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市民の声の反映の仕方は

 

1わが市の合併に伴う議会と市民の反応

 

 合併特例法が1995年に制定されてのち、私の住んでいた町は他の市町村と合わせて計4つの市町村が合併し、2005年一つの市が誕生した。筑西市という名のその市は、現在は平成19年度327日までの特例期間において市議会議員が77名在籍している。そして特例期間が切れるのに従い、市議会議員選挙が行われることになっている。そんな中で偶然知ったのが、ある紙面[1]に載っていた、とある団体である。わが市筑西市の議員定数を地方自治法の上限34から30に減らす決議が可決されたというが、その請願を出したのが『筑西市民の会』だという。

 

 もともと存在していた約3240の市町村は、合併が推進された結果およそ1830にまで減少した。合併を行った市町村はまだ新しい体制への移行期間ということであまりその変化を実感していないのかもしれない。少なくとも、私の身の回りではそうである。市のHPや市発行の情報誌からは、合併のメリットばかりが強調され、具体的にどのように変化するのかが伝わってこない[2]。合併したことすらもはや過去のことと、関心を失ってしまっている者も多いようである。私の住む市で可決された、議員数を減らすことで資金が浮くのだろうが、議員とは民意の反映の元に存在するのであり、その数を減らすということは、多様な意見を自治体運営の議論の場まで届きにくくなる可能性がある。一定の地域ごとに議員がほしいと思う人々(自分の住む地域にほしいということである)も確かに存在する。しかし議員数が多いのはさまざまな決定の遅れを招き、その給与も馬鹿にならない。議員数そのものは減らす、その上で市民の声が届きにくくなるのではというかねてからの懸念をどのように対処するのか。

 

 

2問題点

 

 合併特例法には、「(第5条の4) 合併前の関係市町村の協議により、旧市町村の区域ごとに、合併市町村の長の諮問により審議又は必要な事項につき意見を述べる審議会(地域審議会)を置くことができる。」[3]とある。しかし私の市は地域審議会を設置しないことに決めた。住民の意識調査において、さまざまな懸念が出されていたが、それに対する回答ははっきり言って不十分である。アンケートの結果に対して、メリットを強調して答えられるものに限定しているようであり、その他多くの不安の声に対しては明確な回答がなされていない[4]。市民の声を聞き、どう反映させるかが議会の役目である。議会の意向、議論内容を知り、伝え、さらに意見しようと活動している団体で、上述した『筑西市民の会』という組織はその存在がほとんど知られておらず、自治会連合会も活動を行っているが市民の認知度は低い。一般市民の関心が低いこと、また市の対応に問題があると見られる。

 

  一般市民の意識の問題はここでは割愛する。市の側の問題点を二つ挙げる。一つ目は、情報の見にくさ、知りにくさにある。合併協議会の情報を載せていた市発行の「協議会だより」という情報誌に経過や結論が掲載されていたが、掲載されているページが少ないうえに字が小さい。興味があっても見るのが嫌になってしまいそうな紙面では、せっかくの情報誌も中身の情報が伝わらない。若者は政治的な話は嫌がり、また高齢者などは字が小さくて読みにくいと感じるであろう。使用される言葉も専門用語が多く理解しにくいと思われる。しかし、ページ数を増やせば読み手はげんなりして手を出さない可能性がある。またわかりやすく興味を引くように作っても、複雑なものをわかりやすくしたもの、それだけを見てわかった気にさせてしまうのは危険なことである。難しいかもしれないが、もっと工夫は必要であった。これは今のそのほかの市発行の情報誌にも言えることである。また、詳しい情報がほとんどHPでしか手に入らないという状況にも問題がある。合併議論当時のことはもちろん、合併が決定してその後の動きはほとんどがHPにしか掲載されていない。わが市の状況を見ると、インターネットの普及率は高くなく、公立の施設でもインターネットを使用できる、住民に開放されたパソコンは少ない。合併後の動きについっても、特に住民が不安に思っていた具体的な件に対して、市の情報誌にのせるなどの努力が必要であったと思われる。

