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中村佳代 「静岡県富士宮市における食のまちづくりについて」

 

1.     はじめに

 

静岡県富士宮市出身の私にとっての食のまちづくりとは、幼い頃から日常的に食べていたやきそばの麺に「美味しい」と味覚で感じるとともに、固くてコシのある麺に興味を抱いていた。

 

そこで、今回の宇都宮大学国際学部にある「地方自治論」の授業レポートでは、この食感の良い固い麺に着目する。

 

また、静岡県富士宮市における食のまちづくりについて考察を進めるとともに、市民団体と行政、NPO法人と企業がどのような関わりを持ち、「食のまちづくり」に発展していくのかについて、富士宮やきそば学会会長の渡辺氏とのインタビュー内容を下記に報告する。

 

2.     事の発端

 

2006年に引き続き、翌年2007年にもB1グランプリを見事に2連覇した富士宮やきそばの事の発端は、市民による中心市街地活性化のためのワークショップがきっかけであった。これを機に、当時からやきそばで認知度の高い富士宮市では、10団体が参加するB級ご当地グルメで最初の優勝に輝いた。

 

そもそも、富士宮市では、食のまちづくりを主眼として「富士宮やきそば」が生まれた。富士宮やきそばを生み出したのは、富士宮やきそば学会会長である先駆者の渡辺氏と13名の市民が中心となった。

 

10年間で500億円という経済的効果を生み出すことのできる「富士宮やきそば」に着目してみると、お金を賭けない方法で宣伝をする工夫が見られた。

 

その工夫について次章では述べていきたい。[]

 

3.     宣伝方法

 

現在、富士宮市では、やきそばエキスプレスの他、はとバスツアーといった東京から富士宮間を行き来するバスツアーが非常に人気である。

 

毎年、5万人の来場者を迎えるこのバスツアーの魅力は、「麺財符」と呼ばれる富士宮やきそば学会認定の場所でやきそばが購入できる券である。この他、富士宮やきそばマップと呼ばれる1目でどこに富士宮やきそばのお店があるのかが分かる地図を配る工夫がされている。

 

この地図に掲載されている富士宮やきそばの旗には、「う宮!」という言葉が使われている。これは、富士宮ならではの方言であり、「おいしい!」という意味である。他にも、富士宮やきそばWAONカードなどがある。

 

これらを用いて、マスコミに対して情報発信をするブランドコミュニケーション能力が民間団体である富士宮やきそば学会のG麺を始め、ご当地ならではの宣伝効果の威力は大きい。そのため、食文化としての価値を高め、多くのメディアが注目する的となった。[]

 

4.     経済的効果

 

G麺やう宮などのフレーズは、地域ブランド化に繋がる。B級ご当地グルメは、地域ビジネスであり、それをどれだけ多くの人に伝えられるかで地域ブランド化する。

 

この地域ビジネスの手本が「富士宮やきそば」であり、21世紀はこのようなモデルが他の地域でのB級ご当地グルメにおける見本になるだろう。

 

そこで、見本になる富士宮やきそばの経済的効果は、やはり、プロモーション活動にあると言える。その理由は、麺、肉かす、いわし節の3つの食材をベースとして富士宮やきそば学会から商標権を許可してもらうために、「富士宮やきそばアカデミー」と呼ばれる2泊3日の合宿が存在しているからである。

 

この合宿では、富士宮やきそばにおける焼き方から講義、歴史や観光といったものを通して、最終的に実技試験と、筆記試験に見事に合格すると、「麺許皆伝書」を発行してもらうことができる。これを機に、「富士宮やきそば」のお店を出店し、市民が自発的にまちづくりを推進することができるのである。

 

また、「富士宮のまちを元気に」をモットーに、ボランティアで起こしたまちづくりがやがてビジネス化し、そこからフードバレー構想という静岡県富士宮市における食のまちづくりに発展したのである。

 

このシステムに続き、「ふるさと納税」として富士宮市に寄付し、市民団体と行政、NPO法人と株式会社が相互に相乗効果を生み出すため、まちが活性化し、今後の富士宮市にも期待が持てるのである。

 

最近では、「富士宮にじます学会」やお好み焼きといった新たな既存資源を活用した富士宮市のまちづくりが存在する。今後も歴史や文化、既存資源であるもの、また、富士山や白糸の滝、浅間大社、朝霧高原などの観光地により多くの観光客がもう1度、訪れたくなるような工夫を私たち富士宮市民が率先して行える環境を大いに大切にしていきたいと考える。[]

 

5.     終わりに

 

今回、富士宮やきそば学会会長である渡辺氏とのインタビュー活動を通して、静岡県富士宮市における食のまちづくりについての考察を進めた。

 

最も、着目しているのは、食文化としての価値を高めるためにB級ご当地グルメが存在し、地域ビジネスとして浸透する過程で地域ブランド化していくといったコミュニケーション能力がいかに求められているのかが今後の課題となっている点である。

 

他の地域でも、静岡県富士宮市における食のまちづくりを手本に、数々のご当地グルメが存在するため、今後は、消費者がどのようなご当地グルメに注目するのかについて考察を進めていきたい。

 

最後に、大変お忙しい中、熱心にインタビュー活動にご協力して下さった渡辺氏に深くお礼を申し上げたい。誠にありがとうございました。

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[] 2011114日 富士宮やきそば学会会長 渡辺氏とのインタビューより,

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