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小林侑介「蓮田市・白岡町の合併について」

 

1.      このテーマを選んだきっかけ

 地方分権などの影響により全国各地で合併が行われている中、私の出身地である蓮田市(埼玉県東部)も隣町である白岡町と合併することが決まった。市民として、自分のまちが合併をすることにあたりどう変わってゆくのか、また住民の生活にはどんな影響が及ぶのかということに関心が高まり、このテーマを選ぶことにした。また市町村合併にあたっての問題点も必ずあると思われるので、そこにもスポットをあてていきたい。自分の出身地のことを改めて知り、また現状とこれからについて考える良い機会であると捉えながらレポートの作成にあたった。

 

2.      蓮田市と白岡町について

 蓮田市は人口が約64000人で、首都圏40キロ圏内という立地ながら非常に緑豊かなまちでもある。JR宇都宮線が通っており、快速電車も停まる駅がある。また東北自動車道が通っており、蓮田SAがある。交通面に関しての地名度が高いのではないかという認識を私は持っている。また市の木は花みずき、市の花はすいれんである。

一方の白岡町は人口が約5万人で町の西南部一帯を元荒川が回流しており、同川を隔てて蓮田市と接している。蓮田市と同じように宇都宮線や東北道が通っている。特産品である梨は生産量が県内一を誇る。また町の木は松、町の花は梨である。

蓮田でも梨の生産が盛んであることや駅利用の相互性などを含めても、共通点、関わりあいが多いのがこの2つまちの特徴でもあり、このことが1市1町の合併を推進する大きな要因になったのは間違いないだろう。

 

3.      なぜ蓮田と白岡で合併か

 何故この2つのまちが合併することになったのか。平成18年度は埼玉県市町村推進構想により5市9町(加須市、羽生市、久喜市、蓮田市、幸手市、騎西町、北川辺町、大利根町、宮代町、白岡町、菖蒲町、栗橋町、鷲宮町、杉戸町)などの案が示された。その後、1市3(久喜市、白岡町、菖蒲町、鷲宮町)の意見交換会が数回開催されたが、平成19年の12月に白岡町長などが意見交換会脱会の申し入れをし、「蓮田市との対等合併を合併新法の期限内を目指し、進めてまいりたい」との意向を表明した。また同時期に蓮田市長は「白岡町との合併を基軸として、安定した行政運営をしていくことが最良の選択」である旨の意向を表明した。ここから蓮田の白岡が合併に向けて動き出したわけであるが、なぜお互いが相思相愛になったのかということを考える必要があるだろう。考えられる点はまず、先にも触れたように、共通点が非常に多いということ。これは市民も大いに実感していることであろう。この共通点を最大限に利用することが一層の地域の活力強化を図れるというのもまた合併の理由であるという。また、行財政の効率化が図れるという点。具体的にはごみ処理や消防運営の効率化が期待される。ごみ処理に関しては昔から蓮田・白岡環境センターという施設を共同で運営・活用をしていた。

 

4.      市民として

 合併にあたって、合併協議会のHPを開設し情報提供を積極的に行ったり、蓮田市・白岡町の合併を推進する市民の会を設立したり、ホームページやメール等で意見を市町側に伝えることができるなど、情報交換という点においては徹底しているという印象を受けた。しかし、どれだけの効果があるかは未知数であると私は考える。というのも、新市名を公募で決定せずに合併協議会で決定した点においては非常に疑問が残っているからである。「白岡蓮田市」という名称にした理由に関しては明確な説明があるが、なぜ市民の声を聞かなかったということに関しては言及していない。住民にとって愛着のある市の名称はやはり市民の声を聞くべきであったのではないだろうか。2005年に菖蒲町を含めた1市2町で合併の話が出ていたときは公募制だっただけに、今回のやり方には不満が残っている市民も少なくないはずである。なお、2005年は、菖蒲町のみが住民投票で反対票が賛成票を上回った為、新市名まで決定したものの合併には至らなかった。

 

5.      この合併が抱える問題点

 まずは、どれだけのビジョンを描きながらこの合併の動きが進んできたかということである。合併新法の期限内となる322日の合併を目指している点や新市名を公募にしなかった点などから、「国からやらされている」合併、受身の合併という印象を強く受ける。ある公務員の話によると「いわば蓮田、白岡共にこのままでは立ち行かなくなった状況にあり、合併するだけにすぎない。合併は目的ではなく手段であるので、当然のごとく新しい都市像が描かれていなくてはいけないが、それがない。」ということである。私にもこの新市における都市像やビジョンというものはあまり感じられない。広報誌やホームページなどに、合併後のメリットや変化などについては文字情報として記載はされているが、イメージが沸くような具体的な新市の姿というものはみえてこない。これは合併してから作り上げるものではないだろう。合併することで新しいまちづくりをスタートさせるのではなく、合併前から新市へのビジョンというものを、行政側と市民側の両方が持ちながら取り組みを行っていかないと、何のための合併なのか、誰のための合併なのか、合併することがゴールなのかなどのような疑問が浮かんでくる。これは当然のことである。この疑問が浮かんできていることが蓮田と白岡の現況を象徴しているというべきなのであろう。また、前回(2005)の合併が失敗に終わったことが、今回こそは失敗は許されないというプレッシャーとなっている部分もあるだろう。積極的な姿勢を失わせ、逆に消極的な姿勢で必要最低限度のことしか取り組まない合併、まさにやらされている合併になってしまっているのである。このままでは新市誕生後の市民にもたらす影響というものが不透明であるし、より暮らしやすいまちになるという期待もあまり持てない。負のスパイラルに陥ってしまっているこの状況をなんとか打破しなくてはいけない。

 

6.      これからに向けて

 今回の合併は住民投票で反対票が上回るということはないので形上での失敗ということになることはないだろう。しかしながら先にも述べた通り、大きな問題を抱えているが事実である。このまま合併をして、果たして新しいまちづくりは成功するのであろうか。対等合併を謳っている今回の合併。行政と住民とがどれだけ対等の立場に立ってこの合併に取り組んでいるのかということに関しては疑問が残る。本当により良いまちづくりをしていこうとするのであれば、立ち行かなくなった理由などを含めて住民側にきちっと説明するなどの誠意のある行動が行政側には求められるのではないだろうか。住民と行政が向き合って新しいまちのビジョンを描いた上で、その為にすべきことを考え行動に移していき、まちづくりを行うという1つずつのステップを正確に行っていくことが大切なのであると私は考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考

http://hs-gappeikyo.city.hasuda.saitama.jp/02-shityouno.html「蓮田市・白岡町合併協議会HP」 2008.12月 現在

http://hs-gappeikyo.city.hasuda.saitama.jp/pdf/04/houkoku1.pdf「蓮田市・白岡町合併協議会 第1回会議 報告事項」p2 2008.12月 現在

http://homepage1.nifty.com/jj-junjun/syoubu.HTML蓮田市白岡町菖蒲町 合併の是非を問う住民投票」2008.1月 現在