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米田恭子「バイオマスタウン構想−青森県青森市における実状−」

 

バイオマスタウン構想とは

そもそもバイオマスという言葉自体不慣れな学生も少なくはないと思う。バイオマスとは生物資源の量を表す概念で、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼んでいる。この概念を利用して作られたのがバイオマスタウンというものである。バイオマスタウンとは、地域において、広く地域の関係者の連携の下、バイオマスの発生から利用までが効率的なプロセスで結ばれた総合的利活用システムが構築され、安定的かつ適正なバイオマス利活用が行われているか、あるいは今後行われることが見込まれる地域を云う。[i]これらは地域行政と政府が連結して取り組んでいる活動である。このバイオマスタウンは平成22年で300市町村に上るとされ行政の次なる課題となるであろう構想である。では、何故今バイオマスタウンが注目されているのであろうか。まず、近年地球環境の保護がさけばれておりバイオマスは燃やしたときに二酸化炭素を排出するのもののそれは化石燃料に比べ極端に少ないものになるので環境保護に最適といえる。また。行政と地域が共にバイオマスタウンを形成することになるので地域産業の活性化にもつながる。こういった点からバイオマスタウン構想は全国的にも広く展開されるようになった。私自身がバイオマスに興味を持ったのは実は父の影響である。父も行政に携わる一人として地元のバイオマスタウン構想に関わってきた。近年になって父の口から「バイオマス」という言葉がよく聞かれるようになった。今回レポートを作成するにあたり、ゴミの量の減少とバイオマスとの関係、またバイオマスタウンがその地域に与える影響を調べてみたいと思った。私の地元である青森県でバイオマスタウン構想を政府に現在提出している市町村は4つ(旧市浦村、青森市、藤崎町、鶴田町)。この中から青森市のバイオマスタウン構想について述べていこうと思う。

青森市の特色

青森市のバイオマスタウン構想に移る前にこの構想を理解していただくためには青森市の様々な特色をご理解いただきたい。青森市の経済的特色としては、まず工業は農林水産業が盛んで背景に味噌や醤油、水産加工品などの地域の農産物を活用した食料品製造業や、市の70%を占める豊富な森林資源を利用した木材・木製品製造などの軽工業が主体となっている。また、農業は果実を主な栽培作物としておえり畜産物等も栽培する都市近郊型農業が行われている。この果実とはリンゴを指し、合併により青森市になった旧浪岡町は全国有数のリンゴ生産地となっている。水産業は陸奥湾においてホタテ貝が多く取れ、全国でも有数なホタテ貝の漁場として有名である。また、このホタテ貝を利用してホタテボイル加工といった食品製造業なども他産業の基盤となっている。[ii]次に、地理的特色としては冬場に大変雪の多い地域であり、県庁所在地としては唯一、特別豪雪地帯に指定されている。

青森市バイオマスタウン構想

先に述べたような特殊な要因を含んだ青森市が考え出したバイオマスタウン構想は、「環境にやさしい産業活動が営まれるまち」を目指し、バイオマス資源の活用促進を計画中に位置づけ産業活動における資源の有効利用の推進を図ることとし、大きく4つのカテゴリに分けてバイオマスを有効活用する計画を立てている。そのまず一つ目がホタテ貝を利用した凍結防止剤の製造である。青森市の漁業の大きな役割を担っているホタテ貝の殻を利用して、厄介のもとである雪を片付けようというものだ。現在もこのホタテ貝の一部については民間業者が土地改良剤などとして販売・利用しているが排出されるホタテ貝の全てを利用できているわけではなく未利用のホタテ貝はつみ置きされている状態にあり、その処理が市の課題となっている。この未利用のホタテ貝を今後、水産組合や水産加工組合等から青森エコサイクル産業組合に送り、自然に優しい非塩素系凍結防止剤に加工するのだ。現在一般的に使用されている凍結防止剤は消雪剤とも呼ばれ塩素系のものとなっている。これは車を傷める原因にもなっており市民としては背に腹は変えられない思いで使用していた部分も多い。しかし、このホタテの貝殻を利用することによってそういった悩みも一気に解消することとなる。次に、製材端材や食品製造残さや等を使用したガス化発電も行うとしている。実は前にあげたホタテ貝を利用した凍結防止剤としてのバイオマスタウン構造などは全国的にもあまり例のない取り組みである。一般的なものがこのようにバイオマス燃料を利用して発電を行おうとするものである。そう考えるとホタテ貝の有効利用は青森市が特殊な環境にあることを物語ってくれる。さて、このガス化発電とは今現在は焼却されている市内の製材工場から発生する端材やリンゴの剪定枝等の木や食品残さを青森県建設副産物リサイクル事業協同組合が開発を進めている処理方法によって発電の利活用を行うというものだ。この処理によって得られる電力はホタテ貝殻から凍結防止剤を製造する施設の電力として使用するほか、余電力は売電を行うとしてある。3つめとしては2つ目の製材端材等をガス化処理する工程で発生する有機物を発酵させることで堆肥化を行い農家などに販売するための製品化に向けるとしている。そして最後はリンゴ剪定枝や森林間伐材等や稲藁などを利用して堆肥化し土壌改良剤として使用する。また、これらの堆肥を農家へ販売したり重油の代替エネルギーとして公共施設での活用を目指すとなっている。[iii]

青森市バイオマスタウン構想から見えるもの

このバイオマスタウン構想は地域行、農家や企業といった民間、加えて事業者団体や農業や漁業者団体が互いに協力し合って成り立つ構想をとっている。この地域の様々な特色を生かし対応した構想となっており、今後地域に与える影響は大きい。現在の不況の中でもこういったクリーンエネルギーの利用で経済の活発化が望めることは非常に大きいと思う。しかしながらこういった構想に現実がついていっていない面も伺い知れる。平成18年度の報告によればバイオマスタウン構造に基づいた活動の中でその利用率が半数を超えているものはリンゴの搾りかす・腐敗果を利用した堆肥の農家への販売と家畜排泄物を利用した堆肥の農家への販売、製材端材をチップ化し畜産農家に販売するといった項目の3つにとどまっている。さらにはこういったバイオマスを利用した発電は未だ行われてすらいない。このバイオマス利用の発電が抱える問題は多いと思う。まずはコストの問題である。設備や発電方法の開発に莫大なコストがかかり火力発電の方が使いやすいのでなかなか実行できないのでいるのだと感じる。また、これらの燃料が電力として利用される段階になったときにそれを使用できる場が限られてしまっている。私個人の意見として、日本は資源の乏しい国であり、さらに優れた技術を持った国なのだからバイオマスを利用した発電が今の火力発電にとって変わるくらい広く使われる日が来ることを願っている。せっかく多額の費用を投じて開発してもそれが市民の生活に行き届かない限りそれは行政としての計画がうまくいったとはいえないのではないだろうかという疑問が浮かんでしまう。さらに、こういったバイオマス製品は作る側には国からの援助があるがそれを買う側への援助が足りないように思う。したがってせっかく飼料や堆肥をバイオマスによって製造しても買い手が追いつかず市場で出回らないといった悪循環に陥る恐れがある。せっかくクリーンなエネルギーを開発し地域の活性化にも貢献するのだからみんなに愛され利用されるバイオマスにすべきだと感じた。もっとバイオマスタウンが活性化されて欲しい。

 

参考文献



[i] 株式会社 東大技研HPバイオマス情報ヘッドクォーター

http://www.biomass-hq.jp/fk/index.html

 

[ii]  農林水産省平成15年度作物統計調査

[iii]  青森市バイオマスタウン構想