 

 もうひとつは、積極的に市民の声を取り入れようとする市の姿勢のなさである。筑西市の合併協定書()[5]には、たんに「10 諮問機関(地域審議会)の取扱い 合併特例法第5条の4第1項の規定に基づく地域審議会については、新市において設置しないこととする。」としか記載されていない。この件に関してどのような議論が交わされたかは一切不明であるが、広域になった市の民の声を積極的に取り入れようとする議論が活発に行われたのをうかがわせるものは発見できなかった。その件に関する住民の不安の声はアンケートでわかっていたのに、である。市の側の、市政に市民の意見を反映させようという積極的な姿勢が欠けているといえる。

 

 

3千葉県南流山市の取り組み

 

 先日たまたま訪れた、つくばエキスプレスの経由する駅のひとつ、千葉県の南流山駅のホームに、「自治始めます。」という文字だけが大きく書かれたポスターを発見した。調べてみると、この千葉県流山市とその市民の取り組み[6]を知ることができた。取り組みに対するコメントがHPに記載されている。その中身の一部が下に載せたものである。

 

 「流山の最大の特徴は、パブリックインボルブメント(PI)を重視して、対話集会を開いていることです。自治会長、各自治会、市議会議員、市民活動団体、地区ごと(自由参加)、有識者、学校(高校生、PTA)、事業者団体、審議会委員などなど、すでに50数回に上っています。」「 「(専門家に頼らない)市民による手作り、徹底したPI、議会と共同歩調」というのが、流山方式の3点セットです。」「市民協議会では、最初からPI3点セットの1つに位置づけ、なおかつ、部会制をとることで、PIにメンバーをきちんと配置して、実行できる体制をとったことが大きいと思います。また、PIだけでなく、ニュース編集・発行部会をつくることで、月1回のニュース発行を着実に行っているというのも、驚きです。」「いま全国で「自治体の憲法」づくりが盛んです。その「憲法」の名を「自治基本条例」と言います。すでに50を超える自治体が制定済で、制定に向けて動いている自治体はまだまだあります。 わがまちの「憲法」であるからには、広く市民の議論に支えられたものとすることが大切です。流山市では、きめ細かなPI(対話集会)を開きながら、制定作業に取り組んでいます。」

 

 

4まとめ

 

 今回は、合併によって市民の声が届きにくくなるのではないかという懸念から調べたが、このことは何も合併した市町村にのみでなく、自治体すべてにあてはまる。市民の声を反映させるにはどうしたらよいか。千葉県流山市の取り組みは、その回答の一例として挙げられるだろう。市民に政治に対する専門的な知識が必要なのではない。議会と市民が、互いが同じ場所で率直に意見交換する。そういった場を設けることをあらかじめ決めておき、さらにその内容を広める取り組みを多く行う。市民、特に若い世代に対する意識啓発活動は、少しずつその影響を表してくることだろう。こう述べると簡単なようだが、実際に行ってみるのは多くの問題があるだろう。自治体は、おのおの自分たちにあった方法を模索しながら、市民が市政に「参加してもらう」体制を作るべきではないだろうか。選挙をして当選したのだから議員は民の代表、という意識ではなく、当選した後も民意を反映するのが議員であるといったような、ある意味謙虚な姿勢が求められているとも言えるかもしれない。市民の意識低下も見られる今日、自治体側の積極的な行動が期待される。

 



[1]「石島かつお議会活動報告!」市民による市民の町づくりをすすめる会発行 代表 石島かつお

[2] 筑西市公式ホ−ムページ http://www.city.chikusei.lg.jp/

[3] http://mhorie.cool.ne.jp/gappei/data/hou.html

[4] http://www.city.chikusei.lg.jp/gyousei/kensetsu/pdf/sub_page03.pdf

[5] ※残念ながら案のものしか見つけられなかった。また、PDFの掲載されていたサイトのアドレスを残しておくのを忘れてしまった。

[6] http://blog.canpan.info/cs-partners/archive/17