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畠山晃穂     「地域活性化における観光施設の役割

―八戸ポータルミュージアム「はっち」を例に―」

 

 

1.「はっち」の概要

 

 昨年2月、青森県八戸市の中心街に新たな観光施設が開業した。正式名称は「八戸ポータルミュージアム」、愛称は「はっち」である。この八戸ポータルミュージアム「はっち」は地域の資源を大事にしながら新しい魅力を創り出す場として生まれた[i]。市の魅力を外部に向けて発信するための博物館のような施設であり、また市民が集まり、個々の持つ魅力を伝える施設でもある。そこでは、まちづくり、文化芸術、観光、ものづくり、子育てを軸とした活動をサポートする、様々な設備がある。では、「はっち」の具体的な事業とは、どのようなものであるのか。ここでは大きく3つに分けて説明する。

 

 

2.「はっち」の事業

 

 まずひとつは会所場づくりである。人々の交流や情報交換、地域の文化に触れることを目的とした時間と場所を提供する。「こどもはっち」と呼ばれる場は、青森県産の木を使った空間である。木のおもちゃや遊具などが置いてあり、入場料100円で一日中遊ぶことができる。木のおもちゃの中には昔ながらのおもちゃもあり、大人と子供が交流し、一緒に遊ぶことのできるような場所である。また、「はっちリビング」という場がある。ここは誰もが利用できるフリースペースで、「はっち」内の店舗から買ってきたものを食べたり、集まって勉強したりできる。図書館のように静まり返っているわけではないため、気楽に集まり、各々自宅のリビングのように好きなことをして、時間を過ごすことができる。

 

 次に貸館事業である。創作活動をサポートするため、シアター、ギャラリー、スタジオなどの施設を貸出したり、人的サポートを行ったりしている。ギャラリーは4つあるが、私が訪れた時には、和のギャラリーで日本舞踊のレッスンが行われていた。また、レジデンスという宿泊可能な場もある。長期創作活動に専念する学生やアーティストのための施設で、共同スタジオやキッチンなども同フロアにある。

 

 最後に自主事業である。地域資源を生かした事業をプロデュースすることで新しい価値を創造することを目的としている。中心市街賑わい創出事業、文化芸術活動振興事業、ものづくり事業などが挙げられる。「八戸のうわさ」という事業は八戸の中心街を巻き込んで、様々な店舗に同じような吹き出し形のシールを貼っていく。吹き出しの中には「日本一になったことがあるらしい」「美人店員がいるらしい」など、その店にまつわるうわさを公開する。そうすることで今までになかった店舗間のつながり、コミュニケーションが生まれた。ものづくり事業では、木のからくりアート、えんぶり[ii] 和紙人形、八幡馬[iii]、木造模型船、八戸凧絵、南部裂織[iv]など、様々な作家の作品や製作工程を展示、作品販売をしている。

 

 

3.「はっち」の市民浸透度合い

 

「はっち」が開業される前までは、私のまわりでも多くの人々が「必要ない」「集客効果が得られるのか」と、否定的であった。しかしながら、「はっち」開業から11か月経った20121月、私が足を運んでみると、他県に住む親戚と一緒に訪れたという親子や、上映されている八戸の祭りを熱心に見る人が見られた。また、私の祖母は青森県内の違う町に住んでいるが、友達を連れて八戸に買い物に来た際に休憩がてら「はっち」を利用したという。開業前には否定的な声が多く聞かれたが、八戸の宣伝に一役かっているようである。八戸市民の交流という側面からみても、受験やテストに備えてグループ学習をする中高生、待ち合わせやショッピングの休憩にカフェを利用する人、「こどもはっち」で交流する母親たちなど、「はっち」は八戸市民の生活に浸透していることがわかる[v]

 

 ここで、「はっち」の来館者数が述べられた新聞記事を紹介する。

 

今年2月にオープンした八戸ポータルミュージアム「はっち」の来館者数が順調に伸びている。13日現在で76万3511人と、年間目標の65万人を大幅に上回る好調ぶり。

 三社大祭のあった8月は月別で最多の約9万6000人が来館。10月26日に年間目標を達成した。[vi]

 

 

4.「はっち」の課題とこれからの発展

 

着実に来館者数を増やし、中心街の活性化を促していることがわかる。さまざまなイベントの効果は大きい。しかしながら、やはり課題は残る。イベントが多く行われる1階部分は来館者が多いものの、常設展示やテナントがある2階以上の階は利用が少ない。市民からは、「イベントの告知を早くしてほしい」「トイレやエレベーターの場所がわかりづらい」などの意見も上がっている。こうした意見を受け止め、どのように解決していくのかに注目が集まる。また、これまでは「はっち」を浸透させるためのイベントや展示といった期間であったが、「はっち」が浸透してからのイベントや施設利用など、これからの発展にも期待する。いずれにせよ、「はっち」が八戸市の外部から、そして内部でのつながりの場となっていることは確かである。観光施設は地域活性化において大きな役割を担っているといえる。

 

 

 

 



[i] PROFILE of hacchi

[ii] 八戸地方を代表する民俗芸能。国の重要無形民俗文化財に指定されている。烏帽子をかぶり頭を大きく振る舞で、豊作を願うもの。(八戸市HP「八戸の観光」

http://www.city.hachinohe.aomori.jp/kanko/festival/enburi/ 2012122日現在)

[iii] 青森県八戸市を中心とする南部地方に古くからある、馬をかたどった郷土玩具。

(株式会社八幡馬HP http://www.yawatauma.co.jp/img/topbanner.jpg 2012122日現在)

[iv] 布を裂いて横糸「緯(ヌキ)」にして織る、織物の一つの織り方。(南部裂織保存会HPhttp://www.sakiori.jp/img/top.jpg 2012122日現在)   

[v] 201219日におけるはっちでの聞き取りより

[vi] YOIURI ONLINE http://www.acs.yomiuri.co.jp/e-japan/aomori/news/20111219-OYT8T00144.htm

「『はっち』来館者数、好調(20111219日)」(2012122日現在)