120123kanaidak
金井田和親「『新潟州構想』―そのねらいと課題について―」
1.
新潟州構想とは
2008年に入り、大阪府知事(当時)の橋本徹氏が「大阪都構想」を打ち上げた。以降、愛知県の「中京都構想」等に広域自治拡大の動きはますます広がっている。そして新潟県では、2011年1月25日に新潟県知事泉田裕彦氏と新潟市長篠田昭氏が「新潟州構想」を共同提案した。
当構想は、現在の新潟市を廃止し、新潟県改め「新潟州」が広域行政を執り行う。政令指定都市としての新潟市の下にある行政区及び新潟市周辺市町村を合併し、基礎自治体となる特別区を数区編成する。他市町村も同様に合併を推進し、広域連合とする予定である。都市計画面では、地下鉄を柱とする新都市交通システムを現在の新潟市周辺に整備し、州が運営を行う。
2.
新潟州構想のねらいについて
第1に、県と政令市との二重行政を排し、行政の効率化を図ることである。この点は大阪都構想でも指摘されているものである。新潟県は本州日本側で最大の港湾であり、LNG等のエネルギー輸入基地となっている。特に新潟東港と直江津港に関して、港湾整備に集中的な資本投下を行うという。
第2に、政令市が有する高度な行政機能を全県に波及させる点である。具体的には、政令指定都市に設置が限られている特別高度救急隊を州全体に広め、先の新潟県中越地震にあるような大規模災害等の有事の際に、迅速な救助活動をとれる体制をとる。
第3に、地域の課題は住民に身近なところで解決できるよう、基礎自治体の自治権の強化を図ることである。新潟州構想での特別区は現在の東京都23区を参考にしたものであるとされるが、その権限は東京都の特別区よりも強固なものにし、住民による直接選挙により民意を反映した行政の実現を目指す[1]。
3.
新潟州構想の課題について
第1に、合併による他市町村への影響が明らかにされていない点である。各分野に関する論点は検討委員会の俎上に上がっているものの、それらは新潟県や新潟市所管の課題といえるものが主であり、他市町村を含む広域連合についての議論はまだなされていない(平成24年1月23日現在)。この点は、他市町村において新潟州構想についての見解が分かれる大きな要因となっている。
第2に、構想実現に際し、県および市町村、国の承認を必須とである点である。広域自治体や地方自治体それぞれにおいて、議会等での議論を経て、承認を得る必要があることはいうまでもない。その一方で、国単位では地方自治法で地方自治体構造は規定されているため、抜本的な法改正をはじめとする手続きが踏まれなくてはならない[2]。
以上のように、新潟州構想は提起されてから日が浅いこともあり、具体的な検討は今後本格化すると思われる。検討委員会では平成24年3月を目標に構想をまとめるとしている。
本レポートをまとめるにあたり、筆者は行政文書をはじめとする様々な情報をあたってみたものの、力量不足もあり、有意な内容とするには至らなかったことについては反省の余地が大いにあると考える。しかし、多様な論点のみが抽出されているというのが現在の状況であるのではなかろうかと思う。今後、当構想がどのように展開されていくのかを注視していきたい。