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桐花瞳 「那珂川町の最終処分場設置問題について」

 

 那珂川町(馬頭)は、栃木県の北東部に位置し、八溝山系に抱かれた美しい自然の町である。「栃木の景勝百選」に選ばれた「馬頭グリーンヒル」や「21世紀に残したい日本の自然百景」に選ばれた「とりのこ山神社」など手付かずの自然や文化遺産がたくさんあり、県内有数の温泉地でもある。しかしこの自然豊かな那珂川町に産業廃棄物最終処分場建設計画がもち上がった。これは、北沢地区山中が、1994年ほどから産業廃棄物の不法投棄場所となっており、この問題に加え備中沢に県営第一号の産業廃棄物最終処分場の建設が計画されている。

 不法投棄物に対する県の考えは、「北川地区の不法投棄物の処理を求める町民の声が大きいため適正に処理したいので、県営備中沢最終処分場の建設は不可欠」としている。しかし、不法投棄物を全て処理するにしても建設予定の処分場は規模が大きすぎる。

 馬頭町で平成2年に北側地区に約3万㎥の産業廃棄物不法投棄が判明し、その時は何の対策もなされなかった。だが突然これを処理するという名目で、約80万㎥もの管理型最終処分場建設計画がでた。これらの計画に対し、一部の町民により「馬頭の自然と環境を守る会」が発足され、住民アセスメントや署名活動を行っている。

 処分場がもたらす影響は、ダイオキシンなどの有害化学物質によって、呼吸・飲料水などによって人体に、また焼却灰によって自然環境にも悪影響をおよぼすことである。これらにより脱焼却炉、脱処分場を目指して「ゼロ・ウェスト」3大目標『1、有害物質を出さない2、大気を汚染しない3、資源を無駄にしない』を目指している。実際にオーストラリアのキャンベラなどの「ゼロ・ウェスト宣言都市」で実施されていて、日本でも福島県勝浦郡上勝町などが宣言している。

 馬頭町に建設予定の処分場は、管理型最終処分場というもので、山の沢を利用して、穴を掘り、ゴムシートを敷くといったものである。ゴムシートといっても万全ではなく、工事中による破損や有害物質による化学変化などによって簡単に破損する。そこから漏れ出した有害物質が環境破壊に繋がりかねない。また、ゴムシートは何度修理しても破れ、シートの下は補修が利かない。

 栃木県環境保護団体連絡協議会は建設予定地(備中沢)の適性検査を実施し、住民アセスメントを行っている。住民アセスメントの効果は、行政のごまかしが利かない点や他地区、県外にも当地の環境問題をアピールすることによる支持の獲得や宣伝効果がもたらされ、地元の活性化にも繋がる。

 町役場にて聞き取り調査を実施したところによると、町の方針としては、処分場を作る前に不法投棄されたものをどう片付けるかということであった。産業廃棄物なので指導関係の権限は市町村にはないため、県に撤去を依頼し、県が指導となり町がそれを補助することになった。しかし、指導や命令が曖昧で撤去命令が出せず、県は今すぐ悪影響があれば行政代執行するが今はその段階でないとした。県に安全型処分場はあるが管理型処分場はないため、コストや安全性を追求した上で馬頭町に造るのであれば不法投棄物を一緒に片付けるといことであった。しかし和見地区の住民は反対したため、1年をかけて再検討したが、最終的には2004年県に正式に県営処分場を造ってでも不法投棄を撤去しようと再要望し、これが町の結論であった。

 町の決定に関して、町作り懇談会にて各集落単位で町の方針を伝えた上で処分場について意見を求めたり、町のケーブルテレビや広報などを使い建設を発表し、その中ではおおむね了解を得ているということである。

 県は以前から管理型処分場を造る動きが見られ、そのため馬頭町の産廃問題浮上を処分場建設の好機であると見たのではないかという意見もある。

 不法投棄に対しての意識にも様々あり、当該地の住民は非常に意識が高いが、比較的離れた地区の住民は「具体的なことは何も知らない」と、意識・認識度が低いようである。また、処分場建設に関する説明会の実施状況もまちまちで、備中沢地区では何度か行われてきたようだが、その周辺地区ではあまり行っていないとのことである。それに加え、周辺地区への説明会も行っておらず、隣町の烏山町では一度も説明会は行われていないとのことである。もし被害が出た場合、その影響は馬頭町だけでなく那珂川下流地域などにまで及んでしまうので、周辺地域全域の問題として捉えるべきである。

