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高橋香里「地方行政による温暖化対策と今後の課題〜宇都宮市と小山市を事例に〜」

 

1.      はじめに

  地球温暖化は全世界共通の、もっとも深刻な環境問題のひとつである。私は今までこの問題に関心を寄せ色々と学んできたが、「Think globally, act locally」という言葉にも象徴されるように、地方レベルでの取り組みの重要性を痛感してきた。地球温暖化は無視することのできない問題である。しかし私たちの生活を振り返ってみても、自分は温暖化対策を徹底的に行っていると、胸を張って言える人は少ないであろう。そのような市民を温暖化対策に導くものとして、地方行政の果たす役割はとても大きいと思う。では果たして栃木県における温暖化対策はどういった現状なのであろうか。市レベルで考えると、自分が住んでいる小山市と宇都宮市を比較しただけでも、取り組み具合に差を感じる。私は常々このことを疑問に思い、興味を抱いていた。また地元である栃木県の温暖化に対する姿勢を考察することを通して、地方行政の温暖化対策の現状を知りたいと思い、このテーマを設定し調べることにした。

 

2.      宇都宮市における温暖化対策

宇都宮では環境に対する対策を多く実践している。温暖化対策として宇都宮省エネ普及キャンペーンを実施し、市内の家電販売店の店頭にポスターを掲示したり職員がチラシ等の配布を行ったりした。[1]宇都宮では省エネ商品を普及するために、高額なエコ商品の購入を援助するといったことも行っている。また宇都宮独自に「もったいない運動」を推進しており、「もったいない」という物をたいせつにする精神を通して、3Rなど環境に配慮した生活を呼びかけている。去年の八月には宇都宮の文化センターを使って第一回もったいない全国大会を開催しており、今年の七月にも、国連事務総長など豪華ゲストを呼んで第二回目を開催する予定である。もったいない大会とは全国の自治体や事業所などが集まり、もったいないを通して交流する場である。もちろん私たち一般人も無料で参加することができる。もったいない運動はこの大会だけではなく、もったいないアイデアを市民から募集したり、粗大ごみの再生販売をしたりと、その内容は多種多様である。宇都宮はこのもったいない運動を通して、温暖化対策に該当するかなりの政策を行っているといえる。もったいない運動の内容を挙げればきりがないほどである。また去年の二月には「宇都宮市地球温暖化対策地域推進計画」を策定し、独自に宇都宮市の温室効果ガス削減目標を掲げている。[2]ただ目標を掲げるだけでなく、地域に身近なところでキャンペーンや援助など実践的な活動を行っている。今後さらにエコ活動を広め、とくにもったいない運動などは宇都宮だけに留めず、栃木全体に運動を広めてほしい。

 

3.      小山市における温暖化対策

 小山市には宇都宮市のような目立った温暖化対策は見られないが、小山市独自に「小山市地域省エネルギープラン」を作成し、宇都宮のように温室効果ガスの削減目標を設定している。その中では省エネの情報提供や、おやまエコライフ・プランの普及促進を掲げている。[3]しかしインターネットだけでは情報がかなり乏しかったため、実際に市役所の環境課に問い合わせてみて、話を伺ってみた。すると、小山市の今後の温暖化対策について詳しく話してくれ、また小山市地域省エネルギービジョンの資料をくれるということなので、実際に市役所に行き資料をもらってきた。その資料には約120ページにわたって、小山市のエネルギー消費の現状と、今後の対策や目標が述べられていた。また伺った話の中では、二十年度からCO2削減計画を実施する予定であり、エコアップリーダーも募集するとおっしゃっていた。しかしイベントなどを行う予定は今のところないらしい。実際に問い合わせることにより、小山市の温暖化対策に対するイメージはかなり変わった。けれども省エネビジョンなどに見られる小山市の取り組みは、市民に広がっているとはとてもいえない。事実小山市が市民に行ったアンケートでも、もっとメディアなども通じて対策をアピールしていくべきだという意見が多数寄せられている。計画を作っても、それを実践する市民に浸透させなければ、何の意味もないのである。目標を設定しそれらを文書にまとめるだけでは不十分であるだろう。今後の小山市の実践的な温暖化に向けての取り組みに期待したい。

 

