080121furukawat
古川智美「中心市街地の活性化の必要性―地元・八戸市を事例に―」
1.はじめに
授業でやったテキストで商店街の話題が挙がった。栃木県内のある町の商店街が「シャッター通り」と化しており、一方では東京一極集中が進んでいる、という内容のものだった。この話を聞いて、地元・八戸市の中心街の光景が頭に浮かんだ。「シャッター通り」とまではいかないが、大学の長期休暇の度に帰省して、友達と街によく遊びに出掛けるのだが、行くたびに街が元気をなくしているような感じがするのだ。人通りも少なく、これが中心街のあるべき姿であるのかと思わずにはいられない。ちょうど一年ぐらい前に仙台に遊びに行ったのだが、仙台のアーケード街の賑わいはすごいと思った。行った日が週末であったし、人口の違いはあるだろうがこれが中心街というものなのだな、と思えた。仙台七夕まつりのときはもっと人の数とか賑やかさが半端ないのだろうと思った。八戸の中心街も仙台までは行かなくとも、もっと活気のあるものにならないだろうかと願わずにはいられない。そこで、中心街の活性化のためには何が必要なのか、地元・八戸市の中心街はこれからどのような発展を遂げようとしているのかを今回調べてみようと思う。
2.中心市街地活性化のすすめ
中心市街地は、古くから商業、業務など様々な機能が集まり、人々の生活や娯楽や交流の場となり、また、長い歴史の中で独自の文化や伝統を育むなど、その街の活力や個性を代表する「顔」とも言うべき場所である。しかし近年、多くの都市で、モータリゼーションの進展への対応の遅れ、商業を取り巻く環境の変化、中心部の人口の減少と高齢化などを背景に、中心市街地の衰退・空洞化という問題が深刻化している。[1]
郊外には大型のショッピングモールなども続々とでき、人の流れもそちらの方へと向いてしまっている傾向にある。
中心市街地に期待される役割としては「商業、業務など様々な都市機能が集積しているため、住民や事業者にまとまったサービス
を提供できること」「店舗、病院などの施設が身近にあることから、高齢者などにも暮らしやすい生活環境を提供できること」「効率的な経済活動や、新たな事業・文化の誕生が期待できること」「既にある公共公益施設などを活用することで、効率的で環境にもやさしいまちづくりができること」1が挙げられる。
中心市街地は、いろいろな意味において、これからも地域経済の発展や豊かな生活の実現に大切な役割を果たす場所である。中心市街地を、これからの時代のニーズに対応した地域コミュニティの中心として、すなわち人が住み、育ち、学び、働き、交流する場として再生することが、強く求められている。1
そして中心市街地は地域に密着したものであり、地域の味を感じ取れるようなものであってほしいと思う。
3.八戸市の中心市街地活性化事業
現在八戸市では「中心市街地活性化計画」というものを掲げている。「中心市街地に多様な都市機能を集約したり、商業の活性化を図ることによって、市民のみなさんにとって利便性の高い、コンパクトで賑わいあふれるまちづくりを実現するための計画」2である。計画には約5年で実施可能なハード事業やソフト事業を5分野にわたって展開し、中心市街地の活性化に向けて取り組んでいる。一つ目は道路・下水道・駐車場整備・歩行空間整備・電線地中化などの市街地の整備改善である。電線地中化は毎年夏に行われている青森県3大祭りのひとつである八戸三社大祭にとって、とても重要なものであると思える。なぜなら山車が高さを持つものなので、電線に引っかかってしまうことでその上がった様子を見ることができないということが今まで直々あったからだ。二つ目は店舗のリニューアル・空き店舗の活用・電子商取引の導入促進などの商業の活性化である。近年店舗のリニューアルで代表されるのはテナントビル「チーノはちのへ」がオープンしたことである。2003年の2月まではイトーヨーカドー八戸店が建っていたのだが、閉店し、同年9月に「チーノ」がオープンしたのである。「チーノ」には「八戸フォーラム」という映画館も入っており、以前は中心市街地に散らばってあった映画館がひとつに集約し、大変便利になった。あと若者がよく出入りする「Rec.(レック)」というテナントビルも去年2007年に運営会社が経営破綻し、いくつかの店舗は「チーノ」へと移動している。2002年には、宇都宮のオリオン通りにもあるが屋台村の「みろく横丁」がオープンした。夜は常連の中高年の方々が結構訪れているようだ。三つ目は病院・診療所・保育所・高齢者介護施設などの都市福利施設整備である。四つ目は共同住宅供給・優良建築物等整備などのまちなか居住施策である。そして最後は公共交通機関の利便性向上を図るための事業など、上記4分野の事業と一体的に推進する事業である。今年の3月までに国の認定を受けることを目指しており、具体的な案はこれから協議会などから公表されると思われる。
