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鳥井聡美「メディアと栃木県」
栃木県が数多くの映画やテレビ番組、テレビCM、プロモーションビデオの撮影地となっていることはあまり知られていない。2010年12月4日、産経新聞は「都道府県の魅力度ランキング(ブランド総合研究所調べ)で全国45位に低迷。去年も40位で、都心に近く観光資源も豊富なのにかかわらず、その魅力をうまく発信できていないのが現状[1]」としていた。しかし近年、栃木で撮影された映画やドラマなどの作品が増えている。最近では宇都宮市の中心街地にあるオリオン通り商店街で、『ゴースト もういちど抱きしめたい』(2010年11月13日公開)の撮影が行われた。我々の宇都宮大学も映画『L Change the world』(2008年2月9日公開)や東邦神起の『どうして君を好きになってしまったんだろう』のプロモーションビデオの撮影に使われた。
栃木でロケ(ロケーション撮影)が行われることで、栃木がPRされ、県内や全国に栃木の魅力が浸透してゆくのではないだろうか。
撮影地としての栃木の魅力、栃木県のロケ誘致の実態を明らかにし、ロケがもたらす効果考察する。
栃木県の魅力・栃木で撮影するメリットとは何か。
「日本一影の薄い県」というキャッチフレーズをしばしば使われる栃木県であるが、日光・那須・宇都宮・佐野・小山と聞けば、知っている人も多いのではないだろうか。
栃木県の魅力として第一に挙げられるのは、滝・湖・川・山・森林・湿地などの豊かな自然である。牧場や田園、公園など人工の風景も広い空や植物などが美しい。奥日光の紅葉は見事であるし、戦場ヶ原では高原植物や野鳥が美しく、写真を撮る人も多い。日光杉並木は、日本で唯一特別史跡と特別天然記念物の二重指定を受け、ギネスブックにも掲載されている。栃木には世界にも誇れる自然があるのだ。春は桜、夏は祭り、秋は紅葉、冬は雪など四季の風景を満喫できるのも魅力だと言える。
次に、蔵の街並みが有名な栃木市、日光の宿場町として栄えた鹿沼市、佐野厄除け大師、世界遺産に登録されている「日光の社寺」など栃木県の各地に、歴史を感じさせる街並みや建築物などがある。また、遺跡の数も多い。全国の遺跡の数を比較したところ、栃木県は7位であった。他に、産業遺跡や戦争遺跡などもあり、古代から近現代まで各時代のシーンに合わせて撮影するのに適した場所を見つけやすいだろう。
弟三に、県内には廃校になった小学校、中学校、高校がたくさんある。活用用途募集廃校施設等一覧(平成22年度11月19日現在)[2]をみると、貸与・譲渡条件が無条件の高校があった。栃木県自体が撮影に協力しており、廃校や球場、公共施設、道路などの撮影許可がおりやすいという。福田富一知事は2007年度の定例会見で「今後も積極的に映像作品の撮影を誘致し、県の魅力を全国に発信する ことで地域活性化につなげていきたい」と語った。 知事の発言からも栃木県のロケへの協力姿勢がうかがえる。
首都圏からのアクセスの良さも、栃木でのロケのメリットだ。高速道路で40〜120分、上野―宇都宮間は新幹線では47分である。首都圏から日帰りもでき、撮影陣や出演者に便利だ。
他にもサーキットや温泉、テーマパークなどがあり、様々なシチュエーションにあった場所を探すことができる。県の協力により撮影許可がおりやすく、かつ首都圏からのアクセスが良い事はロケに適しているだろう。
栃木のロケ誘致の実態
栃木県フィルムコミッション、那須フィルムコミッション、宇都宮フィルムコミッション、とちぎフィルムhttp://www.fctochigi.rpr.jp/応援団という4つの団体が栃木県の映像資源を紹介し、撮影を誘致している。
栃木フィルムコミッションは、メディアを通じて栃木県の魅力を広くアピールするにより、イメージアップと地域活性化を目指し活動している。具体的な活動内容としては、映像製作者への(撮影場所についてのデータ・交通アクセスなどの関連データなどの)情報提供、現地案内、ロケ先との調整、許可申請に関する相談、広報・宣伝などの協力などをしている。このウェブサイトでは、地勢・気象情報を掲載したり、ニーズに合わせてロケ地を検索できるシステムがあったりと、製作者の好みの条件にあった撮影がしやすくなっている。検索すると、その場所に関する詳しい情報や写真、住所、連絡先、駐車場、利用条件を確認でき便利だ。
このロケ地検索システムは「ロケナビ」といって現在640件が登録されている。(2011年1月15日現在)ロケナビは、キーワード、シーン、シチュエーション、エリアから検索できる。細かく条件が分かれていて、イメージに合った場所を追求できる。
しかし実際にキーワード検索してみたところ、なかなか思うような場所が探せなかった。キーワードを選ぶセンスがないと、思い通りの場所を探すのは難しい。検索者が既存のキーワードの中から選べるシステムもあると、より効率よく、求めている場所が見つけやすくなるのではないだろうか。ロケナビには改善の余地がある。
このサイトには、お弁当(お食事)・宿泊・資材購入・警察署・病院・観光協会・栃木県のイベント・宇都宮地方気象台へのリンクがあり、撮影に必要な情報を入手できるようになっている。栃木県のロケ誘致の実態は、サービスが充実しているようにみえる。
経済効果
2009年5月28日の産経ニュースによると、「平成20年度の県フィルムコミッション(FC)事業で、県内ロケで撮影対の宿泊や弁当などに消費された経費の直接的経済効果は前年度より、2.8%増えて1億4629万円だったことが、県観光交流課のまとめで
わかった。」「ロケ誘致に伴う直接的経済効果は、18年度は6715万円、19年度は1億4231万円」ということだ。
まとめ
栃木県で撮影が行われることで、県内のロケ地周辺地域には経済効果が期待できる。撮影にかかる経費の多くがロケ地周辺で消費されるからだ。また、映像を見た人にその場所を気に入れば、ロケ地を訪れる可能性がある。観光地化したロケ地には人が集まり、周辺地域での消費が活発になると考えられる。栃木県は県内の映像資源の情報を発信し、積極的にロケを誘致しているし、数多くのロケ地を一般にも紹介している。このことで撮影者や映像のファンの方々が足を運びやすくなり、少なからず例年の直接的経済効果の上昇につながっていると考える。
また有名な映画やドラマ、CMやプロモーションビデオに地元が写ることで、県民が地元のよさを再確認できると思う。「影の薄い県」と言われる栃木県に、自身を持って栃木がすばらしいと言い切れる人は少ないかも知れなし。しかし、今後地元が映っている映像作品が増え、それをみる機会が増えれば、歴史・文化・自然など、幅広い映像資源に溢れた栃木に誇りを持つことができるのではないだろうか。更なるロケ誘致を期待する。
参考
http://sankei.jp.msn.com/(産経ニュース)
http://www.tochigi-film.jp/(栃木フィルムコミッション)
http://www.pref.tochigi.lg.jp/system/honchou/honchou/1216861899504.html(栃木県観光交流課)
http://www.nasukogen.org/nasufc/(那須フィルムコミッション)
http://www.utsunomiya-cvb.org/film/(宇都宮フィルムコミッション)
http://www.fctochigi.rpr.jp/(とちぎフィルム応援団)