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田村幸子「新しい雇用形態・人材派遣について」

                                                                               

1.人材派遣とは

人材派遣とは人材派遣会社に登録をした社員が、人材派遣会社から仕事を紹介してもらい、派遣先を決めて、その派遣先で仕事に従事するというシステムである。人材派遣で派遣先がきまり、そこで働く者を派遣社員という。派遣社員が実際に働く企業が雇用主ではなく、派遣社員は、人材派遣会社と雇用契約が結ばれる。実際に働く企業と雇用契約を結ぶのではないところが通常の雇用と違う点である。

 

2.人材派遣会社の背景と成り立ち  

年功序列、終身雇用という就労形態は、戦後社会から、高度成長期までは日本にとって必要な形態だった。荒廃した日本社会を再建するためにそして世界の中で企業の地位を優位なものにするためには社員の生活を長期に渡って保障し、会社と社員が一丸となって経済社会を築き上げる必要があった。そのためには時代に即した制度であったわけである。

しかし、経済活動のグローバル化が急速に進行し、市場規模が全世界へと広がり、国際競争が激しくなってきた現代において、企業ではその制度に対応しきれなくなった。高度成長期のように経済が持続的に拡大していく時代は終わり、国際情勢により経済が変動する時代になってきた。企業間での競争は激しさを増し、先行きが不透明で予測の出来にくい時代になった。売上も不安定になる中で、企業が利益を確保し存続・発展をし続けるためには、無駄なものを省き、コスト管理を徹底しなければ生き残れない時代になってきたのである。

コストの削減を図り、新技術や最先端製品ビジネスモデルの開発を行うと共にさまざまな分野の能力、ニーズを持つ人材を有効に活用することが求められてきた。売上高が不安定になる中で必要利益を確保するために経営者はあらゆる工夫を要求される。売り上げを上げるためにはたくさんの人員が必要になる。しかし、人員を減らしても利益を上げて行く方法、総額人件費管理が要求される。

従って、生産量に応じて柔軟な要員管理と人員配置を行う必要があり、パートタイマ、フルタイムの期間限定での労働者の活用が重要なポイントになってきた。そこで人材派遣のニーズが高まってきたのである。

また、日本では急速に少子高齢化が進んでいる。その中で労働力の確保、技能技術伝承の観点から労働者の活用が重要となっている。

今まで、出産、育児、介護といった中で女性従業員が退職せざるを得ないケースや性別の役割意識により女性が持っている能力を活用する場が与えられない社会的状況があった。能力のある女性を活用しないということは企業にとっても大きなマイナスであり、仕事と家庭の両立ができる方法として人材派遣の活用が注目されている。

 終身雇用制度の崩壊と同時に働く若者の意識も変化している。正社員として会社で働くのではなくやりたい仕事を選択できる自分らしいワークスタイルを考えて人材派遣に登録し派遣スタッフとして働くことを選択する人びとも増えている。このような社会情勢によって人材派遣ビジネスが台頭してきたのである。

 

労働者派遣法の施行

19867 労働者派遣法執行

適用対象業務は13業務(ソフトウェア開発、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、建設物清掃、建築設備運転・点検・整備、案内・受付・駐車場管理等)。
派遣期間は、ソフトウェア開発業務は1年、それ以外の業務は9ヶ月として認められた。

198610 法令改正

適用対象業務に3業務(機械設計・放送機器等操作・放送番組等の制作)が追加され、16業務となった。

199010 告示改正

事務処理関係業務の派遣期間が9ヶ月から1年に延長された。

199411 改正高齢者雇用安定法施行

60歳以上の「高齢者派遣」の適用対象業務が、港湾運送、建設、警備及び物の製造業除いて原則自由化となった。

199612月 法令改正

人材派遣を利用できる適用対象業務が専門的26業務に拡大された。

 

199912 法改正

 紹介予定派遣の定義が明確化され、紹介予定派遣=採用前のトライアル、という性格がはっきりとしてきた。

200012 紹介予定派遣解禁

 新しい雇用形態として紹介予定派遣が認められた。

20036 法令改正

1999年の改正に次いで大きな改正となった。

専門的26業種の派遣期間が、派遣スタッフが望む限り無制限になった。

派遣対象業務の拡大

以前は禁止されていた製造業において、人材派遣が解禁された。

 

 

3.人材派遣のしくみ

                     人材派遣は3つの関係で成り立っている。派遣会社と派遣社員(派遣スタッフ)は雇用関係を結ぶ。

                    派遣社員と派遣先企業は指揮命令関係、派遣先と派遣会社は労働者派遣契約をそれぞれ結ぶ。

 

4.人材派遣のメリット

 企業側

☆繁忙期などに人材派遣サービスを巧く利用する事で、人件費を削減すると共に、管理も軽減される。

 ☆派遣スタッフのモチベーションの低下や事故を未然に防ぐ為のケア、業務の効率化を図る為など、 人材派遣の管理社員が派遣スタッフと業務をフォローする。

☆人材派遣サービスを利用する事で、求人の為の費用など雇用に関する問題が解消され、労務管理、業務管理、勤怠管理などの管理業務の負担が大幅に軽減される。 

 