 処分場建設に関する意見も賛否両論で、実施されたアンケートの結果によると住民の大半は「産廃処分場=公害」という固定観念を持っており、観光地である町に処分場があると観光客にイメージが悪いという意見も挙がり、建設に反対しているが、「ごみは処分しなければならないので産廃処分場はどこかに造らなければならない」という意見もあり、また、商店街で店を経営していることもあり、口を濁らす住民もいたようである。

 処分場建設に対し反対意見が多数ではあるが、かと言って反対運動はそれ程積極的に行われているわけではない。住民には「どうせ行政はかけ合ってはくれない」という諦めの気持ちがあるようである。

 資金的な問題では、処分場建設の資金は県が出すのではなく、他の産業廃棄物を受け入れることで資金を調達するという方法をとるようなので、廃棄物処理に必要な20倍以上もの大規模な処分場建設を予定しているようである。

 

 

 那珂川町は豊かな自然に囲まれ、農林業が盛んで、温泉など歴史のある観光地もあります。しかし、この土地に最終処分場が建設されると農産物の出荷や温泉旅館などが大きな打撃を受けるでしょう。

廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物があり、一般廃棄物はリサイクルされるもの以外は全て焼却・埋立て処分されます。栃木県のゴミの内訳をみると、90%以上を産業廃棄物が占めています。栃木県はあまり産業が発展しているイメージがないため90%以上が産業廃棄物というデータに驚きました。オーストラリアのキャンベラ市で「ゼロ・ウエスト」政策を行っていることを資料を見て知りました。この都市はリサイクル率64%を達成したそうです。          一方日本では一般廃棄物のリサイクル率は14%で、これはハイテク技術で処分場の環境汚染を監視するという日本の悪い例ではないでしょうか。ゴミの分別に対する考え方にも違いがありキャンベラ市では「リサイクルできるもの・できないもの」という分別の仕方をとりますが、日本では「燃えるゴミと燃えないゴミ」とに分別しがちです。日本では「ゴミは目に見えなければいい」という考えが少なからずあると思います。そのため森林に不法投棄をしたり、リサイクルではなく埋立て・焼却というゴミ処理方法を選択しているのではないかと思います。このような考え方が日本のゴミ社会の原因になっているのではないでしょうか。

最近では那珂川町でもゴミの分別が細かくなりました。期日に所定の場所にきちんと分別されたゴミしか業者は処分してくれません。そのため住民もゴミの分別には気を配っています。スーパーでは家庭から「ビニルトレイ」「ペットボトル」を回収しているところも目立ってきました。私自身もペットボトルのラベルをはがしキャップをはずしてリサイクルに出すなどゴミ・リサイクルに対する意識が以前よりも高まっているように思います。

那珂川町に建設予定の処分場は管理型処分場というもので山の沢に穴を掘り、ゴムシートを敷きゴミを埋め立てるのですが、ゴムシートの劣化、焼却灰の飛散の問題や今ではあまり意識されませんがダイオキシンの問題も気にかかります。住民から集められた処分場反対の署名は有権者の6割以上を占めていますが、町長による各議員への圧力により賛成側についてしまったという経緯があったようでこれは民主主義とはほど遠いものではないでしょうか。

処分場を建設するに当たって貴重な動植物は他所に移動すればよいと言われたようですが、実際は具体的な話はされていません。県は「何か被害を被ることがあった場合100%保障する」といっていますが、町・行政の住民に対する対応(説明会など)の実態を見る限りでは信用性に欠けると思います。県は備中沢の不法投棄物の処理のために最終処分場建設を計画していますが、不法投棄物の内容は建設廃材等が主であり、野焼き等がなければ実害のないことが確認されていて、大規模な処分場の必要性はほぼありません。やはり処分場建設は住民の利益のためではなく、県・行政の利益を考えてのことであるように思えて仕方ありません。

環境を損なわず処分場を新たに建設する場所など全国的にもほとんどないのが現状です。必要不可欠な場合は仕方ありませんが、このような行政のための施設の建設はあってはいけないと思います。このようなことをなくすためには、住民が一丸となって反対運動を展開し、単に迷惑施設として反対するのではなく、焼却・埋立てに頼る従来のゴミ対策を見直すことも同時に訴えなければならないと改めて考えさせられました。

 

参考資料

那珂川町 分別収集計画

http://www.town.tochigi-nakagawa.lg.jp/gyousei/gomi/2007-5bunbetsusyuusyuukeikaku.pdf

 

那珂川町処分場・投棄現場周辺状況実態調査

http://kuin.jp/fur/sugai/n2004.htm