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佐藤佳奈「交通拠点地、高崎市における都市戦略」

 

1.はじめに

 私の地元、群馬県高崎市は、関東と信越をつなぐ交通網の拠点となっている。その中心であるJR高崎駅の構内と周辺の改修工事が、3年ほど前から長期間にわたる計画の中でかなり大規模に行われている。この駅を長い間利用していた者からして、この改造による近年の駅周辺の変化は目覚ましいものがあり、それほどの大掛かりな改装の詳細はどんなものなのか、以前から気になっていた。この高崎駅改装を糸口に、市の都市戦略と今後の展望について追求したい。

 

2.高崎市の交通拠点性

 高崎市は人口37万人[i]で、市町村合併が進んでいることにより、県内で唯一人口が増加している市である。JR高崎駅は、1日の乗降客数が約57千人で、これは県庁所在地にあるJR前橋駅の3倍である[ii]。高崎駅の路線は新幹線が2線、在来線が6線あり、交通の拠点駅となっている。また、今後予定されている新幹線や高速道路などの交通網の拡大から、高崎市への2時間圏域の人口は約4600万人となり、国の全人口の3分の1以上にも及ぶという予測がなされている。交通網の発達に伴って、都心への通勤・通学も容易になり、ベットタウンとしての役割も増すことが考えられる。信越地方や信州と都心とを結んでいるのがこの高崎駅であり、まさに「拠点」といえる市だと思う。駅とは市の玄関口となるものであり、市の顔とも言える。よって、交通拠点地という点を特徴としている高崎市にとって、高崎駅とその周辺地域の開発や整備は、市政、県政において重要な事業なのである。

 

3.高崎駅の開発

 まず、私が気になっていた、高崎駅の改修工事内容について見ていく。駅舎は20113月までに、2階建てから3階建てになり、床面積は延べ1800平方メートルから3500平方メートルに広がる。そして、駅と東口のオフィス街をつなぐペデストリアンデッキ(歩行者専用の高架橋)が築造される。これは、歩行者の安全性を考慮し、歩行者空間を確保したものである。主要な乗降口にはエレベーターが設置され、通路部分の段差を無くし傾斜を緩やかにするなど、バリアフリーが考慮されている。また、橋の下では高速バスターミナルが設置され、さらに関越自動車道のスマートインターチェンジが建設されることで高速道路網と新幹線を組み合わせて利用することにより、集客範囲の拡大や駅利用者の増加が見込まれている。また、新たに商業施設「イーサイト高崎」が、20101212日にオープンした。この中には、飲食店街のほか、市民サービスセンターや献血ルームが設置されている。

 

この改修工事について感心できるのが、地元民と来街者との双方の利便性について考慮していることである。駅周辺にはオフィスが多いため、東口から西口への移動が容易になったことや、飲食店や商業施設が活性化することは、会社員にとって大きな利点であるだろう。また、改修工事後の駅周辺には処々にバリアフリーが見受けられ、お年寄りや子どもが、交通量の多い駅前でも安全に移動できるよう設計されており、様々な年齢層や目的の利用者について配慮されている。そして、バスや自動車と電車・新幹線とを組み合わせた利用をしやすくする仕組みを取ることで、市内から市外へ、またはその逆についても、移動が便利になる。このように、駅施設の発達は、さまざまな利点を生むことが考えられる。

 

4.都市集客戦略

この駅改修工事も市の掲げる「交流と創造〜輝く高崎」を目標とした事業のひとつであることがわかった。平成22年度の市の予算編成文書では、『安心で活力あるまちづくりの実現』を最重要点に挙げ、中心市街地活性化を図って予算を編成した、とある。市は、「高崎都市集客戦略」を策定し、広がる交流圏域から多くの人を集めるまちづくりに重点的に取り組んでいる。これは、交通の拠点性を生かし、「人を集めるまちづくり、人が集まるまちづくり」を理念においた都市活性化を目指すものである。地域の景観や環境整備に留まらず、それを取り巻く観光業や産業、文化をも充実させ、「高崎市」を市内・市外へと広めようという事業である。

 

