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加藤沙織「地域振興と道の駅−藤岡町を事例に−」

 

近年、地方分権に伴い地方の負担が大きくなりつつある。今後、地方自治体の財政は自己負担の比重が大きくなる。そんな中、財政難を脱するための村おこしや地域振興策が各地で取られるようになった。私の地元、栃木県藤岡町もその1つである。その手段の1つとして昨年、道の駅が誕生した。今、地域振興策として道の駅の建設がブームのようになっていると思う。道の駅の効果とはどのようなものなのか。地元である藤岡町での事例を通して道の駅を利用した地域振興について考えてみようと思う。まずは道の駅がどのようなものなのか足らないところがあるかもしれないが、説明しようと思う。

 

道の駅の建設は199110月から山口、岐阜、栃木県で実験的に始まって以来、全国的に数を増やし続け20068月の時点で845箇所登録されている。道の駅の定義を国土交通省道路局のHPから抜粋すると『道路利用者のための「休憩機能」、道路利用者や地域の方々のための「情報発信機能」、そして「道の駅」をきっかけに町と町とが手を結び活力ある地域づくりを共に行うための「地域の連携機能」、の3つの機能を併せ持つ休憩施設』ということになる。

http://www.mlit.go.jp/road/station/road-station_outl.html(国土交通省道路局HP「道の駅とは?」)

詳細に述べると、道の駅に求められる機能・サービスの大きなものは、24時間、無料で利用可能な十分な容量のある駐車場、そして清潔で24時間利用可能、障害者用も設置されているトイレである。その他、案内施設では道路情報及び近隣の「道の駅」情報、近隣地域まで含めた観光情報、緊急医療情報、その他利用者の利便にかなった情報を提供することが求められ、かつ、バリアフリー化が図られている。また、道路利用者に対してその地域の文化・名所・特産物などを活用したサービスを提供することが望まれている。

 

道の駅が建設され始めた背景には長距離ドライバーの増加が挙げられる。自動車が大衆に広く普及し、生活必需品化したことにより長距離ドライブバーが増え、一般道路にも高速道路のサービスエリアのような24時間気軽に立ち寄れる休憩施設が求められるようになった。また、高齢者・女性ドライバーの増加が、バリアフリー化や地域の特産物の販売、情報提供のサービスにつながり、そういったサービスを提供することにより、地域のメリットにもなっているのだと思う。

 

道の駅はドライバーのニーズを満たすと同時に、道路を介した地域連携が促進されその地域の活性化にもつながる。自治体の目線で見れば、いわば時代に即した地域振興施設といったところだろうか。

 

私の地元、藤岡町は栃木県の最南端に位置する小さな町である。つい3年ほど前、近隣の岩舟町大平町との合併の計画が持ち上がり、とうとうわが町も財政難に耐え切れなくなったのかと思ったが、結局その案は廃止になった。だからといって、財政難は解消されたわけではない。藤岡町も少子・高齢化の波をうけて、小・中学校のクラスが減少し、総人口の減少につながっている。財政面でも年々予算は減少し、いつまた合併話が持ち上がるとも限らない。そんな中、昨年完成されたのが道の駅「みかも」である。栃木県内に15ある道の駅のうち、13番目にできた道の駅である。東北自動車道佐野藤岡インターを出て国道50号を小山方面に約1キロ、県営みかも山公園南入口のところにある。藤岡町にある県営みかも山公園や渡良瀬遊水地と一体的に地域振興の核となる施設となった。敷地面積2.8haに農産物直売所、加工施設、レストラン、物産館、イベント広場などを備えている。農産物直売所では地元の新鮮な野菜が並び、加工施設では地元女性グループ製造の饅頭、アイスクリームなどが販売されている。情報発信コーナーはトイレと一体的となっており、交通情報や藤岡町の紹介をタッチパネル式で表示する。この道の駅建設に伴い、町役場には「道の駅」課が新設され、道の駅事業に力を注いでいる。しかしながら、一般会計予算は平成16年度の591,400万円から平成17年度の576,600万円、今年度は501,000万円と減り続け、特に今年度は道の駅整備事業費の減などにより、前年度に比べると7億5,600万円(13.1%)の減となっている。今年度の道の駅整備の予算が減らされたのは、道の駅が完成し事業が一段落ということを意味するのかと思ったが、本当のところは定かではない。だが、年々予算は削られ厳しい財政状態になっていることは事実であり、今後地域振興にますます力を入れていくことは確かだと思う。そして道の駅の役割も大きくなるであろう。道の駅はこれからが勝負である。

