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高荒あかり

「市町村合併の与える影響 ―福島市と飯野町を例に―」

 

「平成の大合併」と呼ばれ、日本各地で市町村合併が進められてきた。私の地元である福島県飯野町も例外ではない。平成2071日福島市への合併を控えている。合併することで福島市、飯野町はどのように変化するのだろうか。この合併は福島市と飯野町にとってどのような意味を持つのだろうか。

 

 まず、なぜ今市町村合併が進められてきているのだろうか。市町村合併の背景と効果について総務省市町村合併相談コーナーのホームページを参考にまとめてみた。

 

市町村合併目的のひとつは地方分権の推進である。平成11年に地方分権一括法が制定された。これによって各地方での自己決定・自己責任のルールに基づく行政システムの確立が求められてきた。また、個性ある多様な行政施策を展開するためには、一定の規模・能力(権限、財源、人材)が必要とされてきた。そして次に少子高齢化の進展が市町村合併を進める要因の一つでもある。今後、本格的な少子高齢化社会の到来は必然であり、市町村が提供するサービスの水準を確保するためには、ある程度の人口の集積が必要である。 さらに、広域的な行政需要が増大してきた。人々の日常生活圏が拡大するに従い、市町村の区域を越えた行政需要が増大しており、新たな市町村経営の単位が求められている。 次に行政改革の推進の面である。 国・地方を通じて、極めて厳しい財政状況にある中、国・地方とも、より一層簡素で効率的な行財政運営が求められており、公務員の総人件費改革等、更なる行政改革の推進が必要とされている。最後に時代の変化である。 昭和の大合併(昭和30年前後)から50年が経過し、交通、通信手段の飛躍的発展に対応して新たな市町村経営の単位が求められている。これらの状況に対応するための手段として市町村合併が進められてきているのである。

 

福島市と飯野町の合併は編集合併である。この編入合併とは、吸収合併ともいわれ、編入する側の1つの市町村は法人格が存続するが、編入される市町村の法人格は消滅する合併の形式である。このため、原則として、編入されるほうの市町村の長、議員、農業委員などは身分を失う。条例などは編入する市町村のものが引き続き存続する。つまり、条例や税率などは福島市のものに合わせることとなる。

 

福島市と飯野町の合併の背景には飯野町住民の福島市の利用があると思う。合併前から飯野町の住民の多くが福島市へ通勤や通学などで移動していた。統計から見ると、飯野町から福島市へ通勤する人の割合は31.8%、通学する人の割合は54.7%(これは飯野町に高等学校が存在しないためと考えられる)そして、福島市内の病院へ通院する人は59.4%、買い物も福島市内でする人が多い。この結果から見ても飯野町の福島市の利用する機会は多く、福島市と飯野町の結びつきは強いといえるだろう。

 

さて、福島市にとってこの合併のメリットとは何だろうか。福島市が合併を進める目的の一つに人口の確保が考えられる。中核市とは、指定都市以外の都市で規模能力が比較的大きな都市について、その事務権限を強化し、できる限り住民の身近で行政を行うことができるようにして、地域行政の充実に資するべく設けられたものである。中核市の伴うメリットとしては、身体障害者手帳の交付や心身障害児の補装具・日常生活用具の給付・貸与に係る期間が短縮されるようになるなど、行政サービスの効率化が図られるようになる。そして産業廃棄物の不法投棄対策に関して、不法投棄があった場合、より迅速に対応することが可能となるなど、きめ細かな行政サービスを提供できるようになる。また、都市計画に関する事務が移譲されることにより、地域の実情に応じた独自のまちづくりを展開しやすくなる。さらに、市としてのステータスが向上し、市全体の活性化につながることが期待される。この中核市になるためには人口30万以上を有することが用件となってくる。今回の飯野町との合併でこの人口30万以上を達成することはできないが、この合併も中核市を目指した動きの一つであろう。

 

飯野町の合併を進める大きなメリットは財政負担の削減が考えられる。歳入歳出決算額は、地方交付税算定の大幅な削減改訂や三位一体の改革などにより年々厳しさが増し、平成16年度の歳入決算額は福島市が87,216百万円、飯野町が2,347百万円、歳出決算額は福島市が82,490百万円、飯野町が2,252百万円となっている。また、将来における住民負担額を、平成16年度の地方債残高と債務負担行為額の合算額から積立金残高を引いたものでみると、住民一人当たり負担額は、福島市が約30万円、飯野町が約57万円となっている。福島市と合併することによってこのような財政負担を減らすことが大きなポイントになってくるにではないだろうか。また、飯野町では受けることのできなかった行政サービスを受けることもできるようになる。高齢福祉事業においては食事サービス事業や住宅改正助成事業、児童福祉事業においては休日保育や一時保育事業など福島市では行われていたが、飯野町では行われていなかった事業が、この合併を機に福島市の制度に統一されることとなり、このようなサービスも受けられるようになるのではないかと思う。

 

 しかし、この合併もいいところばかりではない。現在飯野町では地元での買い物客の減少により、商店街が活気を失っている。合併によって今まで飯野町で行っていた窓口業務のうちいくつかは福島市内でしかできなくなるものもある。合併により福島へ出て行く機会がますます多くなり、市内への人の流出に拍車がかかるのではないだろうか。合併により町の空洞化も考えられる。この空洞化を防ぐためには合併してからも、「飯野」という地域を内外にアピールをしていく必要がある。

 

また、合併のポイントできめ細かな行政サービスをあげているが、それは可能なのだろうか。確かに合併を進めることで町が仲介役として行ってきた業務を省くことも可能になってくるかもしれない。それによって手続きの迅速化も図れるかもしれない。そして先に述べたように受けられるサービスも充実してくる。だが、各地域の住民の声は中央に届きにくくなるのではないだろうか。地方自治体の役割とはその地域の住民が快適に生活できるようにすることだと思う。それには今何が求められているのかという住民の声が必要不可欠である。今、様々な地域で合併が進められているが、合併により、管轄範囲が広くなることできめ細かな行政サービスを展開するのが難しくなってくるのではないか。地域によっては高齢者の多いところや交通の便のあまりよくないところもあるなど、地域の特性は様々である。ひとつの地域が大きくなることで制度面では一つに統一される。しかし地域によってその状況は様々である。そのギャップを補うのは支所の役割になってくるだろう。合併した後もその地域のよさを残していけるようにアピールしていくことや、住民がニーズに応じたよりよいサービスを受けられるようにこれまで以上に元役場である支所の役割は大きくなると考える。

 

 日本の現状をよりよくするために進められてきた市町村合併。いくつかの地域がひとつにまとまり制度面では統一されるが、その地域の特性を残し、活かしていけるように、また制度が統一されても、地域にあった対応ができることが合併後の課題であると考える。

 

 

<参考サイト>

福島市・飯野町合併協議会HP

http://www.gappei-fki.jp/

 

総務省市町村合併相談コーナーHP

http://www.soumu.go.jp/gapei/index.html