070115 kurashigem

 

倉重 優倫『リストラから見る開廃業率の推移〜ミクロからマクロへ、再びミクロへ〜』

 

私がこのテーマを考えるきっかけとなったのは、自分が生まれ育った北海道という地で起業したいという夢があるからだ。そのために、北海道経済の変遷を知らなければいけないと思い、また、国民にとっては、未だ続く不況といわれ続ける中、地方行政が執っている政策や新規法律の施策後の影響を考えたいと思ったからだ。

 

やはり、全国的なリストラ率(完全失業率)があがってきたのは、バブル崩壊後であり、その後の自然淘汰とともに、本来の意味であるリストラクチャリング(事業の再構築)の意味よりもむしろ、自主退社を推奨したり、強制的に退社勧告を出したりする、という意味が強く感じられるようになり、また窓際族(退社予備軍)なるものも登場するようになった。ニュースなどでよく取り上げられるようになったのは、実際にバブル崩壊した後、5年後ほどの、90年代後半だと思う。そこで、リストラ率とそれと同時期の開廃業率の数値の変遷から、日本経済や道経済を切り取っていこうと思う。

 

まず、国全体のリストラ率(完全失業率)の数値は、1997年は3.4%に始まり、以後少しずつ増加の一途をたどり、ピークは20025.4%になっている。また、最新の情報では、200611月の完全失業率は4.0%に下落してきている。

 

次に、道内でのリストラ率(完全失業率)の数値は、1997年に3.7%に始まり、国全体と同じく増加しつづけ、ピークは2003年の6.5%まで上昇している。また、最新の情報では、20067月−9月の統計では、5.3%となっている。

 

比較すると、10%から20%くらいの差異がある。なぜ、これほどにも数値の差が大きいのか。少し考えただけで、その理由が浮かび上がってくるように思う。それに加えて、多少の時差(time lag)があることも推測できるだろう。

景気には波がある、というが、その波の震源地は、日本で言えば、首都東京であることは間違いなく、最初に好景気になるのも、最初に不況になるのもまた然りである。そういったタイムラグも、北海道経済に関与していると考える。

 

北海道は97年に、ちょうど「北海道拓殖銀行」という最大手の銀行が破綻した。バブルの不良債権に追われ、このときまだ北海道に住んでいた私の耳にも、すぐさま届き、すごく強烈なインパクトとして残っている記憶がある。絶対的な信用を売っていた最大手の銀行がこれだ。

 

この要因に即して、加速するように失業率も増加してきたに違いない。また、数字上において、全国比率よりも1%ほどの差がでてしまっている最大原因としても、この拓殖銀行の破綻が絡んでいるに違いない。との推測をして、無理がないと考える。

 

 また、そういった社会情勢の中で行政がとってきた政策は、国内では、97年に「消費税が5%」になり、「独禁法の改正」が行われ、持ち株会社の発足が解禁になった。また99年には、「産業再生法」が成立したが、これは、当時存在する会社の、事業の活性化を狙ったものだ。不況の渦中だったから、そういった法律が制定されたことは、今なら容易に想像できると思う。

 

一方、開廃業率の推移を順に追っていこうと思う。

全国推移によると、企業増加率は「‘89年〜‘91年」の間に、初めてマイナスとなり、その数値は−0.61%であった。また、およそ3年から4年間での集計値であるため、各年代の数値での波にバラつきが見られるが、それでも、未だにマイナス数値の中にあり、不況は脱していないと考えたほうが自然である。それに加えて、側近での数値である「‘01年〜‘04年」の実績値では、過去最低の−2.16%とまでなっている。この事が、より好景気だと思えない結果になってしまっているとも考えられる。

 

また、北海道内の推移によると、企業増加率は「‘91年〜‘94年」の間に初めてマイナスとなり、その数値は−0.31%であった。また、国全体と同様に、側近での数値が、「−2.33%」となっており、徐々に、事業社数が減ってきていることがうかがえると思う。

 

この事実を受け止めた政府は、平成1521、会社を起こす際に必要な資金面での負担を軽くしようと、「中小企業挑戦支援法」なる法律を成立、施行させ、事業社数においても下準備を整えだしている。また、その法律の施行に基づいて、国民が新たに起業しており、増加傾向にあるという実績もある。これは、一般に用いられるときは、「一円起業」する、といい、一円からでも事業(会社)を興せる、という、非常に有効な法律である。しかし、その影には下記に記すような不安点も見られ、注意が必要であることに違いはない。

 

以上のことに関する事は、ほぼ経済産業省のHPから引用したものが多いが、それでは、あまりにも一方的な側面しか見られず、偏った意見になってしまうと考え、民間の新聞社からも情報を得ようと考えた。

 

 読売新聞社から。(道経済について)

 やはり民間になると、モノの見方が、多角的になり、指標は「倒産件数」と「負債総額」というモノサシになっていた。

 その尺度から考えても、「倒産数は落ち着いてきた」という表現をしていることから、上(好況)への上昇ではなく、下(不況時)においての清算が片付いてきた、というようなことが読み取れる。ただ、懸念していたことは、「老舗企業」などの倒産が相次いでいることだった。それを、打破するには「経営手法の見直し」をするべきだという見解をしていた。そして、新たに制定された法律に伴う「一円起業」の事業成功の鍵については、「継続性」「将来性」が挙げられていた。

 私的な見解をすれば、会社の数をただ増やせばいいのではなく、それにはタイミングと、現実に即した事業内容が重要で、現在、不要な企業はどんどん淘汰されるべきだ、と考えるポジションを取る。もし、私が懸念することのようになってしまうなら、またバブルのような空虚な時代がやってくるのではないかと、不安を募らせるばかりである。

 

 

調べた結果、政府、民間、それぞれが以上のような視点を持っていることを知った。このコトから、日本経済、道経済ともに現在はバブル崩壊後からの脱却に向けて、下準備が整いだした、と見て間違いないと考える。また、これから明るいニュースを作っていく、われら若い世代としては、絶好のチャンス時期だと、うかがえた。

この事からも、私の夢である起業の将来性にとって、いい情報が得られたと考える。

 

 

 

二.注釈

 *産業クラスター;北海道庁『産業クラスターの概要』

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/ssg/clstr/sub1.htm 

特定の分野において、相互に関連のある企業や学術研究機関が、取引・情報・資金・人材等の面でぶどうの房(クラスター)のように結びついている状態です

 

三.参考文献:ウィキペディア 「完全失業率」(国全体:男女別数値あり)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%B1%E6%A5%AD

 

総務省「H9年以降の失業率」(北海道)

http://www.stat.go.jp/data/roudou/pref/zuhyou/lt06y.xls

 

「全国・北海道における開廃業率の推移」

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/NR/rdonlyres/AE920B14-4E4A-4D77-B91D-9B0BF81020DA/0/29deta.pdf

 

読売新聞社HP:

「企業倒産<上>」 (2005412日)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/kikaku/025/50.htm

 

「企業倒産<中>」 (2005413日)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/kikaku/025/51.htm

 

「企業倒産<下>」 (2005414日)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/kikaku/025/52.htm