派遣社員側

☆自分の希望に合う仕事を、派遣会社が紹介してくれる。

 ☆専門性が生かせる。専門性が高まる。

 ☆働く時間や場所、期間が選べる。

 ☆プライベートと仕事の両立を実現しやすい。

 ☆いろいろな企業や仕事を経験できるので、自分の視野や経験が広がる。
☆職種や仕事内容を自分で選ぶことができ、会社都合での異動がない。
仕事上での問題や不安を派遣会社に相談できる。

 

5.派遣会社のとりくみ

 ☆カウンセリング、フォローシステム

派遣社員のパソコントラブルなどに対応する、オフィスの人間関係の相談にのり、適職・キャリアプランを見つけていくなど様々なフォロー体制を整えている。

☆スキルアップのための講座開設

パソコン研修、英会話講座など 仕事をする上で、必要とされるスキルを無料で受

  講できる場を提供する。

ビジネスマナー講習会 マナーの基本、敬語について、身だしなみ、電話応対など

  の研修の場を提供する。

☆保育施設の導入

     子育て中の若い主婦が安心して働けるように子供を預かり子供たちが楽しく過

せる場所を提供する。

 

6.人材派遣会社の今後

 ☆少子高齢化に向けての取り組み

若年労働力の減少などにより、外食業界の人手不足はますます深刻化している。そんな中、人材派遣会社の中には主婦やシニア層、外国人などの派遣を始めるところが出てきた。

飲食店やホテルを対象に、1年ほど前から主婦やシニア層の派遣を行っている。子供がいるから長時間は無理だが、昼のピークタイムなど短時間なら働きたいという主婦に託児所を紹介し、ホテルやレストランに派遣をしている。4060代の主婦や退職をしたシニアが、自分の小遣いの確保のため、また社会と関わっていたいとして派遣を希望している。人材派遣会社にとって、主婦やシニアなどは、若年労働者に比べ、採用がしやすいのが魅力となっている。

また、実際にスタッフとして活用する飲食店やホテルにとっては、若年層よりコストが割安だという利点もある。例えば、2時間など短時間労働を依頼する場合、若者なら時給3000円かかるが、主婦なら短時間の前提で登録しているので時給20002500円と割安だ。シニア層も、「仕事を覚えてもらうのに多少時間はかかるが、若い人より長く勤めてくれ、真面目な人が多い」と、評判が良いという。しばらくは試験的に主婦やシニア層の派遣を行っているが、ゆくゆくは飲食店などの業種を中心に、積極的に活用していく構えだ。

 ☆ニート対策

   イギリスにおいて、「雇用から離れ、教育も職業訓練も受けていない若者」をさす新語。「Not in Employment, Education or Training」という英語の頭文字をとっている。
日本でいうフリーターは正式に定職にはついていないが、労働によって賃金を稼いでいる。しかし、就職意欲がなく働かないという点が、ニートはフリーターと大きく異なる。
労働政策研究が日本のニート数を推計したところ、2003年は63万人と10年前の約1.6倍に増加。
就職活動をしないことから、ハローワークなども実態を把握することもむずかしいという。
 ある経済研究所の調査では、ニートが2005年には約87万人、10年後には100万人に達すると予測している。ニートの急激な増加は、日本経済へも深刻な影響を及ぼすことが予想される。ニートの増加による労働力の減少が、今後の日本の経済成長率(潜在成長率)を低下させると見られる。
 また、ニートの低所得傾向も無視できない。ニートだった期間が長期にわたると、もし就職できたとしても待遇面で不利になる場合が多い。ニート期間が10年続くと、その後に正社員として就職できても、生涯賃金は一般の会社員の半分になると予想される。また、若い世代の収入が減少することによる税収の落ち込みが考えられ、長期的に見れば、社会保障制度の仕組みにも影響を及ぼすことが考えられる。
 事態を重く見た政府は、文科省、経産省、厚労省、内閣府による「若者自立・挑戦プラン」を2003年にとりまとめ、ニートの支援に乗り出した。経団連も産業界からの支援を提言している。また、厚生労働省の「平成15年版 労働経済白書」の中では、労働や生き方にかかわる価値観が多様化した今、それぞれの能力や個性に応じた支援が必要であると、述べられている。具体的には合宿形式の「若者自立塾」や、雇用情報、個人相談、就職支援などの雇用サービスを若年者に提供し、その対策がとられている。

このように、若者を再教育し、自立を促し、雇用につながるプログラムを、社会全体で模索している。未来に対し、夢の持てる社会を創造していくことが我々の課題である。

 

新しい雇用形態である人材派遣がこれからの経済社会の中でますます注目される。

 

参考

http://www.hatarako.net/contents/chishiki/004.html#4_1

http://www.one-do.com/shinsotsu_service.htm