しかし、交流人口が多くなるとはいえ、移動のための通過都市となってしまうのでは市の活性化は成功しない。そこで今、市の魅力としての「ブランド力」が必要であると考えられているようだ。市は、4つのブランド力を挙げている。1つ目は「文化力」である。高崎は、群馬交響楽団というプロオーケストラを持つまれな都市であるそうだ。高崎駅近くには群馬音楽センターがあり、音響の整った大きなホールである。私は高校時代、吹奏楽部に所属していたこともあり、これらと関わることが多かった。2つ目は「市民力」である。高崎市は、高崎映画祭や音楽祭、都市緑化フェスティバルなど市民が手掛ける催し物を多く開催しているということだ。高崎映画祭は毎年春に行われているもので、歴代の受賞者を見てもこの映画祭の評価の高さが伺える。3つ目は「産業力」である。ヤマダ電機の本社が高崎駅に隣接して移転されたことからもわかるように、高崎市は大きな企業を育てており、これを全国へと広めているのである。4つ目は「住みやすさ」である。豊かな自然環境で風水害や地震のリスクが少ないということだ。これらを高崎市のブランド力として、内外部に発信することで、市の活性化につなげようという試みがなされている。

 

そこで、現在、市のシンボルとなるような都市集客施設の創設案を進めているところであるそうだ。この都市集客施設について、私は賛成する。さいたまや横浜、幕張など他の大都市について考えても、駅の近くに大型の集客施設があり、その地域を代表する施設となっており、これを目的とした駅の利用はかなり多いと考えられるからだ。これが、「文化力」や「市民力」を発揮させる場として大いに働くと考えられる。

 

5.考察

 駅とその周辺の開発には、壮大な都市開発計画が基になっていることがわかり、驚いた。市を取り巻く環境の変化に合わせて、または未来のそれを見越して、改革を行っている市の動向には大いに感心する。地元の市が発達して全国において重要な地位をおくようになることはとても望ましい。

 

 一方、この都市部開発によって地方産業や商店街の衰退も現実となってくるだろう。私は、都市部に産業の中枢が集まることはよいと考える。これは、最も多くの人が利用する地域、市の顔となる地域が繁栄することだからである。しかし、地方の衰退によって、その住人やそれを利用していた人たちは、もちろん困るわけである。そこで、都市部に行くための無料バスを運行するなどのサービスは、当然求められるだろう。このような都市と地方とのバランスへの考慮が行き届いてはじめて、この都市集客戦略は成功したと言えるのではないだろうか。

 

 駅東口の工事も、開始から3年以上経った今でさえまだまだ完了しておらず、私たちもその完成形がわからずにいる。今回、この政策について調査する中で、完成図が公開されていなかったり、情報が乏しかったりすることに不満を持った。これだけ壮大な都市計画を行い、市民に影響を与えているのだから、市民へ正しく情報を開示することはとても重要だと思う。さまざまな事業が完了するには、まだ多くの年月が必要だろう。また、もちろんその時々で新たな開発計画がでてくるだろう。都市化ばかりに目がくらんで市民の生活保護を怠ることのないよう、我々も注意と関心を持っていくべきだと思う。高崎の個性を最大限に発揮できるようなまちづくりに期待する。



[i] 平成221231日現在 http://www.city.takasaki.gunma.jp/gaiyou/jinkou.htm

[ii] 高崎市内のJR7駅合計の乗降客数は1日約81千人、

 対して人口約50万人の宇都宮市にはJR4駅、合計の乗降客数は1日約85千人

 

<参考URL

・高崎新聞 高崎の都市戦略http://www.takasakiweb.jp/toshisenryaku/article/2008/10/01.html

・広報高崎 

2007121日号http://www.city.takasaki.gunma.jp/kou-t/19-12-1/19121-10.pdf

201111日号http://www.city.takasaki.gunma.jp/kou-t/23-1-1/documents/2311.pdf

・高崎市ホームページ http://www.city.takasaki.gunma.jp/ 

・高崎都市戦略ビジョン

・マイタウン群馬  JR高崎駅東口 北関東の交通拠点

 http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000671005270001