3年前2005年9月下旬には「平成17年度 都心再生にぎわいトランジットモール社会実験」と称して、中心市街地の賑わい創出と公共交通機関の利便性向上を目指し、街の大通りにおいて6日間トランジットモールの実験やイベントを実験した。トランジットモールとは、一般の自動車交通は制限して、バスなどの公共交通機関の利便性と安全で快適な歩行空間が確保された道路のことである。歩行者天国やオープンカフェ、「にぎわいストリートフェスティバル」というイベント、バスやタクシーの交通規制を行った。交通面においては混雑・渋滞などの問題は特に見られなかったようだが、一般自動車の進入禁止やタクシーの乗り降りの不便さなど、マイナス面も見られたようだ。来街者アンケートによると、このトランジットモールが活性化に「役立つ」とする評価が「役立たない」とする評価を上回り、歩行者や公共交通優先のまちづくりが期待されていると考えられるという結果が得られた。当時私は高校3年生で学校帰りに街からバスに乗って帰っていたのだが、この実験のことを実は今まで全く知らず、なんかのイベントぐらいにしか認識していなかった。あれはこのような狙いを持った実験であったことを初めて知った。効果が得られたのであれば、定期的に実験を行い、改善しながら定着させていけばいいのではないかと思う。歩行者天国で「にぎわいストリートフェスティバル」をしていたときは、普段はあまり街中で見られない子供たちがイベントのゲームを楽しんでいる光景が見られ、活性化に向けての兆候が現れていたのではないかと思われる。
2年前2006年1月から「中心市街地を再生させ、まちに賑わいを取り戻す。」契機となるよう、(仮称)八戸市中心市街地地域観光交流施設を整備する案が検討され始めた。市民が、文化・芸術等の市民活動・コミュニティ活動に気軽に利用できる施設とし、観光情報を発信するとともに、多様な観光客を受入れ当市の祭りなどを体感できる施設になるようだ。それと同時に、教育・健康相談やまちなか起業家支援など、市民生活を支援する機能も持たせ、来訪者が休憩したり、イベントも開催できる広場を整備することにより、中心市街地の回遊拠点となるシンボル的な施設を目指している。建物の構造もユニークなものとなっており、完成して、新たな街のシンボルとなることが期待される。
4.まとめ
今回八戸市の中心市街地の活性化事業について調べるまでは、現在の街の状況だけを見て、市は何もしてくれないのかという不満と落胆する思いであった。だが実際は、活性化に向けて事業を展開しようとする計画案などや実験を施行していたことなどを知り、市民として素直に嬉しかった。そしてこれから八戸の中心街がどのように活性化し、生まれ変わるのかという期待感が生まれた。しかし、これらの計画・将来の中心街のビジョンが市民に伝わっていないともったいないと思う。出来上がったものを受け止めるだけではなく、出来上がるまでの過程を知って、市民と市政が共に活性化に向かっているという形が理想であろう。
中心市街地活性化推進室のホームページを見たら、全国各地の市町村が様々な活性化事業を推進していることがわかった。栃木県日光市でも2年前に中心市街地活性化の最終計画案が提出されたという情報が載っていた。
中心市街地に市民が集うためには、市民が求めるものがそこになければならない。市がその市民の声に耳を傾け、まちづくりを進めてくれることを望む。今度地元に帰って街を訪れるときには、また違う視点や気持ちを持って八戸の街を見ることが出来ると思う。とても楽しみである。
<参考URL>
・ http://chushinshigaichi-go.jp/oldindex.htm(中心市街地活性化推進室HP)
・ http://www.city.hachinohe.aomori.jp/index.cfm/9,html(まちづくり−八戸市−)