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倉持光葉 「茨城県北における定住促進制度について」

 

1. はじめに

 以前の講義の中で、「定住促進に関する評価」というプリントに那須烏山市の例が取り上げられていたのを読み、自分の地元である茨城県ではこのような定住促進制作は行われているのだろうかと疑問に思い、本レポートで取り上げることにした。

 本レポートでは、茨城県北における定住促進制度の詳しい政策内容などについて考察していく。

 

2. 茨城県北の定住促進制度について

 茨城県では平成189月、茨城県北振興委員会室と(財)グリーンふるさと振興機構、日立市、常陸太田市、高萩市、城里町、大子町、学識経験者、不動産取引専門家、地域づくり団体(都市住民受け入れ実践者)及び県関係課により、「“いばらきさとやま生活”支援システム研究会」を設置し、都心から100150kmに位置し、自然の多く残っている県報部地域を利用した「いばらきさとやま生活」という政策を開始する。[1]

 

3.「いばらきさとやま生活」について

 この政策は、里山など四季折々の豊かな自然環境に囲まれた茨城県北部地域などにおいて、安心・快適なスローライフを思い思いに楽しむ悠々自適のライフスタイル、『ゆったり、のんびり、悠々自適のライフスタイル』をスローガンとしている。少子高齢化、人口減少により、県北西部の中山間地域において急激な人口減少が予想されていた。そこで、平成19年に団塊世代の大量退職期を迎えるため、県北地域を舞台とした新しいライフスタイルを提案することにより、交流・二地域居住・定住の促進を位置づけ、消費需要や雇用機会の創出等を図り、これとともに定住人口の拡大へとつなげることを目的とし、この政策が始まった。対象は主に首都圏在住の団塊世代や若者等のUIターン希望者としている。また、政策内容としては、

・日帰りや12日のさとやま体験ツアー

・地域の食や文化、自然体験をする「いばらきさとやま楽校」

・空き家を利用した「おためし田舎暮らし体験事業」の実施

・田舎暮らし相談窓口の設置と田舎暮らしサポーターによる支援体制設備

HP、ブログなどでの情報提供(空き家情報バンクなど)

などが挙げられる。このほかにも、各市町村で様々な取り組みが行われている。[2]

 

4.「おためし田舎暮らし体験事業」について

 「おためし田舎暮らし体験事業」では、空き家を改修した長期滞在用住居を利用し、1ヶ月間〜3ヶ月間モニターとして滞在し、いばらきさとやま生活を体験できるようになっている。対象となるのは、主に都市部にすむグループ(家族、夫婦、友人同士など)である。現在住居は大子町、日立市、常陸大宮市、常陸太田市、城里町、北茨城市に1件ずつ、全部で6件あり、全ての住居に電気、ガス、水道、家財道具、テレビ、電話、インターネット配線が完備されており、滞在費はほとんどが1カ月間/60,000円となっている。なかには最寄りの駅や市街地まで自転車で行ける距離にある住居もあり、車を持っていない方でも住みやすいようだ。また、体験期間中は近接する農地を無料で利用することができる。平成2112月現在の予約状況をみると、大子町にある1号住居は今年はすべて予約済みで、他の住居も4月から10月まで埋まっているところがほとんどである。

 おためし田舎暮らし体験をした方の感想としては次のようなことが挙げられた。「古民家は通気性が良く夏は涼しいが、冬はそれにより寒さが厳しい。」、「ネズミやカメムシなど動物や虫が発生した。虫などは無慣れなので嫌悪感を抱いた。」、「公共交通機関を利用したいが少し不便である。」などマイナスな意見もあるが、「土地感がないのでインターネット配線が完備されていて便利。」という意見や、「ご近所の方がやさしく、サポーターの方も親切にしてくださったので、人情に感動した。」、「体験が終わっても何度も訪れるようになった。」などプラスの意見も多くよせられたようだ。[3]

 

5.政策の現在までの結果と今後

体験ツアー、体験交流プログラム参加者数:1,456

田舎暮らし相談窓口への相談件数:428

“いばらきさとやま生活”クラブ会員数:584

二地域間居住・移住者数:20件(48名)

※各数値は平成206月末現在[4]

 平成194月には1家族(5名)しか居なかった移住者の数も1年で急激に増加している。このことからも、この政策の成果は大きいことが分かる。まだまだ認知度は高くないが、都市部でのセミナー活動や雑誌への掲載、テレビ番組での宣伝も増えてきているようなので、今後ますます利用者が増えるのではないだろうか。



[1] “いばらきさとやま生活”支援システム研究会報告書

http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/kikaku/chikei/group/kenpoku/kenkyuukai/houkokusyo02.pdf

[2] 「いばらきさとやま生活」ガイドブック

http://www.satoyama-life.pref.ibaraki.jp/document/satoyama_guide_all1.pdf

[3] (財)グリーンふるさと振興機構 HP

http://www.greenful.jp/otameshi_inaka/index.html

[4] 茨城県 HP

http://www.pref.ibaraki.jp/close_up/cl0808_01/

http://www.pref.ibaraki.jp/close_up/cl0705_01/