Making the most of the “450”

 

第1章     山あげ祭り

 山あげ祭りは450年の歴史を誇る烏山町の恒例行事である。室町時代、この町には疫病が流行った。時の烏山城主、那須資胤はこの地の五町を守る牛頭天皇(ごずてんのう)を八雲神社に祀り、疫病排除、五穀豊穣、天下泰平を祈願したとされている。これが、山あげ祭りの起源になっている。祭りの奉納余

興として寛文年間(16611672)には踊りを上演、さらに元禄年間(16881703)には狂言、享保から宝暦年間(17161763)にかけて歌舞伎舞踊がとり入れられ、同時に舞台装置や舞台背景も大規模になり、江戸時代末期頃に現在の野外歌舞伎を行うようになった。山あげ祭りは昭和34年栃木県重要文化財民俗資料第1号に指定され、昭和38年国選択の民俗資料、昭和54年2月には国重要無形民俗文化財に指定された。

 

第2章     私と山あげ祭りと地域活性

 私の故郷烏山町で行われるこの祭りが那須烏山市の地域活性化に活かされるという話を小耳にはさんだ。そこで趣深い烏山文化の一つ、山あげ祭りが那須烏山市のどんな地域活性化にどのように活用されるのか知るべく調査を進めた。

 

第3章     Making the most of the “450” in Karasuyama

 現在、那須烏山市では宇都宮大学教授陣(工学部建設学科:三橋伸夫教授)と連携して「都市計画マスタープラン」の構想を練り上げている最中である。この計画では「都市」と記載されているが、本当の目的は「地域」活性化である。私の調査結果から判明したこの計画における山あげ祭りの役割と、「地域」活性化の名の下に那須烏山市がやまあげ祭りにどのような支援をしてきたのか、しているのか、今後どのような支援を検討していくのか以下述べていく。

 このレポートに直接かかわる調査結果内容は市役所と祭を行う地元住民へのインタビュー、HP検索、三橋教授が持つ「都市計画マスタープラン」原稿である。まず、市役所へのインタビューでは総務課、商工観光課、生涯学習課が山あげ祭りに対してそれぞれ異なる地域活性アプローチに取り組んでいることがわかった。総務課は都市計画マスタープランの統括的な役割を果たし、計画における山あげ祭りの役割を明確にしていた。その目的は観光交流人口の拡大と移住者の拡大だ。そうして那須烏山市内の商業収入の向上を図り、この地を訪れてくれた人に那須烏山の観光資源、自然資源、地価の安さ、文化・歴史などといったこの町の魅力を理解してもらい、移住してもらうことを目的としている。ターゲットは田舎暮らしを望む団塊の世代だという。目標人口フレームは平成29年に30000人である。現在那須烏山市は徐々に人口が減少している。平成7年の人口は33535人、17年時31152人でおよそ2000人減少した。少子高齢化が進展するなかでこのままいくと平成29年に30000人をきることになる。つまり観光交流・移住者人口拡大はその抑止策の一貫であると私は考えた。以上が総務課の理想である。次に、生涯学習課の取り組みは山あげ祭り保存のため、国重要無形文化財の補助金として地元組織の山あげ保存会に毎年約700万円(昨年は665万)を補助金として給付している。過去の取り組みとしては祭りを行う日を10年前の7252627日固定性から、第4土曜を含む金土日と変更した。これは、地元住民が祭りに参加しやすく、また観光客が訪れやすくする為であった。他の取り組みは山あげ祭りに必要な伝統道具の補修などであり、生涯学習課は伝統文化の保存に取り組んでいる。それは今後も変わらないという。最後に、商工観光課はJR東日本大宮支社と協力して、昨年上野駅より予約制の「山あげ祭り号」を開設した。乗客数は168人である。その他、JR社の好意によりの広告掲載やポスターを無料で多くの駅内に掲載したそうだ。また、JR文化財団の協力により『烏山のやまあげ』というDVDが作成された。商工観光課は観光交流人口拡大に向けて積極的に取り組んでいる様子がうかがえる。この商工観光化の取り組みは地域活性化という側面で、できる限り山上げ祭りをこの世の多くの人に知らしめようとしている。「山あげ号」でいえば電車という巨大な動く看板を日本都市部から 出発させるのだから、着々と山上げ祭りの存在を世間にアピールしていくことであろう。またDVD(私も拝見した)により、祭りそのものの魅力を映像によって人々に身近に感じてもらう効果があり、その祭りのはぐくまれたこの町の永きに渡る歴史と個性を表現できるのだ。この点に置き、商工観光化の取り組みは、観光交流人口・移住増加策だけでなく、日本の歴史・文化の趣深さを現代日本人に伝える役目を果たしたことが評価できよう。ただし、祭りを人集めのツールとしてしか使用しない場合、ある問題が生じる。それは後の地元住民のインタビュー結果により明らかになろう。

