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玉城貴子「在日米軍基地と地域の関係」
1、 在日米軍基地
在日米軍基地問題は日本と米国、そして地域を含み議論されている問題の一つといえるだろう。歴史は第二次世界大戦終戦までさかのぼる。現在日本の米軍基地のうち75%が駐在している沖縄県は戦後米軍統治下におかれた。その後1972年に日本に返還されるも米軍基地の受け入れ地域として多くの負担や問題をかかえている。そこで私は普天間飛行場代為施設としてのキャンプ・シュワブに注目し、その移設に関しての動きを地域との関係からみていきたい。
2、移設をめぐっての住民投票
沖縄県名護市は人口約60,319人(平成20年12月)、面積:210.33Kuの都市である。普天間飛行場移設問題は名護市にとっての重要な課題であり、また市民にとっても身近で関心の高い問題である。この問題は1997年から現在に亘り続く未だに完結していない。普天間飛行場は宜野湾市の都市面積の約25%をしめる基地の中に存在する飛行場であり、市の中心部と隣接していることから騒音被害や、飛行に関しての危険性が大変高い。そのため移転しようという案から名護市辺野古のキャンプ・シュワブが候補地として挙げられた。しかし、米軍のヘリポート基地建設をめぐってその是非を問う住民投票が行われた。住民投票を行うまでの過程も署名活動や条例制定など簡単な道のりではないけれども、それが行われたということは、この問題がいかに地域住民にとって注目度が高く、生活に密着しているかということが伺えると思う。住民投票に関する条例制定請求には選挙権を有する者の50分の1以上の署名が必要となり、告示の翌日より一ヶ月で集めなくてはならなかった。その結果集まった有効署名は17,539人にもなり、当時の市長比嘉鉄也氏も『市民一人ひとりが自主的かち主体的に意思を表明することが重要であると考えており、その意思を集約する方法の一つとして市民投票を行うことは、地方自治の本旨にかなうものである』と述べている。[i]
やはり、市民にとって一番身近政治は地方でありそれに関わり住民自身が地方自治を支えていけることが望ましい姿だと思える。そこで行われた住民投票は市民、各種団体を考慮にいれ、「賛成」、「環境対策や経済効果が期待できるので賛成」、「反対」、「環境対策や経済効果が期待できないので反対」の四者択一で行いより市民の意見を把握しようと試みたものであった。この住民投票は沖縄だけでなく、日本も注目するものであったため、マスコミを利用した広報効果やそれ以外の投票に関しての広報活動の結果、投票率が82.45%と大変高い数値となった。こういった注目度の高い問題に関しての住民投票はうまく報道機関を利用することができる。「関心が高い=テレビや新聞をよく見るようになる=関心がさらに高まる」といったような相乗効果が得られる。どこに関心を持たせるきっかけを作るかが難しいのかもしれない。関心の高い住民のもと行われる地方自治はよりよいものだろう。地方自治こそがそこに住む住民にもっとも身近な生活でそこに関心を持ち参政していくことは地域住民の権利であり義務であると思う。日本国憲法でも保障されている参政権がある。それを権利として自覚する必要が有権者にはあるのだろう。
しかし、今回の住民投票に国が注目する理由の一つとしてこの在日米軍基地に関する問題は日本国内だけでなく国家間での外交問題の一つであった。地域の問題が国家間問題と同じ問題でもあるのだ。この移設に関して日本政府と米国政府によって協議がなされていることが度々あるが、その問題となっている地域を含めて問題に対処していかなくては何も解決していかないことがこれを通してよくわかる。住民投票をめぐり、政府が賛成票を増やしたいがために、経済振興策を振りかざしたりしたが結果は、反対51.63%、環境対策や経済効果が期待できないので反対を含めての反対1.22%[ii]という反対派が多くの票を獲得する結果となった。この結果を経て、当時市長は結果を慎重に受け止めこの問題に対して考慮していきたいと述べていた。つまり、ここで分かったのは住民投票が地方自治に対する重要な影響力を持つことは証明できるが、住民の答えが問題の答えとはならないのである。私はそこに当初疑問を覚えたがこの問題は目に見えるほど単純なものではなく、様々な思惑が複雑に絡みあり状況の中存在しているのだった。結果は結果であり、それが直接、問題と直結しているわけではなかったのである。