4.      栃木県の他の市の温暖化対策と民間レベルでの取り組み

栃木県の中でも宇都宮市や小山市に比較的規模が近い、足利市と佐野市についても、参考までに温暖化対策の状況を調べてみた。足利市と佐野市はどちらも環境課のほかにクリーン推進課という課が存在し、リサイクルを推進する政策を多く行い環境フェアなども開催しており、温暖化対策に積極的な印象を受けた。宇都宮市と小山市だけを調べていたときは、都市の規模の違いでこんなにも差があるのかと思っていたが、佐野市や足利市と比べてみても、小山市は温暖化対策に出遅れているのではないかと感じる。正直小山市民の、温暖化といった環境問題に対する意識は低いと思う。他の市民の意識がどうかは知らないが、小山市の行政の姿勢が、少なからず市民の意識にも影響を与えているのではないだろうか。また、行政としての活動だけではなく、民間レベルでの温暖化に対する取り組みも、栃木県の中ではかなり活発化してきている。全国には地球温暖化対策地域協議会というものが存在し、地域ごとに地球温暖化に関心のある事業者や住民が自主的に集まり、交流をはかったり温暖化防止活動を広めたりしている。[4]栃木県は10の団体が登録しており、全国で見ても数は多いほうである。そのなかでMEAKという河内町が本拠地の団体があり、その会長である清水映夫さんにお会いし、話を伺ったことがある。清水さんの活動は、温暖化防止についての情報便りを毎月地域に配ったり、温暖化対策のイベントを地域で行ったりするというものであった。清水さんはとても感じのよいおじいさんで、温暖化問題に対して真剣に向き合って活動をしており、その姿は生き生きとしていて輝きに満ちていた。栃木県には地球温暖化防止活動推進センターという法人団体が存在し、清水さんもその団体に所属する推進委員でもある。センターとしては温暖化の情報誌を発行したり、キャンペーンやイベントを開催したりしている。温暖化対策の責任を行政だけに取らせるのは無理な話である。民間の力も欠かすことはできない。それは栃木県だけではなく全国レベルで考えても同じ話である。

 

5.      まとめ

地方行政による温暖化の取り組み具合は、正直予想以上のものであった。ここでは市を中心にまとめたが、栃木県としての政策もたくさんある。温暖化に対して全く何の対策もしていないという地域は、今やほとんどないに近いのであろう。しかし残念だが調べたどの市にも共通して言えることは、その取り組みがどの程度市民に伝わっているのかとう疑問である。例えば小山市の省エネルギービジョンやエコライフ・プランの存在を、小山市民のどれくらいの割合の人が知っているのであろうか。またリサイクルなど環境への取り組みを推進するだけではなく、それらがどの程度行われているのか調査することも必要であると思う。例えば宇都宮市は市内バスのアイドリンクストップを提言しているが、実践されているかどうかは疑問に感じる。また私が個人的に地方行政に力を入れてほしいと思っていることとしては、市内の学校における環境教育の取り組みである。これからの未来をになう子供たちに、地球の現状と私たちがすべきことを早くから学んでほしいのである。地球温暖化は日々悪化の一途をたどり続けている。正直何よりも大切なのは私たち一人一人の、なにかしようという心構えである。それなしに温暖化対策など存在し得ないのである。それを触発し広めてゆく役目を、地方行政に担ってほしい。私たち一人一人にできる温暖化対策は沢山あるが、地方行政にしかできない対策[5]も沢山あると思う。市民と行政が手を取り合って地球のために取り組む。栃木県を含めた全地域が、そのような姿であることを切に願う。



[1] 参考資料:宇都宮市役所HP「温暖化対策・省エネ家電普及キャンペーン」

http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kankyo/ondanka/007235.html

[2] 参考資料:同上「宇都宮地球温暖化対策地域推進計画」

http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kankyo/ondanka/005744.html

[3] 参考資料:小山市役所HP「環境課・小山市地域省エネルギープラン」

http://www.city.oyama.tochigi.jp/cgi-bin/odb-get.exe?WIT_template=AC020000&WIT_oid=icityv2::Contents::6727

[4] 環境省HP「地球温暖化対策地域協議会」

http://www.env.go.jp/earth/ondanka/kyogikai/index.html