。しかし一方で「靖国神社に参拝することは、ヨーロッパで、ヒトラーのお墓にお参りに行くようなものだ。」という意見もあり、国内でも意見が二つに分かれている。 

 

2、靖国神社と極東国際軍事裁判

 

現在、問題となっている靖国神社は、明治2年6月29日(新暦1869年8月6日)戊辰戦争での戦死者を慰霊するために建設された。明治12年(1879年)に「東京招魂社」から「靖国神社」と名称を変更。(明治天皇によって命名される)他の神社が内務省の管轄であったのに対し、靖国神社は陸海軍省の管轄であった。現在は戦死者約246万人(国体護持の為に弊れた兵士のみ)が「護国の英霊」として祀られている。

 

靖国神社で最も重要な事は、A級戦犯の合祀である。A級戦犯とは、極東国際軍事裁判によって「平和ニ対スル罪 即チ、宣戦ヲ布告セル又ハ布告セザル侵略戦争、若ハ国際法、条約、協定又ハ誓約ニ違反セル戦争ノ計画、準備、開始、又ハ遂行、若ハ右諸行為ノ何レカヲ達成スル為メノ共通ノ計画又ハ共同参謀ヘノ参加。」を問われ有罪となった人々を指す。いわゆる「平和に対する罪」を犯した人々。

 

しかし、極東国際軍事裁判は戦勝国が敗戦国を裁くものであった為、この裁判について様々な議論がされている。まず、この裁判では、日本の法曹関係者の裁判への協力は行われていない。理由は、広島・長崎への原子爆弾の投下をめぐって先勝国、アメリカにとって好ましくない結果をもたらす可能性があった為だといわれている。さらに、1951年4月連合国軍最高司令官、ダグラス・マッカーサーはウェーキ島でハリー・S・トルーマン大統領との会談で「東京裁判(極東国際軍事裁判)は平和のため何ら役に立たなかった。」と述べている。また、同年5月3日アメリカ合衆国連邦議会上院の軍事外交合同委員会において、「日本が第二次世界大戦におもむいた目的は、そのほとんどが安全保障のためであった。」(Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.)と、述べている。また、インドのラダ・ビノード・パール判事は、判決の際に「この裁判では、有罪とすることができない」と言っている。これは、日本の正当性を認めるものではなく、“日本を裁くなら連合国も同等に裁かれるべし”というものである。

 

当時国内では、戦犯釈放運動が全国に広がり約4千万人もの署名が集められた。これを受けて、昭和28年に戦犯の赦免に関する決議が国会で可決された。国際的にもサンフランシスコ講和条約第11条にもとづき関係国11カ国の同意を得て、A級戦犯を昭和31年に、B,C級戦犯は昭和33年までに釈放した。このため、A級戦犯の中で絞首刑ではなく終身禁固刑などになっていた、重光外相と賀屋蔵相は復権した後、副首相や法相になっている。しかし、戦争について責任が全く無いとは言えないであろう。

 

 さらに中国は、日中平和友好条約を結ぶ際に、日本に巨額な戦争賠償を請求できたにもかかわらず、当時の周恩来総理の決断で放棄した。なぜなら中国側は、この戦争は一部の軍国主義者が起こしたもので、加害者は一握りのA級戦犯であり、日本国民も中国と同様に被害者で、大戦によって極貧状態にある日本国民から巨額の戦争賠償を取ることは酷であるとして、戦争賠償を放棄した。

 

3、これからの日中関係

                                       

 このようなことを考えると、仮に、極東国際軍事裁判が公平性を欠いていたとしても、そこで裁かれた人たちを合祀している靖国神社に、日本の総理が参拝をすることに懸念を示すことは、戦争によって甚大な被害を受けた中国側にすれば仕方のないことだと思う。

また日本では、1995年当時の村山首相は「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。」と述べた。 

このことから、日本は中国に対して謝罪をしていると思うが、被害者側から考えれば、言葉だけではなく行動で示してほしいと、思うのかもしれない。

 

 現在日本と中国は、経済的にとても密接な関係にあるので、このようなことで、せっかく築き上げた関係が壊れてしまうことは、非常に残念なことだから、日本は、戦争の加害者であるということを再確認し、中国側が靖国参拝に懸念を示していることについても「内政干渉」と、一言で片づけずにお互いに相手に歩みよって、きちんと解決すべきであると思う。

 

<参考サイト>

http://www.jsdi.or.jp/~y-ide/010815yasukuni.htm

http://ja.wikipedia.org/wiki/

http://www.nipponkaigi.org/reidai01/Opinion1(J)yasukuni/ohara.htm