 さて、市役所の方々からお教えいただいたことは「都市計画マスタープラン」公案以前に行われてきたものがあることはおわかりだろう。よって三橋教授から頂いた原稿コピーに記載される「都市計画マスタープラン」上の山あげ祭りが何たるかに迫ろう。プラン上、山あげ祭りは旧烏山町を中心とする《にぎわいと文化の清流ゾーン》の中で機能することになっている。原案より山あげ祭りに関する一文には「住民の主体的なまちづくりとして山あげ祭りが挙げられ、期間中の交流人口を安全・快適に受け入れる街づくり、観光商業機能の強化による活性化、魅力あるまちなみ景観形成等、伝統文化を活かした烏山市街地の個性と活力ある街づくりへの展開を図ります。」とある。内容は総務課の説明にほとんど同じだ。祭りを活かす細かな具体案が記載されていないのが残念であるが、現段階では都市計画案じたい未完であり、実施されていないためこれは仕方がない。

 最後に地元住民から教えていただいたことである。「市からは毎年800万円近くの助成金が山あげ保存会に給付されている。山あげ祭りには町の(烏山6町のうち一町)規模により1000万から2000万円の費用が必要だ。(祭りの運営は助成されるが)金を出す分、祭の当番町にあーだこーだ口出ししてくる。地域活性化のためにこの祭りを押し出すのはいいが、この祭りの本命である神が山へ降臨する烏山の文化が忘れ去られてしまうのは本末転倒だ。」とのことだ。一人の見解しか手元にないため偏っているが、市の政策のすべてを喜ばしく思っているわけではないようだ。実際、「都市計画マスタープラン」以前の住民アンケート調査で、この計画に賛同していない住民が40%である。彼らはどのような考えの元に賛同しないのか、これは市の地域活性化を図る上で市と住民とが一体感を持つために突きつめるべき大切な要素であろう。市は今後賛同者60%という数値を強調するのでなく、都市計画プランを効果的に実行していくためにも賛同しない住民の意向をより深く調査する必要があることを私は主張させていただく。そしてその計画のなかで、市は住民との歩みよりをより深め、この祭りをより深く理解し、重んじ、その魅力を政策のなかでも最大限に引き出していくことが課題となる。

 

第4章     今の心持(考察)

 知れば知るほど祭りそのものに魅込まれていく。我が故郷の一大行事だという強い愛着とこの祭りの荘厳・壮麗なる姿とこの祭りを支える人間の計り知れない力強さと匠さは、わたしの山あげへの想いを客観的な調査を行う阻害因子になるまで膨れ上がらせ、住民でもないのにこの伝統を守り抜きたいという使命感まで私の心のうちに生み出した。

 レポートは終わるが、私の山あげ祭りとそれを利用した地域活性化政策に対する調査は終わらない。なぜならこの都市計画自体、始まったばかりだからであり、何より今回の調査を通じて地方自治に対する自分の知識の浅はかさを痛感せずにはいられなかったからである。地域活性化計画である都市計画についていえば、もともとこの国には都市計画法というものが存在する。私はその実体についてほとんど知らない。また、都市計画に関する知識・知恵・土地の特性を利用する具体的な方法論についても知らない。よって、私の調査はまだ終わらない。まだまだこれからである。

 

 

参考HP

・那須烏山観光協会 2008/1/17

http://www.mt-crow.net/k-karasuyama/index.php?mode=ym

・那須烏山市HP イベント 山あげ祭り 2008/1/17

http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/kanko/event/event1.htm

・からせん縁起駅舎の旅 烏山駅2008/1/17

http://karasen.jp/eki_7/karasuyama.htm

・「小さくとも光る那須烏山市活性化計画」200712

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiikisaisei/dai6nintei/12.pdf

・「地域再生計画」200712月中

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiikisaisei/dai6nintei/12toke.pdf

 

・「那須烏山都市計画マスタープラン」200712月中

http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/pubcome/documents/toshikeikakumasuta-puran2.pdf

 

参考文献

「那須烏山市都市計画マスタープラン原案」

参考記録

・那須烏山市役所(総務課・商工観光課・生涯学習課)より

http://www.city.nasukarasuyama.lg.jp/kanko/event/images/yama-wakasyu_000.jpg

 
・烏山和紙会館職員より