3、受け入れ地域であるキャンプ・シュワブとその周辺地域
移設先であるキャンプ・シュワブとその地域住民の関係は他の基地を受け入れている県内の地域と比べて住民と米軍が友好的関係にあるといえるのではないだろうか。その理由として住民との交流があげられる。辺野古区は元々10班構成である。そこでキャンプ・シュワブを11班として地域に融合し地域行事に基地に住む海兵隊員が地域行事に地元住民と共に参加している。例えば、辺野古スポーツデイや名護ハーリー大会に参加するなどしている。また、シュワブスポーツデイ、ボランティア活動や友好会議など地域に貢献も盛んである[iii]。住民との関係が良いため犯罪件数も少ない。これだけ問題となっている地域のさらに狭めた現地での米軍と住民の関係が悪化しているかのように思えるが決してそうではない。そこに暮らす人々はやはり住みよい環境をより望む。それはあたりまえのことに思えるが米兵と交流をもちお互いに信頼関係を直接結ぶという行動に示していることは環境づくりや地域にとって大きな影響を持つと思う。特に名護市を含め北部地域の地域経済振興は各市町村にとっての共通の課題であり基地を受け入れているということでの経済効果は雇用の面でも大きなものがある。地域に開けた基地の存在と普天間飛行場移転問題は重なりあいながらも地域と密接に存在している。
4、地方と国家
この普天間飛行場問題を通して国家間問題でもある日米の友好関係に大きな影響与えることもあり、与えられることもある地域をみることができる。国家というものは地域集合体でその枠組みのような存在ともいえるのではないだろうか。国家に地域はなくそれぞれの地方を束ねる輪だともいえるかもしれない。だからこそ、国家間の問題のしわ寄せを受けるのは直接関わるある地域・住民であるのだ。沖縄に点在する在日米軍基地はその一例だろう。国家が大きくなりすぎては地方のことは見えなくなってしまいがちである。その結果国家を望む結果のために住民投票に関与してきてしまう。しかし、本来そうあるべきではないのではないか。地方が国家を形成しているのならば、地域の住民投票が国家に届く時はその結果を受け変わっていく必要があるのではないだろうか。地方分権を進め地域の自治力向上を目指しているのならばさらにそうだといえる。住民にとって国家よりも日常の中の生活が実態のある問題なのだ。自分の住む地域がよりよい地域となるかどうかをしっかり考え行動していく義務がそこにはある。もちろん国家に対してもそうあってほしいものであるが、地域あっての国家ではないかと私は思う。キャンプ・シュワブの軍人も敵視された状況での生活より、地域に受け入れられて住みよい環境を作る努力をし、その周辺地域住民も受け入れることで犯罪低下や新たな友好の道も作っていける。地方を支える住民には地方自治に参政する権利と義務が生まれる。たとえ国家の問題であってもそこに住む人々にとっては身近な地元の問題であり、それは地域性を持つ。地域の人の関係や経済、社会、義理にまで繋がるものがあると思う。それに向き合って地元民が地方の自治をより良い方向へと導いていけることが地方としての目指す道なのかもしれない。
参考資料
[i]名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非を問う 市民投票の記録 名護市市民投票実施本部 p6
[ii]
http://www5.ocn.ne.jp/~miyagi/report/ten_years.pdf (沖縄持続的発展研究会 2007/02/03 報告 市民投票から10年、名護市・沖縄はいま 宮城康博)
[iii] http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Installations/Schwab.html (在日米軍海兵隊 1月15日参照)
普天間基地移設10年士出版委員会 『決断』2008年
名護市市役所HP 名護市概要
http://www.city.nago.okinawa.jp/4/3555.html (1月15日参照)
資料 普天間飛行場の移設について 名護市
岩波ブックレットNo723 『もっと知りたい!本当の沖縄』 前泊博盛 2008年