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玉手里佳「郵政民営化の展望〜郵政民営化と過疎地域の生活〜」

  

〈はじめに・・・〉 

 

今回、郵政民営化の数多く挙げられている問題の中から、過疎地域における郵便局の統廃合問題に焦点を当てて取り挙げることにした。私の出身地がまさに過疎地域にあたることもあり、一番身近で取り挙げやすい問題であるからである。過疎地域の郵便局の統廃合が地域にどういった影響を与え得るのか。政府の方針も含めて述べることにする。

 

〈郵政民営化が行われるのはなぜか?〉

 

 今では、各世帯に電話・パソコンが普及し、携帯電話の保有数も年々増している。近年では小中学生をはじめ、高齢者でも携帯電話を持つ人が増えている。離れた場所にいる人への通信手段は増え、メールや電話ですぐに用件を伝えられる今、郵便物は減少傾向にある。以前は国営であった電電公社(現・NTT)の関連会社が今では、携帯電話会社の最大手になっている。それはまさに、時代の波に乗った国営から民営化への成功例だといえる。そして、金融業界・保険業界が競って顧客獲得をしている中で、目立ったオプションサービスのない郵便貯金・郵便保険に魅力を感じる人は少ない。そのためか、郵貯・簡保での収入も年々減少しているという。そうしたなかで、民営化することで民間企業ようにサービスの質を向上させ、経営の向上を図るというわけである。

 

〈郵政民営化基本方針(*1)〉

 

まず初めに、政府が平成16910日に閣議決定により発表した、郵政民営化の基本方針とはどんな内容であったか。それによると、郵政民営化は郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)の経営・サービスの質の向上、安価でのサービス提供を目的として行われるという。経済的な面においても、公的部門に流れていた資金(郵便貯金・簡易保険)が民間銀行に流れるようになることで、企業や個人への融資が行われ、経済の活性化も見込まれている。今までの郵政公社の4機能がそれぞれ以下の4会社として分化される。

1、窓口ネットワーク会社(今まで行っていたような業務を受託という形で行う。次に述べる郵便、郵便貯金、郵便保険が委託する側になる。また新事業として地域密着型のサービスが望まれている。)

2、郵便事業会社

3、郵便貯金会社(民間金融機関と同様の業務を行う。)

4、郵便保険会社(民間生命保険会社と同様に業務を行う。)

5、公社継承会社(既に契約されている郵貯・簡保を引き継ぐ。)

※つまり、郵便貯金会社・郵便保険会社が取り扱うのは新規契約分からとなり、また新規契約分から政府保証が廃止されることになる。

20074月までに日本郵政公社は廃止され、以上の1〜4の会社と国が全ての株式を保有する株式会社の設立が予定されている。また、それ以後は郵便貯金会社、郵便保険会社は移行期間中に株式が売却され、民有民営が実現されるという。分化はされるものの、4会社は互いに関連し合って、経営・サービス提供されるといえる。そのため経営の一体性を図るために、4会社の親会社となる持ち株会社が設立される。ここまで述べたのは、郵政民営化の基本枠組みであり、過疎地域の郵便局の統廃合について直接の関連性はない。しかし、郵政民営化がどういった方向性で行われるのか、という流れを押さえる意味でまとめた。

 

〈ユニバーサルサービスの限界(*2)〉

 ユニバーサルサービスについても、前項で述べた郵政民営化基本方針において述べられていた。ここで言うユニバーサルサービスとは、過疎地域においても都市部と同様のサービスを受けられるということである。しかし、政府の発表した郵政民営化基本方針においてユニバーサルサービスが義務付けられているのは郵便業務についてのみであり、過疎地域においては、貯金業務・簡易保険業務が行われなくなる可能性が高いとの声もある。過疎化の進む私の出身地には、およそ小中学校の学区内に少なくとも一つは郵便局があった。もっと過疎化の進んでいる地域では、学区内に一つの郵便局もないかも知れない。小泉内閣の言い分では、“どの町村にも一つは郵便局を残す。”と、いうことである。だがしかし、市町村の面積を無視して、そう言っているのであれば、次のような状態になる。面積の広い山間地域を含む市町村であった場合でも、市町村の中心に一つ郵便局が残っていれば、小泉内閣の言う改革の方針に沿っていることになってしまう。そうなれば、山間地域の人々は郵便局を利用するために市町村の中心まで出向かなければならない。若い人であれば、車に乗ってすぐに郵便局に行けるだろうし、郵便局を利用するのもATMくらいで、そう不便な思いはしないかもしれない。しかし高齢者はどうだろう。郵貯・簡保・・・さらに今まではすぐ近くにある金融機関として、郵便局を利用していた人も少なくないのではないだろうか。年金の受け取りに、歩いて(または自転車で)行けた場所が、これからはバスやタクシー、家の人に車で送ってもらわなくては行けないような場所になってしまうのではないだろうか。過疎地域は、ますます生活しにくい場所になり、より一層住人は減るだろう。

 

〈止まらない郵政民営化と改善策〉

 郵政民営化について考えるうちに、どうしても止められるものではないのだと気付いた。第一、すでに国会でも郵政民営化法案は可決されている。だが、今後も過疎地域には人が住み続けるのだから、何らかの対策が必要であると思う。しかし、完全に民営化されれば、過疎地域の郵便局を残すことは、会社としての利潤追求にそぐわないということになり、新会社の足かせとなるため、他の民間企業との自由競争ができなくなるのである。では、どうすれば郵貯・簡保でもユニバーサルサービスが実現するのか。思い浮かんだのはドイツの郵便局である。ドイツでは、日本よりも先に郵政民営化が行われている。ドイツポスト社は、コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、日焼けサロンなど様々な店に業務を委託し、コスト削減を行っている。これを過疎地域でも応用できないだろうか。過疎地域にある民間商店に業務を委託するのだ。そうすれば、過疎地域の人々にもサービスが行き渡るのではないだろうか。民間商店の人に果たして今までの郵便局の業務がこなせるのか。もちろんこの委託は強制ではなく、希望を募ったり、委託に応じてくれた人だけで良いのだ。自分の住む地域の役に立ちたいと思う人は少なくはないと思う。そういった商店の人に講習会を開くなどして業務にあたってもらえるのが理想の形である。

 

〈まとめ〉

 

郵政民営化について初めてその内容を聞いたとき、そのことがどれほどの問題であるのか理解できなかった。今でもどこがどう良くなるのか、悪くなるのか説明は難しい。それでも実際に民営化になって、賛否は抜きにしても何らかの問題が発生するであろうことは言える。過去にNTTやJRが国営だったものが民営化された時にも、問題は発生したのだから間違いない。郵政民営化を進めた小泉内閣もそのことは予測しているだろう。そういった問題の中で、過疎地域の郵便局の統廃合問題はとても小さな問題なのかも知れない。過疎地域なだけに、郵便サービスに不便が生じる対象人数も少ないだろう。しかし、その小さな問題は、過疎地域の人々が抱える問題に通じているように思う。過疎地域の住人の多くは高齢者やこれから高齢者になっていく中高年である。前文でも述べたが、地域の郵便局がなくなることにより、地域の生活はより不便なものとなり、結果として過疎化が進むばかりである。郵政事業だけに関わらず、利益追求・コスト削減にばかり気を取られ、公的機関としてのユニバーサルサービスを捨てることは、より都市集中・過疎化を進ませてしまうのではないだろうか。

 

〈参考文献〉

     1 郵政民営化の基本方針

http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/0910yusei.html

     2 現場から見た郵政民営化問題 郵政労働者

http://www.kokuminnrengo.net/2005/200509-yusei.htm