地方行政論「中国経済における社会問題について」
馬巍峰・050169X
改革開放30年以来、中国経済はものすごいスピードで発展している同時に様々な社会問題が浮上してきた。地域の格差、農業、失業率などの面から中国経済における社会問題を考えてみたい。
地域発展の不平衡
中国経済の問題点といえば、まず目に見えてくるのは経済社会発展の不平衡と言うことだと思われる。まずは地域発展の不平衡、経済基盤や発展条件や思想開放度、ことに開放度の違いにより、市場経済を目指す改革の中で、そして全国統一市場の下で、労働力・資金・物など生産要素の自由流動の結果、各地域間経済・社会発展の格差、ことに沿海地域と内陸部の間の格差が絶えずに拡大して来た。諸先進国に比べ、中国の都市化率が低い上、都市部と農村部の経済・社会発展面の格差も大きい。その他、各部門・各産業における収入分配の不平衡も問題になるだろう。
各地域の経済格差は都市でも農村でもいずれも明らかなものである。2004年4月、都市住民世帯の一人当たり可支配収入は上海市1330元、北京市1230元、それぞれ全国平均の717元の1.85倍と1.72倍となっている。それに対して、全国平均水準を下回った省・自治区は22もあり、内には13の省・自治区はさらに600元を下回っている。一番低い寧夏回族自治区わずか544元で、上海市の40.9%に過ぎない。
農村においては、各地域の2004年第一四半期の農家の現金収入の格差はさらに大きい。上海市は3433元、北京市は2323元、浙江省2318元、それぞれ全国平均の834元の4.17倍、2.76倍と2.80倍となっている。それに対して、全国平均水準を下回った省・自治区は19もあり、内には6の省・自治区はさらに500元を下回っている。一番低いチベット自治区と貴州省と甘粛省はわずか312元と369元と381元で、それぞれ上海市の9.1%、10.7%と11.1%に留まっている。中国では、衣食住にも不自由する「絶対貧困人口」が1978年の2億5千万人から2003年は2900万人まで減少したが、その2900万人のほとんどが農民である。
農業と土地問題
中国では農業問題、農村問題と農民問題が「三農問題」と言われており、その解決はとても難しい。「三農問題」の内容は、時代とともに変化しているが、現在、都市部と農村部との収入格差が非常に大きく、改革開放初期のそれをさらに上回る勢いであるということが特徴となっている。WTO加盟をめぐり、多くの人が中国農業の国際競争力を心配している。世界の10%の土地で世界の22%の人口を養えるか。農家請負生産を中心とした小規模農業はアメリカの近代的大農業生産の輸入拡大に耐えうるか。中国農業は将来があるか。これらの問題はまだ結論が出されていない内に、農村と農民の問題が注目の焦点となりつつある。なかには、土地所有権について、特に問題されているのは農地を商業用地や工場用地に転用することだ。「土地を失う農民」、「仕入れは社会主義で販売は市場経済」の土地制度は深刻な社会問題につなぐ。
失業問題
人口問題から多様な社会問題が生じた、失業問題はその一つである。中国は世界一番人口の多い国で、人口増加の圧力がお余りにも大きいから、1970年代ずっと計画出産政策を取り続けてきた。人口増加率鈍化の中で、労働力人口の比率もいよいよ低下の傾向を迎えている労働力人口の伸び鈍化は、2つの面から経済成長を制約すると考えられる。第一に、直接的要因として、供給面における労働投入量の伸びの鈍化に結びつく。第二に、人口ピラミッドが急激に逆ピラミッド型に転じる中で、社会における高齢化の進展が、貯蓄率の低下に結びつく可能性が高い。貯蓄率の低下は、投資に向ける資金の減少を意味するため、間接的に経済成長率を引き下げる要因として働くだろう。以上2つの経路を通じて労働人口の伸び鈍化が経済成長を制約し始めるのは、労働人口比率が2010年にピークに達する時期以降ではないかと予想される。2020年以降、労働人口の伸び率がマイナスに転じることが加わり、中国の潜在成長力は一段と下がるであろう。次の要因による、高成長にもかかわらず、中国は改革開放初期からずっと失業問題に直面していた。第一、労働力の総数は大きく、その資質と構成の向上が待たれていること。第二、中国は発展途上国で、それほど多くの労働力に就職口を提供する経済力がまだそなわっていないこと。第三、中国は経済体制改革を実行しており、経済の構造も調整のさなかにあり、この変革の過程において、就職にとってプラスの要素もあれば、マイナスの要素もあること。第四、中国は現在、農業国から工業国への転換の段階にあり、農村労働力の都市部への移転も趨勢となっており、農民労働者の都市部での就職が就職事情のさらなる複雑化を招く可能性があること。第五、女性の就職率は高いことだという。以上の要因により、1980年代半ばころ、失業の圧力が明らかに緩和されたが、1990年代には入ってから、ことに1998年に始まった国有企業の大規模な余剰人員のリストラにより、失業問題が再び社会に注目される焦点となっている。
環境・資源問題
中国の生態環境は長年にわたる整備事業により一部地域でやや改善されてはいるが、全体的には依然悪化の一途をたどっている。ことに、工業廃水と有害気体排気の増加により、水、大気の汚染がひどい。その他、森林減少や過度開発や旱魃などの原因で、水土の流失と土地の砂漠化などもひどい。環境は破壊しやすいが、その回復は難しいだけではなく、倍以上のコストがかかられるだろう。
中国は資源が豊富であるが、一人当たりの資源占有量は少ない。しかし、経済の高度成長に伴い、資源ことにエネルギーの需要量は年毎に増えているところで、資源による経済発展への制約はますます大きくなっていると言える。
他の問題
地域の格差、農業、失業率、環境と資源問題は中国経済にとって、基本の基本として、極めて大きい課題だと思われる。しかし、経済発展の進展しづつ、他にも多大な問題が出てくる。国有企業経営難と改革難問題、不良債権の問題、技術革新・独自研究開遅れの問題、過剰投資・重複投資の問題、経済秩序混乱の問題、社会保障の問題、証券・資本市場未整備の問題、腐敗の問題、信仰危機の問題、政治改革遅れの問題および人民元長期的切り上げの問題など、何れも見逃してはならないものであろう。
参考資料:
「中国・大国の虚実」(日本経済新聞社[編])
「中国経済入門・世界の工場から世界の市場へ」(南亮進 牧野文夫[編] 日本評論社)
「中国経済論」(加藤弘之・上原一慶[編]ミネルウァ書房)
中国網:http://www.china.org.cn/japanese/index.ht