 

そこで課題になるのが、全国的に言えることであるが、道の駅が地域振興としての力を発揮し、財政を潤すものとなるためにはこれから何十年にもわたって道の駅を存続させていかなければならないということだ。道の駅は利用者の目を引くために個性的な作りのところが多い。それゆえに建物の建設には大きなコストがかかってしまう。道の駅「みかも」はそれほど凝った作りはしていないと思うが、毎晩看板や木々をライトアップする電飾にかかる費用は相当なものであると思う。また、将来的にかかるメンテナンスコストまで考えるとさらに費用がかかり、そこまでの余裕がある自治体はないのではないかと思う。

 

それから、利用者獲得のためには公的な「休憩機能」としてのサービスを充実させることは無視できない。道の駅に地域振興の期待を寄せるなら、利用者がいなくては元も子もない。よって利用者が快適に過ごせる休憩施設としての機能を維持していかなければならない。しかし、地域の収支がなければ、公的サービスを充実させることは出来ないし、道の駅の存在もあり得ない。地域の特産物や工芸品などが並んでいることは、利用者にとっての楽しみでもあるが、自治体にとっての利益でもある。自治体破綻が現実となっている今、収支を考えずに施設を管理・運営することは難しい。道の駅は国土交通省の管轄ではあるが、商行為による利益に頼っているのが現実である。だが、利益を意識するあまり、販売品の値段を上げすぎることは利用者減少につながってしまう。さらに、当初から商業施設として作られたわけではないので、助成金を商業・営利目的に当てることは「目的外運用」ということになり、思い切って商業優先にすることは難しいし、仮にそうした場合、道の駅に期待された役割とは離れたものになってしまうのである。この課題はすぐに解決できるものではない。

 

私は、道の駅「みかも」の建設は藤岡町にとって正しい選択だったと思っている。立地条件から見て、国道50号沿いにあり西に1kmほど行けば、佐野プレミアム・アウトレット、イオン佐野と大型商業施設が並んでいる。アウトレットやイオンで買い物をしたついでに道の駅「みかも」に寄る…といったようないわば大型施設に便乗した形にはなるが、利用者は獲得できていると思う。今のところ、地域振興策としての役割を果たす可能性は期待できると思う。だが、先に述べたような道の駅の「利用者のニーズへの対応」と「地域振興」というジレンマは藤岡町も抱えている。さらに考えていかなければならないと思うのは、道の駅「みかも」が、ぽんっと新たに出てきたものであるということだ。以前そこに地域のコミュニティーがあったわけではないので一から構築していかなければ簡単に崩れてしまうであろう。こういった地域は他にもあると思う。そこで重要になるのがやはり地域住民の連帯である。住民の協力なしに道の駅は成り立たない。道の駅は利用者の視点で作られているが、地域住民からしても魅力のあるものだと思う。住民が道の駅を訪れ、今まで知らなかった地域の良さを知ることも地域活性化には大切なことである。

 

私は、道の駅が好きである。出来るだけ多くの道の駅を訪れてみたいと思っている。道の駅存続のためには行政的・財政的な問題も複雑に絡んでいるが、地域住民が道の駅を「地域の核」としてきちんと認識することも大切なのではないかと思う。「人が元気でなければ町も元気ではない」。安易な考えかもしれないが、地域住民が地元を愛し、活き活きとしていることも地域振興において大事なことの1つではないかということを道の駅を調べたことを通じて私は改めて考えた。

 

 

参考:国土交通省道路局HP

http://www.mlit.go.jp/road/station/road-station_outl.html

藤岡町役場HP

http://www.town.fujioka.tochigi.jp/pubsys/public/mu1/bin/index.rbz

道の駅のポータルサイト 未知倶楽部

http://www.michi-club.jp/?banner_id=overture