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下枝笙子「地域活性化と音楽活動―宇都宮におけるジャズのまちづくり―」

 

1.            はじめに

 

 全国各地に市民が参加する形の音楽祭が数多くある。「音楽」という資源を活用し、地域の活性化を図る自治体は増える傾向にあるようである。そこで、宇都宮市における「ジャズの街づくり」に着目しながら音楽のまちづくりについて考察する。

 

2.ジャズのまちづくり

 

 宇都宮市では近年、ストリートでパフォーマンスを行うミュージシャンか増加しており、ジャズを中心とした軽音楽活動が活発になっている。「ジャズのまち」をつくるためにジャズに関する団体が組織され、ジャズを中心としたまちづくりに努めている。

 

 1974年に始まった音楽イベント「ミヤ・ジャズイン」を運営する「ミヤ・ジャズ推進協議会」は、地域資源である「ジャズ」を活用し、地域産業の振興と地域文化の向上を図ることを目的に設立された。ミヤ・ジャズインは2006年から毎年開催され、2010年開催時は125千人を超える動員となるほどであり、北関東最大級のジャズフェスティバルに成長している[1]。また、このイベントの基本は市民、企業、行政、各種団体などによる地域一体となった積極参加型事業である。宇都宮出身またはゆかりのあるトップアーティストを起用し、地域とアーティストの絆を深めることも目的としている。「ジャズのまちづくり」と掲げてはいるものの、狭義のジャズにはこだわらず、ジャンルの幅を広げて出演者や来場者のニーズに応えたイベントを目指している。

 

 他にジャズのまちづくりに取り組む団体としては、「うつのみやジャズのまち委員会」、「宇都宮ジャズ協会」、「市民芸術祭実行委員会軽音楽部会」などが挙げられる。いずれの団体も、宇都宮の音楽文化の振興や街を盛り上げるために活動を行っている。

 

 宇都宮市は音楽文化の振興を図るとともに、宇都宮市出身であり、世界で活躍する著名なジャズミュージシャンの顕彰につながる事業を展開し、「ジャズのまち宇都宮」のブランド化に向けて取り組んでいる[2]

 

3.音楽祭をつくるにあたって

 

 全国各地で様々なジャンルの音楽イベントが開催されるが、ジャズフェスティバルの数が圧倒的に多いと思われる。様々な音楽のジャンルがある中で、なぜ「ジャズ」なのか。

 

ジャズの場合、メンバーが入れ替わり演奏できる性格がある[3]。ジャズにおいて重要な楽器はピアノと管楽器である。編成によって使用される楽器は異なってくるが、各種サックス、トランペット、そしてトロンボーンはよく使用される。どれかひとつの管楽器と三人編成のリズム・セクション(ピアノ・トリオを中心にした場合が多い)を組み合わせた編成が一般的である[4]。このようなジャズの性格から、参加者一人ひとりが活躍でき、楽しめるのではないかと思われる。

 

そして、このような市民が参加する手作りの音楽祭が求められる背景には、子どもの頃にピアノを習っていた人や中学・高校時代の吹奏楽経験者が社会に出てゆとりができる頃、また音楽を楽しみたいと思う人が多くいるからであると思われる。しかし知り合い同士の同好会的な活動に留まり、発表の場をつくることは困難である。同好会的な活動で発は表会を開くほどでもないということも考えられる。また、仲間内だけで練習するだけでは、最初は楽器を演奏する喜びがあったとしても楽しいという気持ちは薄れていくかもしれない。そうはいっても、地域を挙げた音楽イベントに導こうとはなかなか考えがたいだろう。そこで、行政や企業が協力し、まちづくりの一環として音楽活動に踏み出す。

 

市民参加型の音楽祭を一からつくることは困難であり、市民だけでなく自治体も何から始めるべきなのかというところから始まることが多いようである。そこで、地域の音楽活動を支える企業が重要となってくる。楽器製作などで有名なヤマハは、音楽のあるコミュニティーづくりを推進し、地域の人々が参加し、継続した活動を行うことができるよう、地域と連携して「音楽の街づくり」に貢献している[5]。地域の文化資源等を活かした市民参加型のイベントやフェスティバルの提案、イベントプロデュース、企画プランニング、アドバイザリー業務など多岐にわたる。しかし、このような市民参加型のイベントは定着して継続的に行われるようになるまでは時間がかかるようである。

 

 

4.経済効果

 市民参加型の音楽祭を開催することによって経済効果が見込めるのか、調査不足により結果が得られなかった。しかし、前述のミヤ・ジャズインは、2011年開催時は「宇都宮餃子祭り2011」が同時開催された[6]。県内外からも観光客が訪れ、「宇都宮ブランド」の一つである餃子が売れれば経済効果があると言えるのではないだろうか。また、ストリートで演奏されるジャズを偶然耳にしたことによりジャズに興味を持ち、市内に多くあるジャズバーに行ってみようという気持ちを人々が抱くかもしれない。

 

5.おわりに

 

 今回のレポートを作成するにあたって、宇都宮のジャズに関する資料を求めて宇都宮市立東図書館に足を運んだが、欲しかった情報は得られなかった。

 

 音楽に興味の無い人にとってはこのような市民参加型の音楽イベントといったものには関心がないだろう。しかし、スポーツ、食、美術、伝統工芸など、すべての地域に多様な文化資源はある。私は幼い頃から音楽と触れ合って育ったためだろうか、音楽関係のイベントには参加したくなる。現在は就職活動に割く時間が多く、音楽を楽しむ時間はほとんどないが、空いた時間に少しで楽器を演奏したり歌ったりすることによって何事もがんばろうと思える。自分が社会に出た際、市民が気軽に参加できる音楽イベントがあったらそれを楽しみに毎日を過ごすことができるのではないかと考えている。

 

 地域の音楽文化振興においてのみならず、すべてのまちおこしイベントにおいて重要な課題は、活動を定着させ継続することであると思われる。宇都宮における音楽振興「ジャズのまちづくり」が今後どのように展開していくのか、また、様々な地域の音楽活動にも関心を持ち、地域活性化と音楽活動の関係を考察していきたい。

 

 



[1] http://www.miyajazz.jp/

 ミヤジャズインオフィシャルサイト

[2] http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/bunka/013370.html

 ジャズのまちづくり|宇都宮市

[3] 武濤京子監修「クラシック音楽マネジメント〜音楽の感動を届ける仕事〜」株式会社 ヤマハミュージックメディア 2011

[4] 小川隆夫「JAZZウルトラ・ガイド とことん楽しむ7つのステップ」平凡社 2001

[5]  http://www.yamaha.co.jp/communitybuilding/

 ヤマハ音楽の街づくりプロジェクト「おとまち」

[6] http://www.shimotsuke.co.jp/town/tourism/gourmet/news/20111106/653042

 下野新聞(2011116日 朝刊)